*EURO2020 グループE Matchday3 スロバキアvsスペイン戦の記事です。
無敵艦隊(本物)だったのも今は昔。
現在はかつてのように皮肉を込めた無敵艦隊の意味にそぐう勝ちきれないチームに逆戻りしてしまったラ・ロハ。
1戦目はスウェーデンの中央を固めたディフェンスを崩せず、2戦目は先制しながらレバンドフスキのヘディングで追いつかれ2戦連続のドローでグループステージ敗退のピンチ。
▼スウェーデン戦について
対するスロバキアはポーランドに1vs2で勝利、スウェーデンには1vs0で敗れ現在勝ち点3、得失点差0の2位に位置し、このスペイン戦では勝ち点1以上でノックアウトステージ進出が決まる状況。
内容的にはスペインにアップセットを果たす事も十分考えられるので、心情としては彼らに肩入れしたくなります。
スタメン
スロバキアは4-2-3-1で3列目の構成はフロマダ-クツカと比較的攻撃的な布陣。
引き分け狙いではなくあくまで勝ちに行くという試合前のコメント通りのラインナップとなりました。
対するスペインは新型コロナ感染でチームを離れていたセルヒオ・ブスケツがスカッドに復帰し早速逆三角形の頂点でスタメン起用。
RBに本職のアスピリクエタが入った事も大きな変更点。
試合内容
ブスケツがスタメンに帰ってきたスペインは信用出来る出し手が増えた事が理由なのか過去2戦よりもIH2枚がビルドアップで高い位置を取るように。
スロバキアがディフェンダーを増やすことなく、どちらかと言えば前からプレスをかけて真っ向から勝利を狙いにきたので引いた相手に対する攻撃という課題点が顕在化することなく試合を進めていきます。
スロバキアはサイドレーンに関してはある程度スペインの侵入を受け入れて兎に角中央を固めるような体制だったので、スペインは大外を抉ってクロスを入れる機会が多かったもののそれほど効果的な崩しが出来ている訳ではありませんでした。
運に見放されたスロバキア、それすら上回るモラタのゴール欠乏症
9分、スロバキアは自陣ボックス内でフロマダがコケの左脚をその先にあったボールごと思いっきり蹴り上げてしまいPKを与えてしまいます。
キッカーはここまでの2試合で決定機ミスを3回記録しているアルバロ・モラタ。
国内外で多くのファンやメディアから批判を集めている彼にとってもこのペナルティキックは嫌な空気を払拭する絶好の機会だったのですが……
神通力が働いているのかと思うくらいドゥブラフカは完璧にコースを読んでPKストップに成功。
スペイン代表は昨年11月のリトアニア戦から流れの中のPK5度連続で失敗したことになり、これは史上ワーストの記録。
これで少々スロバキアも乗ってくるのかといえばそうではなく、クツカ-フロマダ間が毎度のように空間を空けてしまい、そこをブスケツやモラタが自由に使うので試合はほぼ一方的な展開。
実際、前半スロバキアはシュート0で攻撃面ではノーインパクト。
試合が動いたのはビルドアップのミスがキッカケでした。
30分、パブロ・サラビアのクロスが長くなりGKが掴んでスロバキアが自陣からボールを運ぶ場面。CBのシャトカは何を思ったのか突如低い弾道のパスを中央目掛けて出し、これがサラビアへのプレゼントパスになってしまいます。
サラビアのシュートはクロスバー直撃で高く真上に跳ね上がり、落ちてきたところをドゥブラフカはパンチングでコーナーに逃れようとしますが処理を誤りゴールマウスへ弾いてしまいました。
この1シーンだけみればGKのエラーとされるプレーですが、そもそもシャトカのあまりにも不用意なパスミスが無ければ生まれていないプレーだったので個人的な心情としてはドゥブラフカに同情したくなります。
このミスで委縮してしまったのかここまで2試合好セーブを続けていたスロバキアの守護神はその後ポジショニングやハイボール対応などで冴えないプレーが頻出。
前半ATに生まれたラポルトの追加点でもその直前のプレーでジェラール・モレノに詰めるのか折り返しへの対応に専念するかの選択が曖昧になってしまいPKストップの功績を打ち消してしまう勿体ないプレーでした。
(とはいえ、この失点も元々はコーナーのこぼれ球を25番フロマダがクリアし損ねたところから始まっているのですが)
オウンゴール選手得点ランク独走、スペインはセットプレーから大量得点
前半終了時点で得失点差‐2、仮に負けるにしてもこれ以上の失点はトーナメント進出に向けて絶対に許されないスロバキア代表は守備面で軽いプレーの多かったフロマダ🔁ロボツカ、ほとんどボールが来なかった前線のドゥダを下げてベテランのジュリシュをそれぞれ投入します。
