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【Match Review】スペインvsドイツ
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ベンチ入り
スペイン
1 Raya, 4 Nacho, 5 Vivian, 6 Merino, 9 Joselu, 10 Dani Olmo, 11 Ferran Torres, 12 Grimaldo, 13 Remiro, 15 A.Baena, 18 Zubimendi, 21 Oyarzabal, 22 J.Navas, 25 F.López, 26 Ayoze Pérez
ドイツ
5 Groß, 9 Füllkrug, 11 Führich, 12 O.Baumann, 13 T.Müller, 14 M.Beier, 15 Schlotterbeck, 16 W.Anton, 17 Wirtz, 18 Mittelstädt, 20 Henrichs, 22 Ter Stegen, 23 Andrich, 24 Koch, 26 Undav
前半
試合開始からまだ間もない4分、敵陣でボールを失ったドイツは鋭いカウンタープレスで相手の攻撃を潰すが、この際にクロースの残した脚がペドリの膝にぶつかる形で危険な接触。治療のあと一旦はプレーに復帰したが、やはり左膝が気になる素振りを見せてラ・ロハはいきなり重要な選手を失う。
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代役に指名されたダニ・オルモはより相手陣内でMF-DFライン間での貢献に比重を置いたシャド―ストライカー要素の強い選手という事もあってか、スペインはゴールキーパからのビルドアップでロドリとファビアンを並列に置く3(1-2)-4の台形となり、ドイツもCB+MF2枚にはタイトにマークをつけてくるので結果としてGKウナイ・シモンのミドル・ロングフィードで相手の前線プレスを回避する回数が多くなった。
オルモはDFラインに張り付いてレーダーに捕捉されるのではなく、距離をとって前向きかつスピードに乗ったor乗りやすい状態でボールを受ける事が上手い為、彼がスペインのサイドアタックの出口となりアタッキングサードで常にドイツの脅威に。
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このレベルのマッチアップになるとターンオーバー(カウンター)が発生してもよほど全員が前掛りになっていない限りは中央封鎖が早いため、打開手段は準備が整う前にDFライン裏にロングボールを落とすかサイドから個の質・位置取り・連携の優位性を作って崩すかのどちらかになりがちだが、こうなるとフルバックとウインガーのコンビネーションが抜群なスペインが試合の主導権を握る形となる。
開催国はリュディガーのフィードをハヴァーツがバイタルエリアで収めた35分のチャンスが最もゴールに近づいた瞬間で前半はトータルシュート3本。スペインはボックス内に侵入した回数で上回りシュートも8本放ったものの、xGベースで比較すると共に0.50未満と様子見と守備強度の高さの両面で決定機の無い前半。
そしてククレジャのネガティブトランジションの速さと危険になりそうなスペースを埋める察知力は今大会常に素晴らしい。
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後半
ドイツは2人、スペインは1人選手交代を行い両チーム不安要素を取り除くような入れ替えをHTで決断。ル・ノルマンはイエローカードを既に貰っていて強く当たりに行けない懸念、サネはハーフスペースでの仕事がメインなので小回りの利かなさで活きず、エムレ・ジャンはファビアン・ルイス対象のマーク屋として一定の仕事を果たしたものの、それ以外の貢献が薄かったというのがそれぞれの交代理由だと推測している。
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47分、ウナイ・シモンのフィードをムシアラの背後で受けたカルバハルがそのままピッチを斜めに横断するようにボールを持ち運び、中央で待つオルモへパス。そこからボックス内のニコ・ウィリアムズにボールが渡り、ニコは逆サイドのヤマルへロブパスを送ると、16歳のウインガーからお膳立てを受けたモラタはヨナタン・ターを背負いながら強引にシュート。枠を捉えられなかったものの、遂にビッグチャンスを作り出した。
