いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

football managerというシミュレーションゲームであれこれやっていきます。気付いたらユナイテッドの事ばかり書いてます

【 #EURO2020 】印象に強く残った選手(準々決勝まで)

6月11日(日本時間だと12日早朝)から始まったEURO2020も佳境に入り残すところは準決勝、決勝の計3試合。

 

今大会もフットボールファンの記憶に残るような印象的な場面が数多くありましたが、今回は個人的に素晴らしいプレーを見せてくれたと感じる選手をベストイレブン方式で発表していきたいと思います。

 

 

 

スカッド

 

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*一応3-4-2-1想定ですが、右のWBには競争相手の多かったアタッキング・ミッドフィルダーからプレーエリアが右サイドに寄っているダムスゴーを選んでいます。

 

スタメン

 

GK

ルーカス・フラデツキー(フィンランド)

 

DF

ルーク・ショー(イングランド)

ハリー・マグワイア(イングランド)

アンドレアス・クリステンセン(デンマーク)

 

MF(WB含む)

シュテフェン・ツバー(スイス)

ジョルジーニョ(イタリア)

エミル・フォルスベリ(スウェーデン)

セルヒオ・ブスケツ(スペイン)

ミッケル・ダムスゴー(デンマーク)

 

FW

クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)

パトリック・シック(チェコ)

 

Sub

ヤン・ゾマー(スイス)

レアンドロ・スピナッツォーラ(イタリア)

ケビン・デ・ブライネ(ベルギー)

カリム・ベンゼマ(フランス)

 

 

選出理由

 

スタメン

 

GK・DF

 

GKはヤン・ゾマーとの2択で悩んで最終的にはEURO初出場のフィンランドで3試合続けて見事なセービングを続けたルーカス・フラデツキーを選出。

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デンマーク戦ではホイビェアのPKをストップするなど獅子奮迅の活躍で後に準決勝まで勝ち進むダニッシュ・ダイナマイトから勝ち点3をもぎ取り、同試合ではエリクセンのアクシデントがあったとは言え遥かに格上の相手に得点を許さず完封勝利。

fbref.comのPSxG±/90(シュートが放たれた後のゴール期待値から90分辺りの実際の得点数を引いた指標)でも同じくPKストップを記録したスロバキアマルティン・ドゥブラフカに0.16の差をつけて断トツ1位。

 

 

ルーク・ショーはクラブでの活躍を見事スリーライオンズに持ち込み、大会が始まる前はベン・チルウェルのバックアップという見方が強かった中、自身のパフォーマンスでLBのポジションを不動にしています。

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今大会ではここまで334分(な阪関)に出場して3アシスト。90分辺り0.81Aという数字はスイスのシュテフェン・ツバー、ハンガリーのアダム・サライに次ぐ第3位でDFとしては破格のスタッツと言えるでしょう。

 

この活躍を受け、インターネット上では元ブラジル代表で悪魔の左足を持つと恐れられたあのロベルト・カルロス氏(Roberto Carlos)にちなんでショーベルト・カルロス(Shawberto Carlos)という愛称が広まっています。

 

 

マンチェスター・ユナイテッドのプレイヤーでは、5月のアストンヴィラ戦で負った負傷の影響でグループステージ3試合目からの復帰となったハリー・マグワイアもショーに負けず劣らずの大活躍。

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怪我の影響を恐れて個人的には彼の選出に関してサウスゲート監督を批判するような記事(【 #ThreeLions 】万全ではない選手を招集する判断の是非)も出しましたが、これに関しては完全に私の方が間違いだったようです🙇‍♂️。

 

特に終盤のパワープレーに対する絶対的な強さが目立っており、デュエル勝率は地上・空中合わせて88%、エアバトルに限れば100%勝利という特筆すべきスタッツを記録。

 

 

DF3人目は準決勝でイングランドと対戦するデンマークアンドレアス・クリステンセンを選出。

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グループステージ第3戦のトルコとの試合ではボックス外からの強烈なミドルシュートを決め、カフヴェジのゴラッソで一点差になっていた試合を再びデンマーク優勢に引き戻すこのゴールは今大会デンマークの天国と地獄を分けた重要な瞬間。

 

また、スプリントスピードでは今大会全体7位タイとなる33.3km/hを記録し、今大会CBとしてプレーした選手の中では現状彼が最速。

 

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MF(WB込み) 

 

今大会はWBが猛威を振るい、その中でもスイスのシュテフェン・ツバーは現時点で大会最多の4アシストを記録しその名を広く轟かせたプレイヤーの1人。

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所属クラブ(アイントラハト・フランクフルト)ではフィリップ・コスティッチの控えである彼ですが今大会のプレーはコスティッチを凌駕するレベルでスイスの準々決勝進出には間違いなく彼の貢献が不可欠でした。

 

スイス代表と言えば得点の半数以上にゼルダン・シャキリが絡むシャキリFCとして彼への依存の強さが問題視されている事も多いですが、EURO2020に限って言えばジャカ、ツバー、セフェロビッチといった周りのプレイヤー達も彼に負けず劣らずの素晴らしい活躍だったので今回の躍進はある意味当然なのかもしれない。

 

余談ですが今大会は右利きの左WBの活躍が目立つトーナメントで、彼の他にもイタリアのレアンドロ・スピナッツォーラ、デンマークのヨアキム・メーレ、ベルギーのトルガン・アザールらが傑出したプレーを披露しています。

(メーレは本当に最後までスカッドに入れるかそうでないかで迷いました)

 

 

DM1人目はイタリアのジョルジーニョ

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プレミアリーグでは激しいコンタクトプレーに苦戦する場面も度々見られ、一部サポーターからは厳しい批評も聞こえてくる彼もこのEUROでは新生アズーリの核として毎試合安定したパフォーマンスを続けています。

 

1試合辺りのインターセプトは3.5回でチェルシーのチームメイト エンゴロ・カンテと並び大会最多をマーク。文字通り中盤のフィルターとして今大会このポジションのトップランカー。

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sofascoreより

 

 

DM2枚目は新型コロナ感染からグループステージ3試合目に復帰すると、それまで2戦連続ドローでグループステージ敗退の危機にあったラ・ロハを救ったセルヒオ・ブスケツがリスト入り。

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守備での貢献は勿論ですがハーフスペースでCBから縦のボールを引き出し少ないタッチで前線の選手にボールを繋げる潤滑油としても貢献が大きく、彼が去った後のスペイン代表は苦戦必至でしょうから今の内に後継者を選定するか別のシステムを構築する必要がありそう。

 

ツバーの項で今大会は右利きの左WBの大会と評しましたが、もう1つ途中からスタメン入りした主力選手というのもキーだったかもしれません。

イングランドマグワイア、そしてこのブスケツは共に3戦目から試合に出場し、ラウンド16、準々決勝で共にチームのベストプレイヤーだったベルギーのトーマス・フェルマーレンも信用を掴んだのは主力を休ませて臨んだ3試合目フィンランド戦でした。

国際大会は連戦が続き厳しい日程が続くのでこのように途中からチームにフィットして疲労の少ない選手の存在は勝敗を分ける要素になり得るのかもしれない。

 

 

攻撃的MFではエミル・フォルスベリが特筆すべきパフォーマンス。

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フルバックにもCB兼任の選手を起用し4-4ブロックで守備を固めるスウェーデン代表において彼のチャンスメイクは得点の大半を占める欠かせない要素。

スウェーデンのEURO2020本戦の全得点の内80%が彼が関与したものなので、彼がチームを牽引したといっても過言ではありません。

 

その内訳はスロバキア戦のPKに始まりポーランド戦では2ゴール、ラウンド16ウクライナ戦でも同点弾となるミドルシュートを決めて4試合4ゴールの目覚ましい活躍。

 

 

 

クリスティアン・エリクセンの痛ましい出来事で悲嘆に暮れていたデンマークを救ったヤングスター ミッケル・ダムスゴーもやはり強く印象に残る選手。

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流動性の高い今大会のデンマークにおいて彼は左右中央問わずアタッキングサードの広範囲にプレーエリアを有しており、準々決勝チェコ戦では相手の中盤トマーシュ・ホレシュがマンマーク気味で彼をマークするなどその脅威は相手チームにも強く認識されているようです。

 

 

FW

 

PKでの3得点を含むとはいえ、ラウンド16で敗退していながら未だに大会トップスコアラーに名を連ねるクリスティアーノ・ロナウドは欠かす事の出来ない名前。

 

また、今大会はロナウドにとって記録づくしの大会でもあり、通算5度目の本戦出場は歴代トップ、更に大会通算ゴール数もミシェル・プラティニの9点を大きく更新する14ゴールに記録を更新。

更にポルトガル代表における通算ゴール数でもイランの英雄アリ・ダエイに並ぶ109得点に達し、こちらに関しては惜しくも今大会中の更新とはなりませんでしたが、仮にフットボール史の教科書があるとすれば間違いなく今大会のロナウドは太字で名が刻まれることでしょう。

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そのロナウドに並び得点ランキングトップに位置しているのがチェコのパトリック・シック。

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スコットランド戦の約45mの超ロングシュートは世界に強い衝撃を与え、ゴールを許したGKデビッド・マーシャルはコラージュの素材にされ一種のmemeにもなりましたがそれ以外にもオランダ戦やデンマーク戦などノックアウトステージの重要なゴールをチームにもたらしています。

 

かつてユベントス移籍が破談になった原因である心臓の問題はエリクセンのケースを考えると気がかりではありますが、間違いなく大会後は多くのクラブから関心を集めるはずなので動向にも注目したいところ。

 

 

Sub

 

GKはスペイン戦のビッグセーブ連発に心を動かされたヤン・ゾマー。

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DFはイタリアの攻撃のエンジンでLBながらウイングのように高い位置をとって対面のディフェンダーに強いプレッシャーを与え続けたレアンドロ・スピナッツォーラ。

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彼はベルギー戦でアキレス腱断裂という重い怪我を負ってしまいましたが、一刻も早い復帰を心より祈っています。

 

 

MFは2戦目からチームに復帰しいきなり1G1Aの活躍、フィンランド戦では7つのキーパスを記録したベルギーのケビン・デ・ブライネ。

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FWはセックステープ恐喝事件から6年ぶりに代表復帰のカリム・ベンゼマ

最初はあまりチームにフィットしていない印象でしたがポルトガル戦スイス戦の活躍はお見事。

 

 

あとがき

 

準決勝に残ったチームを見ると、いずれも3バックをプランの1つとして採用している(イングランドデンマーク、スペイン),或いは試合中の可変フォーメーションでそのような形を採用(イタリア)という面白い結果が出ています。

 

また、バックスを見るとポルトガルのペペ(38歳)を筆頭にキエッリーニ(36歳)、フェルマーレン(35歳)とベテランCBの活躍も目立ちました。

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ブルーノ・フェルナンデスがイマイチ居場所を見つけらないまま大会を去ってしまった事は心残りではありますがマンチェスター・ユナイテッドの選手は概ね上々の結果が出ているのでそちらに関しては素直に嬉しい。

【 #EURO2020 】#CZEDEN はデンマークが17年前のリベンジに成功しベスト4進出

*EURO2020 準々決勝 チェコvsデンマーク戦の記事です。

 

 

2004年大会以来17年ぶりの準決勝進出を狙うチェコと同じく優勝を果たした1992年大会以来の進出を伺うデンマークのマッチアップが開催されるのはアゼルバイジャンはバクー・オリンピック・スタジアム。

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この2チームの対戦はこれまでに親善試合を含めて11回行われていますが、なんといってもEURO2004 準々決勝での試合がお互いにとって最も印象深いものである事は明白。

  

17年前の一戦ではチェコが2mを越えるターゲットマン ヤン・コレルの先制点を皮切りにミラン・バロシュの2ゴールも追加し3vs0で快勝を収めていますが逆に言えばチェコはそれ以来デンマークに勝利を収める事が出来ていません。

直近の相性かそれともEURO準々決勝での因縁どちらが勝るかという見方もこの試合の見どころだと思います。

 

 

▼両チームのこれまで 

 

 

 

 

 

 

 

スタメン

 

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ベンチ入りチェコ:2カデジャーベク、4ブラベツ、8ダリダ、11クルメンチク、14ヤンクト、16マンドウス、17ジマ、20ヴィドラ、21クラール、23コウベク、24ペクハルト、25ペセク

