*EURO2020 ラウンド16 ベルギーvsポルトガル戦の記事です。
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メンバー選考や選手の役割に疑問点が多く、前評判の高さと比較するとやや物足りなさを覚えるグループステージ3試合だったポルトガル。
トーナメント初戦の相手はグループステージ全勝で高い攻撃力を示してきたベルギー代表です。
ドイツ戦でWBに対し全くもって有効打を打てなかった経緯を踏まえると同じく3-4-2-1を採用する赤い悪魔に対して不安要素が大きいですが、クリスティアーノ・ロナウドの代表通算記録更新、そしてEURO連覇の為にもここは負けられない試合。
スタメン
ベルギーは中央にボヤタ、デナイエルではなくヴィッセル神戸所属でEURO2020本大会唯一のJリーガー トーマス・フェルマーレンを起用。
彼はアーセナル、バルサとロナウドとの対戦経験が多く、経験という意味で不安要素のあるボヤタ&デナイエルのマン・シティアカデミー組よりもベテランのリーダーシップを選択した形でしょうか。
ポルトガルはフランス戦で頭に衝撃を受けたダニーロを控えに置き、DMにはパリーニャが先発。また。ネルソン・セメドも同試合で足を負傷し万全ではないのでダロトがスタートのチャンスを得ています。
個人的な意見を言えばジョアン・モウチーニョではなくブルーノ・フェルナンデス、ジョタに替えてペドロ・ゴンサウヴェス或いはジョアン・フェリックスを起用した方が効果的だと思いますがベルギーのラインナップとの噛み合わせは悪くないので主導権を握るのはこちら側になりそうな予感。
試合内容
前半:ゴラッソ1発でベルギーは幸運を掴む
ポルトガルは前線が5枚になるこの3バックへの対応として守備時はベルナルド・シウバとクリスティアーノ・ロナウドが前2枚、ジョタがバックスに吸収されるような形で5-3-2のブロック。
6分にはレナト・サンチェスの反転ターンからカウンターが始動し、彼の持ち運びからディオゴ・ジョタにこの試合最初の決定機が訪れますが今大会精彩を欠く場面の多いこのアタッカーのシュートは明後日の方向に飛んでいきます。
チャンスの後にはピンチが続く、という事でここからしばらくはベルギー優勢の時間となって10分にはルカクのポストプレーからエデン・アザールのシュートがポルトガルに襲い掛かります。
ベルギーは守備時に5-2ブロックを形成しますがE.アザールとデ・ブライネはやや前残りで守備はパスコースを限定する程度にとどまっていたので強度は高くなかった。
フル代表初スタメンがいきなりこのビッグマッチとなったディオゴ・ダロトは持ち前の推進力は対面のアザール兄弟を警戒してか抑え目でしたが斜めの楔パスから幾度かチャンスの起点を生むなどまずまずのプレーでセメド不在の穴は特に感じさせない前半でした。
24分にはダロト→ジョタのパスがキッカケで得た右サイドゴールから約30mのFKでロナウドの低弾道シュートが枠内へ。クルトワのナイスセーブで阻まれるものの、久々にロナウドのプレースキックが機能したのでこの時点ではポルトガルに流れが来ているようにも感じられました。
しかし、30分にはルイ・パトリシオのキックミスからルカクのカウンターで危機に陥るなど守護神のパフォーマンスに不安要素を抱くプレーがあり、ある意味ではこれがこの後の展開を示唆していたのかもしれません。
ベルギー1つ目のチャンスはポルトガルFKのカウンターから。
フェルマーレンが頭でクリアしそこからムニエ→ルカクと早いテンポでボールが前に進みルカクのフィジカル全開のドリブルからバイタルエリアまで侵入しますがパリーニャが服を後ろから引っ張ってこれを阻止。
(何故かこのプレーはノーファウルで流されたので正直驚きましたが、ルカクの体幹が強すぎて姿勢が崩れなかった故の結果かもしれない)
このプレー後もベルギーはボールを保持し、デ・ブライネとのワンツーからムニエがまるでリカルド・クアレスマかのようなアウトフロントのミドルシュートで一連の攻撃を終えます。
ベルギー唯一の枠内シュートかつ値千金の一撃となったプレーは42分。
ディフェンシブサードからヤン・フェルトンゲン→ルカクへの縦のロングボールで一気にボックス内まで進出すると、デ・ブライネ→ムニエとボールが渡り最後はムニエの横パスからトルガン・アザールのゴラッソで赤い悪魔が先制。
😮 THAT Thorgan Hazard strike = Goal of the Round 𝗖𝗢𝗡𝗧𝗘𝗡𝗗𝗘𝗥?@GazpromFootball | #EUROGOTR | #EURO2020 pic.twitter.com/GUCkcGg7mk
— UEFA EURO 2020 (@EURO2020) June 27, 2021
ルイ・パトリシオは少しポジショニングがニアサイドに寄り過ぎてしまい、その軌道がアウトにかかって不規則な変化をしたことは同情的要素ですが、本来彼クラスのGKならば触る事は出来たボールだったでしょう。
