いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

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football managerというシミュレーションゲームであれこれやっていきます。気付いたらユナイテッドの事ばかり書いてます

【 #FACup 】負けに等しい試合。Robins Hoodが敗走寸前まで古巣を追い詰める

※23/24 FAカップ準決勝

コベントリー・シティvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。

 

フットボールとはなにか、かつて赤い悪魔を救った英雄マーク・ロビンズはスカイブルーを率いてもう一度このクラブに大切なものは何かという事を教えてくれました。戦略,戦術,兵站の問題はもちろんこと、一番重要な情熱すら見せられない人間が大半の今のチームは見ていて恥ずかしくなる程に弱く脆い。

 

 

 

 

【Match Review】

 

Starting lineup

 

ベンチ入りコベントリー
2 Binks, 3 Jay Dasilva, 6 Liam Kelly, 8 Jamie Allen, 13 B.Wilson, 24 M.Godden, 29 Torp, 30 F.Tavares, 54 K.Andrews

マンチェスター・ユナイテッド
1 Bayındır, 14 Eriksen, 16 Amad, 21 Antony, 62 O.Forson, 70 Amass, 75 Ogunneye, 78 L.Jackson, 84 Wheatley 

 

 

前半

 

コベントリーの入りはマンチェスター・ユナイテッドをリスペクトするかのように現地予想のバック4ではなく5-2-3を基本とする後ろ重心のシステムを採用。相手のゴールキーパーからのビルドアップに対してはある程度人数をかけて前線プレスを行う意識があったが、ミドルサードでは完全に引いて守る事を選択して自陣でのローブロックでゴール前のスペースを消す事を重視。

 

ただ、このやり方ではユナイテッドのポゼッションの脆弱さをさらけ出す事が出来ない上に所々でファーストディフェンダーが誰なのか不明瞭な場面が見られたため思うようにボールを奪えずカウンターのチャンスもあまり掴めず。

 

ユナイテッドはメイヌーがアンカーに入りポゼッションを行い、コベントリーの前線がそれほど裏に抜ける動きを取らないのでスプリント勝負で全くついていけないカゼミロ-マグワイアの急造CBユニットはストレスを感じる事なくプレー。4-1-2-3になるとブルーノがいる方のサイド、この日は左半分でのボール保持が自然と長くなっていくが、ワン=ビサカは左足を全く使えない上にポジショニングやオフボールが完全に自分ありきでラッシュフォードのプレー選択が狭くなりがちなのでもう少し右側での崩しを増やしていくべきだった。

 

23分、マグワイアが身体を外に向けて相手の意識をサイドに傾けながら中央のマクトミネイへ縦パスを通し1stプレスの後ろにボールが入ると、そこからシンプルに右外のガルナチョへボールを預けて自身はゴール前へ侵入。ガルナチョはタイミングよくオーバーラップしてきたダロトを使い、ダロトの見事なGK-DF間へのスピードボールを待っていましたとばかりにマクソースが押し込んで先制!!

 エコールズ、ラティボーディエルの背後を存在感を消して通りながらゴール前に現れたマクトミネイの後方から飛びこむフィニッシャーとしての才覚を改めて確認したが、ファーサイドのラッシュフォードの詰めが甘いところやマクソースがデコイになるパターンが見られずホイルンドがいつまで経っても引き立て役をせざるを得ない点など課題もいくつか隠れている。コベントリーとしては人を捕まえる意識が低かった事が失点の最大の要因で、ハジ・ライトはダロトのオフ・ザ・ボールに全くついていく事が出来なかった。

 

スコアが動いてもゆったりとした試合の流れは続き、コベントリーが何を考えているのかいまいち掴むことが出来ず不気味さを感じながらもユナイテッドは淡々とボールを前へ運んで敵陣ボックス内でのチャンスを作っていく。

 