デンマーク:2J.アンデルセン、7スコフ、11A.S.オルセン、13M.ヨルゲンセン(ザンカ)、15ノアゴール、16レッスル、18ヴァス、19ウィンド、20Y.ポウルセン、21コーネリウス、22レノウ、24M.イェンセン

 

チェコは累積空けのLB ヤン・ボジルがスタメン復帰。

ラウンド16で採用したホレシュをアンカーに置く4-1-4-1ではなくノーマルな4-2-3-1で臨みます。

 

デンマークのWBはドイツのように両サイドが常に高い位置を取る訳ではありませんがシステムの噛み合わせから言えばややチェコに分が悪いと思われます。

こちら側の主な攻撃手段はツォウファルのクロスなので彼がヨアキム・メーレに圧力をかけて攻撃参加の頻度を少なくできるかどうかが勝敗を分けるポイントの1つ。

 

 

今大会デンマークは相手の出方によってカメレオンのように変幻自在に陣形を組み替えてきますが、スタートは基本的にこの3-4-2-1に固まりつつあります。

 

形の上では左サイドに当てはめられる事の多いマルティン・ブレイスウェイトは実際にはフリーマンのようにピッチを自由自在に動き回るのでここまでデンマークと対戦したチームは彼を捉える事に苦労している印象を受けます。

近年は選手個人の特性に合わせる為に可変フォーメーションを採用する事は当たり前になりつつありますが、今のデンマークはその中でもかなり流動性の高いチームなので見ていて関心させられる事が多い。

 

 

試合内容

 

前半:誤審も味方しデンマークは2点リードで折り返し

 

スコアが動いたのは開始5分のこと。

デンマークは右からのコーナーキックでトーマス・ディレイニーがフリーでヘディングシュートを決めてこの試合最初のシュートをいきなり得点に結びつける事に成功。

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ディレイニーのマークについていたのはパトリック・シックでしたが、ボールに対して動いてしまいマーカーとしての仕事を放棄してしまった勿体ない失点でした。

余りにもフリーだったので何かトリックプレーが成功したのかと思いきや現実は非常にシンプルなものだった。

 

ただ、チェコを擁護するならばそもそもこのコーナーは明確な誤審であり、チェルストカのクリアボールはドルベアの身体に当たりそのままゴールラインを割っていた事が中継映像では明らかでしたから正直かなり不運な失点。

 

彼らの反撃の糸口はやはりシック。12分には右サイドに流れツォウファルの縦パスを受けると、カットインから左足のシュートを放ってようやくチェコはまともな形でシュートを記録。

 

 

一方、幸運な形で先制点を手にしたデンマークはこれをキッカケに勢いに乗り、13分には チェコのコーナーを凌いだ直後ホイビェアからのロングボール1本でデムスゴーが抜け出し、トラップが流れシュートは打てなかったもののボックス内での決定的なチャンスで追加点を狙います。

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 17分にもクリステンセン⇒ストリガー・ラーセンの縦パスが通り折り返しに3列目から上がってきたディレイニーが合わせるなどいつ得点が生まれてもおかしくない状況。

 

 

この時間帯は劣勢だったチェコも22分には持ち前の運動量を生かしたハイプレスでGKシカスパー・シュマイケルパスミスを誘うとマソプストのラストパスからホレシュのシュートでこの試合初の決定機。

個別のシュートチャンスではこれが最も得点期待値の高いプレーだったのでチェコとしては同点に追いついておかなければならない場面でした。

 

 

デンマークはカウンター狙いですが、片翼のWBがDFラインに吸収されて4バックで戦う時間帯も多くこれはチェコのフォーメーションとの噛み合わせを良くする為の指示だと思われます。

チェコが前掛りになっていた事もあって幾度もブレイスウェイトのスピードを活かした右サイドからの攻撃は得点の匂いを強く感じるものでした。

 

42分にはツォウファルの裏を狙うメーレにヴェスターゴーアから完璧なスルーパスが通り、メーレの右足アウトサイドのクロスにカスパー・ドルベアが合わせてデンマーク2点目。

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チェコとしてはオランダ戦MoM級の動きだったトマーシュ・ホレシュが中盤のフィルターとして前の試合ほど効果的では無かった事も誤算の1つ。彼はデムスゴーをマンマーク気味に追うタスクを任されていたのでどちらかと言えば左に寄るシーンが多く、失点シーンはこれをうまく利用されてしまった形。

 

 

後半:流血をも厭わぬ死闘

 

後半開始と共にチェコはホレシュ🔁ヤンクト、マソプスト🔁クルメンチクと攻撃的なカードを切って立ち上がります。

46分にはそのクルメンチクがいきなり強烈なシュートをシュマイケルにお見舞いし、その後も攻撃の圧力をキープし続けた結果、49分にツォウファルのクロスにシックが右足で丁寧にボールの軌道を変えて自分から遠い方のサイドネットにボールを流して反撃開始のゴール。

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更にここから60分辺りまでは4-2-2-2のような形にフォーメーションを変更したチェコペースと評せる展開で、これに変化が生じたのはデンマーク59分~60分にかけての選手交代。ドルベア🔁ユスフ・ポウルセン、デムスゴー🔁ノアゴールとアタッカー2枚を入れ替えてきましたが特にFWがフィジカルコンタクトに強いポウルセンに変わった事で彼のポストプレーやドリブルを活かした中央でのカウンターはチェコとって大きな脅威でした。

 

実際に62分のデンマーク決定機は交代で入ったこの2人から生まれており、ポウルセンは69分にも同じような形のカウンターからシュートを記録しています。

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チェコは上記の62分の攻撃を凌いだ際にソーチェクの頭とポウルセンの足が接触してしまい、流血も見られたので包帯を頭に巻いてピッチに戻ってきましたがその後も血は止まらる事無く彼の後頭部のガーゼは赤く染まっています。

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このプレーでは更にCBのチェルストカも足を負傷しており、一気に満身創痍になってしまったチェコ

その後はセットプレー中心に攻め立て、デンマークの追撃はヴァツリークのスーパーセーブ連発によって何とか凌いで1点差のまま試合は最終盤へ。

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後半アディショナルタイム3分、チェコはバラークのサイドチェンジをクルメンチクが落として最後はシックに代わり79分から出場していたマテイ・ヴィドラがボレーシュートを試みるもボールは大きく浮いてしまい枠の外。

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AT6分にはラストチャンスでボジルのクロスが跳ね返されたところをトマーシュ・カラスがダイレクトでゴールを狙いますが僅かにゴールマウスの横に逸れ、試合はデンマークが1vs2で勝利。

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動画ハイライト

 

 

ゴール⚽5分:トーマス・ディレイニー(👟イェンス・ストリガー・ラーセン)
42分:カスパー・ドルベア(👟ヨアキム・メーレ)
49分:パトリック・シック(👟ウラディミール・ツォウファル)

 

 

選手交代

チェコ

46分 in:ヤンクト、クルメンチク out:ホレシュ、マソプスト

65分 in:ブラベツ out:チェルストカ

79分 in:ヴィドラ、ダリダ out:シック、シェフチーク

 

デンマーク

59分 in:Y.ポウルセン out:ドルベア
60分 in:ノアゴール out:ダムスゴー

70分 in:ヴァス out:ストリガー・ラーセン

81分 in:J.アンデルセン、M.イェンセン out:クリステンセン、ディレイニー

 

 

データ

 

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スタッツの上ではチェコが優勢。

5分に早々とデンマークが先制してどっしり構える展開になった事は考慮する必要がありますがチェコも十分に勝機のある試合でした。

また、ピッチ上では頭に包帯を巻く選手が2人出て一見すると大荒れになったように感じた試合でしたが、終わってみれば両チーム合わせてイエロー2枚、うち1つは審判への抗議によるものなので実際はクリーンに進んだ好ゲーム。

 

 

走行距離114.5kmという数字が示すようにチェコは大会を通してハードワークを続けてきたのでこの試合でもチェルストカ、シックと2名が負傷による入れ替えと選手にかかる負担は大きかった。

中でもウエストハム所属の2人は全体TOP10に入る距離を動いているので、余計なお世話ではありますが来季のクラブでのパフォーマンスには一抹の不安を抱いています。

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(Player stats | UEFA EURO 2020 | UEFA.com)

 

 

試合前に挙げたチェコのキーマン ウラディミール・ツォウファルは攻守に走り続けキーパスはピッチ上最多の3回、守備でも地上デュエル4/5、インターセプト3回、タックル2回とチェコが勝利していた場合にはMoMに選ばれていたであろう活躍で対面のヨアキム・メーレにも優勢気味でしたが惜しくも奮闘は実らず悔しい結果となっています。

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一方、勝利を収めたデンマークではカスパー・ドルベアが2戦連続得点を挙げて一躍シンデレラボーイになりつつあります。

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トーナメント2試合3ゴールという活躍は信頼できる得点源を求めていたチームの救世主に相応しいもので大会後の動向にも注目が集まる事は必至。

 

ヨアキム・メーレやミッケル・ダムスゴーと並び来季のクラブレベルでの活躍に大きな期待がかかります。

【 #EURO2020 】優勝候補同士の直接対決はアズーリの勝利

*EURO2020 準々決勝 ベルギーvsイタリア戦の記事です。

 

 

ベスト8では一番のビッグマッチであろうこの一戦。

ベルギーはグループB、イタリアはグループAをそれぞれ全勝で勝ち上がりラウンド16では前者は前回覇者ポルトガルを辛くも勝利、後者はオーストリアに苦戦しながらも延長戦の末に退けてそれぞれこの場所までたどり着きました。

 

こうして今大会の結果を振り返ると共通点も多い両チームですが、過去の戦績はベルギー4勝-イタリア14勝-引き分け4回とアズーリが圧倒的に優勢。

最後に戦ったのは前回EUROのグループステージで、その際もイタリアが0vs2で勝利と赤い悪魔にとっては非常に厳しい対戦相手となっています。

(Belgium - Record vs Italy | Transfermarkt)

 

しかし、ラウンド16で戦ったポルトガルも相性の悪かった相手で、後半は自陣に押し込まれていたとはいえ90分で勝利を収めたので、今の彼らに過去の相性というものは当てはまらないのかもしれません。

 

 

両チームのこれまで

 

 

 

 

 

 

スタメン

 

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ベンチ入りベルギー:4ボヤタ、11カラスコ、12カミンスキ、13セルス、14メルテンス、18デナイエル、20ベンテケ、22シャドリ、23バチュアイ、24トロサール、26プラート

イタリア:1シリグ、5ロカテッリ、9ベロッティ、11ベラルディ、12ペッシーナ、13エメルソン、15アチェルビ、16クリスタンテ、20ベルナルデスキ、23バストーニ、25R.トロイ、26メレト

 

ベルギーは3CBの中央にポルトガル戦でクリスティアーノ・ロナウドを封じ込めたトーマス・フェルマーレンが継続してスタメン入り。

何かと低く見積もられがちなJリーグについても過小評価されていると試合後の会見で語りましたが、イタリア相手にもハイパフォーマンスを見せてその頼もしい言葉を更に補強して欲しい。

 

懸念としてはエデン・アザールポルトガル戦の終盤に負傷してしまい、メンバー外となってしまった事。

ジェレミー・ドクのドリブルは魅力的ですがこのチームの強みは固定メンバーで10年近く戦っている事からくる連携面にあるので、その中心である彼の不在は攻撃力低下につながる恐れあり。

 

 

イタリアはラウンド16でも途中出場から先制ゴールを決めてスタメン待望論が高まっていたフェデリコ・キエーザをRWで先発起用。

 

中盤の充実ぶりは他国を寄せ付けず、グループステージでは決定的仕事を連発したマヌエル・ロカテッリがベンチスタートになる程の陣容。

 

53年ぶりのEURO優勝に向けて特段気がかりな点は見当たりませんが強いて言うならば高齢の両CBの疲労度。

実際にキエッリーニはグループステージ第2戦で足を負傷しこの試合でようやくメンバーに復帰したばかりなのでおそらく万全の状態では無いと思われます。

それでもここまでの戦いぶりを見る限り彼らが優勝に最も近いのは間違いない。

 

 

試合内容

 

前半:新生アズーリの象徴のような先制弾

 

