*21/22イングランド・プレミアリーグ第7節
マンチェスター・ユナイテッドvsエバートン戦の記事です。
インターナショナルブレイク前最後の試合は地域間のライバル関係でもあるエバートンをオールド・トラッフォードに迎えたリーグ戦。
勝敗に関わらず後半ATに点が動くような不安定な試合を続けているユナイテッドにとってはここで盤石な勝利を収めてリーグ再開後の厳しい連戦にタメを作りたいところですが果たしてどうなったのでしょうか。
プレビュー
タイトル通りカバーニの相性がすこぶる良く、他にはアントニー・マルシャルが通算13試合7ゴール3アシストと結果を残しているのでもしかするとスタメン抜擢もあるかもしれない。
トフィーズは主軸の負傷が相次ぎ飛車角落ちの状態で対戦成績の悪い赤い悪魔との対戦を余儀なくされましたが、ユナイテッドはボール保持に苦しみ選手選考や起用法にも方向性がイマイチ見えてこないので、ブロックを敷いてカウンターというシンプルなプランを完遂出来れば勝機も十分ある。
マンチェスター・ユナイテッド
ハリー・マグワイア
マーカス・ラッシュフォード
エバートン
ドミニク・キャルバート=ルーウィン
シェイマス・コールマン
リシャルリソン
アンドレ・ゴメス
ファビアン・デルフ
スタメン
試合内容
ミッドウィークのビジャレアル戦に続きスポーツ界の著名人がスタジアムに訪れており、この日は引き続き観戦したウサイン・ボルトだけでなくUFC王者の"KHABIB"ことハビブ・ヌルマドメドフの姿が。
左からサー・アレックス・ファーガソン、ウサイン・ボルト、パトリス・エヴラ、ハビブ・ヌルマドメドフ
前半
1トップにロナウドではなくカバーニが入った事で組み立てにおけるFWの貢献が大きく向上し、見た目上では両サイドが高さ広さを取った変則2トップのような形になったユナイテッド。
対してエバートンは中盤2枚の位置関係が左右というより上下に近く、平均ポジションにすると大体このような形になっています。
カバーニが降りて中盤が実質4枚となった事で縦パスを中々入れられないフレッジ-マクトミネイ ペアの弱点が顕在化しにくくなり、逆にマルシャルの"動かなさ"も相手RBを引き付ける良いアクセントとして作用していたので最初の顔合わせ段階では完全にユナイテッドが主導権を取ったように見えました。
実際に15分までのポゼッションを見ると66.8-33.2(Whoscored)と久々に目的通りの展開に持ち込む事が出来ており、11分のワン=ビサカ迎撃失敗⇒カバーに入ったリンデロフも競り合い敗北⇒空いたスペースを埋めないマクトミネイというシーンを除けばエバートンに得点チャンスを全く与えていません。
ただ、上記のように中盤のフィルター機能不全とセットプレー守備のまずさは一向に改善される気配なく、16分には左サイドからのFKで元ユナイテッドアカデミーのマイケル・キーンにニアサイドで合わされるヴィラ戦の失点と同じ形を許してしまいます。
ホームチームの決定機は21分。
左サイドのボール保持からフレッジの右足クロスに合わせたエル・マタドールのヘディングシュート。
敵陣に入りペースを落としてコントロールした状況からこのようなチャンスを生み出せたのは今後に向けた収穫ですが、シュートは惜しくもピックフォードの好セーブに阻まれます。
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— DAZN Japan (@DAZN_JPN) October 2, 2021
ピンポイントクロスから
ドンピシャヘッド👤💥⚽
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フレッジの高精度なクロスを
カバーニが合わせたが、
GKピックフォードの好セーブに阻まれる。
🏴プレミアリーグ第7節
🆚マンチェスター・U×エヴァートン
📱#DAZN ライブ配信中#PremierLeagueDAZN pic.twitter.com/tXy2pKoAXx
25分にはフレッジの安易なパスミスから手薄になったサイドを崩されサロモン・ロンドンにシュートチャンスもリンデロフのシュートブロックに救われます。
このシーンが正に代表例ですが、今季のユナイテッドは
- シンプルなショートパスにおけるミス