前半アディショナルタイム直前には右に流れたラッシュフォードがやや低めの位置でボールを受けてインバーテッドWBとして中に入っていたダロトの裏抜けを促し、これにブルーノがサポートに入って3角形を形成した事で美しいコンビネーションで右サイド深い位置へ侵入。ダロトのマイナスの折り返しに合わせたラッシュフォードのシュートは相手GKのファインセーブに阻まれCKとなるも、そのコーナーでブルーノのアウトスイングに合わせたマグワイアのヘディングシュートが決まり追加点。

 シュートを打たせたい選手を守るための壁を作るバスケットボールで言うところのスクリーンプレー。ユナイテッドが毎度やられている形だったが久々に自分たちが成功したパターンを見た気がする

 

 

後半

 

静観しているばかりではいられないスカイブルーは5バックの右WBで先発していたファン・エヴァイクをRWに一列上げて4-2-3-1へシステム変更。これに伴って3CBの中央に入っていたラティボーディエルがRBへスライドしている。

 

前線プレスに充てられる人数が増加した事でゾーンではなくマンツーマンに近い形で守備を行いやすくなり、尚且つユナイテッドがビルドアップの人数を1人増やす為にマクトミネイを下げるようになったのでマグワイア,カゼミロ,ワン=ビサカ,マクトミネイとボールの奪いどころになるハメ位置が左右問わず出現して相手の迂闊なパスをインターセプトしたカウンターアタックを多く見られるように。更にLBのビッドウェルも比較的高い位置に進出してオヘアが左ハーフスペース、ハジ・ライトが中央とユナイテッドのマークのズレを狙うポジションチェンジも行うようになった。

 

そしてシムズへの縦パスについてもカゼミロが瞬間的にスピードを上げられると全くついていけず、マグワイアにそれをカバー出来る脳とフィジカル的な余裕は無いので容易に後方からラインブレイクの一発が通るケースが目立ち始める。

 

流れとしてはコベントリーが掴み始めていた58分、ビッドウェルが攻撃参加し逆サイドからのパスをユナイテッド陣内深い位置でボールを受けたところ、少しボールコントロールがもたついた瞬間を見逃さずダロトが奪取。更にガルナチョもベン・シーフとのデュエルに勝ってカウンターに移行し、最終的にブルーノがボックス内左側で放ったシュートが相手に当たってゴールイン、幸運な3点目が生まれた。

 

60分を迎えて3点リード、相手は下部コンペティションのクラブとなれば後はゆっくりと時間を使いながら試合を落ち着かせていくだけ、普通ならばまず心配無用の展開だろう。だが、チームとしての意思決定の根幹を担う主軸たちが揃いも揃ってゲームをコントロールしようという意識に乏しいユナイテッドにおいてはそうはならず、相手が出力を上げるとすぐにパニックに陥る点も一向に改善される気配はない。

 

コベントリーは3枚交代、ユナイテッドもミッドウィークのリーグ戦を睨んでガルナチョを早めに下げたが、ここでラッシュフォードも一緒に下げてピッチ上に伝える交代理由を明確にすると共に、ワン=ビサカの守備対応の悪さを献身的なプレスバックでカバーしろというメッセージ付きでアマドやフォーソンを投入するのが取るべき選択肢だったと考える。

 

交代で入ったファビオ・タバレスは裏抜けやテイクオンを脳裏によぎらせてからのクロスと的確にワン=ビサカの弱点を突くプレーで右サイドを蹂躙し、ここにファン・エヴァイクやモヘアが絡む事でこのサイドを掌握。70分にはロングボールをはじき返した所から、そのワン=ビサカの帰陣の遅さで完全フリーになっていたタバレスのクロスにシムズがダイレクトで技ありボレーを決めて1点を返す。

 

更によく見ると中盤化していたダロトとCBのカゼミロの間でマークの受け渡しに関するコミュニケーションエラーが起きている様も確認されており、ダロトは身振り手振りでカゼミロのスライドを促したが、ブラジル代表MFはダロトにそのままマークに付き続けろとも何もアクションを起こさずただただ反応が遅れてシュートの瞬間にプレッシャーをかける事が出来なかった。CBには常に主体性と強いリーダーシップが必要であるというのが良く分かる局面。

 