ベルギーは守備時にデ・ブライネが中央、ルカクが右サイドにスライドして5-2-3、あるいは5-2-1-2の形を採用。

イタリアのビルドアップで鍵を握るジョルジーニョにはデ・ブライネがマンマーク気味について縦のボールを牽制する形。

これが機能した最初の10分間はベルギーの作戦通りの展開だったと思います。

 

 

ただ、13分にセットプレーからレオナルド・ボヌッチがゴールネットを揺らし、このチャンス自体はオフサイドで取り消しになったもののその後はイタリアが主導権を握るような展開。

先述したベルギーの守りに対しイタリアはビルドアップ時にRBのディ・ロレンツォを低い位置に下げて3CBにすることで数的優位の状況を作り出し、更にLBのスピナッツォーラが高い位置を取って開けた左のスペースをヴェラッティが利用する事でジョルジーニョ抜きでも組み立ての形を作り出し、結論から言えばこの修正にベルギーは対応し切れたとは言い難かった。

 

 

このような背景からポゼッションはイタリア優勢でしたが得点チャンスに限れば機会が多かったのは寧ろベルギーの方。

22分、低い位置からドリブルでゴール前まで侵入したデ・ブライネの左足シュート、26分にはカウンターから再びデ・ブライネがボールを運びアウトにかけたパスを受けたルカクのシュートがゴール左端を襲いますがいずれも今夏のPSG加入がほぼ確実となっているジャンルイジ・ドンナルンマが好セーブ。

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そして試合が動いたのは31分。

右サイドでイタリアFKのリスタートから始まった攻撃はボックス内でカットされますが、その後すかさずイタリアは4人でボールホルダーのパスコースを封じてヴェラッティバイタルエリアインターセプトに成功すると、最後はパスを貰ったニコロ・バレッラの見事なボールコントロールからのシュートでイタリアが先制。

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*3人に囲まれながら間をすり抜ける見事なドリブルで決定機に繋げた見事なプレーでした。

 

イタリアと言えば元来カテナチオと評される鉄壁の撤退守備が持ち味とされてきましたがこのゴールを生んだのはそれと真逆の高い位置からのハイプレス。

攻撃面でも複数の選手が流動的に位置取りを変えて相手の的を絞らせないような動きを積極的に取りますが、この先制弾は旧来のスタイルから敢えて脱却しより攻撃的な姿勢を貫いてきた今のチームの成果が実った得点だったと思います。

 

 

勢いに乗るイタリアは44分、一度GKまでボールを下げてベルギーの守備を間延びさせるとインシーニェが左サイドハーウフェーライン手前からドリブルでボックス手前まで独力で運び、最後は狙いすましたコントロールカーブをファーサイドに送り届けて2点目のゴールをゲット!!

 

 

ベルギーも直後の45分にジェレミー・ドクのドリブルからPKを獲得してロメル・ルカクが今大会4点目となるゴールですかさずスコアをに戻して前半は1vs2で折り返し。

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後半:ジェレミー・ドク無限の可能性

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後半、ベルギーのチャンスはほとんどがドクのドリブルから生まれたものでした。

試合を通じてドリブル成功8回というスタッツは断トツの数字で、イタリアはチーム全体で5回の成功だったことからもその傑出度が分かると思います。

 

 

まずは56分、ヴェラッティを置き去りにしてゴールライン際から鋭いクロスを上げて口火を切ると61分にはカウンターからデ・ブライネにスルーパスを通しルカクの決定機をチャンスメイク。

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このビッグチャンスはレアンドロ・スピナッツォーラの見事なシュートブロックで防がれ、66分にはそのスピナッツォーラのアンダーラップからイタリアに後半初の決定機。

 

ドクは70分にもディ・ロレンツォを背負った状態でボールを受けるとそこからDF2枚を引き寄せてサイドチェンジのパスを通しシャドリのクロスからルカクのあと数センチで得点になっていたであろうチャンスに繋げています。

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イタリアにアクシデント

 

ようやく持ち前の攻撃性能を見せたスピナッツォーラですが、76分にジョルジーニョのサイドチェンジを受けて頭で前にボールを出しスプリントを試みた際に足を痛めてそのまま負傷交代。

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試合後の報道ではアキレス腱断裂の重傷であった事が発覚し長期離脱が予想される事態になってしまいました。

 

戦術面においても彼はアズーリの核を担う選手だったので本人のみならず代表チーム、そしてジョゼ・モウリーニョが新たな指揮官に就任したASローマにとっても非常にダメージの大きいトラブル。 

 

 

 

試合に話を戻すと、84分のドクの左サイドからのカットイン3連発はディ・ロレンツォ→ジョルジーニョ→クリスタンテ(74分からヴェラッティに替わって途中出場)を立て続けに交わす素晴らしいドリブルで、最後のシュートは惜しくも枠外でしたが今夏世界の名だたるクラブが挙って彼の獲得を目指すのではないかと思わせるには十分すぎるロマンあふれるプレーでした。

 

その後ベルギーは終盤にかけて8割近い支配率を記録し同点ゴールを狙いますが、イタリアもキエーザを下げてフルバックのラファエル・トロイを投入し5バックで守備を固めて結局AT6分40秒を回りタイムアップの笛が吹かれるまで最後の10分はシュートを1本も打つことが出来ずそのままイタリアが1vs2で逃げ切りに成功。

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選手交代

ベルギー

69分 in:メルテンス out:ティーレマン
70分 in:シャドリ out:ムニエ

74分 in:プラート out:シャドリ

 

イタリア

74分 in:クリスタンテ out:ヴェラッティ
75分 in:ベロッティ out:インモービレ

79分 in:ベラルディ out:インシーニェ
80分 in:エメルソン out:スピナッツォーラ

90+1分 in:R.トロイ out:F.キエーザ

 

 

データ

 

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前半からイタリアが主導権を握る時間帯が多く、ベルギーは持ち前の攻撃力を発揮出来たとは言い難い悔しい結果。

それでもxGはベルギー1.83-イタリア1.73と今大会最も評価の高いアズーリを上回った事からも分かるように決して勝てない試合ではありませんでした。

 

ベルギーとしてはデ・ブライネがジョルジーニョをマークするという構造上の問題でイタリアのビルドアップでどうしてもDFが一枚フリーになってしまった事も中々展開を掴み切れなかった要因の1つ。

攻撃パターンはセットプレー後のカウンターかドクの個人技くらいに限定されてしまっていたので、全体の印象としてはかなり窮屈な試合でした。

 

また、70分に投入して直後にはルカクの決定機を演出したナセル・シャドリが僅か5分で負傷交代に追いやられてしまったのも彼らの誤算の1つ。

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トーマス・フェルマーレンはクリア4回、シュートブロック2回、インターセプト5回、タックル4回とこの試合でもベルギー代表のベストプレイヤーでしたが惜しくも奮闘実らず。

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イタリアでは決勝ゴールに加えビッグチャンスクリエイト2回のロレンツォ・インシーニェがMoMに相応しいでしょう。

 

グループステージでは消えている時間も多かった彼ですが、代表チームで再結集したペスカーラ三銃士の連携もあって伸び伸びとプレーしていました。(ヴェラッティ、インシーニェ、インモービレの3人は11-12シーズンのセリエBで名将ズデネク・ゼーマンに率いられ優勝を果たしたチームの中心選手。)

【 #EURO2020 】無失点継続4得点快勝の #ThreeLions まるで往年のセレソンのような安定感

*EURO2020 準々決勝 ウクライナvsイングランド戦の記事です。

 

 

準々決勝最後の試合はグループステージ3位通過でラウンド16では同じ黄色に青のチームカラーのスウェーデンを延長戦の末退けたウクライナと今大会未だ無失点のイングランドのマッチアップ。

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イタリアはローマ スタディオ・オリンピコで行われるこのベスト8はここまでウェンブリーでの試合が続いたスリーライオンズにとっては初の遠征試合ですが、アムステルダムブカレスト2試合⇒グラスゴーと移動が続いたウクライナからすればかなり恵まれている日程。 

 

ウクライナはこの移動の負担に加え負傷者多数、試合自体の消耗も激しいので戦前予想ではイングランド優勢との見方が強い試合ですが一体どのような結果を迎えたのか。

 

 

 

 

スタメン

 

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*配置が反対になっている事に後から気付きました🙇‍♂️

 

ベンチ入りウクライナ:2ソボル、3スダコフ、6ステパネンコ、11マルロス、12ピアトフ、14マカレンコ、15ツィガンコフ、18ベズス、20ズブコフ、23トルビン、24ティムチク、26ドフビク

イングランド:7グリーリッシュ、8J.ヘンダーソン、11ラッシュフォード、12トリッピアー、13ラムズデール、15ミングス、16コーディ、18キャルバート=ルーウィン、20フォーデン、21チルウェル、23ジョンストン、26ベリンガム

 

ウクライナはEURO予選でも多くの試合で採用していた3-5-2。

守備時は5-3-2でブロックを固めてくるので鍵を握るのはWBの運動量とジンチェンコ、シャパレンコのスライドでしょう。

 

アタランタのルスラン・マリノフスキがベンチからも外れた理由に関しては情報が錯綜しており、ウォームアップ中の負傷という説が一番有力ですがハッキリとしたものは今のところ分かっていません。

 

 

イングランド新型コロナウイルスの濃厚接触判定で一時チームを離れていたメイソン・マウントがスコットランド戦以来のスタメン復帰。

また、RWには先日マンチェスター・ユナイテッドの移籍合意が発表されたジェイドン・サンチョが今大会初スタメンと前線の陣容を変更してきました。

 

元々ウクライナがこのフォーメーションで来ることは予想されており、どうしてもサイドアタッカーの優位性に頼る必要が出てくる試合になる事は濃厚だったのでサンチョ起用は極めて正しい選択でしょう。

 

そしてラウンド16でようやく大会初ゴールを決めたハリー・ケインの大暴れにも期待。

 

 

試合内容

 

前半:幸先よくゴールを奪ったイングランド。4バック変更後に同点への気配がましたウクライナ

 

まずは4分、サンチョとマウントのワンツーで右サイドを切り崩したイングランド

ここから続くアタッキングサードでの攻撃で逆サイドのスターリングはカットインからハリー・ケインへゴール方向へ縦のスルーパス

この決定機でスリーライオンズはあっという間に先制に成功。

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ふいうちのような形でリードを奪ったイングランドですが基本的にはウクライナの守備陣形を崩す事に苦戦しており、U字と揶揄されるブロック外でのパス回しの時間も多かったです。

 

やはり起点となるのは左サイドのバックス2人。

後述するようにチャンスメイクで決定的な仕事を連発したルーク・ショーマグワイアがボールを運ぶスペースを確保するためにあえてライン際からダイアゴナルランでWBを釣り出すなど見えない所での貢献も大きかった。 

 また、イングランドのウイング2枚は時折サイドを入れ替えていましたが、サンチョもLWの方がやりやすそうにみえました。(後ろの選手の問題か彼個人の適性かは分かりません)

 

 

17分のウクライナイングランド陣内でカイル・ウォーカーのパスが短くなったところをすかさず付けこみカウンターからヤレムチュクにチャンスが生まれますが、ピックフォードの好セーブに阻まれこのシュートを得点につなげる事は出来ません。

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33分、スターリングのライン際からの折り返しのこぼれ球にデクラン・ライスの強烈ミドルが襲い、このプレーの直後にウクライナのCB真ん中セルゲイ・クリフツォフが何らかの原因で脚を負傷し彼はそのままピッチを退きます。

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代わりに中盤のヴィクトル・ツィガンコフが入った事でウクライナはそれまでの3-5-2から4-3-3にフォーメーションを変更。

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この変更が功を奏し、ウクライナは36分からのおよそ10分間試合を優勢に進め、同時間帯でのスタッツはポゼッション65%、シュート2本(イングランドは0)と同点に追いつく希望を感じさせる内容。(data:Whoscored.com)

 

対するイングランドはリードしている状況ながら劣勢に追い込まれますが、40分には左サイドのパスワークからDFの背後でフリーになったルーク・ショーの折り返しにサンチョの決定機がありましたがオフサイドの判定。(決めていればVARでオンサイドが認められていたかも)

 

 

前半はイングランド1点リードで折り返し。しかしながら終盤の内容はウクライナの同点ゴールを十分に期待させる内容でした。

 

 

後半:Shawberto Carlos

 

キックオフ直後のプレーでイングランドは左サイドアタッキングサードでケインが足を生まれてFK獲得。

 

ルーク・ショーのキックはファーサイドに構えるマグワイアへドンピシャ。

マークについていたマトヴィエンコを手で押さえて実質フリーの状態から放たれたパワーヘッダーがそのままゴールネットに突き刺さります!!