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タイミングよくハーフスペースに入るのがダニ・オルモならば、モラタのポゼッション時の仕事は前線から中盤に降りてパスコースを作りつつ、ターを釣り出して中央にスペースを生み出す事。そんなスペインの前線の役割分担が51分の先制点を生み出す。
ジャンに比べるとアンドリッヒはCBが迎撃した事で空くスペースを埋める意識が高いのだが、オルモの入り方が完璧であるのと本来ダブルピボットで対処するクロースの横がスペインのスムーズなコンビネーションで不在になってしまった結果遂にゴール前の守備を崩されてしまった。
リードを許したドイツは実質的なエースとなっているフュルクルクを投入しクロスからの得点パターンを作り、一方のスペインは疲労を考慮した交代策でヤマルを準決勝に向けて温存。
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この試合ではポゼッションでキミッヒに大外を取らせる事が前提となっている為、右ウイングに求められるのは大外からの局面打開よりも狭い空間での貢献度。後半からRWに入るヴィルツはサネに比べると周囲の状況を把握する事に長けており、出力では劣るがプレーのキャンセルをギリギリまで出来る点やボールタッチの細かさで勝る。
最終的にアンドリッヒのシュートまで行った69分のカウンターは正にそんな彼の長所が遺憾なく発揮されたシーンであり、ポストプレーでチャンスを繋いだフュルクルクを含めドイツの選手交代は概ね効果的だった。
真ん中での競り合いである程度無理が効くフュルクルクを最終的なターゲットに置きつつ、ここから逆算して攻撃を組み立てられるようになったドイツ。スペインが4-5-1とそこからファビアンorオルモが前に出る4-4-2のミドル~ローブロックでボールの出所にそれほどタイトにプレッシャーをかけなくなった事も相まって70分を越えた辺りからはゴールにあと一歩というチャンスを数多く作るようになり、77分には倒れ込みながらのシュートがポストに直撃する決定機。
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押せ押せのドイツに対してニコ・ウィリアムズ、モラタを下げて前線の守備をもう一度引き締めると共にカウンターからの追加点を狙うスペインだったが、ここまで素晴らしいミドル・ロングパスを連発していたGKウナイ・シモンがハヴァーツにプレゼントボールを与えるなどここにきて不安定な部分が顔を覗く。
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なお、80分にターを下げてベテランのトーマス・ミュラーをピッチに送り込んでからはアンドリッヒをCBに落としてクロースアンカー、その前にハヴァーツ,ミュラーというかなり攻撃的なラインナップに。
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89分、ドイツは相手ボックス内に6人の選手を入れるパワープレイから、ミッテルシュタットとクロスをファーでキミッヒが折り返し最後はヴィルツ!!劇的なゴールが決まり90分目前で遂に同点に追いつく。
キミッヒのヘディングはABEMA解説鄭大世氏の言う通り競り合う相手の妨害をしつつ、叩きつけるというよりはボールの軌道上に頭を置いておくようなイメージでゴール前にボールを折り返す巧みなプレーだった。
延長戦
同点に追いついた事でハイリスクの戦い方からもう一度バランスを意識するドイツはハヴァーツに変えてCBのアントンを投入しダブルピボットに中盤構成を戻す。
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延長に入っても機敏さに陰りの見られないムシアラ、ヴィルツのヤングスター2人を中心に開催国が主導権を握ったが、後半に入りPK戦も頭をよぎる119分、本来は味方に当てたかったアントンのクリアがタッチラインを割って得たスローインから敵陣でのポゼッションへ移行すると、ペナルティボックス角付近でパスを受けたオルモのインスイングクロスにメリーノが合わせて勝ち越し!!