なお、失点後のキックオフでメイヌーに代わりエリクセンを投入したテン・ハフの判断に関して、今のエリクセンがアンカーだろうがダブルピボットだろうが中盤の防波堤になれる守備強度とカバー範囲では無い事は明らかである為、まだ若いメイヌーのプレータイム制限を考えるにしても到底容認できない。ポゼッションの円滑化を狙ってどうしてもエリクセンを使いたいのならば、守備面でデュエルの強さというよりもコース制限などの理知的な判断の比重が高いトップ下オンリーだろう。もっとも、相次ぐ負傷で取れる選択肢自体を奪っているアムラバトやマウントに対する憤りの方が遥かに強いという事だけは明記しておきたい。

Embed from Getty Images  

 

78分、ユナイテッドは左サイドタッチライン際での相手のプレス網を突破し、オープンな中央にボールを移動させてカウンターチャンスを得るが、リスクを取らずシンプルにダロトを使えば確実にクロスまで行ける場面でアントニーが時間と展開を考えない間違った方向性のセルフィッシュでチャンスを潰す。

参照:MUTV | Manchester United
研究・批評目的の引用であり、著作権侵害の意図はありません

 

更に、強引に放ったシュートは至近距離で相手にブロックされ、そこからボールを収めたコベントリーのカウンターから、オヘアのミドルシュートに対し横方向からのコース制限ではなく中途半端に正面に入って尚且つ背中を晒したワン=ビサカにディフレクトしたボールはそのままネットを揺らす。あっという間に1点差になってしまった。

 

終盤に至っては完全に会場の雰囲気もコベントリーに持っていかれて防戦一方というマン・ユナイテッド。アディショナルタイムに入って3分、右サイドで前に出たダロトがボールを奪い切れず、カバーに入ったエリクセンもクロスを狙うハジ・ライトに対して制限をかける事が出来ずに放り込まれたクロスに対し、バランスを取るための防ぎ切れない動作でもなく1テンポ前から何故か手を広げてボールに向かっていったワン=ビサカがハンドの反則を取られて痛恨のPK。前日のマン・シティ-チェルシーのグリーリッシュの件と比較して何故判定が分かれたのかと疑問に思う部分もあるが、そもそもの対応が迂闊すぎるところが問題。

 

3点のリードを守り切れないならば一体いつ勝てるんだ?というあまりにも残念なパフォーマンスで試合はまさかの延長戦へ。

 

 

延長・PK

 

同点に追いつかれた直後にラッシュフォードを下げてアマドを投入した指揮官の決断の遅さに辟易して始まった延長戦は脚を気にしながら気力で持ちこたえる様子を至る所で見るようなタフな戦い。

 

ユナイテッドが最初の15分で得点に近づいた瞬間は相手のエラーから最後はブルーノのシュートがクロスバーを叩いた94分のシーンくらいで、スタミナ切れか完全に足が止まっているカゼミロがウィークポイントに。一方、ふくらはぎや太ももを気にしながらそれでも全力ダッシュを続けるブルーノ,ダロト,ホイルンドの精神的な強さは心強い。

 

マクトミネイとタバレス、両クラブ1人ずつパンクする選手が出てカードを切った最後の15分は戦術云々ではなくどれだけ無理を利かせられるかがその瞬間の勝負を分ける事になる。

 

アマドのNo.8については元々狭い空間でのリンクプレーが得意で味方の空けたスペースを活かす事も以前より上手くなっているのでポゼッションではかなり可能性を感じる。メイヌーと同時起用を考える場合はストレングス不足が気になるのでその辺りの調整は難しくなるが今後も見てみたい起用法ではある。

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120分を越えたエクストラタイムには、被カウンターからまたしてもダロトとカゼミロ間のコミュニケーションエラーでボールを持っているモヘアに対しダブルコミットしてしまい、更にワン=ビサカがラインを合わせなかったためモヘア→ハジ・ライト→ヴィクトル・トープとパスを繋がれてネットを揺らされる。

