※24/25 イングリッシュプレミアリーグ
マンチェスター・ユナイテッド vsレスター・シティ 戦の記事です。
ペナルティボックス 外から2発得点が生まれたのはツキもありましたが、スコア上は3-0と完勝でインターナショナルウィークに突入。ルート・ファン・ニステルローイ 暫定監督は指揮した4試合で3勝1分けと見事な結果を残し次のボスへバトンを繋ぐ。本当にありがとう!! またどこかで会える日を待っています。
【Match Review】
Starting lineup
ベンチ入り マンチェスター・ユナイテッド 1 Bayındır, 2 Lindelöf, 7 Mount, 11 Zirkzee, 14 Eriksen, 17 Garnacho, 21 Antony, 22 Heaton, 35 J.Evansレスター 1 D.Ward, 4 C.Coady, 5 Okoli, 10 Mavididi, 11 El Khannouss, 17 Choudhury, 22 O.Skipp, 29 O.Édouard, 35 McAteer
前半
ユナイテッドはプレスラインを低めに設定しダブルピボットがどちらもCBの前に残った状態を確保しながら相手を待ち構えるファン・ニステルローイ 体制での特徴でもあるミドルローのブロック守備を採用。あえて中盤と前線の間のスペースを広く取る事でロングボールを落とす空間を確保し、無理に足元で繋ごうとせずにカウンター向きの主力選手(ラッシュフォード,ブルーノ)を素直に活かそうとするのもこれまでの3試合と同様。
全体的な傾向としてはターンオーバーになってひっくり返されたり、或いは低い位置で無理やりショートパスを選んでボールを奪われショートカウンター を食らったりという失点に直結するエラーを回避しようという意図が強く、これはそもそもカゼミロ-ウガルテという守備的な中盤の組み合わせを見ても明らかではある。守備における個人戦 術の面でまだまだ課題の多いユナイテッドだが、人数が確保されていて前向きに対処できる状況ならばそう簡単にやられる事は無いという判断もあると思われる。
レスターは4-1-2-3をベースにハリー・ウィンクスが中盤の底で構え、ブバカリ・スマレが上下に大きく動く事で相手のプレス強度や枚数に応じてウィンクスのサポートに入るかNo.8として一列前に向かうかをその都度変えていく。右サイドのブオナノッテは内側に入ってプレーしたがる傾向にあり、その分RBのジャスティ ンは外で幅を取りウイング化するケースが多かった。
また、ミッドウィークのPAOK 戦で2ゴールのアマドに対してはクリスティアン セン1人ではなく、オープンな展開ではない限りほぼ必ずアブドゥル・ファタウ、エンディディ、スキップの誰かがサポートに入って挟み込んで奪いに行ける態勢作りを意識していたが、それでも奪い切れず時間を稼がれたりボックス内に侵入されてしまうのだからアマドのボールプレーは圧倒的。
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左サイドはラッシュフォードが少し低い位置でボールを受ける代わりにマズラウィがNo.8として振る舞う事が多く、これまではDM2枚のうち一方が担っていた役目を代わりにLBが請け負う形。これによって普段は左側にプレーエリアが寄りがちなブルーノがバランスよく位置取りするようになり、なおかつウガルテ-カゼミロが中央で二重のフィルターとして残っているのでボールロスト後のカウンタープレスも決まりやすくなった。
17分、相手CK後のこぼれ球をホイルンドが大きくクリアすると、ハイボール に目測を合わせられずバウンドさせたクリスティアン センのまずい対応を見逃さなかったアマドがボールを掻っ攫い深い位置までボールを運んでスローイン を獲得。
そして、マズラウィのスローを受けたブルーノはそのまま左サイドに残っていたアマドにアウトサイドキックでボールを預け、前の試合で2ゴールのウインガー は縦に向かうフリをして完全に相手の虚を突いたヒールキックでリターンパスを通すと、最後はポルトガル 代表MFの狙いすましたミドルショットが決まりユナイテッド先制!!