メリーノのオフボールを見ると、一度ニア前へのダッシュを意識させてリュディガーの動きをストップさせてオルモがクロスを蹴る瞬間に方向を変えゴール前方向へ動き直すという完璧なコース取りをしており、2人の間の呼吸かそれともチーム全体の共有事項か、合わせる地点を決めておく事でそれまでの選択に幅を持たせるというハイレベルなコンビネーションが隠れている。
1996年大会以来のアンリ・ドロネートロフィーを自国開催で勝ち取る為、あるいは今大会限りでプロフットボール選手としてのキャリアにピリオドを打つと宣言しているトニ・クロースに有終の美を飾らせる為にも何としてももう一度奇跡を起こしたかったドイツだが、残された時間で次のゴールが生まれる事は無くダニ・カルバハルの退場という置き土産を次にスペインと戦うチームに残して大会を去る。
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【Match Review】ポルトガルvsフランス
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ベンチ入り
ポルトガル
1 Rui Patrício, 2 N.Semedo, 5 Dalot, 9 G.Ramos, 11 J.Félix, 12 José Sá, 13 D.Pereira, 14 Inácio, 15 J.Neves, 16 M.Nunes, 18 R.Neves, 21 D.Jota, 24 A.Silva, 25 P.Neto, 26 F.Conceição
フランス
1 B.Samba, 2 Pavard, 3 F.Mendy, 9 Giroud, 11 O.Dembélé, 15 M.Thuram, 18 Zaïre-Emery, 19 Y.Fofana, 20 Coman, 21 Clauss, 23 Aréola, 24 Konaté, 25 Barcola
前半
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ポルトガルはラウンド16と同じラインナップで臨み、フランスはサイドアタッカーを配さない中盤ダイアモンドの4-3-1-2を採用し驚きを与えてくる。基本的にひし形の攻略法は左右のセントラルMFの脇を突く事なので、ベルナルド、ブルーノの両司令塔がこのスペースに入り込む事でセレソン・ダス・キナスは序盤の主導権を握ったように見えた。
また、CM脇を突くうえで良い補助になっていたのがRWのベルナルドが中央~左サイドにかけてのポゼッションにおいてサイドレーンを大きく外れてトップ下のように振る舞って中央でのフランスのマークを混乱に陥れた事。
レ・ブルーは中央を固く閉じる4-3-3からカンテorカマヴィンガが前に出ていく4-2-4気味の守備陣形になるが、ベルナルドのフリーマン化によってより外の警戒を薄くして中に人数を割くようになる為、左サイドでクンデとの1on1に備え前残りしているラファ・レオンがより抑圧から解放される状態となってサイドチェンジから彼の個で局面を打開するシーンが多く見られた。
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ただ、レオンについては1on1で突破、或いは一歩前にでて次のプレーに移行出来る状態になった後のキック精度が初戦から著しく低く、ゴール前のロナウドの動きをまるで考慮しない左足の低いクロスを入れてはクリアされるという繰り返しでもあるので手放しに評価できる内容ではない。
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フランスのサイドレーンの扱い方はボールを持っている際にも上手くいっていない部分があり、実質ウインガーをフルバックに起用しているようなテオ・エルナンデスはともかく、右サイドでクンデが大外を取って個の力で打開しなければならない状況になる事は明らかに適性を外れている。ウパメカノのカバーがあるとはいえ、ただでさえレオンとの1on1で心身のスタミナを削られていく中、攻撃時に高い位置を取って尚且つチャンスクリエイトまでやれというのは1人の選手に多くのタスクを背負わせ過ぎだろう。
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もしもこの右サイドにグリーズマンやエンバペが顔を出してレオンの守備免除を突く形をフランスが取っていたとすれば、両チーム合わせてオンターゲット1本というゴール前の迫力に欠けた前半ではなかったかもしれないが、ポルトガルもフランスも残念ながらコーチングスタッフ発信の修正力には乏しく、ピッチ上の機転頼りなので変化のない45分は両者非合理な要素を多く含んだまま終了。
後半