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ユナイテッドの2人で追加点を奪ったスリーライオンズですが、まだまだ追撃の手を緩めません。

50分にはシドルチュクの縦パスをサンチョがカットしたところからカウンターが始まり、マウント→スターリングとボールが渡って最後はスターリングのヒールパスを受けたルーク・ショーのピンポイントクロスをハリー・ケインがGKの股の間に叩きつけてあっという間にリードが3点に広がります。

 

僅か4分間で2アシストをマークしたショーはセレソン(ブラジル代表)やレアル・マドリーなどで長年に渡り活躍したあのロベルト・カルロスになぞらえショーベルト・カルロス(Shaw+Roberto Carlos)と称されファンや解説者も大絶賛。 

そして試合後のショーのインスタグラムの投稿にはロベルト・カルロスからのメッセージも届いており、"Shawberto Carlos"の愛称はロベカル公認と言えるかも。

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ルーク・ショーのインスタグラム(@lukeshaw23)より

 

 

 

更に63分には交代で入ったキャプテン ジョーダン・ヘンダーソンが右からのコーナーキックでダメ押しの4点目を記録し勝負あり。

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4点リードのイングランドは大幅なメンバー交代で主力に休息を与え、70分にはピックフォードのクリアミスからヒヤッとする場面もありましたが疲労困憊のウクライナに4点のビハインドから奪い返す力は残っておらず、その後はスリーライオンズが得意の塩展開に持ち込みクリーンシートを継続。

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試合はイングランドウクライナに0vs4で勝利という結果に終わっています。

 

ゴール⚽4分:ハリー・ケイン(👟ラヒーム・スターリング)
46分:ハリー・マグワイア(👟ルーク・ショー)
50分:ハリー・ケイン(👟ルーク・ショー)
63分:ジョーダン・ヘンダーソン(👟メイソン・マウント)

 

 

選手交代

ウクライナ

36分 in:ツィガンコフ out:クリフツォフ

64分 in:マカレンコ out:シドルチュク

 

イングランド

57分 in:J.ヘンダーソン out:ライス

65分 in:トリッピアー、ラッシュフォード、ベリンガム out:ルーク・ショースターリング、K.フィリップス

73分 in:キャルバート=ルーウィン

 

 

データ

 

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イングランドは4得点を奪いましたがシュート数は10本とそれほど多くありません。

しかしながらディフェンスの安定感は大会随一で今大会唯一の無失点は未だ継続。

 

xGA/90(90分辺りの失点期待値)でも0.62と2位のオランダ、イタリアに0.1の差をつけて単独一位。これまでの結果がフロックではなく実力によるものだと裏付けるような堅守はデータにも表れています。

 

 

また、この試合では強みの1つであるプレースキックからビッグチャンスを2回創出出来た事がこの大勝に繋がりましたが、これは就任直後からセットプレー強化に熱心に取り組んだサウスゲート監督のお手柄。

 

ジョゼ・モウリーニョからセットプレーのキッカーとしての資質を始めありとあらゆる批判を受けたルーク・ショーはこの日もマグワイアのヘディングをアシストする完璧なデリバリー+オープンプレーでもケインの2ゴール目を演出して2アシスト。

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大会通算でもスイスのシュテフェン・ツバーに次ぐ3アシストでデンマークのホイビェアと並ぶ2位タイとアシスト王を狙えそうな好位置につけており、デンマークとは準決勝で直接対決が予定されているのでこれも試合の見どころの1つ。

 

また、完全に自身の発言が誤りであったと証明されたスペシャル・ワンが今後どのような弁明を図るのかどうかにも注目が集まります。 

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【 #EURO2020 】ヤン・ゾマーの超人的パフォーマンスでスペインを土俵際まで追い詰めたスイス

*EURO2020 準々決勝 スイスvsスペイン戦の記事です。

 

 

ベスト8最初の試合はグループステージを3位で突破しラウンド16ではフランス相手に2点のビハインドから追いついた末、PK戦にて彼らを破ったスイスとグループステージ第3戦、ラウンド16と2戦続けて5点を奪い課題とされていた得点力にも改善の兆しが見えるスペインのマッチアップ。

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▼スイスvsフランス戦

 

 

 

 

スタメン

 

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ベンチ入りスイス:2エンバブ、11R.バルガス、12ムボゴ、15D.ソウ、16ファスナハト、17ベニト、19ガヴラノビッチ、20E.フェルナンデス、21コベル、22F.シェア、25キュマルト、26ロトンバ

スペイン:1デヘア、3D.ジョレンテ、6M.ジョレンテ、9G.モレノ、10チアゴ、12E.ガルシア、13R.サンチェス、19ダニ・オルモ、20アダマ、21オヤルサバル

 

スイスはキープレイヤ―のグラニト・ジャカイエローカードの累積2枚で出場停止という事も影響したのかここまで採用していた3-4-1-2ではなく、ボルシアMGのDMデニス・ザカリアとフロイラーの3列目2枚で4-2-3-1スタート。

苦しい台所事情ではありますが、前線のプレイヤーは走力のある選手を揃えているのでカウンターからチャンスを見いだしたい。

 

 

対するスペインはこれまで通り4-3-3。

18歳ながらここまでEURO本戦フルタイム出場のペドリは今のラ・ロハにおいて欠かす事の出来ない選手になりつつあります。ただ、EUROの後には東京五輪への出場が予定されているので疲労の蓄積が心配なところ。

 

CBは左利き2枚を並べる選出に戻りましたが、エリック・ガルシアの守備面での不安が拭えなかったので致し方ない判断かと思います。

 

 

試合内容

 

前後半90分

 

スイスはマンツーマン気味の守備を採用し、2分にはゼルダン・シャキリが高い位置でセルヒオ・ブスケツからボールを奪いシュートを放つなど序盤から高いテンションで試合に臨みます。

(攻撃時は4-2-3-1守備時はシャキリが前線に吸収されブスケツに圧をかける4-4-2)

 

パウ・トーレスラポルトのCBにはそこまでプレスを掛けず、スイッチが入るのはアンカーのブスケツにボールが入ったところからという割り切った守備でした。

 

 

思わぬ形で試合が動いたのは8分。

スペイン右からのコーナーキックでニアサイドのラポルトを狙ったボールが誰にも触れられぬままボックス内を通過し、こぼれ球にダイレクトで合わせたジョルディ・アルバのシュートがザカリアの足に当たってそのままゴールマウスへ吸い込まれます。

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*当初はアルバのゴールとされましたが後にザカリアのオウンゴールに変更

 

 

不運な失点でリードを許したスイスですがプランに変更はなく、ロングボールやそのこぼれ球を起点にしたショートカウンターといわばレッドブル系列のチームが得意にする戦術で手数を掛けずスペインゴールを狙うというのが徹底されていました。

 

また、パウ・トーレスとデュエルした際に左足太もも裏を負傷したエンボロが23分という早い段階で交代を余儀なくされる痛いアクシデントもありましたが交代で入るルベン・バルガスもそのまま右サイドに起用されて戦術に大きな変更はありません。

 

 

 

後半に入りスペインはサラビアに替えてダニ・オルモを投入。

すると47分にはカウンターからモラタのラストパスを受けたオルモにいきなり決定機がやってきますがシュートはGK正面.。(そもそも前のプレーでオフサイドでしたが)

 

ここまでは耐える時間が続いたスイスも56分にコーナーからフェラン・トーレスのマークを外したザカリアのヘディング、64分にはこの試合スイス側のキーマンだと個人的に考えていたシュテフェン・ツバーのドリブルからビッグチャンスが生まれますが、ウナイ・シモンの好セーブで得点とはならず。

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開始から飛ばしていた事もあり、そろそろ運動量に陰りが出てくるのではないかなどと考えていた68分に再びスコアが動きます。

フロイラーがハーフフェーライン付近でブスケツからボールを奪うとそのままカウンターに移行し、DF裏へのパスにラポルトとパウ・トーレスが重なって再びボールはフロイラーの足元へ。最後はシャキリアスピリクエタの股を抜くファーポストへの右足シュートでスイスが同点に追いつきます。

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試合をイーブンに戻した事で活気づくスイスベンチとサポーター。

しかしながらその表情を一変させるプレーは77分でした。

レモ・フロイラーがスピードに乗った状態でジェラール・モレノへ結果的には足裏を見せる形でタックルしてしまい、主審マイケル・オリバーは迷うことなくレッドカードを提示。

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少し厳しいかなとも思いますが当たり所によってはスウェーデン-ウクライナ戦のダニエルソンのタックルのようになっていてもおかしくなかったので致し方なし。

 タックルを食らったウクライナ代表のアルテム・ベセディンは靭帯損傷と大腿骨骨折で全治6か月の重傷。

 

 

今回のケースではモレノに怪我がなかったのでそれは本当に幸いでした。

 

1人多い状況となったスペインですが決定的なチャンスをそれほど生み出せずに試合はそのまま延長戦へ突入。

 

 

延長:ヤン・ゾマーに神が宿る

 

まずは92分。

ハーフコートマッチ状態のスペインはペドリからジョルディ・アルバにスルーパス⇒アルバのクロスでジェラール・モレノにゴールエリア内の決定機が訪れるも球足の速いボールに合わせる事が出来ずシュートは枠外。

99分のスペインは右サイドでのポゼッションからボックス内へ侵入しダニ・オルモの折り返しにマルコス・ジョレンテのシュートもアカンジがシュートブロック。

 

101分にはファウル後のリスタートからブスケツのロングパスで裏に抜けたオヤルサバルとモレノ。最後はモレノが近距離からボレーを放ちますがゾマーは人間業とは思えない反応でこれを防ぎ、103分にもオヤルサバルの右45度からの左足シュートも横っ飛びでセービング。

 

 

延長前半と後半の間の僅かな小休憩の間にスイスはジャカが円陣の中心に入り味方を鼓舞する場面も見られ、この頃になると中立のフットボールファンの心はかなり彼ら寄りに傾いていたのではないでしょうか。

 

延長後半に入ってもスペインがシュートを打てばスイスのDF、そしてゾマーが悉くこれをブロックするという応酬が続き、ヤン・ゾマーは何と延長前後半だけで8回のシュートセーブを記録。

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スペインは計19本ものシュートを記録していますが神がかったGKの活躍に阻まれゴールネットを揺らす事は出来ず1人少ない相手を制すことが出来ないまま勝負はPK戦へ。

 

 

PK戦:両GK冴えわたり決着スコアは3-2

 

PK戦は先攻が有利である事は広く知られていますが、順番はスペイン→スイスとなりました。この不公平を無くす為にABBA方式を取る大会も増えていますがEUROはABAB……の通常通りの方式なので正直これは今後改善して欲しいところ。

 

これまでの流れからすればノリに乗っているヤン・ゾマーのスイスが有利と考えられますが、彼らは今大会既に1度PK戦を戦っているのでキッカー心理から言えば不安要素もあります。

 

 

 

スペイン1人目のキッカー セルヒオ・ブスケツのシュートはポストに嫌われ枠外。

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スイス1人目はフランス戦同様ガヴラノビッチが担当。コースも同じところにしっかりと強いキックを決めてスイスがリードを奪います。

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スペイン2人目 ダニ・オルモは右利きの選手にとっては一番の狙いどころであるゴール左上の完璧なコース。

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スイス2人目 ファビアン・シェアは左右に大きく身体を動かすウナイ・シモンに気を取られ、最後はキック直前にわざと片側を空けてコースを誘導したシモンの狙い通り左下へのキックでセーブされます。

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これはキーパーが心理戦に持ち込んでコースを限定した素晴らしいプレーだと思う。

 

 

イーブンに戻したスペインですがPKを見越して延長後半にペドリと交代で投入されたロドリのキックはゾマーがセーブし再びスイス有利の状況へ。

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大事なところで回ってきたスイス3人目のマヌエル・アカンジはフランス戦と同じようにGKのタイミングを外そうとしますが今度は完璧に狙いを読まれてしまいこちらも失敗

