※22/23 UEFAヨーロッパリーグ 準々決勝2ndLeg
セビージャvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
何故こうもプロフットボール、それもマンチェスター・ユナイテッドというクラブでは到底起こりようのない筈のミスが頻発するのかと正直頭を抱えたくなる。ブルーノがサスペンションで消耗しなかったという事くらいしか収穫は無い。
Our #UEL journey comes to an end.#MUFC
— Manchester United (@ManUtd) April 20, 2023
【Match Review】
Starting lineup
しばらく戦列を離れていたマラシア、ラッシュフォードがベンチメンバー入り。
前半
ブルーノが出場停止、中盤はカゼミロ,エリクセン,サビツァーの3枚で基本的には2DM-1OMの形ですが、ボール保持ではアンカー+2CMに。
本来はこの前のリーグ戦のようにボール支配率を高めながら丁寧に低い位置から繋いでいきたいところですが、マグワイアのあらゆる意味での鈍さ(プレー、思考、判断すべて)やデヘアの配球面でのパスの弱さ,視野及びパスの種類と安定して通す事の出来るレンジの狭さなどが合わさった悪い意味で再現性の高いエラーによって出鼻を挫かれてしまう。
⚪️🔴 The goal that began Sevilla's memorable victory...
— UEFA Europa League (@EuropaLeague) April 21, 2023
⚽️ Youssef En-Nesyri@SevillaFC || #UEL pic.twitter.com/A1rLPCmyUG
Martinez vs Maguire how they handled the same situation 👀 pic.twitter.com/Rp6Mp6TWfF
— Bruno_UNITED (@Bruno_UNITED1) April 20, 2023
割合としては7(マグワイア):2(デヘア):1(他の選手)くらいの責任と考えています。正に上記比較動画でハッキリ差が出ているように、リチャはボールを受ける前に素早く首を左右に振って周囲の情報を取得している一方、マグワイアはパスを要求しているにも関わらずひたすら正面だけを見続けてボールが自身の届くまでフリーズ。
デヘアのパスは確かに弱かったが、あそこで要求するのだからターンして空いている前方へキャリーするかマグワイア視点斜め右前へ一度動きを入れて空いている左サイドへ展開するものだろうと考えていたはず。また、2人以外にはワン=ビサカやダロトのパスコースを作る動きも足りていない。
ついでに、テン・ハフのチーム作りはこのシチュエーションでロングキックに逃げるような志向ではないので、ハーフウェーラインまで蹴っ飛ばしてしまえばいいという指摘は微妙にズレているように思う。3人の相手が1人へ向かっているという事はその分ピッチ上で2人空く味方がいるという事でもあるので、リスクはあるが成功した際のリターンも大きい。
意気消沈しているさまが画面からも伝わってくる程に動きが鈍くなるユナイテッドの選手達の中でチームを先導していったのはアントニー。マルコン,グデリ,アクーニャの3人がかりで潰しに来てもボールを失わず、最終的にアタッキングサードでの相手のハンドを誘った16分のドリブルは見事と言うほかない。
22分にはダロトがリンデロフとカゼミロの間で上手くコネクトして左サイドで幅を取るサンチョにドリブルを仕掛けられる形でボールが入ると、パスを受けてダイレクトでゴールを狙うアントニーの左足はサビツァーに当たってしまうがこぼれ球がワン=ビサカの足元へ。その位置にいた事は評価したいが、ノンプレッシャーにも関わらずインサイドキックでGKボノの正面にグラウンダーと肝心のシュートが余りにお粗末。
このゲームはおざなりなクロス対応やリスクを考えていない低い位置でのトリックなど彼の悪い面が出てしまった。また、基本的にキックの種類が少ない事もパスレンジの狭さや得点機会での力不足に繋がっている。
セビージャは27分辺りでマルコンがピッチに倒れ込んでプレー続行不可。ファーストレグ同様に交代人員はアタッカーのスソで、グデリがDM→CB、ラキティッチがOM→DMと一列ずつ後ろに下がる事で対応した。スクランブルではあるが、寧ろこの形の方がハマっているとすら思わせるのは前回同様。どうやらマルコンはユナイテッドでいうバイリーのような中々のスペランカーらしい。
40分、それまで数分間に渡りセビージャに押し込まれながらも相手のパスが長くなり後ろでボールを得たユナイテッド。しかしながら失点時同様マグワイアのパスの出し先から苦しいプレーを余儀なくされ、カゼミロのアウトサイドがズレた所をアクーニャがカット、最後はオカンポスがコントロールショットを決めるもVARはオフサイドを指示、何とか首の皮一枚で生き残る。
