ロシア、サンプクトペテルブルク・スタジアムで開催されたベルギーvsロシア戦に関する記事となります。
まずはあの出来事について触れなければいけません。
この試合の前に行われたデンマークvsフィンランドでデンマークの絶対的チャンスメイカー クリスティアン・エリクセンが前半終盤のスローイン直後に突如前のめりに倒れ込み、ピッチ上では意識の無い状態であった彼に心臓マッサージやAEDが使用される緊急事態が発生。
10分を越える治療の後、エリクセンは担架に乗せられて会場から500m程にある病院へ搬送されてその後ひとまずは無事である事が確認されましたが、リアルタイムで会場にいた選手・スタッフ・サポーター、そして画面からこの試合を観戦しているフットボールファンにとっては全く生きた心地のしない絶望的な時間が続きました。
エリクセンの一刻も早い回復を心より祈っています。
スタメン
予選で得点・失点共に最も優秀なスタッツを残した赤い悪魔は1980年代後半~90年代前半の黄金世代が出揃う恐らく最後の国際大会で、2018年ロシアW杯から殆ど主要メンバーが変わっていないので成熟度という意味では24チーム中No.1かもしれません。
レアル・マドリーで負傷続きのエデン・アザール、CL決勝で鼻の骨を折ったケビン・デ・ブライネ、ドルトムントのアクセル・ヴィツェルなど万全ではないメンバーもいますが圧倒的攻撃力はこの試合のメンバーでも変わらず。
ただ、3名が揃って30歳を超えているCBには一抹の不安が残ります。
一方のロシアは過去10年以上に渡って代表チームの最終ラインを支えたセルゲイ・イグナシェビッチ、イゴール・アキンフェエフが去りヒディンク指揮下のEURO2008の旋風を巻き起こしたメンバーの生き残りはLBのユーリ・ジルコフただ1人。
アキンフェエフ(1番)、ジルコフ(18番)、イグナシェビッチ(4番)、アルシャビン(10番)
彼らと比較してしまうと今の主要メンバーはやや小粒感の否めない陣容となっていますが、この試合では3万人のサポーターが彼らに声援を送る事になり、ベルギーのロベルト・マルティネス監督もその声には強い警戒が必要と会見で語っていたように会場の雰囲気に上手く乗る事が出来れば優勝候補のベルギーに一泡吹かせる事も不可能ではありません。
試合内容
まず初めに驚いたのはロメル・ルカクの変化。
インテルの試合を殆ど見ていないのでまともに彼を見るのはユナイテッドに所属していた18-19以来でしたが身体の入れ方やそれに伴うターンの上達が著しく、ムラッ気というべきなのか繊細な性格から来る躊躇というべきかは兎も角、コンタクトプレーで意外とアッサリ負けてしまう事も多かったのですがそれも無くなり正にフェノーメノ
そして10分にはロシア5番セミョニョフのエラーにつけこみ先制ゴールを挙げ、ゴールパフォーマンスではカメラに向かって先のデンマークvsフィンランド戦で倒れたエリクセンへ"Chris, Chris! Stay strong, I love you"とインテルでチームメイトである彼に勇気を与えるメッセージを送っています。
"Chris, Chris! I love you."