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スペイン4人目はポーランド戦で流れの中のPKを失敗しているジェラール・モレノ

汚名返上のキックは左利きの彼からすれば一番の目標である右の角へ見事吸い込まれて行き両チームで続いていた連続失敗を3でストップ。

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スイス4人目 ルベン・バルガスはチームの前2人がいずれも左下へのシュートを止められている事からゴール上部への強いキックを試みますが弾道が上がり過ぎてしまい痛恨の失敗。

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累計スコアが2vs1となった事でここで決めれば勝利が決まる大一番のキッカーはPKの名手ミケル・オヤルサバル。

自信の程が伺い知れる右下への強く正確なキックでゾマーの裏をかいて見事これを決めきります。

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ベスト8最初の試合は1vs1(PK:3vs1)でスペインの勝ち抜けが決定

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動画ハイライト

 

 

ゴール⚽8分:オウンゴール(マヌエル・アカンジ)
68分:ゼルダン・シャキリ(👟レモ・フロイラー)

 

 

選手交代

スイス

23分 in:R.バルガス out:エンボロ

81分 in:D.ソウ out:シャキリ
82分 in:ガヴラノビッチ out:セフェロビッチ

90+2分 in:ファスナハト out:ツバー

100分 in:F.シェア、エンバブ out:ザカリア、ヴィドマー

 

スペイン

46分 in:ダニ・オルモ out:サラビア

54分 in:G.モレノ out:モラタ

90分 in:オヤルサバル out:フェラン・トーレス
91分 in:M.ジョレンテ out:コケ

113分 in:チアゴ out:パウ・トーレス

119分 in:ロドリ out:ペドリ

 

 

データ

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スペインは77分のフロイラー退場後からは一方的な攻勢が続き、ポゼッション66%、パス1000本超えという結果になりましたが試合のスコアは1vs1のドロー。

 

今大会の彼らはゴール期待値との乖離が大きく、fbrefのデータでは5試合でxG14.5、90分辺りのxG2.54はいずれも出場チーム中トップの値ですが実際には5試合9G、90分辺り1.58Gと1試合換算では期待値から1点少ないという具合でチャンスクリエイトまでは優秀なのですがフィニッシュが伴っていません。

 

 

一方、惜しくも敗退となったスイスは何と言ってもヤン・ゾマーの活躍が光りました。

試合を通じてセーブ10回、その内9本がボックス内からのシュートで失点はボックス外からのシュートのディフレクションによるものなのでゴール期待値の上がる近距離からのシュートは全て防いだ事になります。

 

正に伝説的なパフォーマンスと呼ぶにふさわしいプレーでした。

将来、今大会のスイス代表について思い出話をする際には必ず彼の名前が人々の口から出ることになるのは間違いない。

 

 

【 #MUFC 】サンチョ加入にワクワクが止まらない😍 来季のスカッドについて妄想を膨らませてみる回

2020夏の移籍ウィンドウでは常に合意間近と報道されながらも結局獲得には至らなかった事で、一部のファンやサポーターの間ではエゼキエル・ガライ、或いはニコラス・ガイタンに続く噂止まりで獲得に至らない毎年の風物詩になってしまうのではないかという不安も駆け巡っていましたが、日本時間7月1日早朝、Fabrizio Romano(@FabrizioRomano)やDavid Ornstein(@David_Ornstein)といった移籍情報における報道Tierの高い記者から一斉に合意のアナウンスがツイートされています。

 

 

 

そして1日夜にはクラブ公式から正式にサンチョ獲得についてドルトムントと基本合意に至った事が発表され、私も含めてマンチェスター・ユナイテッドのファン・サポーターは正に狂喜乱舞😎

 

 

 

ブルーノ・フェルナンデスを中心として左にマーカス・ラッシュフォード或いはポール・ポグバ、右にジェイドン・サンチョという布陣はチャンスメイク得点力共にプレミアリーグひいてはフットボール界全体でもトップクラスの力を有しているであろう事は語るまでもありませんが、今回は実際にサンチョがどのような起用法でユナイテッドでのファーストシーズンを過ごす事になるのかについて他のプレイヤーの状況なども考慮しつつ考えてみたいと思います。

 
  

 

 

 

シーズン序盤:ラッシュフォード手術ならばLWでの起用も

 

マーカス・ラッシュフォードがEURO2020終了後に肩の手術を行う可能性があり、ポール・ポグバも契約期間残り1年という事で今後どのような動きがあるかは未だに不透明な状態。

 

LWの候補はこの2人が基本になると考えられますが仮に2名とも起用できない状況に陥った場合にはサンチョ自身が最も得意としている同ポジションでの一時的なスライドも十二分に考えられます。

 

Smarterscoutのスタッツを見てもサンチョが(左右問わず高いクオリティを有しているとはいえ、敢えて言うならば)左サイドを最も得意にしている事は一目瞭然ですので昨季の課題の1つであったラッシュフォードかブルーノ・フェルナンデスのどちらかが欠けている試合での得点力不足という問題の解決策になり得ます。

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▼レーダーチャート

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(参照:https://smarterscout.com/search/players/60deba3a657a0e201d64c482 )

 

 

中盤以降:RWが基本線。クオリティを落とさずハイレベルなターンオーバー が可能に

 

上記のレーダーチャートから見ても分かる通り、サンチョは今のチームにはいない曲線タイプのプレイヤー。更にドリブルの指標だけを見るならばRW>LWとなっています。

 

アーロン・ワン=ビサカとメイソン・グリーンウッドのペアが多かったマンチェスター・ユナイテッド右サイドの攻撃力不足という問題に関しても独力でフィニッシュまで持っていけるサンチョはこれ以上ない解決策。RWでプレーする際はハーフスペースでのプレーを好む傾向にあるのでタッチライン際を上下動するワン=ビサカとの相性もスタッツから見る限りは良好。

 

更にいえば、未だイングランド代表に一度も招集されていないワン=ビサカにとっても将来のスリーライオンズの核になるであろうサンチョとのペアが確立すればマグワイアルーク・ショーとの連携面も含めて代表常連メンバーに成れる可能性が大きく増すのではないでしょうか。

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仮想スカッド(2021-07-02時点)

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*6月いっぱいで契約期間が満了した選手の中でもリー・グラント、フアン・マタの2名に関しては来季の契約を考えているという報道がされていますが、今のところは何も新情報が入っていないので今回はスカッドに加えていません。
 

 サンチョの移籍金支払いは5年分割と報道されており、それが事実ならばまだ今夏の予算は残っているでしょうから今後ラファエル・ヴァランやデクラン・ライスを筆頭に名前の挙がる選手のうち何人かを加える可能性もあります。

一方でアクセル・トゥアンゼベ、ブランドン・ウィリアムズにはドライローンでの放出の噂がある状況。ジェシー・リンガードとディオゴ・ダロトはレンタル先への完全移籍も考えられるのであくまで現状のラインナップ。

 

 

*BREAKING!!

記事を出してから丁度1時間後の7月2日19:00にフアン・マタとの2022年6月までの契約延長が発表されました👍

 昨季もチャンスメイク面では短い出場時間ながら90分換算でブルーノに次ぐスタッツを記録していたので、彼の残留は非常に心強い。

来季もよろしくお願いします😊

 

 

 おまけ:ユナイテッドはNutmeg Kingの座を不動に

 

▼20‐21Nutmeg(股抜き)ランキングについて

 

上位5人

1位⇒マーカス・ラッシュフォード:21回

2位⇒ネイマール:18回

3位⇒ジェイドン・サンチョ:16回

4位⇒キリアン・エンバペ:15回

5位⇒ピオトル・ジエリンスキ:13回

 (data:Football Statistics and History | FBref.com)

 

 

ラッシュフォードは2季連続プレミアリーグのNutmeg成功数トップ。 

そこに昨季欧州5大リーグで3番目の数値を記録したサンチョが加入するということで、来季のユナイテッドはワールドクラスのアタッカー2人を抱えるパリ・サンジェルマンを凌ぐ世界一の股抜き巧者のチームへと昇り詰める事が期待されます。

 

とはいえ、股抜き固執する余り1on1のドリブルで正対するディフェンダーにあっさりボールを奪われてしまうのは困るのでこの記録に関してはシーズン終了後に振り返るくらいがちょうどいい塩梅かもしれません。

【 #EURO2020 】ドイツに完勝!! 新たなステージに足を踏み入れた #ThreeLions

*EURO2020 ラウンド16 イングランドvsドイツ戦の記事です。

 

 

トーナメントに入り強豪国の敗戦もちらほらと出始めてきた中、現状無失点を継続しているのはスリーライオンズのみ。

攻撃力という点ではあれだけのタレントを有しながらグループステージ3試合で僅か2ゴールと些か不満を感じるところではありますが、ガレス・サウスゲート監督の言う"トーナメント・マネジメント"が一体どれだけの効果をチームにもたらすのかに注目しつつ、ラウンド16全体でも屈指の強敵同士の対決を見ていこうと思っています。

 

イングランド代表のグループステージ3試合

 

 

 

 

スタメン

 

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ベンチ入りイングランド:7グリーリッシュ、8J.ヘンダーソン、11ラッシュフォード、13ラムズデール、15ミングス、16コーディ、17サンチョ、19マウント、20フォーデン、23ジョンストン、24R.ジェームズ、26ベリンガム

ドイツ:3ハルステンベルク、9フォラント、10ニャブリ、12レノ、14ムシアラ、15ズーレ、17ノイハウス、19サネ、21ギュンドアン、22トラップ、23E.ジャン、24コッホ

 

攻撃時には5つのレーンにアタッカーを配置するような形になるドイツの3バックに対しポルトガルと同じ轍は踏むまいとスリーライオンズは実質ミラーの3-4-3で対抗。

ここまで僅か6分少々の出場に留まっているジェイドン・サンチョに関してはブンデスリーガバイエルン勢を始めとするドイツ代表メンバーの多くと対戦経験がある為、この試合では先発起用もあるのではないかと考えられていましたがRWにはチェコ戦同様ブカヨ・サカが入ります。

 

また、WBを採用するならば左はベン・チルウェルがスターターになるのではないかとも思いましたが、ルーク・ショーが3戦連続スタメンで完全にサウスゲートの信頼を掴んだようです。(内容を見れば当然ではあるが)

 

 

ドイツはここまでのグループステージ3試合同様3-4-2-1ですが、守備強度を意識したのかトニ・クロースの相方にはイルカイ・ギュンドアンではなくBtoBタイプのレオン・ゴレツカを起用。

 

カギになるのはイングランド代表のチャンスメイクの起点となっているルーク・ショーとマッチアップするヨシュア・キミッヒ。

彼自身もマンシャフトの攻撃の核を担うプレイヤーなので守備は勿論攻撃でも圧をかけて対面するショーを守備に奔走させて仕事をさせない事が求められます。

 

また、ニャブリに代わり1トップのスタメンに入ったティモ・ヴェルナーは大一番で得点を挙げて自身に纏わりつくゴール欠乏症の印象を払拭したい。

 

 

試合内容

 

前半:両チーム一度ずつ決定機があったが得点は生まれず

 

開始10分はドイツが主導権を握る展開でスタート。

デクラン・ライスが少し不安定で3CBもビルドアップ時の距離感が近すぎる場面も時折見られました。

 

8分にはミュラーがセンターサークル手前で潰れながらも前線に駆け上がるゴレツカにスルーパスを通しカウンターになりますがこれはライスがカードと引き換えにボックス内への侵入を阻止。

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イングランドは守備時5-4-1の形を取ることが多く、立ち上がりこそドイツに手こずりますがその後はサカのライン際での仕掛けやマグワイアの持ち上がり等でドイツにプレッシャーをかける時間が増えていきます。

 

16分にはラヒーム・スターリングミドルシュートゴールマウスに飛びますが流石はマヌエル・ノイアーというセーブに阻まれコーナーへ逃れます。

直後のCKでは4人の選手が中央に固まりそこから一斉に分散する動きで最後はマグワイアがフリーでヘディングシュート。

イングランド代表がサウスゲート就任後セットプレーに重きを置いているのは有名な話ですが、その成果が出たようなサインプレーでしたね。

この後もマグワイアには幾度かセットプレーからヘディングのチャンスがあり、ゴールネットを揺らすには至らなかったものの確実にドイツの脅威にはなっていたはず。

 

