*EURO2020 ラウンド16 オランダvsチェコ戦の記事です。
オランダとチェコの対戦は過去11回、対戦成績はオランダ3勝-チェコ5勝-引き分け3回とチェコが得意にしているマッチアップ。
EURO2016予選でこの2チームが同グループになった際にはチェコが2戦2勝でこの敗戦も響いたオランイェは本戦に出場出来ずに終わり、まさにオランダにとってはトラウマになっている対戦国です。
予選グループでの内容はイタリア、ベルギーに引けを取らないものだったので優勝への期待も高まるところではありますが、それだけにあっさり足を救われてしまう事も十分に考えられるシナリオです。
スタメン
オランダはグループステージから継続して3-4-1-2で挑みます。
リバプールの時より攻撃的な役割を担い、今大会では3ゴールを挙げているジョルジニオ・ワイナルドゥムと右サイドから決定的な仕事を複数の試合でこなしているデンゼル・ダンフリースの2人がキーマン。
メンフィス・デバイとドニエル・マレンはいずれもターゲットマンではないのでカウンターが攻撃の中心になりそうですが、攻撃時にはWBが最前線に顔を出して5トップのようになる彼らの破壊力は堅守のチェコをもってしても手こずるかもしれません。
チェコは中盤でタクトを振るうウラジミール・ダリダを怪我で欠き、LBのヤン・ボシルも累積警告で出場停止。
前回の試合からは3人を入れ替えてスタートする事になりましたが今大会当たっているトマーシュ・ヴァツリークを中心としたディフェンスの堅牢さは大会屈指です。
強豪国の中では相性のいいオランダとの試合という事でこの試合では彼らが次のラウンドに駒を進める未来も十二分に考えられます。
試合内容
前半:実況に気を取られる
オランダはメンフィス-マレンの前線2枚がどちらも左に寄る事が多く、右サイドはほとんどダンフリースに一任という場面が多かった。
WOWOW主音声で観戦していた方々はもしかすると試合序盤はその中身より実況久保田光彦氏の選手名ミスや声のアンバランスさに気を取られていたかもしれません😥
例:デリフト⇒デフリフト、ワイナルドゥム⇒ウイナルダム、スケテレンブルクの年齢を32歳と誤って伝える(本当は1982年9月生まれの38歳)
最初のチャンスは8分のオランダ。
右からのCKでショートコーナーを選択すると、ダレイ・ブリントが左足でファーポストを狙った高精度のキックにマタイス・デ・リフトがヘディング。直接ゴールを狙うには角度が厳しかったのでデ・リフトは折り返しを狙いますがこれは味方に通らず惜しくもゴールには至りません。
最初の15分はチェコが自陣で耐える時間帯が続き、やはりダリダ不在という事で厳しいのではないかと思わせる内容でしたが、かといってオランダも守備ブロックを崩したチャンスというのは無かったので比較的大人しめの展開でした。
オランイェの攻撃はブリントのロングパス一本やマレンの個人技ばかりで全体的に動きが鈍かったです。
ボール保持では2-3-5のような形になるのですが、前線の動きが少なく足が止まってしまう事が多かったので逆に自分たちでスペースを潰してしまう形になってしまい手詰まり感に溢れていました。
そうこうしている間に20分過ぎからチェコも攻撃のエンジンがかかり始め、22分にはシェフチークのクロスにソーチェクのダイビングヘッドで反撃開始。
その後は給水タイムを挟み30分までしばらく牽制のし合いが続きますが、31分にはブリント⇒メンフィスへの縦パスで攻撃のスイッチが入るとマレン→ダンフリースと連動性のある崩しを見せてオランダ改善の兆しかというチャンスもありましたが残念ながら単発でした。
38分、チェコはハーウフェー付近でボール奪取からカウンターで右サイドを進み、マソプストからバラークへ決定的なパスが供給されますがシュートはマタイス・デ・リフトがつま先で触りゴールマウスには飛びません。
AT2分にはメンフィスの個人技からファン・アーンホルトにビッグチャンスもシュートは枠外。仮に決まっていたとしても戻りオフサイドだったはずですが……(このシーンの久保田氏は正直聞くに堪えなかったので副音声への変更を決断)
