*EURO2020 準々決勝 チェコvsデンマーク戦の記事です。
2004年大会以来17年ぶりの準決勝進出を狙うチェコと同じく優勝を果たした1992年大会以来の進出を伺うデンマークのマッチアップが開催されるのはアゼルバイジャンはバクー・オリンピック・スタジアム。
この2チームの対戦はこれまでに親善試合を含めて11回行われていますが、なんといってもEURO2004 準々決勝での試合がお互いにとって最も印象深いものである事は明白。
🇨🇿🆚🇩🇰 EURO 2004 edition...
— UEFA EURO 2020 (@EURO2020) July 3, 2021
⚽️ Koller, Baroš (2)
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17年前の一戦ではチェコが2mを越えるターゲットマン ヤン・コレルの先制点を皮切りにミラン・バロシュの2ゴールも追加し3vs0で快勝を収めていますが逆に言えばチェコはそれ以来デンマークに勝利を収める事が出来ていません。
直近の相性かそれともEURO準々決勝での因縁どちらが勝るかという見方もこの試合の見どころだと思います。
▼両チームのこれまで
スタメン
チェコは累積空けのLB ヤン・ボジルがスタメン復帰。
ラウンド16で採用したホレシュをアンカーに置く4-1-4-1ではなくノーマルな4-2-3-1で臨みます。
デンマークのWBはドイツのように両サイドが常に高い位置を取る訳ではありませんがシステムの噛み合わせから言えばややチェコに分が悪いと思われます。
こちら側の主な攻撃手段はツォウファルのクロスなので彼がヨアキム・メーレに圧力をかけて攻撃参加の頻度を少なくできるかどうかが勝敗を分けるポイントの1つ。
今大会デンマークは相手の出方によってカメレオンのように変幻自在に陣形を組み替えてきますが、スタートは基本的にこの3-4-2-1に固まりつつあります。
形の上では左サイドに当てはめられる事の多いマルティン・ブレイスウェイトは実際にはフリーマンのようにピッチを自由自在に動き回るのでここまでデンマークと対戦したチームは彼を捉える事に苦労している印象を受けます。
近年は選手個人の特性に合わせる為に可変フォーメーションを採用する事は当たり前になりつつありますが、今のデンマークはその中でもかなり流動性の高いチームなので見ていて関心させられる事が多い。
試合内容
前半:誤審も味方しデンマークは2点リードで折り返し
スコアが動いたのは開始5分のこと。
デンマークは右からのコーナーキックでトーマス・ディレイニーがフリーでヘディングシュートを決めてこの試合最初のシュートをいきなり得点に結びつける事に成功。
ディレイニーのマークについていたのはパトリック・シックでしたが、ボールに対して動いてしまいマーカーとしての仕事を放棄してしまった勿体ない失点でした。
余りにもフリーだったので何かトリックプレーが成功したのかと思いきや現実は非常にシンプルなものだった。
ただ、チェコを擁護するならばそもそもこのコーナーは明確な誤審であり、チェルストカのクリアボールはドルベアの身体に当たりそのままゴールラインを割っていた事が中継映像では明らかでしたから正直かなり不運な失点。
彼らの反撃の糸口はやはりシック。12分には右サイドに流れツォウファルの縦パスを受けると、カットインから左足のシュートを放ってようやくチェコはまともな形でシュートを記録。
一方、幸運な形で先制点を手にしたデンマークはこれをキッカケに勢いに乗り、13分には チェコのコーナーを凌いだ直後ホイビェアからのロングボール1本でデムスゴーが抜け出し、トラップが流れシュートは打てなかったもののボックス内での決定的なチャンスで追加点を狙います。
17分にもクリステンセン⇒ストリガー・ラーセンの縦パスが通り折り返しに3列目から上がってきたディレイニーが合わせるなどいつ得点が生まれてもおかしくない状況。
この時間帯は劣勢だったチェコも22分には持ち前の運動量を生かしたハイプレスでGKシカスパー・シュマイケルのパスミスを誘うとマソプストのラストパスからホレシュのシュートでこの試合初の決定機。
個別のシュートチャンスではこれが最も得点期待値の高いプレーだったのでチェコとしては同点に追いついておかなければならない場面でした。
デンマークはカウンター狙いですが、片翼のWBがDFラインに吸収されて4バックで戦う時間帯も多くこれはチェコのフォーメーションとの噛み合わせを良くする為の指示だと思われます。
チェコが前掛りになっていた事もあって幾度もブレイスウェイトのスピードを活かした右サイドからの攻撃は得点の匂いを強く感じるものでした。