この場面は明らかに狙われていてボールを要求している訳でもない後ろ向きのカゼミロにパスを入れたマグワイアの判断がおかしい。丁度右斜め前のワン=ビサカがフリーな状態でいたにも関わらず、全く首を振っていないのでそのことに気付いている素振りすらなかった。
後半
HT明けのユナイテッドはワン=ビサカを下げてルーク・ショー、CBではなくFBを入れ替えたのは攻撃性能もそうですが、ワン=ビサカのクロッサー対応(背中を向けて片足を上げる)、低い位置でのヒールキックといった不用意なプレーと決定機でのGKへのパスにしか思えない謎のインサイドキック等々の心象が悪かった可能性はある。
なお、ビハインドを一刻も早く解消したかったはずの後半も出鼻を挫かれる事に。
47分のセビージャは右CKからラキティッチのクロスにニアへのランでマークを外したロイク・バデがヘディングシュートを狙うも、ミート出来ず左肩に当たった事でかえって予測できない軌道になってデヘアの頭上を越え追加点。
バデを見ていたのはラッシュフォード。彼がセットプレー守備であっけなく担当する相手を逃してしまうのはこれが一度や二度ではなく、この対人意識の希薄さはカウンタープレスや後ろから上がってくる選手のケアといったボールインプレ―時にも足を引っ張っている。また、これに関してはマグワイアだけの責任ではないが、このCKで接触した事が原因と思われる負傷でマルシャルが交代している……
Courtesy of Harry Maguire 💀😭 pic.twitter.com/Ut2ImuBlqv
— Collo (@jusr_Collo) April 22, 2023
ヴェフホルスト投入後はこの形。セビージャもリスクを負う必要が無くなったのでしっかりとバックス+DMで中央を固め、ライン間のスペースを作らずにユナイテッドが密集地帯へ縦パスを入れるまで待ってじっくりと時間を費やしていく。
さて、1失点目に並んで悪い意味で衝撃を与えたダメ押しのゴールについてだが、リンデロフ→ヴェフホルストへのフィードをアクーニャがカットしユナイテッド陣内へ高くボールを蹴り上げる。このボールに対しリンデロフとエン=ネシリが走る構図になり、前者はGKが前に出て処理する事を確認してスピードを緩め次の準備に入るが、なんとデヘアはほぼプレッシャーがかかっていない状況にも関わらず落ちてくるボールをコントロール出来ず、更には自身の前に見えるエン=ネシリへの絶好球に。
MASSIVE MISTAKE BY DE GEA 🤯
— ESPN FC (@ESPNFC) April 20, 2023
UNITED ARE DOWN 0-3! pic.twitter.com/zilIWVhf81
純粋な失敗です。似たシチュエーションのボールへの処理をトレーニングセッションで繰り返し練習してくださいとしか言いようがない。
ラモン・サンチェス・ピスファンの90分間はミスに始まりミスに終わった。
データ
Standard
ポゼッション率はユナイテッドが上回っている形ですが、後ろで持たされているかミドルサードまでで攻めあぐねている場面が多く、前後半の序盤に失点した焦りが冷静な判断を奪い更にそれが加速してしまった。実際に、6割超の支配率の割にはパスが484本に留まっている点にもそれが現れていると思う。
チームとしては良いところが少なかったが、選手個人ではキーパス4,クロス3/3成功,地上戦6/10と唯一個で違いを作ったアントニーを評価したい。ここ1ヶ月の彼は内容が見違えるように向上しているので、シーズン終盤の爆発及び来期以降の成熟を楽しみにしている。
Sevilla 3 : 0 Man Utd
— markstats bot (@markstatsbot) April 20, 2023
▪ xG: 2.15 - 1.04
▪ xThreat: 1.31 - 1.41
▪ Possession: 39.3% - 60.7%
▪ Field Tilt: 53.9% - 46.1%
▪ Def Action Height: 41.8 - 37.0#msbot_uel #uel pic.twitter.com/CHMoCQRsNk
xGは実際のスコア程差が付いておらずセビージャ2.15、ユナイテッド1.04。
セビージャとしては相手が勝手にビッグチャンスを与えてくれるのでこれ程やりやすいゲームは無かったかもしれない。
あとがき
負け方があまりにもひど過ぎる22/23シーズン。メンタリティの部分でもブルーノ,ヴァラン,リチャと味方を鼓舞してくれる選手が不在で、デヘアやマグワイアはプレーのみならずこの部分でも信用を置きにくいタイプ。
FAカップのブライトン戦はショー-リンデロフ、前者の状態が悪ければリンデロフ-カゼミロになると予想していますが、どちらにせよ今回の並びよりは機能しそう。
プレミアリーグの試合を見る限り、ブライトンの組み立てはCBからミドルレンジの高精度のパスを通すか相手が寄ってくる中でカイセドやマクアリスターの技術によるダイレクトプレーといった難易度の高いやり方が多く、前線のプレッシングに後ろも連動出来れば付け入るスキもある。