フェルトンゲンにパスする前にティボー・クルトワが冷静な判断でプレスを往なした事によって生まれたチャンスでもあったので奇しくも両チームの守護神のクオリティが違いを生んだかのような一連のプレーでした。
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後半:ポルトガル支配率65%、シュート15本の猛攻も最後の精度に欠く
開始間もない47分にはケビン・デ・ブライネがパリーニャとの軽い接触でプレー続行が難しい状態になってそのままピッチを退くアクシデント。
この2人は前半終了間際に激しい接触プレーがあったのでそちらの影響が強く残っていたのかもしれません。
45分のプレー。ベルギーカウンターチャンスだったのでプレーは続行されたがパリーニャにはその後イエローカードが提示されています。
プレイメイカーを失った事でベルギーは起点を作れなくなり50分からはポルトガルが相手陣内で押し込む展開へ。
58分にはロナウドのキャリー、そしてラストパスからジョタに2度目の決定機がやってきましたがまたしてもシュートは枠外。
3分前にブルーノ、フェリックスを投入し攻撃の枚数が増えたポルトガルはイケイケムード全開だっただけにこのミスが本当に悔やまれます。
55分から登場したブルーノ・フェルナンデスは35分間の出場でキーパス2回、ボールタッチ40回とチャンスメイクの貢献の高さは相変わらずでしたがメディアのスケープゴートにされてしまっているので巷では彼が悪者のように扱われているとかなんとか。
確かにユナイテッドでの活躍からすればもっと出来るだろうという声に理解は出来ますが、彼が先発した2試合のDMはダニーロ-ウィリアン、そしてジョタはセルフィッシュでベルナルドも本調子からは程遠い状況。
流石に1人でどうこうするには限界のある状況なので、寧ろそんな状態でPK3つを含み5得点を挙げたロナウドが凄いという結論でここは一旦お開きにしたいところ。
中々ベルギーの最終ブロック、いやクルトワのの牙城を崩せずに残りは10分少々というところまで追い詰められたポルトガル。
82分にはブルーノのコーナーからルベン・ディアスのパワーヘッダー、83分はフェリックスの放り込みのこぼれ球からラファエル・ゲレイロのポスト直撃シュートなど紙一重のチャンスが続きます。
88分にはゲレイロのバックスピンをかけたクロスをロナウドがファーサイドに逸らし途中出場のアンドレ・シウバにパスが通りますがクルトワの好判断に阻まれます。
ATのパワープレーでもこの壁を越える事は叶わず、試合はベルギーが1vs0で勝利。
試合間隔で二日のリードがあったベルギーは喉元に短剣を突き立てられているかのようなギリギリの90分間でしたが粘り強く守ってベスト8進出を決めています。
選手交代
ベルギー
48分 in:メルテンス out:デ・ブライネ
90+5分 in:デンドンケル out:トルガン・アザール
55分 in:ブルーノ、フェリックス out:ベルナルド・シウバ、モウチーニョ
70分 in:アンドレ・シウバ out:ジョタ
78分 in:D.ペレイラ、S.オリベイラ out:パリーニャ、レナト
データ
スタッツはポルトガルの一方的なスコア。
しかしながら24本ものシュートを放ちながらもそれがゴールマウスへ飛んだのは僅か5本で1度のチャンスをモノにしたベルギーとはフィニッシュのクオリティの差が如実に表れた試合でした。
アクションゾーン(ピッチを3分割してそれぞれのエリアでどれくらいの割合でプレーが行われたか)を見てもベルギーのディフェンシブサード、ポルトガルにとってのアタッキングサードで34%という高い比率でプレーが行われており、ポルトガルの攻勢は明らかだったので10回やれば8~9回は勝てていたような試合内容。
最後の崩しが弱かった理由の1つとして挙げられるのはウインガー不在。
ポルトガルと言えばどの世代にもドリブルで局面を打破できるサイドアタッカーが複数いましたが、今回のメンバーを見るとサイドでスタメン起用されているジョタ、ベルナルド・シウバはどちらも純粋なウイングではなく、フィーゴや若かりし頃のロナウドのように1人で対面DFを突破できる選手では無かったのでブロックを敷かれてスペースを埋められるとどうしても手詰まりになってしまいます。
そうなると悔やまれるのがペドロ・ネトの大怪我と直前に筋肉系のトラブルでチームを離脱したダニエル・ポデンセ。
ゴンサロ・ゲデスは今大会4試合を通じてベンチ入り僅か1度と完全に構想外だったのでそもそもフェルナンド・サントス監督にはドリブラーを使う意思は無かったかもしれませんが……
ベルギーからはロナウドをほぼ完璧に封じ込めたトーマス・フェルマーレンに称賛を送りたい。
欧州でプレーしていないので彼の招集には疑問を呈する声もありましたが、クリア5回、シュートブロックとインターセプト2回ずつ、タックル成功3回とその声をシャットアウトする完璧なパフォーマンスでした。
大会を前にベルギーCBについては私も”ボヤタやデナイエルがスタートに入る層なので些か不安である"と考えていましたが、彼のお陰でこの期間中はそれが杞憂に終わることとなりそうです。