後半:デリフトのハンドでオランダは万事休す
オランダこの試合2度目の決定機は52分。
メンフィスの見事なフリックでマレンが前を向いた状態でボールを受けると、目の前のDFを裏街道で一気抜き去りそのままGKと1vs1に。
スピードに乗ってGKもそのまま抜き去ろうと判断したマレンでしたがヴァツリークは完璧にこれを読んでビッグセーブ。
そしてこの直後のチェコの攻撃、ホレシュからシックを狙ったシンプルな裏へのロブパスに対応したデ・リフトはバウンド処理を誤り、転倒してシックに置いてきぼりになりそうだった所をボールを手で掻きだしてプレー中断。これが決定機阻止と判断されてVARの結果一発レッドで退場。
元々運動量でチェコに劣っていたオランダはこれ以後防戦一方となり、68分に右サイドコーナーポスト手前で獲得したFKからホレシュが先制ゴール。
80分には自陣からのFK、ヴァツリークのフィードにオランダが中途半端なクリアでボールがこぼれたところを後方からホレシュが猛烈な勢いでインターセプト。
トップスピードに乗ってボックス内に侵入したホレシュのグラウンダーにパトリック・シックがニアサイドにゴロを流しこむ技ありゴールで勝負あり。
試合はチェコがオランダに0vs2で勝利
予選全勝のオランイェはトーナメント1回戦で敗れる事となり、優勝候補筆頭だったEURO2008でのロシア戦の敗戦を思い起こさせる幕切れで大会を去ります。
🇷🇺 First Russian player you think of?
— UEFA EURO 2020 (@EURO2020) June 21, 2020
Russia reached their first semi-final after Dmitri Torbinski and Andrey Arshavin (👇) netted in the last eight minutes in a 3-1 AET win against the Netherlands at EURO 2008!#OTD ⏪ @TeamRussia pic.twitter.com/dYIOuxJLx5
動画ハイライト
選手交代
オランダ
57分 in:プロメス out:マレン
73分 in:ヴェフホルスト out:デ・ローン
81分 in:ベルハイス、ティンバー out:ファン・アーンホルト、ブリント
79分 in:ヤンクト out:マソプスト
85分 in:フロジェク out:シェフチーク
86分 in:クラール out:ホレシュ
90+2分 in:クルメンチク、サディレク out:シック、バラーク
データ
スタッツで見るとその差は歴然。
オランダはビッグチャンスを3回作ったものの枠内シュートはまさかの0本。
特にマレンの決定機はゴールを決めるか最低でもシュートで終わっていればその後のデリフトの退場も無かったでしょうから正に勝負を決めるワンプレーでした。
攻撃陣は沈黙でしたがやはりデンゼル・ダンフリースの個人能力の高さは飛びぬけており、地上デュエルは9/11と高い勝率を誇っています。
RBの有力な補強候補として大会終了後は移籍マーケットの主役の1人に躍り出る事になりそう。
そういう意味ではチェコ守護神トマーシュ・ヴァツリークまた、Star of the Matchのホレシュに並ぶこの試合のベストプレイヤーの1人。
チェコはダリダ不在の影響からかトップ下を置かない4-1-4-1で試合に臨みましたが、アンカーのホレシュの広いカバー範囲もあって今まで以上に強固なブロックを形成。
走行距離でも途中から1人多い状況だったとは言えオランイェを圧倒し、ボジルの代役で出場したカデジャーベクも64分にはビッグチャンスに絡むなど主力の穴を感じさせず正にチーム一丸の勝利でした。
彼らの次の相手はウェールズから4点を奪い高い得点力を見せているデンマーク。
矛と盾のマッチアップはどちらのストロングポイントが上回るかが勝敗に直結し、今大会のダークホース同士の対戦という意味でも非常に魅力的なカードになる予感。