24分にはここまで比較的攻撃参加を抑え目にしていたルーク・ショーが後ろにDFを背負ってスターリングの縦パスを受けると、ターンについていけなかったマティアス・ギンターのイエローカードを誘い好位置でFKを獲得。

 

ドイツと対戦した国がいずれも苦戦していたカイ・ハヴァーツの広いプレーエリアとスペースへの動きにもイングランドマグワイア中心に適切に対処出来ており、流石は今大会ここまで唯一の無失点チームといったところ。

 

32分にはハーフフェーでボールを奪取したドイツのカウンターからティモ・ヴェルナーに汚名返上の機会がもたらされますが股抜き狙いのグラウンダーはピックフォードの好セーブに阻まれます。

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AT1分にはミュラーのバックパスが短くなったところからイングランドにも決定機が生まれますが、ディフレクションからフリーでボールを貰う形になったハリー・ケインはダイレクトシュートではなくトラップを選択し、ややボールが流れてしまったところをフンメルスが素晴らしいクリアでドイツはこの危機を脱します。 

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前半はスコアレスで折り返し。

内容としてはイングランドがやや優勢だったと思いますがデクラン・ライス-カルバン・フィリップスのセントラル2枚がイエローカードを貰ってしまった事もあり、後半はドイツにもまだまだ勝機がある展開。

 

イングランドペースで試合が進んだ一因としてはトリッピアーのポジショニングが考えられます。

彼が常にサイドハーフのような高い位置を取り、右CBのカイル・ウォーカーも時折攻撃参加してくるのでドイツの左WBロビン・ゴセンスはほぼ4バックのLBのような動きを強いられて持ち前の攻撃力を発揮する機会は殆どありませんでした。

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後半:ルーク・ショーの独壇場、途中起用グリーリッシュも決定的仕事を果たす

 

前半同様後半も立ち上がりのチャンスはドイツ。

中央を崩して一度左のゴセンスへボールを預けるとクロスのこぼれ球にハヴァーツのボレーシュート

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前半の課題として挙げたゴセンスもこのプレーでは最前線に顔を出し、ドイツとしてはようやく"らしい"攻撃。

 

その後50分台後半から10分程度は両チームシュートが無くやや手詰まり感を覚える時間が続きドイツは68分にヴェルナー🔁ニャブリ、イングランドも69分にサカ🔁グリーリッシュと攻撃のカードを切ります。

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ライン際から斜めに侵入するドリブルへの意識が強すぎて周りの動きを活用できない事も多かったスターリングからハーフスペースに陣取って周りを活用するグリーリッシュにLWが変わった事もあり、ここからは左サイド中心にイングランドのビッグチャンスが続きます。

 

 

75分、RWに移ったスターリングからケイン→グリーリッシュと前線3名のトライアングルでバイタルエリアを崩したイングランド

最後はグリーリッシュのパスを受けたルーク・ショーからDFとGKの間に入る完璧なラストパスが供給されてスターリングが先制点をゲット。

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批判も多いスターリングですが、利き足サイドに配置転換された事で一時的にプレー選択がシンプルになってより脅威になるユナイテッドでのラッシュフォード現象でこの得点は彼のドリブル突破が非常に大きな役割を果たしました。

 

ルーク・ショーのクロスはただただ美しい。

 

 

リードされたドイツも長年に渡ってイングランドの壁として君臨したプライドがあり、77分にはフンメルスロングフィードからキミッヒがボックス手前でマグワイアのイエローを誘いFKを獲得。

更に81分にはスターリングの余りにも不用意過ぎるパスミスからトーマス・ミュラーにこの試合最大の決定機が生まれますが、EUROで未だに得点を挙げたことのない彼のシュートは枠の外に消えドイツは追いつくことが出来ず。

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そして86分にはそんなマンシャフトに追い打ちをかけるように86分にはフンメルス→ニャブリへのパスをカットしたルーク・ショーがそのまま無人の中央を持ち上がり、今度は一点目とは逆にショー→グリーリッシュそして最後は折り返しにケインが頭で押し込んでイングランドの突破を決定づける2点目が生まれています。

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ショーは対面のキミッヒを抑え、更に2得点に絡む見事な活躍。

2点目のグリーリッシュへのパスもワンテンポ遅らせてフンメルスに足を出させて彼に戻る時間を与えなかった事が効いていたのでお見事としか言いようがない。

 

2点差となったドイツはパワープレイに持ち込みますが単純なハイボールマグワイアの前に余りにも無力。

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試合はイングランドが2vs0で勝利。

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因みにスリーライオンズはEUROが現行のフォーマットになってからトーナメントでの90分の勝利はこれが初めてのこと。

 

 

更に国際大会でドイツに勝利したのもEURO2000のグループステージ以来21年ぶり、トーナメントでは何とサー・ボビー・チャールトンらの活躍で優勝を果たした1966年の母国開催W杯まで遡るというのですから本当にイングランドにとっては歴史の針を進める大きな1勝でした。

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選手交代

イングランド

69分 in:グリーリッシュ out:サカ

88分 in:J.ヘンダーソン out:ライス

 

ドイツ

68分 in:ニャブリ out:ヴェルナー

87分 in:E.ジャン、サネ out:ギンター、ゴセンス

90+2分 in:ムシアラ out:ミュラー

 

 

データ

 

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シュート数はドイツが4本上回り、xGもSofascoreのデータではイングランド1.35-ドイツ1.36と非常に拮抗した結果となりました。

 

勝負を分けることになったのはビッグチャンスを決めたか否かという点。

ミュラーは前半ATのイングランドの決定機を誘発するパスミス、後半にはピックフォードとの1vs1を決めきれないなど敗戦の大きな要因になってしまいました。

 

ワールドカップでは通算10得点と決してビッグマッチに弱い選手ではなく、寧ろ勝負強さが目立つ方なのですが不思議な事にEUROでは3大会で1点も挙げられぬまま大会を去る事に。年齢的にもこれがおそらく最後のEUROだったでしょうから本人にとっては非常に悔しい結末。

 

 

イングランドではハリー・マグワイアルーク・ショーマンチェスター・ユナイテッドでも攻守両面で多大な貢献を見せるペアがこの試合でもMoMに最も相応しい活躍でチームの勝利に貢献。

 

 

Star of the Matchはマグワイアが受賞しましたが、個人的にはこのトロフィーを2つに分けたいくらいにショーのパフォーマンスにも賛辞を送りたい。

 

【 #EURO2020 】ラウンド16一番のアップセット!!PK戦にまでもつれた激戦を制したのはスイス

*EURO2020 ラウンド16 フランスvsスイス戦の記事です。

 

 

死のグループと評されたグループFを1勝2分けと負ける事無く勝ち抜いた現世界王者フランス。

その原動力となっているのは"セックステープ恐喝事件"からおよそ6年ぶりに代表復帰を果たしたカリム・ベンゼマ

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一方のスイスは今大会でもゼルダン・シャキリの魔法が健在。

グループステージ3試合目、突破には絶対に勝利が必要だったトルコ戦では自ら2ゴールを奪う大活躍でStar of the Match(MoM)を獲得しチームの3vs1での勝利に貢献。

 

 

この両チームは国際大会で過去4度の対戦があり、戦績はフランス2勝2分けとスイスにとってはタフなカードではありますが前回対戦のEURO2016 グループA 第3節ではフランスはメンバーを落としていたとは言えスコアレスに持ち込んでいるので決して可能性が0なマッチアップではありません。

 

 

 

スタメン

 

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◆ベンチ入り◆ フランス:8レマル、9ジルー、12トリッソ、15ズマ、16マンダンダ、17ムサ・シソコ、20コマン、21リュカ・エルナンデス、22ベン・イェデル、23メニャン、24デュボア、26M.テュラム

スイス:2エンバブ、6ザカリア、11R.バルガス、12ムボゴ、15D.ソウ、16ファスナハト、17ベニト、18メーメディ、19ガヴラノビッチ、20E.フェルナンデス、21コベル、22F.シェア

 

フランスはここまで3バックをメインに戦ってきたスイスに合わせるような形で今大会初の3バックスタート。

そして今大会は点取り屋ではなく潤滑油の役目を担っているグリーズマンを中盤に落として攻撃は前の2枚とポグバのパスに託すような形でしょうか。

 

不安視されているのはCB中央のクレマン・ラングレのパフォーマンス。

フランス国内では彼を使うならば直前にスペイン代表へ鞍替えしたアイメリク・ラポルトの方が相応しかったのではないかという声も。

 

 

一方、スイスは第3戦と同じラインナップ。

そのトルコ戦でもサイドからキレのあるドリブル突破を見せたシュテフェン・ツバーにはこの試合でもヴァラン-パヴァールのフランス右サイドを翻弄するようなプレーを期待したいところ。

 

ここまでは不甲斐ないプレーの多いレモ・フロイラーもグリーズマンやポグバに対するキーマンになり得るので名誉挽回の試合として欲しいですね。

 

 

試合内容

 

前半:スイス思い通り、フランスは右サイド機能不全

 

序盤はフランスがエンバペ、スイスはエンボロと身体能力に優れたアタッカーにパスを集めカウンターからの得点を狙いながらお互いに牽制しあうような入りでした。

 

グリーズマンのポジションに関してはトップ下に入るのではないかという予想も多かったですが完全に左IHのような位置取りで、慣れない起用法でも全くもってそれを感じさせない彼の戦術理解の高さが垣間見えた試合でもあります。

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試合が動いたのは15分。

スイスはFKリスタートからショートパスで中央を崩すと、一旦左サイドのツバーへ展開してツバーのふんわりとしたクロスにセフェロビッチがヘディングシュートを沈めて先制に成功!!

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正直に言えば何でもないクロスだったのですがクレマン・ラングレは全く競り合う事が出来ずほぼノンプレッシャーでシュートを打たせてしまったので彼の失点と言われても仕方のない対応でした。

 

 

フランスは元来ポグバの守備面での脆さをカンテが1.5人分動き回ってカバーするような戦い方だったのですが、この日はカンテもやや疲労が溜まっていたのか普段よりは動きが重く、それに伴いフランスの守備はほぼ毎度のように左サイドのツバーかリカルド・ロドリゲスをフリーにしてしまう状況。

 

前を向いた状態でボールを受ける事が多かったツバーは積極的にドリブルを仕掛けて30分にはラファエル・ヴァランを翻弄しイエローカードを引き出すなどこの日も前半から期待通りの活躍。

 

 

前半はスイス1点リードで折り返し。

フランスとしては右サイドの守備に加え、攻撃面でもサイドにドリブラーが居なかったのでブロックを崩す手段が見当たらずただブロックの外側を回すだけの時間も多かったので修正は必須。

 

 

後半:ポール・ポグバの長短全てが凝縮された終盤15分

 

フランスはラングレに替えてアタッカーのキングスレイ・コマンを投入。

デシャン監督もやはりドリブラーを入れて攻撃の圧力を高める判断に至り、コマンは左サイド、そしてCBを一枚減らしたのでラビオをLBにスライドさせて攻撃時4-3-3、守備時はグリーズマンが右に入って4-4-2のような形へ変更しています。

 

ただ、ベンゼマとエンバペはややプレーエリアが被っているので右サイドの攻撃力不足という問題は解消されないまま。(それでもこの後あれだけ点を取るフランスの個人能力の高さには脱帽しますが)

 

 

後半も最初に好機を作ったのはスイスで、50分には縦のワンツーでヴィドマーとエンボロが右サイドを突破し、最後はエンボロの折り返しから決定機になりかけるチャンス。

 

52分にはカウンターからツバーがタッチライン際を猛スピードのドリブルで運び、ボックス内でパヴァールのファウルを誘いPKを獲得。

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PKキッカーはリカルド・ロドリゲス

ゆったりとした助走からゴール左下を狙いますがウーゴ・ロリスが完璧にコースを読んでストップし、スイスは追加点の絶好機を生かせません。

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すると、57分に敵陣でボールを奪ったフランスはショートカウンターから最後はカリム・ベンゼマのまるで足にボールが吸い付いているようなトラップから同点弾。

 

続く59分にはグリーズマンとエンバペのワンツーからボックス内を崩し最後はグリーズマンの浮き球パスにベンゼマが頭で合わせてあっという間の逆転劇。

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PK失敗から怒涛の展開で一瞬にしてリードを失ったスイスに更なる絶望が加わったのは75分。

ポール・ポグバのゲームの世界から飛び出てきたかのような完璧な軌道のカーブシュートで痛恨の3失点目を喫します。

大会ベストゴール最有力のゴラッソ。ユナイテッドでもこういう得点を見せて😉 

 

 

意気消沈かと思われたスイスですがまだ炎は消えていません。

81分、フロイラーの縦パスをキッカケに最後は交代で入ったケビン・エンバブのピ温ポイントクロスからセフェロビッチがこの試合2ゴール目。

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個人技からリードを奪ったものの前半から続く守備構築の甘さは継続しているレ・ブルー。この失点もあまりにも簡単に中央の縦パスを許した事が要因なので万全を期するならばポグバ或いはエンバペを下げて守りを固めるのではないかと思っていましたが……

 

85分のスイス。

リカルド・ロドリゲスの右足シュートが意図せずラストパスになり、73分からシャキリに代わりピッチに入っていたマリオ・カヴラノビッチがゴールネットを揺らすもオフサイド

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追撃もここまでかと思いましたが90分にはポグバが時折見せるプレッシャーのかかっている局面での不要なボールキープが裏目に出てボールを奪取され、カウンターからガヴラノビッチが今度こそ完璧なシュートをゴール左下隅に沈めて劇的な同点ゴール!!