フランスは少し攻め方を変え、自分から相手に飛び込んでいく、或いは自分の間合いで勝負出来る対人では強いもののオフボールへの対応や逆サイドからのクロスなど受け身になる守備がとことん苦手なカンセロに対しテオやエンバペが積極的に背後を狙い始める。
また、前線の守り方、特に構造上の問題で劣勢だったクンデvsレオンの右サイドに人数を増やす為、コロ・ムアニが中央から外に意識を寄せて守るようになり、出来るだけ2人以上で強力な相手FWに対峙するように修正。
これらの変化もあってポルトガルも前半ほどは簡単にミドルサードにボールを進められなくなったが、ターンオーバーからの速攻や左に比べれば警戒されていない右大外のカンセロ経由のコンビネーション等で相手ゴールに忍び寄る。60分のブルーノのシュートとそのこぼれ球から再展開したカンセロのボックス内からの一撃は相手GKメニャンの好反応に阻まれ得点に繋がらなかったものの、ようやく最終局面まで到達して可能性を感じさせるものだった。
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この直後にもヴィチーニャがボールを運んでレオンを経由しリターンを受けてゴール前での決定機を作り、ポルトガルペースは確実と思ったが、前掛りになった所でのフランスのカウンターはやはり強烈。なお、66分のコロムアニのシュートに至るまでのプレーを見て頂けると一目瞭然だが、守備のセオリー自体は分かっているのでやろうと思えば効果的なプレーが出来るロナウドと違い、レオンの場合はそもそもの座学が足りていない印象すら受けるほど根本からツッコミどころの多い対応をしてしまう。
(このケースでは最初から自分が内にいたにも関わらず、タッチライン側に押し出すのではなく何故か外に回ってボールホルダーを追いかけている)
フランスがグリーズマンを下げてデンベレを投入し彼の個人打開で右サイドを掌握するようになると今度は彼らがゲームをコントロールするようになり、尚且つロベルト・マルティネスがブルーノに代えてフランシスコ・コンセイソンという交代策を行った後はただでさえ相手DFとの駆け引きに対して勝負になるクロスやパスがなかなか出てこなかったロナウドがより一層孤立を深めてしまう。
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カウンター要員としてアウト・オブ・ポゼッションでの前残りが許され、他に比べれば体力の消耗が抑えられているかに見えたレオンもこの辺りでは既に余力を使い果たしたかの如く存在感が消え失せ、選手交代でフランスが勢いづくのと対照的にポルトガルは悪化の一途を辿りながら90分を終える。
延長・PK戦
93分、コンセイソンのテイクオンからようやくロナウドにチャンスらしいチャンスが舞い込んできたが、僅かにイレギュラーバウンドしたボールに合わせきる事が出来ず。
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ベルナルドがロナウドの横に出る4-4-2で守るポルトガルはファーストプレスで相手のプレーを限定できないと2:3になっている中盤の枚数差でフランス打開されてしまう為、CMにかかる守備負担は大きい。延長前にパリーニャを下げたのは恐らくこれが理由だと思われる。
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延長前半いっぱいで交代したエンバペについては身体面で鼻骨骨折の影響は特に見られなかったが、フェイスガードによる視界悪化が作用しているのかボールプレーの精度が普段よりも低く、なれるまで狭いスペースでは頼りにならなそうな雰囲気。
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延長後半はレオンとの入れ替えで投入されたフェリックスがロナウドの衛星役としてフィニッシュワークでの存在感を発揮しつつも、シュート精度が今一歩でヒーローになり切れず、ガス欠になりながらも要所での強度の高さを120分維持したヌーノ・メンデスにも最後の最後で決定機が生まれたがこちらもモノに出来ず、ポルトガルにとっては悔いの残る15分に。
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ゴールが生まれないまま突入したPK戦では先攻フランス、後攻ポルトガルの2人目まで順調にネットを揺らす。先攻3人目のクンデがショットスピード、コース共に完璧なキックを決めた後、後攻のフェリックスは短い助走+途中でストップを入れるというフラグを積み重ねて失敗。
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ディオゴ・コスタの神通力もここでは振るわず、完全にヤマ勘で飛んでいるような所をレ・ブルーの面々に見透かされたかことごとく反対側に蹴られ続けて最終結果5-3でディディエ・デシャン率いるフランスがセミファイナル進出。