42分にはツォウファルの裏を狙うメーレにヴェスターゴーアから完璧なスルーパスが通り、メーレの右足アウトサイドのクロスにカスパー・ドルベアが合わせてデンマーク2点目。
チェコとしてはオランダ戦MoM級の動きだったトマーシュ・ホレシュが中盤のフィルターとして前の試合ほど効果的では無かった事も誤算の1つ。彼はデムスゴーをマンマーク気味に追うタスクを任されていたのでどちらかと言えば左に寄るシーンが多く、失点シーンはこれをうまく利用されてしまった形。
後半:流血をも厭わぬ死闘
後半開始と共にチェコはホレシュ🔁ヤンクト、マソプスト🔁クルメンチクと攻撃的なカードを切って立ち上がります。
46分にはそのクルメンチクがいきなり強烈なシュートをシュマイケルにお見舞いし、その後も攻撃の圧力をキープし続けた結果、49分にツォウファルのクロスにシックが右足で丁寧にボールの軌道を変えて自分から遠い方のサイドネットにボールを流して反撃開始のゴール。
更にここから60分辺りまでは4-2-2-2のような形にフォーメーションを変更したチェコペースと評せる展開で、これに変化が生じたのはデンマーク59分~60分にかけての選手交代。ドルベア🔁ユスフ・ポウルセン、デムスゴー🔁ノアゴールとアタッカー2枚を入れ替えてきましたが特にFWがフィジカルコンタクトに強いポウルセンに変わった事で彼のポストプレーやドリブルを活かした中央でのカウンターはチェコとって大きな脅威でした。
実際に62分のデンマーク決定機は交代で入ったこの2人から生まれており、ポウルセンは69分にも同じような形のカウンターからシュートを記録しています。
チェコは上記の62分の攻撃を凌いだ際にソーチェクの頭とポウルセンの足が接触してしまい、流血も見られたので包帯を頭に巻いてピッチに戻ってきましたがその後も血は止まらる事無く彼の後頭部のガーゼは赤く染まっています。
このプレーでは更にCBのチェルストカも足を負傷しており、一気に満身創痍になってしまったチェコ。
その後はセットプレー中心に攻め立て、デンマークの追撃はヴァツリークのスーパーセーブ連発によって何とか凌いで1点差のまま試合は最終盤へ。
後半アディショナルタイム3分、チェコはバラークのサイドチェンジをクルメンチクが落として最後はシックに代わり79分から出場していたマテイ・ヴィドラがボレーシュートを試みるもボールは大きく浮いてしまい枠の外。
AT6分にはラストチャンスでボジルのクロスが跳ね返されたところをトマーシュ・カラスがダイレクトでゴールを狙いますが僅かにゴールマウスの横に逸れ、試合はデンマークが1vs2で勝利。
動画ハイライト
選手交代
46分 in:ヤンクト、クルメンチク out:ホレシュ、マソプスト
65分 in:ブラベツ out:チェルストカ
79分 in:ヴィドラ、ダリダ out:シック、シェフチーク
59分 in:Y.ポウルセン out:ドルベア
60分 in:ノアゴール out:ダムスゴー
70分 in:ヴァス out:ストリガー・ラーセン
81分 in:J.アンデルセン、M.イェンセン out:クリステンセン、ディレイニー
データ
スタッツの上ではチェコが優勢。
5分に早々とデンマークが先制してどっしり構える展開になった事は考慮する必要がありますがチェコも十分に勝機のある試合でした。
また、ピッチ上では頭に包帯を巻く選手が2人出て一見すると大荒れになったように感じた試合でしたが、終わってみれば両チーム合わせてイエロー2枚、うち1つは審判への抗議によるものなので実際はクリーンに進んだ好ゲーム。
走行距離114.5kmという数字が示すようにチェコは大会を通してハードワークを続けてきたのでこの試合でもチェルストカ、シックと2名が負傷による入れ替えと選手にかかる負担は大きかった。
中でもウエストハム所属の2人は全体TOP10に入る距離を動いているので、余計なお世話ではありますが来季のクラブでのパフォーマンスには一抹の不安を抱いています。
(Player stats | UEFA EURO 2020 | UEFA.com)
試合前に挙げたチェコのキーマン ウラディミール・ツォウファルは攻守に走り続けキーパスはピッチ上最多の3回、守備でも地上デュエル4/5、インターセプト3回、タックル2回とチェコが勝利していた場合にはMoMに選ばれていたであろう活躍で対面のヨアキム・メーレにも優勢気味でしたが惜しくも奮闘は実らず悔しい結果となっています。
一方、勝利を収めたデンマークではカスパー・ドルベアが2戦連続得点を挙げて一躍シンデレラボーイになりつつあります。
トーナメント2試合3ゴールという活躍は信頼できる得点源を求めていたチームの救世主に相応しいもので大会後の動向にも注目が集まる事は必至。
ヨアキム・メーレやミッケル・ダムスゴーと並び来季のクラブレベルでの活躍に大きな期待がかかります。