2019年のU-20ワールドカップ優勝メンバーが丁度20代前半でトップチームの主力に定着し始めているウクライナが初戦の悪夢を払拭する逆転勝利。DF~セントラルMFにかけて皆ロングキックの精度が高いのが素晴らしい。

【Match Review】スロバキアvsウクライナ
前半

スロバキア
4 Obert, 5 Rigo, 6 Gyömbér, 7 Suslov, 10 Tupta, 11 Bénes, 12 Rodák, 13 Hrošovský, 15 De Marco, 18 Strelec, 20 Ďuriš, 21 Bero, 23 Ravas, 24 Sauer, 25 Kóša
ウクライナ
1 Bushchan, 2 Konoplia, 3 Svatok, 4 Talovierov, 5 Sydorchuk, 6 Stepanenko, 8 Malinovskyi, 9 Yaremchuk, 15 Tsygankov, 16 Mykolenko, 20 Zubkov, 21 Bondar, 23 Lunin, 25 Vanat, 26 Mykhaylichenko

スロバキアは1戦目と同じ4-1-2-3。ウクライナはルーマニア戦で失点に直結するエラーを複数回犯した正GKルニンを変えるという大きな決断をして代役にはベンフィカでレギュラーポジションを獲得している2mの長身GK、アナトリー・トルビンを起用した。
負ければトーナメント進出が絶望的というウクライナだが、パニックに陥った第1節が本来の実力だったわけではなく、ムドリクとジンチェンコのポジショニングが逆なのではないかという疑問だったり、両者の抱える守備面での課題など左サイドには不安がいっぱいだったものの、何処からでも質の高いロングボールが飛んでくるフィールドプレイヤーのキック技術の高さは大きな強みであり、後述するがこれが今回の対戦相手には刺さっている。
17分、敵陣深い位置でのスローインでピッチ外へボールを取りに行ったスロバキアLWハラスリンは「自分が投げる」と寄ってきたLBハンツコに手渡しし、そのままシームレスにタッチラインの中に入る事で当初ハンツコのマークに付こうとしていたヤルモレンコの背後をスルッと奪うと、ボレー気味に上げた右足のクロスをRWシュランツがヘディングで叩き込んで先制に成功。
偶然かもしれないが、スローワーの入れ替えを通して警戒を緩めつつ、マークに付く予定だった選手を追って相手が近づいた事で生まれた背後のスペースを使用するという極めて理知的なプレーがゴールの要因となっており、フットボールにおけるスローインの研究・発展の伸びしろを改めて感じた瞬間だった。
スロバキアは4-3-3の3-3がタイトな前線プレスをかけるため、ウクライナは特にボールサイドのショートパスのコースを探すのに苦労したが、一方で後ろの4枚のポジショニングが低いのでMF-DFライン間には常に広い空間が生まれており、ザバルニー,マトヴィエンコの両CBを筆頭にう後方部隊に質の高いロングボールを蹴る事が出来る人材が集まっている為、一発のパスでプレス網を突破し疑似カウンターから得点機会に繋げるケースが多くなった。
ウクライナ14番のヘオルヒー・スダコフは今大会までどんなプレーをする選手なのかよく知らなかったのだが、守備ではFWと連動して相手を外に追い込むような制限のかけ方が出来て、ビルドアップでCBのパスコースになる意識が高く、ショートパスだけでなくミドル・ロングレンジのキックで一気に局面打開も出来る上に、中3日で12キロを走れるタフさを持っているのでかなり大物かもしれない。そう遠くない内に世界的な選手の仲間入りをしている可能性も十分に考えられるので今後も注目したいところ。
前半を一言で総括すると、スロバキアは上手く相手の隙をついて先制したものの全体的には後ろの重さが気がかりで、内容で上回るウクライナはフィニッシュワークでの一押しが足らなかった。
後半
51分のウクライナはジンチェンコからのパスを受けたムドリクが大ベテランのスロバキアRBペカリークをスピードの違いで置き去りにし、早めに左足で上げたクロスに対するドフビクのヘッドはタイミングが合わなかったものの、守備の雑さばかりが目立っていた眠れる背番号10がようやくお目覚め。
この後、ロボトカの巧みなプレスをいなすボール運びの技術から始まったスロバキアのカウンターを凌ぎ、逆にムドリクのボールキャリーで大きく広がった相手DFライン前のスペースを一気に侵攻してアタッキングサードでチャンスを作ると、最後はオーバーラップしてきたジンチェンコのグラウンダ―のパスにシャパレンコが合わせて同点に追いついた。
60分、67分に2枚ずつ交代カードを使い、前線の守備強度を維持させようとする。ただ、再三にわたる被カウンターを考慮したか、プレスライン自体はそれまでよりも5mほど低く設定。ウクライナはシンプルにアタッカーを入れ替え、ドフビク台頭まではエースだったヤレムチュクをジョーカーとしてピッチに送り込む。
74分にはそのヤレンチュクが飛び出してきた相手CBと上手く入れ替わりウクライナに決定的なカウンターのチャンスが舞い込んだが、ボールキャリーのルート選びが悪く並走するムドリクをプレッシャーから解放出来ず、パスを受けて角度のないところから放ったLWのシュートはニアポストに当てるまでが精一杯。
80分、バックラインでパスを回しながら隙を伺うウクライナは、ザバルニーがDF-MFライン間にポジショニングするシャパレンコに質の高い縦パスを通し、タッチライン側へ流れながらゴール前にロブパスを送ったシャパレンコのお膳立てに対し、先刻決定機を活かせなかったヤレンチュクが見事なトラップでボールの勢いをころしてすぐさま2タッチ目でボールを流し込むテクニカルなゴールで応えてみせた。
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初戦で3失点の完封負けを喫したウクライナは起死回生のゴールで勝ち点3を獲得し、翌日のベルギーvsルーマニアで前者が勝利を収めた事でグループEは2節終了時で全チームが3ポイントで並ぶ異例の混戦模様となっている。