この変更が功を奏し序盤5分間はジュリシュの裏抜けでスロバキアがペースを握りましたが時間経過と共に自力で勝るスペインペースに逆戻り。
56分には中央でのポゼッションから左のジョルディ・アルバにスペースが空いた状態でペドリからのパスが通り、アルバの折り返しをサラビアが決めて3点目
取り分け優れた内容という訳では無かったラ・ロハですが幸運も絡み60分を前に早くも3点差。
その後はスロバキアの心が折れたのか67分と71分にセットプレーから更に追加点を加え最終スコアは0vs5のワンサイドゲーム。
4点目、途中出場からほぼ最初のプレーで生まれたフェラン・トーレスのゴールはショートコーナーにおけるお手本の1つとなりそうな美しい連携でした。
🇪🇸 This cheeky flick by substitute Ferran Torres = 🔥#EUROSkills | @HisenseSports | #EURO2020 pic.twitter.com/JkUQXIASx1
— UEFA EURO 2020 (@EURO2020) June 23, 2021
また、5点目の得点もパウ・トーレスのヘディングがユライ・クツカに当たりこの試合2度目のオウンゴール。
▼グループステージを終えた段階の得点ランキングは以下のように
🌎オウンゴール:8G
🥇クリスティアーノ・ロナウド(5G)
エミール・フォルスベリ
ロメル・ルカク
ジョルジニオ・ワイナルドゥム
ロベルト・レバンドフスキ
*OptaJoeによれば、オウンゴール8得点というスコアはEURO過去5大会の合計を上回る点数で勿論大会史上最多記録。
選手交代
46分 in:ジュリシュ、ロボツカ out:ドゥダ、フロマダ
69分 in:ヴァイス、ススロフ out:マク、ハラスリン
90分 in:ベーネス out:ハムシク
スペイン
66分 in:フェラン・トーレス out:モラタ
71分 in:パウ・トーレス、チアゴ out:E.ガルシア、ブスケツ
77分 in:アダマ・トラオレ、オヤルサバル out:G.モレノ、アスピリクエタ
データ
SofascoreのxGはスロバキア0.12-スペイン3.46
結論から言ってしまえばスロバキアはゲームプランを誤ってしまったように感じます。
ミドルプレス自体は悪くなかったと思いますがDM2枚が軽かったのでスペインが中央を比較的容易に利用する展開が続き、失点はセットプレーやエラーが殆どでしたが、それらが発生していなかったと仮定して勝てる見込みがあったかと問われるといいえと答えざるを得ない。
スペインとしては負けか引き分けで敗退の危機もあったところでこの快勝。
やはりブスケツの復帰が何よりデカかった
シャビイニエスタがいた黄金期とは違い、今のスペイン代表でプレイメーカーと言えるのは彼とチアゴくらいでチアゴはスタメンではありません。
過去2戦はパスの出し手不足が深刻で、それ故にパス回しも外側でこねてるだけという時間が多く得点に繋がらないポゼッションでしたがこの選手が加わるとこれ程までに改善されるのかという率直な感想。
スタッツを見るとキーパス2回、タックル&インターセプト1回と飛びぬけたものはありませんが、CBからの縦パスを引き出すポジショニングやカウンターの芽を摘む素早い幅寄せと潤滑油のような働きでStar of the Match(MoM)に選出。
🇪🇸 Positioning and football intelligence masterclass ... Sergio Busquets 👏@Heineken | #EUROSOTM | #EURO2020 pic.twitter.com/71azqFunkx
— UEFA EURO 2020 (@EURO2020) June 23, 2021
ロングボール5/5で100%の成功率だったのは流石。
あとがき
アルバロ・モラタはこの試合でもモラタしていましたがそれでもチームが大勝したので批判は収まっていくのではないでしょうか。
オフザボールやポゼッションへの貢献があるとは言え流石にこれほどまでに決定機を外しているようではストライカーとして失格と言われても仕方のない成績なのでトーナメントではチャンスをモノにして汚名返上としたいところ。
そしてラウンド16の相手はクロアチア。
ロシアW杯の時からモドリッチ依存が更に強まっていて彼の過労が心配されるレベルで攻撃の全権を担っている状態なので、トーナメントに残ったチームの中では比較的御しやすい相手ではあります。
実際にスペイン国内のメディアでも既に準々決勝以降の皮算用をしている所が多いとも聞きましたが今の彼らには慢心出来るほどの圧倒的チーム力は無いので、そういった意味でもこの試合の結果がどうなるか今から楽しみ。