— B/R Football (@brfootball) June 12, 2021
Romelu Lukaku's message straight to camera after scoring Belgium's opening goal of the tournament. pic.twitter.com/ANbzNVetSC
ルカク以外にもベルギー代表にはフェルトンゲン、アルデルヴァイレルト、シャドリとエリクセンと関係の深い選手が多いのでこの心にくる熱いパフォーマンスには彼らの分も込められていたのかもしれません。
一方、まさかのミスでビハインドを負ったロシアは自国開催の前回W杯同様にジューバをターゲットマンにして彼のキープからゴロビン、ゾブニンの2列目がチャンスをうかがうもののビルドアップのミスも響き中々決定機を作る事が出来ず。
18分にもパスミスからルカクのカウンターを許し、最後のデンドンケルのシュート精度に助けられて失点には至らずに済みましたがプレー強度でも精度でも明らかにベルギーに劣っているのでこれは厳しいなと感じざるを得ませんでした。
カスターニュは眼窩骨折で無念のチーム離脱
私自身のファンタジーフットボールのスカッドにも入れた今大会期待のユーティリティ ティモシー・カスターニュでしたが26分にロシアのカウンターを止めようとしてクズヤエフと頭同士で衝突。
そしてカスターニュは当たり所が悪かったようで右目の横に大きなコブが出来てしまいプレー続行不可。
試合後の検査で両眼窩骨折と判明しベルギー代表からの離脱が発表され、自身初の代表戦国際大会は不幸なアクシデントで終了してしまいました……
クジャエフに関しても一度は頭にテーピングを巻いてピッチへ戻ろうとしましたがやはりプレーを続けるのは無理という判断でカスターニュから2分遅れで交代。
また、この接触プレーに際してのマテウ・ラモス主審の素早いプレー中断も良い判断だったと思います。
デンマークvsフィンランドのアンソニー・テイラー主審と共にこの日はピッチ上をコントロールするリーダーとしての審判の持つ役割の大切さとそれをやり切った彼らにスポットライトを当てたい。
急遽出番が回ってきたムニエ、MVP級の活躍
カスターニュに替わってピッチへ送り込まれたのは経験豊富なトーマス・ムニエ。
ロシアW杯日本戦でも決勝点のアシストを記録したこの攻撃力抜群のRBは34分にトルガン・アザールの鋭い内巻きのクロスのこぼれ球に反応して2点目のスコアラーに早速名を連ねます。
更に試合終盤の88分には自陣からドリブルで持ち上がりルカクへのラストパスでトドメの3点目をアシスト。
63分+ATの出場で1G1Aと100点の結果を残し、クラブでの不遇を感じさせないハイパフォーマンスを見せたムニエ。
思えば、前回のユーロでの活躍がPSG移籍に繋がったのでこの選手は代表の国際大会に滅法強い大舞台〇のプレイヤーなのかもしれません。
試合はベルギー代表がロシア代表を全く寄せ付けず相手の枠内シュートを1本に抑えて完勝。
ロシアは3失点のうち2つが自らのエラー招いたものだったので会場に集まった大勢のロシア人サポーターは不満を抱える90分だったことでしょう。
動画ハイライト
交代選手
ベルギー
27分 in:ムニエ out:カスターニュ*
77分 in:フェルマーレン、プラート out:フェルトンゲン*、カラスコ
ロシア
29分 in:チェリシェフ out:クズヤエフ*
43分 in:カラバエフ out:ジルコフ*
46分 in:ディベイエフ out:バリノフ
63分 in:ムキン、ミランチュク out:ゾブニン、チェリシェフ
両チーム計9回の選手交代のうち4つが負傷に伴うものであり、19‐20シーズンから続いた過密日程のダメージが色濃く現れた試合と言えるかもしれません。
今大会は過去よりも更に大会終了後の燃え尽き症候群や負傷離脱に警戒しなければいけない気がしてならない。
データ
ロシアは異次元の運動量でドー〇ングすら疑われたW杯同様に115km越えの高い走行距離を維持していたものの結果は完敗。
それもそのはずでそもそも5本しかシュートを打てていない上に相手にはゴールに直結するエラーを2つプレゼントしてしまうなど踏んだり蹴ったりの90分間でした。
因みに、両チーム最多はゴロビンの12.4kmで2位にはベルギーのレアンドロ・デンドンケルが11.9kmで続きます。
(Player stats | UEFA EURO 2020 | UEFA.com)
ここまでの4試合でこの1戦がダントツに走行距離の多い試合で個人ランキングではTOP10のうち7名がベルギーとロシアの選手。
-*トップスピード部門ではイタリアのレアンドロ・スピナッツォーラが33.8km/hで暫定1位、ダニエル・ジェームズが33.5km/hで暫定2位。