- カウンタープレスなのかリトリートなのかハッキリしない失った後の守備
- 全体的に帰陣の意識・速度の遅いフィールドプレイヤー
という余りにも致命的な欠陥が見られ、後述する失点シーンもものの見事にこのポイントが追求されるようなものでした。
そしてこの辺りからまたしても2コートマッチと化して試合を制御下に置けないようになり、30分台はエバートンに得点チャンスを3度許す非常に危ない時間帯でした。
それでも、43分のユナイテッドはグリーンウッド→ブルーノへの鋭い斜めのパスが通り、タメを作った18番のラストパスからマルシャルが9vs0で快勝した昨季のセインツ戦以来となるプレミアリーグでの得点を記録し前半一点リードで折り返す事に成功。
後半
前半同様最初の立ち上がりはユナイテッド優位に進みますが、57分にマルシャル🔁サンチョ、カバーニ🔁ロナウドと2枚替えを行った辺りから状況は一変。
前述のようにフレッジ-マクトミネイのパス能力の低さをカバーしていたカバーニが去り、フィニッシャーに特化しているロナウドにFWが変わった事もあって中盤の人数が不足しがちに。
この時点で追加点が欲しい気持ちは十分理解できますが、後から振り返るとロナウド投入ならば中2日で動きの鈍っていたグリーンウッドかそもそも運動量の見込める選手ではないマルシャルとの交代にすべきであり、2枚目のカードはMcFredのところを弄るような形にすべきだった。
そして問題の65分。
ニアサイドに低いボールを入れたブルーノとファーサイドに人員を割いた中の意思が合わずあっさりボールを奪われたユナイテッドのコーナーキック後、デマレイ・グレイとのデュエルで2連敗したフレッジが相手コートでボールを奪い返せず、その後も人数で上回りながら何故か自分の居場所を放棄して右サイドにプレッシングに行ったルーク・ショーのボーンヘッドもあってアンドロス・タウンゼントにみすみすGKとの1on1を許し失点。
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— DAZN Japan (@DAZN_JPN) October 2, 2021
本人の目の前で見せつけた
「SIUUUUUU」セレブレーション!
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エヴァートンの高速カウンターから#タウンゼン が見事にネットを揺らした👏
🏴プレミアリーグ第7節
🆚マンチェスター・U×エヴァートン
📱#DAZN ライブ配信中#PremierLeagueDAZN pic.twitter.com/uuxkle96Ds
何が悪いかといえば全てと言いたいくらい酷いエラーが連発していますが、直接的な因果を残した2人以外にも、DMなのにボールが自陣方向に向かう場面で前残りしているマクトミネイには重大な責任が問われる場面です。
この試合ではワン=ビサカのサイドを突破されるシーンが目立ちましたが、その大半がマクトミネイのフィルターがまるで機能せずその場に漂うばかりに終始したところに起因しているので気を引き締めて欲しい。
確かに、この試合でも左脚にテーピングをグルグル巻きにしていたショーを含め怪我明けでコンディションが万全ではないのかもしれませんが、第4節ニューカッスル戦でも同様の失点を喫しているので、単なる選手個人の問題ではなくオーレを含めコーチ陣の修正能力にも疑問が呈されます。
その後ユナイテッドはLWに入ったサンチョのチャンスメイクから何度か相手ゴールに近づくチャンスを作りますが90分にはロナウドのヒールパスにお膳立てされた決定機をそのサンチョ自身がモノに出来ず。
寧ろ、85分にまたしてもCK後の守備から全員がボールウォッチャーと化したエバートン側の決定機でトムデイビスが何故かパスを選択した事でオフサイドに救われた幸運に感謝すべき試合。
本来ならば連敗していたでしょう。
ハイライト
選手交代
57分 マルシャル🔁サンチョ
70分 フレッジ🔁ポグバ
72分 A.ゴードン🔁T.デイビス
90⁺²分 D.グレイ🔁L.ドビン
データ
ポゼッションという面でみれば一定の成果が出ているようにも見えますが、3割未満の相手に12本ものシュートを打たれている時点で全くもってその逆。