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ジャカのワンテンポ遅らせたラストパスも見事。

 

 

後半の展開を見ると正にポグバの良いところと悪いところが全て出たような終盤。

  • 3点目のゴラッソやグループステージでのアシストのようなボールを持った際の信じられないようなスキル
  • 守備時のムラ、ビルドアップやミドルサードの局面での不用意なプレー選択。

 

AT4分にはムサ・シソコの折り返しからコマンのボレーシュートがポスト直撃もゴールを奪う事は出来ず、フランスは2点リードを追いつかれる最悪の展開で延長戦突入。

 

 

延長前後半・PK戦

 

スペインに続くW杯⇒EUROの国際大会連続制覇を狙うフランスは95分に左サイドを抉ったコマンのクロスからパヴァールのボレー。スイスは絶体絶命のピンチでしたがヤン・ゾマーが右手一本でこれを弾くビッグセーブで失点を阻止します。

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その後はフランスの猛攻が続きますが90分を戦った疲れもあってかシュートは悉く枠外へ消えていき、110分のエンバペの決定機も身体を捻り切れず。

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試合は延長15分×2でも決着つかずに今大会初のPK戦へ。

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スイス1人目ガヴラノビッチ、フランス1人目ポグバはいずれも左上に強烈なキックを決めて上々の滑り出し。

その後も両チーム4人目までは全員成功で勝負は5人目のキッカーに託されます。

 

スイス5人目アドミル・メーメディはロリスの逆をつくインサイドキックでゴール右下へ完璧なシュート。

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外せば敗退のプレッシャーがかかる後攻フランス5人目のキッカーはキリアン・エンバペ。比較的短い助走を取って蹴ったボールはゴール左中間の甘いコースへ飛んでしまい、それまでに2回フランスキッカーのコースを読んでいたヤン・ゾマーが3度目の正直となるビッグセーブでスイスに歓喜をもたらしました。

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この大一番で国際大会対フランス初勝利は素晴らしい!!

本当におめでとうございます

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動画ハイライト

 

 

ゴール⚽15分:ハリス・セフェロビッチ(👟シュテフェン・ツバー)
57分:カリム・ベンゼマ(👟キリアン・エンバペ)
59分:カリム・ベンゼマ
75分:ポール・ポグバ
81分:ハリス・セフェロビッチ(👟ケビン・エンバブ)
90分:マリオ・カヴラノビッチ(👟グラニト・ジャカ)

 

選手交代

フランス

46分 in:コマン out:ラングレ

88分 in:ムサ・シソコ out:グリーズマン

94分 in:ジルー out:ベンゼマ

11分 in:M.テュラム out:コマン

 

スイス

73分 in:ガヴラノビッチ、エンバブ out:シャキリ、ヴィドマー

79分 in:ファスナハト、R.バルガス out:ツバー、エンボロ

87分 in:メーメディ out:R.ロドリゲス

97分 in:F.シェア out:セフェロビッチ

 

 

データ

 

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試合は120分間に及んだこともあり、多くのスタッツで数字が増えていますがシュート数の比率は2:1。

SofascoreのxGでもフランス3.37-スイス1.93とレ・ブルー優勢。

 

フランスとしては完全に計画ミスとなった試合で、2点リードとなった75分の段階から守備を固める選手交代を行っていればこうはなっていなかったのではと思わずにはいられません。

 

 

また、この試合は両チーム合わせて7枚のイエローカードが飛ぶ荒れ気味の展開になりましたが、この影響は勝ち上がったスイスにも大きく及んでおり、準々決勝では中盤の要ジャカが累積2枚により出場停止。

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劣勢の場面が多かったスイスにとって、パス一本で局面を打破できる彼の存在は唯一無二のものだったので正直かなりの痛手です。

 

 

試合後にはポグバとラビオが試合中に口論を続けていた、更に両者の家族間でも言い争いが起きていたなどと早速ゴシップが乱立していますが、この試合は誰か1人ではなくチーム全体での意識共有の無さ、そして展開に応じたプレーや選手交代の適切な選択を取れなかったことなど多くの要素が積もった結果なので誰か1人に責任を追及させても改善する事は無いでしょう。

 

占いでメンバーを決めていた事でも知られるレイモン・ドメネク時代の規律皆無、何もかもがジダン頼りだったチームの二の舞にはならないことを祈ります。

 

 

【 #EURO2020 】圧倒的に試合を支配しながら枠内シュート1本に泣いたポルトガル

*EURO2020 ラウンド16 ベルギーvsポルトガル戦の記事です。

 

 

ポルトガルのグループステージ3試合はこちら

 

 

メンバー選考や選手の役割に疑問点が多く、前評判の高さと比較するとやや物足りなさを覚えるグループステージ3試合だったポルトガル

トーナメント初戦の相手はグループステージ全勝で高い攻撃力を示してきたベルギー代表です。

ドイツ戦でWBに対し全くもって有効打を打てなかった経緯を踏まえると同じく3-4-2-1を採用する赤い悪魔に対して不安要素が大きいですが、クリスティアーノ・ロナウドの代表通算記録更新、そしてEURO連覇の為にもここは負けられない試合。

 

 

 

 

スタメン

 

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ベンチ入りベルギー:4ボヤタ、11カラスコ、12ミニョレ、13M.セルス、14メルテンス、18デナイエル、19デンドンケル、20ベンテケ、23バチュアイ、24トロサール、25ドク、26プラート

ポルトガル:2セメド、6フォンテ、9アンドレ・シウバ、11ブルーノ、12A.ロペス、13D.ペレイラ、18ネベス、19P.ゴンサウヴェス、22ラファ、23フェリックス、24S.オリベイラ、25N.メンデス

 

ベルギーは中央にボヤタ、デナイエルではなくヴィッセル神戸所属でEURO2020本大会唯一のJリーガー トーマス・フェルマーレンを起用。

彼はアーセナルバルサロナウドとの対戦経験が多く、経験という意味で不安要素のあるボヤタ&デナイエルのマン・シティアカデミー組よりもベテランのリーダーシップを選択した形でしょうか。

 

 

ポルトガルはフランス戦で頭に衝撃を受けたダニーロを控えに置き、DMにはパリーニャが先発。また。ネルソン・セメドも同試合で足を負傷し万全ではないのでダロトがスタートのチャンスを得ています。

 

個人的な意見を言えばジョアン・モウチーニョではなくブルーノ・フェルナンデス、ジョタに替えてペドロ・ゴンサウヴェス或いはジョアン・フェリックスを起用した方が効果的だと思いますがベルギーのラインナップとの噛み合わせは悪くないので主導権を握るのはこちら側になりそうな予感。

 

 

試合内容

 

前半:ゴラッソ1発でベルギーは幸運を掴む

 

ポルトガルは前線が5枚になるこの3バックへの対応として守備時はベルナルド・シウバとクリスティアーノ・ロナウドが前2枚、ジョタがバックスに吸収されるような形で5-3-2のブロック。

 

6分にはレナト・サンチェスの反転ターンからカウンターが始動し、彼の持ち運びからディオゴ・ジョタにこの試合最初の決定機が訪れますが今大会精彩を欠く場面の多いこのアタッカーのシュートは明後日の方向に飛んでいきます。

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チャンスの後にはピンチが続く、という事でここからしばらくはベルギー優勢の時間となって10分にはルカクポストプレーからエデン・アザールのシュートがポルトガルに襲い掛かります。

ベルギーは守備時に5-2ブロックを形成しますがE.アザールとデ・ブライネはやや前残りで守備はパスコースを限定する程度にとどまっていたので強度は高くなかった。

 

 

フル代表初スタメンがいきなりこのビッグマッチとなったディオゴ・ダロトは持ち前の推進力は対面のアザール兄弟を警戒してか抑え目でしたが斜めの楔パスから幾度かチャンスの起点を生むなどまずまずのプレーでセメド不在の穴は特に感じさせない前半でした。

 

24分にはダロト→ジョタのパスがキッカケで得た右サイドゴールから約30mのFKでロナウドの低弾道シュートが枠内へ。クルトワのナイスセーブで阻まれるものの、久々にロナウドプレースキックが機能したのでこの時点ではポルトガルに流れが来ているようにも感じられました。

 しかし、30分にはルイ・パトリシオのキックミスからルカクのカウンターで危機に陥るなど守護神のパフォーマンスに不安要素を抱くプレーがあり、ある意味ではこれがこの後の展開を示唆していたのかもしれません。

 

ベルギー1つ目のチャンスはポルトガルFKのカウンターから。

フェルマーレンが頭でクリアしそこからムニエ→ルカクと早いテンポでボールが前に進みルカクのフィジカル全開のドリブルからバイタルエリアまで侵入しますがパリーニャが服を後ろから引っ張ってこれを阻止。

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(何故かこのプレーはノーファウルで流されたので正直驚きましたが、ルカク体幹が強すぎて姿勢が崩れなかった故の結果かもしれない)

 

このプレー後もベルギーはボールを保持し、デ・ブライネとのワンツーからムニエがまるでリカルド・クアレスマかのようなアウトフロントのミドルシュートで一連の攻撃を終えます。

 

 

ベルギー唯一の枠内シュートかつ値千金の一撃となったプレーは42分。

ディフェンシブサードからヤン・フェルトンゲンルカクへの縦のロングボールで一気にボックス内まで進出すると、デ・ブライネ→ムニエとボールが渡り最後はムニエの横パスからトルガン・アザールのゴラッソで赤い悪魔が先制。

 

ルイ・パトリシオは少しポジショニングがニアサイドに寄り過ぎてしまい、その軌道がアウトにかかって不規則な変化をしたことは同情的要素ですが、本来彼クラスのGKならば触る事は出来たボールだったでしょう。 

フェルトンゲンにパスする前にティボー・クルトワが冷静な判断でプレスを往なした事によって生まれたチャンスでもあったので奇しくも両チームの守護神のクオリティが違いを生んだかのような一連のプレーでした。

 

 

後半:ポルトガル支配率65%、シュート15本の猛攻も最後の精度に欠く

 

開始間もない47分にはケビン・デ・ブライネがパリーニャとの軽い接触でプレー続行が難しい状態になってそのままピッチを退くアクシデント。

この2人は前半終了間際に激しい接触プレーがあったのでそちらの影響が強く残っていたのかもしれません。

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45分のプレー。ベルギーカウンターチャンスだったのでプレーは続行されたがパリーニャにはその後イエローカードが提示されています。

 

プレイメイカーを失った事でベルギーは起点を作れなくなり50分からはポルトガルが相手陣内で押し込む展開へ。

58分にはロナウドのキャリー、そしてラストパスからジョタに2度目の決定機がやってきましたがまたしてもシュートは枠外。

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3分前にブルーノ、フェリックスを投入し攻撃の枚数が増えたポルトガルはイケイケムード全開だっただけにこのミスが本当に悔やまれます。

 