ファン・ニステルローイ 体制では4戦4発と一気に得点感覚を取り戻してきたブルーノのシュートは勿論素晴らしいが、チャンスのキッカケを守備で作りその後のプレーでも相手の脳裏に無いプレーを作り出す閃きでアシストを記録したアマドを称えたい。彼のチャンスクリエイト能力はヨーロッパフットボール 全体で見てもTOP10に入るのではないかというくらい個人的には高く買っているので、見た目の派手さも抜群なこのプレーを以って正しく評価されるようになってくれれば幸いだ。
リードを得たユナイテッドだが、相手左ウインガー のファタウには手を焼くシーンが多くなっていく。本来は右サイドでカットインと縦突破の2択を押し付けながら後出しでその場に合ったプレーを選ぶ事で優位性を得る逆足ウインガー だが、実質その片方を封じられた利き足サイド起用でもコンディション不良感もあったとはいえダロトを手玉に取れるくらいにクイックネスとボールスキルを兼ね添えているため非常に厄介なアタッカーである事を認識させられる。
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4-1-4-1ミドルブロックをベースにしつつ、オナナへのバックパスやDFラインでの距離感の長い横パスを合図にハイプレスをかけるレスターの守備に対して時折怪しい場面はあったが、奪われた後の相手のショートカウンター のクオリティがそれ程ではなかった点やラインを割ってスローイン になるケースが多かった事もあって致命的なエラーにはならず、安定しているとは言い難いもののリードを守って時計の針を進めていくホームチーム 。
両チームのショートパスに注目すると明らかにボールの減速具合が強く水しぶきも舞っているのでグラウンドの水分量は非常に多かったと思われ、グラウンダーパスでもただ転がすのではなく芝上を滑らせるようなスライス性の回転が求められていた。
38分、パスコースがなく苦し紛れに前線を狙ったファエス のミドルパス を回収してポゼッションへ移行したユナイテッドはラッシュフォード→ブルーノへの斜めの鋭いパスでアタッキングサード へ侵入し、その後左外で幅を取っていたマズラウィにボールが渡ると、ゴール前を狙ったインスイングキックに対してホイルンドがニアで潰れ役になって相手DF2枚を釣り出し、ファー側から中央に忍び込んだブルーノがクロスに合わせて追加点。公式記録は最後にボールに触れてコースを変えたクリスティアン センのオウンゴール となっている。
今回はホイルンドがデコイになったが、オンターゲット率やシュート数に対する得点率で優秀なスタッツを残す彼をフィニッシャーにする為に周りが囮になるパターンももっと増やしていきたい。
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アディショナルタイム にはレスターのCKを防いだ後のオープンな展開から、相手のクリアが中途半端になった所を逃さずショートカウンター のチャンスを作りウィンクス,ヴェスターゴーア,ファエス を立て続けに交わしたアマドがゴール前で決定機を得るも、expected statsでリーグ屈指の指標を叩き出しているハーマンセンが意地を見せてアウェイチームは致命傷となる3失点目は許さず何とか2失点で凌ぎハーフタイムへ。
後半
両チーム入れ替え無しで始まった後半。ピッチコンディションの影響でコントロール が難しく足元からボールが離れる瞬間が多い展開で輝きを増していったのはその一瞬の隙を見逃さない素早いタックル・インターセプト でボール奪取を積み重ねていくウガルテ。リカバリ ーとキャリーに仕事を集中させるとこれ程までに圧倒的なパフォーマンスを発揮するのかと改めて実感する試合でもあり、ルベン・アモリム のチームでも恐らくこの役割で重要なパーツになる事が想像できる。
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早めに交代策に出る傾向がここまでの3試合で確認されたファン・ニステルローイ はこの日も60分を前に早速2人の入れ替え。まずは足さばきに若干の違和感を感じる上にファタウとの対面で苦しい対応が続いたダロトに代えてエヴァ ンスを投入しリチャがLB、マズラウィがRBへそれぞれ移動。続いてラッシュフォードに代えてガルナチョを投入しフレッシュなアタッカーを置く事でカウンターから更なる追加点を狙う。