本当にオーレがコントロールに重きを置いた試合運びを望むというのであれば、昨季までのカウンタースタイルで大きな貢献を見せたMcFredの解体を考える必要があります。
そして、彼らの守備貢献自体も今季は大きく低下しており、Sofascoreによれば殆どのスタッツで昨季を下回る結果が出ています。
20/21⇒21/22
マクトミネイ
タックル/Game :0.9⇒1.0
インターセプト/Game :1.6⇒1.0
地上デュエル勝利/Game(勝率) :3.7(58%)⇒2.6(52%)
タックル/Game :1.5⇒0.8
インターセプト/Game :2.7⇒2.5
地上デュエル勝率 :4.5(49%)⇒4.0(45%)
今後は強豪相手が続き、カウンターベースの試合が多くなりそうなのでこの2人が主戦になる事に不満はありませんが、ボール保持に比重を置く今回のような試合ではマティッチやポグバ、そしてファン・デ・ベークのDM起用をもっと増やすべきでしょう。
これはオーレ政権通じての印象なのですが、スパンを問わずプランA自体は優秀な場合が多いものの次の一手で毎回後手に回りがち。
タイトルを本気で狙うのであれば修正能力-特に守備構築優れたコーチをチームに加えないと厳しいと言わざるを得ず、シーズンを経るにつれてスタッツが悪化していく一方です。(今季このままテコ入れ無しで終えた場合、18/19の54失点を超えて近年最低の失点数になってしまいかねない守備スタッツ。)
xG
見かけ上のxGでも負けていますが、オフサイドになって幻となった85分のプレーを含めると完全に攻撃の質でエバートンが上回っており、彼らからすれば勝ち点3をみすみす逃してしまった悔しい試合と言えるかもしれません。
あとがき
チームプレイヤー
過去の自分がこんなつぶやきをしていた事をふと思い出しました
正直チームプレイヤー不足になりそうな気配するから本音は反対だけど
— いろ覇 (@KeVLf3UVa5SKK0d) August 30, 2021
今季大きな問題になっている高い位置(CKも含め)でボールを失った後のトランジション、そしてカウンタープレスが機能しない事についてですが、昨季までのユナイテッドではこういった問題が単発的に出る事はあってもジェームズをウイングに起用し、彼の守備意識と走力で何とかカバーした試合も多かったと記憶しています。
Counterattack? @Daniel_James_97 said... 𝗡𝗼𝗽𝗲. 😤#MUFC #PL pic.twitter.com/WnJEmLoTaY
— Manchester United (@ManUtd) August 17, 2021
今季も開幕戦でスタメン起用しているジェームズの移籍は本当にオーレ主導だったのかという所にまで踏み込むとキリがありませんが、ともかくジェームズに代わるチームプレイヤーを現状のスカッド、或いは下部から抜擢するのは中々難しいので個々の役割の再構築が必要なのかもしれない。
また、オーレ自身を評価すると長期プランという意味ではクラブの哲学が失われかけたユナイテッドにもう一度誇りを植え付けたのは見事だと思っていますが、試合単位の細かい修正はコーチ陣に任せていると自らも語っているようにあまり得意ではないように見えるので戦術家を更に加えたい。
ただ、全く関係性のないところから探せと言われても困難な話で、かつクラブ側の人脈も最近のフットボールに適応できる人材を登用できるとは到底思えません。
多かれ少なかれ縁のある人物で尚且つ現在フリーのコーチとなると……
私などの知識ではこの人しか思いつかなかった。
ルイ・ファリア
有望人材の囲い込みという意味ではエディ・ハウも面白いと考えましたが、間違いなく多くのクラブの監督候補に挙げられながら一向に現場に戻る気配が見えないところをみるとどうも難しそう。
オーレにもモウリーニョとファリア、レーヴとフリックの関係性のように絶対的信頼を置ける戦術眼に長けた副官がいてくれたらと何度も思います。
あのサー・アレックスですら全てを1人で管理していたわけでなく、ブライアン・キッドやカルロス・ケイロスといった本来なら他クラブで監督をしていてもおかしくない(後者はその後代表監督を歴任)実力者を自らのアシスタントにしていたのですから。