*EURO2020 グループB Matchday3 フィンランドvsベルギー戦の記事です。
EURO予選最多得点最少失点のベルギーは本大会でも攻撃力の高さを誇示し、初戦のロシア戦では3vs0の完勝。2戦目デンマーク戦ではユスフ・ポウルセンのゴールでビハインドに立たされるも後半から入ったケビン・デ・ブライネが1G1Aの活躍で逆転勝利。
▼ベルギーvsロシア戦について
一方のフィンランドはクリスティアン・エリクセンが心臓の問題で倒れメンタル的にも難しい戦いとなったデンマークとの試合で枠内シュート1本ながらそれを得点に結びつけ勝ち点3を得る上々の出だし。
ロシアにはアレクセイ・ミランチュクのコントロールショットを決められて敗れていますがこの第3戦で勝ち点1を奪えばトーナメント進出はほぼほぼ決まるという状況。
EUROでは弱小国と評されるチームが強豪国にアップセットを果たす見ごたえある試合が度々ありますが、フィンランドにもそれを可能にする土台は整っていると思うので自力での勝ち上がりを決める為にも是非!
スタメン
フィンランドは過去2戦と同じ5-3-2システム。
ウロネン、ライタラの両WBに高い運動量が要求されるのは勿論ですが、どうしてもサイドの枚数が不足しがちになるので中盤3枚の素早いスライドも大切。
本大会では未だに得点のないテーム・プッキにも得点が生まれてくれるとチームの勝利がぐっと近づくのですが……
ベルギーは引き分け以上で首位、既にトーナメント進出を決めていることもあって大胆なターンオーバー。
3CBの左には日本でもお馴染みとなったヴィッセル神戸のトーマス・フェルマーレンが入っています。
注目なのはトロサール-ドクの右サイド。
前者はブライトンでもパスカル・グロスに次ぐプレイメーカーとしてリーグ戦35試合に出場し5G5Aと上々のシーズンを送り、後者はプレースタイルが似ていることからエデン・アザール2世と称される快速ドリブラー。
この2人はどの国相手にも決定的な仕事が出来る可能性を秘めている優秀なアタッカーなので、フィンランド戦で信頼をつかんでノックアウトステージ以降に繋げたいところ
試合内容
既にグループステージ突破を決めていて余裕のあるベルギーとは対照的に裏の試合でデンマークが勝利して自らがこの試合に敗れた場合、得失点差の絡む複雑な順位決定の渦中に引きずり込まれる可能性のあるフィンランドは序盤からエンジン全開。
対するベルギーはボール保持の際にはシャドリ-トロサールの両サイドが最前線までラインを上げ、アザールがやや内側に入り中盤に吸収される形で3-3-4のような陣形をとって攻撃にかける人数を増やして早い時間帯からの得点を狙います。
フィンランドはカウンターからチャンスを掴みたいところですが6分のボーヤンパロのプッキの前のスペースを狙ったパスは通らず、逆にGOAL NxGn2021にも選出されているベルギー期待の若手ウインガー ジェレミー・ドクのスピードを生かしたドリブルやロメル・ルカクの強さに苦しめられる展開が続きます。
フィンランドはいつ失点しても不思議ではないほどに一方的に攻められる事が多かったですが最後の壁として幾度も立ち塞がったのが今回の主要メンバーでは最も著名な選手であるGKのフラデツキー。
初戦のデンマーク戦ではホイビェアのPKをストップ
PK阻止に加えシュートセーブ6回、ハイボール処理3回と八面六臂の活躍を見せたデンマーク戦に続いてこのベルギー戦でも如何せんタレント力の違いから劣勢に立たされがちなチームを救うビッグセーブを複数記録しています。
42分のドクのカットインからのシュートに対する反応は特にお見事でした。
前半は得点が生まれず0vs0で折り返しますが、フィンランドの全員守備にベルギーはやや苦戦を強いられているように感じたのでシステムや選手の役割を弄ってくるかもしれません。
後半に入るとフィンランドボールのキックオフ直後に最初のチャンス。
キック&ラッシュからプッキに左サイド高い位置でボールが渡り最後はパスを受けたポーヤンパロのシュートがDFにブロックされますがDF裏を狙続けるプッキの動きが生んだ良いプレーだったと思います。
48分にはベルギーのビッグチャンス。
フィンランド左CBオショーネシーのロングスローをはじき返すとカウンター始動。