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その後、VARで僅かにライトのプレー可能部位がオフサイドの位置にあった事が判明して奇跡的に失点は取り消されたものの、+1として余るべきところでボールだけに目を奪われたカゼミロとボールとは反対側のサイドで全てを俯瞰しているにもかかわらず明らかにラインを1人で大きく下げているワン=ビサカの判断はただただマズいとしか言いようがない。

参照:MUTV | Manchester United
研究・批評目的の引用であり、著作権侵害の意図はありません

 

120分でも決着つかず、ファイナルに進出する1枠の行く末はPK戦に委ねられた

 

PK戦の結果について、結論から先に書くと

ユナイテッド:×○○○○

コベントリー:○○××

4-2でユナイテッドが勝利。

 

まず、先攻1人目のカゼミロがふざけているのかと怒鳴り散らしたくなるような弱々しい真ん中へのキックであっさり止められて流れは完全にコベントリーに傾いたように思われた。

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実際にスカイブルーの2人目までは素晴らしいキックでゴールネットを揺らし、もはやこれまでかと半分諦めに近い感情で11mの間合いで行われる1v1の勝負を見守っていた赤い悪魔のファンが大半だろう。ただ、120分間走り切って得点にも関与しているオヘアのキックをオナナが完璧に読んでストップすると、続く4人目のベン・シーフは枠を捉えられず形勢逆転。

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2人目のダロトから3者連続で成功していたユナイテッドの5人目のキッカーはホイルンド。GKに読まれていても止められないシュートコース・スピードを兼ね備えたお手本のようなキックでゴールネット右下隅を強烈に揺らして勝負あり。

 

なお、この直後のアントニーの煽り行為には2失点目の要因になったセルフィッシュ同様に彼の精神的未熟さが現れていると個人的に考えているが、それとは別にその場のキリトリで批判が過熱し過ぎているように思う。今季の成績や移籍金と絡めて全てを否定するかの如く言論にはNOと言いたい。

 そしてモペイは同じ状況で必ず似たような煽り行為をするだろう。これはプレミアリーグをある程度見ている方ならほぼ一致する意見な筈(苦笑)

 

 

データ

 

Standard


シュート数やコーナーキックの数を見ると120分を戦ったスタッツには見えないが、パス本数で辛うじて試合の長さが伝わってくるという両チームのデータ。更にユナイテッドは28本中11本を最初の45分で放っており、逆にコベントリーは同期間で1本しかシュートを記録していないという対照的な内訳でもある。

 

キーパスを見ると2番手のファン・エヴァイクとダロトに6本差をつけて断トツ1位のブルーノが一見飛びぬけて見えるが、逆に言えば9回もシュートに直結するパスを出していながらアシストが1つしかないというところにチームとしてのフィニッシュ精度の低さとブルーノのパスの受け手にとっての難易度の高さが出ているのかもしれない。

 

xG

 

 

markstats算出のゴール期待値はコベントリー2.06、ユナイテッド2.6。xTもほとんど差がついていない事からPKを考慮しても両クラブの戦いぶりは拮抗していたと結論づけられるが、昨季のプレミア昇格プレーオフ決勝進出チームとはいえチャンピオンシップで今シーズン8位の相手に5分というのは到底容認できない内容。守備アクションの平均の高さが相手よりも4m低い事もCBの足の遅さからくるラインを上げられない問題がよく現れている。

 

また、PASSING NETWORKではダロト,ガルナチョ,ホイルンドが輪から外されているような歪なつながりとなっており、選手個々のポゼッション能力からすれば右サイド中心で良いくらいのところをワン=ビサカ-ラッシュフォード間の関係性が機能しない左サイドに過剰にボールを集めてしまう俯瞰力の乏しさ。ホイルンドに関してはロングボールを当てた後や裏抜け時の後方のサポートがいつまで経っても十分に与えられないので本当に不憫でならない。

 

 

あとがき


流石にブレーズ戦は気持ち良く勝ってくれると信じたいがゲームの閉め方を知らない今のチームは例え5点リードでも安泰とは言えないくらいに見ていて不安。しかもマクトミネイが再負傷という報道もあってCBに続き中盤の人員すら足りなくなっている疑惑もある……