スロバキア視点から振り返ると、ドゥブラフカが相手のロングキックに対し前に出てクリアorキャッチするか、間に合わないと判断してゴールライン上に残ってシュートまでの時間を稼ぐかの選択で迷ってしまい、中途半端な対応になってしまった事が余りにも痛恨だった。
【Match Review】オランダvsフランス
前半

オランダ
2 Geertruida, 3 De Ligt, 8 Wijnaldum, 9 Weghorst, 13 Bijlow, 15 Van de Ven, 16 Veerman, 17 Blind, 18 Malen, 20 Maatsen, 21 Zirkzee, 23 Flekken, 25 Bergwijn, 26 Gravenberch
フランス
1 B.Samba, 2 Pavard, 3 F.Mendy, 6 Camavinga, 9 Giroud, 10 Mbappé, 12 Kolo Muani, 18 Zaïre-Emery, 19 Y.Fofana, 20 Coman, 21 Clauss, 23 Aréola, 24 Konaté, 25 Barcola

オーストリア戦の終盤で鼻骨骨折を負い途中交代したエンバペはベンチスタートで、フランスはラビオを左サイドで起用する4-2-3-1。オランダは第1節で得たフィードバックをもとにビルドアップ時にCBからの縦パスの出し先として関与させたいラインデルスをダブルピボットに降ろし、シャビ・シモンズをトップ下へスライドさせて空いたRWにはダンフリースとの共存が可能かが議論の対象になっているジェレミー・フリンポンを起用した。
注目の集まっているフリンポンは開始早々にシャビ・シモンズのスルーパスから相手DFライン裏へ抜け出してテオ・エルナンデスとのスピード勝負で上回りアジリティの高さを見せつけていく。
フランスはポゼッション時にラビオが中央に移動、空いた左のスペースにテオ・エルナンデスが上がってくる左肩上がりの可変となり、カンテ,チュアメニ,グリーズマンにラビオを含めた中央のMF4枚はポジショニングや役割の入れ替えをその時の即興で判断して規則性のない状態で動くため、オランダとしては何処でプレスを強めればいいかが分からず守りづらそうに見えた。ただ、放置しておくとライン間で暴れ回るグリーズマンに対してはラインデルスがマンマーク気味に対応して常に警戒を怠らない。
14分のフランスは右ハーフスペースでデンベレから斜めのパスを受けたラビオがマルクス・テュラムとのパス&ムーブでオランダDFラインを突破し、後は近距離でのGKとの1on1でゴールネットを揺らすだけという所まで行ったものの、フィニッシュワークでの積極性の薄いこの長身MFはグリーズマンへのパスを選び、少しだけ軌道がマイナス側に振れていた事でグリーズマンはボールにしっかりとミート出来ずに決定機を活かせず。
更にこの直後にはボックス内への侵入に成功したカンテのパスから再び決定的なチャンスを得たレ・ブルーの7番だったが、キックの感覚が少し乱れているのかまたしても決めきる事が出来ず、オランダ代表にとってはラッキーな結果となった。
ポゼッション率はオランダ4,フランス6とタレントの質で上回るレ・ブルーがリードするが、両チームともリスクをかけてまでゴールを狙おうという雰囲気ではなく、相手のエラーに乗じてゴールが奪えればそれでいいというスタンスのままゴールレスで前半を終える。
後半
フランスは背中向きでのボールレシーブ及びその後のコンビネーションプレーが巧みなテュラムを経由して中央からの切り崩しを図り、オランダは受けに回りながらカウンターからの一発を狙う。
65分、フランスはデンベレとのパス&ムーブでミドルサードを攻略したチュアメニの配球から、バイタルエリアでボールを受けたテュラムがヒールフリックでゴール前に意表を突いたパスを通し、デンベレ→カンテを経由してグリーズマンに3度目のビッグチャンスが訪れたもの、やはり足元の感覚に狂いがあるのかファーストタッチが乱れてまともにシュートを打てずフェルブルッヘンの牙城を崩せない。
耐え凌ぐオランダの転機は69分のこと。トップ下からDMにポジションを落とした事で前半からボールキャリーでの陣地獲得力を発揮しているラインデルスの持ち運びでアタッキングサードでのポゼッションに移行すると、ボックス内でメンフィスが強引に形を作ってシュートを放ち、こぼれ球にシャビ・シモンズの強烈な一撃が炸裂。
🇳🇱 Only an #English referee can say that this goal is rejected 🤔
— Dada Shastoni (@DadaShastoni) June 21, 2024
In the 70th minute Can you believe the Netherlands goal by Xavi Simmons, who was declared offside due to Dumfries being in an offside position and interfering with the goalkeeper's reaction?🤣😂 pic.twitter.com/l39302R38T
しかし、オフサイドポジションに立っていたダンフリースがフランスGKメニャンのセーブ機会を妨害したとしてVARがゴール取り消しを主張し、主審アンソニー・テイラーもこれに従い得点は幻となった。

オランダはこの直後に一気に選手を3人入れ替えて戦い方に変化をつけてきた。具体的にはRBに入るゲールトロイダがビルドアップでCBの前に入るようになり、一列前に上がったダンフリースが守備時に大外のWBとして戻る事で最終ラインの枚数を確保し、メンフィスを下げてヴェフホルスト投入も含めてかなり守備への意識を高めるような交代策。一方フランスの方はコマン、ジルーを入れて得点を狙ったが結局両チーム共にゴールを奪う事無くタイムアップ。