2点ビハインドのフォクシーズがそれほどギアを上げてこない/これなかった事もあって静かに進む後半だが、元々ゲームの閉じ方が下手なユナイテッドにとってはこれは好都合。ファタウの個による局面打開さえ防げればゴール前を脅かされる事はないという展開に。
80分前には疲労 なのか怪我なのかは不明だがピッチに座り込んだカゼミロを下げてエリクセン を投入。先述のダロトも含め、ここで無理をさせなかった判断が後に生きてくるかもしれない。
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82分、レスターのCKとその後の2次攻撃を凌いだユナイテッドはカウンターに移行。ジルクゼー,エリクセン が相手のプレッシャーをいなした事でスペースのある状況でブルーノにボールが渡り、3,4人のディフェンダー の視線を集めたポルトガル 代表MFは警戒が薄れたガルナチョにパスを送る。最高のお膳立てに対しここ最近の焦りが全面に出たプレーとは打って変わって落ち着いてテイクバックを取りシュートに及んだガルナチョのカーブショットは美しい弧を描いてゴール右上へ吸い込まれていった。
また、一連の流れを見ると、ジルクゼーの適性は純粋なストライカ ーというよりもトップ下、何なら一歩遅れてボックス内に侵入してカットバックに反応するのが得点パターンである事を踏まえると更に一列下がってDeep-Lying Playmakerなのではないかと改めて最も強みを発揮させられる使い方について考えさせられた。丁度今のチームでエリクセン が担っている役割をそのまま継承するとピッタリはまりそうな気配もする。
スコアはこのまま3-0でユナイテッドがインターナショナルウィーク前最後の試合を完勝。
4試合3勝1分けで暫定監督としての仕事を終えた後、ルベン・アモリム の新体制には残らずクラブを離れる事が試合翌日に明かされたルート・ファン・ニステルローイ 。無理な部分は切り捨てて得意な形に集中させるという短期的に結果を残す上では非常に合理的な采配を執ってチームに自信を取り戻させてくれた事に心から感謝したい。
データ
Standard
シュート数が両チーム合わせても20本未満という事でそれほど得点機会の多い試合では無かった。ユナイテッドは3本のオンターゲットで3ゴールを奪っているが、オウンゴール の2点目はカウントされておらず、残り1度のチャンスもアマドがゴール前まで侵入した決定機だったが相手GKのファインセーブに阻まれている。
相変わらず低い枠内シュート率は気がかりであるものの、ファウルを一桁に抑えてイエローカード 0で終えたのはポジティブに捉えたい。
選手個人では1ゴール1アシストのブルーノがMOTMだが、これはスペースのある攻撃が増えたファン・ニステルローイ 体制での恩恵に授かった結果とも言える。同郷のアモリム が指揮する代表戦明けのチームでどうなるかは良くも悪くも予想出来ない。
xG
参照:
Manchester United 3 - 0 Leicester (November 10 2024) | EPL | 2024/2025 | xG | Understat.com
ゴール期待値はホームチーム 1.24に対しアウェイチーム0 .42と枠内シュートの少なさがそのまま数字に反映されている。試合を通してビッグチャンスは3度で、それらはいずれも得点に結びついていないのもこの一戦を象徴している。
ほとんど同じゾーンから決まったブルーノ,ガルナチョのミドルシュート はそれぞれxG :0.02,xG :0.04と再現性は低いので、今後はゴール前での得点機会、出来ればゴール前を通過してファーポストやその先のポケットに落とす相手の視点の穴を突くようなフィニッシュワークを確立してもらいたい。
PASSING NETWORKは引き続き縦の距離感を意図的に広げてロングボールが刺さりやすい状況を作ろうとしている事が見えてくる。マズラウィがNo.8になる結果として左サイドで細かい線が多くつながっており、右サイドはアマドの個人打開力で形を保たせるという結果に。ただ、サポートが皆無だった訳ではなく、ブルーノが水平、カゼミロが斜め後ろのバックアップに回っていたので悪い意味での孤立感は無い。
あとがき
今回の3ゴールでプレミアリーグ での得失点はようやく±0まで戻ってきた。(12G-12GA)
レスター視点ではエンディディやファタウを最大化出来ていないように見えたので勿体なさを感じており、仮に後者をRWにして前者がゴール前に侵入してシュートチャンスに向かう回数が増えていれば正直これほど簡単に勝てる試合では無かったかもしれない。