ドクが快速飛ばしてドリブルでアタッキングサードまで進出するとそこからルカク→デ・ブライネ→トロサールと少ないタッチ数でボックス内を抉りますがトロサールの折り返しは味方に合いません。
しかし、このプレーを機にベルギーは攻勢を強めます。
前半と比較すると左右のCB、特に右のデナイエルが高い位置まで顔を出し更に攻撃の枚数を増やしてきた赤い悪魔。
51分にはそのデナイエルのミドルシュート、55分にはシャドリがボックス内でシュートと大分フィンランドゴールへの距離が近づいて行きます。
58分にはコーナーキックでデ・ブライネの意表を突くグラウンダーのパスが通りアザールに決定機が生まれますがシュートはフラデツキー正面。
フィンランドも少ない機会を生かして62分カウンターからグレン・カマラがこの試合初の枠内シュートを記録しますがゴールネットを揺らすにはあと一息足りないというところ。続く63分にはベルギーポゼッションからアクセル・ヴィツェルのパスにアザール決定機もシュートはまたしてもフラデツキーのスーパーセーブに阻まれます。
ウロネンのロストからベルギーのカウンターが始まり65分にはようやくルカクがゴールネットを揺らしますがデ・ブライネからのラストパスを受けた際に僅かに足先がオフサイドラインをはみ出ていたのでノーゴール。
決定機まではいくものの得点が生まれないベルギーはフラストレーションの溜まる時間が続きますが74分にその均衡が破れます。
ドクのドリブルから得た左サイドからのコーナーキックにフェルマーレンが地面に叩きつけるお手本のようなヘディングシュートで合わせ、ポストに跳ね返ったボールが不運にもここまで好セーブを続けていたフラデツキーにディフレクションしてゴールイン。
81分にはフィンランドの帰陣が遅れオープンな展開になったところにデ・ブライネ→ルカクのホットラインが決まり、ゴールマウスに背を向けてパスを受けたルカクは振り向きざまに右足の強烈な一撃を沈めてベルギー追加点。
試合はこのまま0vs2ベルギー勝利でタイムアップ。
裏のカードではデンマークがロシア相手に4vs1と大勝し、これでベルギーを除く3チームの直接対決は1勝1敗で並んだので順位は得失点差に委ねられる事に。
▼グループBの最終順位
1位:ベルギー 勝ち点9 得失点差+6
2位:デンマーク 勝ち点3 得失点差+1
(トーナメント自動進出ライン)
3位:フィンランド 勝ち点3 得失点差-2
(敗退決定ライン)
4位:ロシア 勝ち点3 得失点差-5
選手交代
59分 in:シュレル out:スパルフ
70分 in:カウコ、アルホ out:ポーヤンパロ、ウロネン
90+1分 in:M.フォルス、F.イェンセン out:ロド、プッキ
ベルギー
75分 in:ムニエ、バチュアイ out:トロサール、ドク
90+1分 in:ヴァナケン out:デ・ブライネ
データ
SofascoreのxGはフィンランド0.39-ベルギー1.61。
シュート数の差からすれば思ったより僅差でしたがフィンランドは大会を通してシュートに至ったプレーが少なかったのでこの結果は致し方なしだったかもしれません。
それでも安易にラフプレーに走る事はなくあくまで真正面から対戦相手に勝利しようとする彼らのフットボールは多くのファンに感銘を与えたと思います。
個人ではフラデツキーがセーブ7回、うち5つがボックス内からのシュートという素晴らしいパフォーマンス。
また、メンバー唯一の国内組であるダニエル・オショーネシーも守備だけでなくロングスローワーとしての能力をアピールし印象に残るプレイヤーの1人。
ベルギーではやはりデ・ブライネがNo.1
キーパス7回、ロングパス成功率7/8、守備でもタックル成功5回はこの試合最多と攻守両面で特筆すべきスタッツを記録しました。
あとがき
決して不安要素が無いわけではありませんがグループステージにおいてはベルギーは圧巻のパフォーマンス。
テクニカルな選手が多い中でより直線的なジェレミー・ドクはトーナメントでも試合途中のジョーカーとして重宝しそうですね。
フィンランドは3位チームの中でも現状一番下になってしまったのでおそらく敗退となりそうですが、ノーインパクトで大会を去る訳ではないので胸を張ってほしい。