55分から登場したブルーノ・フェルナンデスは35分間の出場でキーパス2回、ボールタッチ40回とチャンスメイクの貢献の高さは相変わらずでしたがメディアのスケープゴートにされてしまっているので巷では彼が悪者のように扱われているとかなんとか。

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確かにユナイテッドでの活躍からすればもっと出来るだろうという声に理解は出来ますが、彼が先発した2試合のDMはダニーロ-ウィリアン、そしてジョタはセルフィッシュでベルナルドも本調子からは程遠い状況。

流石に1人でどうこうするには限界のある状況なので、寧ろそんな状態でPK3つを含み5得点を挙げたロナウドが凄いという結論でここは一旦お開きにしたいところ。

 

 

中々ベルギーの最終ブロック、いやクルトワのの牙城を崩せずに残りは10分少々というところまで追い詰められたポルトガル

82分にはブルーノのコーナーからルベン・ディアスのパワーヘッダー、83分はフェリックスの放り込みのこぼれ球からラファエル・ゲレイロのポスト直撃シュートなど紙一重のチャンスが続きます。

 

88分にはゲレイロのバックスピンをかけたクロスをロナウドファーサイドに逸らし途中出場のアンドレ・シウバにパスが通りますがクルトワの好判断に阻まれます。

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ATのパワープレーでもこの壁を越える事は叶わず、試合はベルギーが1vs0で勝利。

試合間隔で二日のリードがあったベルギーは喉元に短剣を突き立てられているかのようなギリギリの90分間でしたが粘り強く守ってベスト8進出を決めています。

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選手交代

ベルギー

48分 in:メルテンス out:デ・ブライネ

87分 in:カラスコ out:エデン・アザール

90+5分 in:デンドンケル out:トルガン・アザール

 

ポルトガル

55分 in:ブルーノ、フェリックス out:ベルナルド・シウバ、モウチーニョ

70分 in:アンドレ・シウバ out:ジョタ

78分 in:D.ペレイラ、S.オリベイラ out:パリーニャ、レナト

 

 

データ

 

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スタッツはポルトガルの一方的なスコア。

しかしながら24本ものシュートを放ちながらもそれがゴールマウスへ飛んだのは僅か5本で1度のチャンスをモノにしたベルギーとはフィニッシュのクオリティの差が如実に表れた試合でした。

 

アクションゾーン(ピッチを3分割してそれぞれのエリアでどれくらいの割合でプレーが行われたか)を見てもベルギーのディフェンシブサード、ポルトガルにとってのアタッキングサードで34%という高い比率でプレーが行われており、ポルトガルの攻勢は明らかだったので10回やれば8~9回は勝てていたような試合内容。

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最後の崩しが弱かった理由の1つとして挙げられるのはウインガー不在。

ポルトガルと言えばどの世代にもドリブルで局面を打破できるサイドアタッカーが複数いましたが、今回のメンバーを見るとサイドでスタメン起用されているジョタ、ベルナルド・シウバはどちらも純粋なウイングではなく、フィーゴや若かりし頃のロナウドのように1人で対面DFを突破できる選手では無かったのでブロックを敷かれてスペースを埋められるとどうしても手詰まりになってしまいます。

 

そうなると悔やまれるのがペドロ・ネトの大怪我と直前に筋肉系のトラブルでチームを離脱したダニエル・ポデンセ。

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ゴンサロ・ゲデスは今大会4試合を通じてベンチ入り僅か1度と完全に構想外だったのでそもそもフェルナンド・サントス監督にはドリブラーを使う意思は無かったかもしれませんが……

 

 

ベルギーからはロナウドをほぼ完璧に封じ込めたトーマス・フェルマーレンに称賛を送りたい。

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欧州でプレーしていないので彼の招集には疑問を呈する声もありましたが、クリア5回、シュートブロックとインターセプト2回ずつ、タックル成功3回とその声をシャットアウトする完璧なパフォーマンスでした。

大会を前にベルギーCBについては私も”ボヤタやデナイエルがスタートに入る層なので些か不安である"と考えていましたが、彼のお陰でこの期間中はそれが杞憂に終わることとなりそうです。

【 #EURO2020 】チェコは対オランダ3連勝。デリフトのハンド一発退場が響く結果に

*EURO2020 ラウンド16 オランダvsチェコ戦の記事です。

 

 

オランダとチェコの対戦は過去11回、対戦成績はオランダ3勝-チェコ5勝-引き分け3回とチェコが得意にしているマッチアップ。

EURO2016予選でこの2チームが同グループになった際にはチェコが2戦2勝でこの敗戦も響いたオランイェは本戦に出場出来ずに終わり、まさにオランダにとってはトラウマになっている対戦国です。

 

予選グループでの内容はイタリア、ベルギーに引けを取らないものだったので優勝への期待も高まるところではありますが、それだけにあっさり足を救われてしまう事も十分に考えられるシナリオです。

 

 

 

スタメン

 

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ベンチ入りオランダ:2フェルトマン、4アケ、5ワインダル、7ベルハイス、11プロメス、13クルル、14クラーセン、16グラフェンベルフ、19ヴェフホルスト、23ビゾット、25ティンバー、26ガクポ

チェコ:4ブラベツ、11クルメンチク、14ヤンクト、16マンドウス、19フロジェク、20ヴィドラ、21クラール、22マテユ、23コウベク、24ペクハルト、25ペセク、26サディレク

 

オランダはグループステージから継続して3-4-1-2で挑みます。

リバプールの時より攻撃的な役割を担い、今大会では3ゴールを挙げているジョルジニオ・ワイナルドゥムと右サイドから決定的な仕事を複数の試合でこなしているデンゼル・ダンフリースの2人がキーマン。

 

メンフィス・デバイとドニエル・マレンはいずれもターゲットマンではないのでカウンターが攻撃の中心になりそうですが、攻撃時にはWBが最前線に顔を出して5トップのようになる彼らの破壊力は堅守のチェコをもってしても手こずるかもしれません。

 

 

チェコは中盤でタクトを振るうウラジミール・ダリダを怪我で欠き、LBのヤン・ボシルも累積警告で出場停止。

前回の試合からは3人を入れ替えてスタートする事になりましたが今大会当たっているトマーシュ・ヴァツリークを中心としたディフェンスの堅牢さは大会屈指です。

強豪国の中では相性のいいオランダとの試合という事でこの試合では彼らが次のラウンドに駒を進める未来も十二分に考えられます。

 

 

試合内容

 

前半:実況に気を取られる

 

オランダはメンフィス-マレンの前線2枚がどちらも左に寄る事が多く、右サイドはほとんどダンフリースに一任という場面が多かった。

 

WOWOW主音声で観戦していた方々はもしかすると試合序盤はその中身より実況久保田光彦氏の選手名ミスや声のアンバランスさに気を取られていたかもしれません😥
例:デリフト⇒デフリフト、ワイナルドゥム⇒ウイナルダム、スケテレンブルクの年齢を32歳と誤って伝える(本当は1982年9月生まれの38歳)

 

最初のチャンスは8分のオランダ。

右からのCKでショートコーナーを選択すると、ダレイ・ブリントが左足でファーポストを狙った高精度のキックにマタイス・デ・リフトがヘディング。直接ゴールを狙うには角度が厳しかったのでデ・リフトは折り返しを狙いますがこれは味方に通らず惜しくもゴールには至りません。

 

最初の15分はチェコが自陣で耐える時間帯が続き、やはりダリダ不在という事で厳しいのではないかと思わせる内容でしたが、かといってオランダも守備ブロックを崩したチャンスというのは無かったので比較的大人しめの展開でした。

 

オランイェの攻撃はブリントのロングパス一本やマレンの個人技ばかりで全体的に動きが鈍かったです。

ボール保持では2-3-5のような形になるのですが、前線の動きが少なく足が止まってしまう事が多かったので逆に自分たちでスペースを潰してしまう形になってしまい手詰まり感に溢れていました。

 

 

そうこうしている間に20分過ぎからチェコも攻撃のエンジンがかかり始め、22分にはシェフチークのクロスにソーチェクのダイビングヘッドで反撃開始。

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その後は給水タイムを挟み30分までしばらく牽制のし合いが続きますが、31分にはブリント⇒メンフィスへの縦パスで攻撃のスイッチが入るとマレン→ダンフリースと連動性のある崩しを見せてオランダ改善の兆しかというチャンスもありましたが残念ながら単発でした。

 

38分、チェコはハーウフェー付近でボール奪取からカウンターで右サイドを進み、マソプストからバラークへ決定的なパスが供給されますがシュートはマタイス・デ・リフトがつま先で触りゴールマウスには飛びません。

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AT2分にはメンフィスの個人技からファン・アーンホルトにビッグチャンスもシュートは枠外。仮に決まっていたとしても戻りオフサイドだったはずですが……(このシーンの久保田氏は正直聞くに堪えなかったので副音声への変更を決断)

 

 

後半:デリフトのハンドでオランダは万事休す

 

オランダこの試合2度目の決定機は52分。

メンフィスの見事なフリックでマレンが前を向いた状態でボールを受けると、目の前のDFを裏街道で一気抜き去りそのままGKと1vs1に。

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スピードに乗ってGKもそのまま抜き去ろうと判断したマレンでしたがヴァツリークは完璧にこれを読んでビッグセーブ。

 

そしてこの直後のチェコの攻撃、ホレシュからシックを狙ったシンプルな裏へのロブパスに対応したデ・リフトはバウンド処理を誤り、転倒してシックに置いてきぼりになりそうだった所をボールを手で掻きだしてプレー中断。これが決定機阻止と判断されてVARの結果一発レッドで退場。

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元々運動量でチェコに劣っていたオランダはこれ以後防戦一方となり、68分に右サイドコーナーポスト手前で獲得したFKからホレシュが先制ゴール。

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80分には自陣からのFK、ヴァツリークのフィードにオランダが中途半端なクリアでボールがこぼれたところを後方からホレシュが猛烈な勢いでインターセプト

トップスピードに乗ってボックス内に侵入したホレシュのグラウンダーにパトリック・シックがニアサイドにゴロを流しこむ技ありゴールで勝負あり。

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試合はチェコがオランダに0vs2で勝利

予選全勝のオランイェはトーナメント1回戦で敗れる事となり、優勝候補筆頭だったEURO2008でのロシア戦の敗戦を思い起こさせる幕切れで大会を去ります。

 

動画ハイライト 

 

 

ゴール⚽68分:トマーシュ・ホレシュ(👟トマーシュ・カラス)
80分:パトリック・シック(👟トマーシュ・ホレシュ)

 

 

選手交代

オランダ

57分 in:プロメス out:マレン

73分 in:ヴェフホルスト out:デ・ローン

81分 in:ベルハイス、ティンバー out:ファン・アーンホルト、ブリント

 

チェコ

79分 in:ヤンクト out:マソプスト

85分 in:フロジェク out:シェフチーク
86分 in:クラール out:ホレシュ

90+2分 in:クルメンチク、サディレク out:シック、バラーク

 

 

データ

 

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スタッツで見るとその差は歴然。

オランダはビッグチャンスを3回作ったものの枠内シュートはまさかの0本。

特にマレンの決定機はゴールを決めるか最低でもシュートで終わっていればその後のデリフトの退場も無かったでしょうから正に勝負を決めるワンプレーでした。

 

攻撃陣は沈黙でしたがやはりデンゼル・ダンフリースの個人能力の高さは飛びぬけており、地上デュエルは9/11と高い勝率を誇っています。

RBの有力な補強候補として大会終了後は移籍マーケットの主役の1人に躍り出る事になりそう。

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そういう意味ではチェコ守護神トマーシュ・ヴァツリークまた、Star of the Matchのホレシュに並ぶこの試合のベストプレイヤーの1人。

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チェコはダリダ不在の影響からかトップ下を置かない4-1-4-1で試合に臨みましたが、アンカーのホレシュの広いカバー範囲もあって今まで以上に強固なブロックを形成。

 

走行距離でも途中から1人多い状況だったとは言えオランイェを圧倒し、ボジルの代役で出場したカデジャーベクも64分にはビッグチャンスに絡むなど主力の穴を感じさせず正にチーム一丸の勝利でした。

 

彼らの次の相手はウェールズから4点を奪い高い得点力を見せているデンマーク

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矛と盾のマッチアップはどちらのストロングポイントが上回るかが勝敗に直結し、今大会のダークホース同士の対戦という意味でも非常に魅力的なカードになる予感。