※22/23 UEFAヨーロッパリーグ ラウンド16 2ndLeg
レアル・ベティスvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
贅沢を言えばもっと点差をつけてより早くペースを落としたかったですが、2試合180分を通して優位に試合を運べた部分は評価したい。また、イエローカードも不可解な判定であったペリストリ以外は0と累積リーチのブルーノ,カゼミロを欠くことなく次のラウンドに臨める事も良し。
We keep on moving! 💪#MUFC || #UEL
— Manchester United (@ManUtd) March 16, 2023
【Match Review】
Starting lineup
ペリストリはこれがマンチェスター・ユナイテッドでの公式戦初先発。ここまで少ない出場機会ながらトップスピードと加速を活かしたドリブルと味方を活かすオフ・ザ・ボールが評価されてのだろう。是非ともいいプレーを見せて欲しい。
前半
後ろに戻してから相手を目線と足を止めさせて1つ飛ばしのパスを入れるという変則的なレイオフがカゼミロを三角形の頂点に何度か見られたのは良かったですが、3点差のリードがある状況にも関わらずゆっくりとボールを繋がずにタッチダウンパスでCB裏を狙うような場面が多くなってしまったのは評価を分ける点。便宜上4-2-3-1で表記しているがゲーム中のポジショニングはブルーノとフレッジが横並びになったり、ブルーノがが降りてフレッジが高い位置でボールを追いかけまわす時間帯も多くなる。
個々の問題点は概ねそれ以前のモノを継続しているのでいち早い改善を期待したいところですが、マグワイアのプレーの遅さという致命的な部分は個とボールプレーにおいては解消されているようにも感じ、リチャやヴァランが当たり前に行っている近くの味方にパスを出した後の平行へのランがようやく見られた。
ベティスは1戦目と同様の戦い方で裏抜けを狙う左サイド、ライン間で受けるホアキン、サバリの攻撃参加で数的優位を作る右サイドと攻撃のパターンが明確になっているのが強みで、DM2枚に関してはより前と後ろの関係性がハッキリ分かれる様に。
ホームチームにとって誤算だったのは早い段階でLBのアブネルが負傷し交代枠を消費させられた点。彼自身や変わって入ったミランダのクオリティ云々もそうだが、単純に展開を変える交代策を打ちづらくなったことが非常に手痛い。このサイドの主導権はスピードに勝るユナイテッド有利で、幅をとるペリストリへの対角線のフィードやハーフスペースに走るワンビサカの推進力は有効的な前進手段となっていたが、アタッキングサードでのチャンス創出という意味では今一歩。
31分、ビルドアップでマグワイアが中盤のスペースに縦パスを出してフレッジの降りる動きを促したが呼吸が合わず(どちらかと言えばフレッジが悪い)、ボールを奪ったベティスは中央まで絞っていたルイバルのスルーパスに外→内へ斜め前に走り込んだファンミが反応し得点機会を許したがデヘアが前に出てシュートブロック。
🧤 De Gea pulling out the stops 🔥@ManUtd || #UEL pic.twitter.com/5nADUKjrzi
— UEFA Europa League (@EuropaLeague) March 18, 2023
このゲームで中盤でのロストが目立ったフレッジ。リーチの短さは仕方が無いが、寄せに来る相手に対し横からもろにプレッシャーを受ける体勢になっているシーンが多い事も問題で、正面を向いて対面状態を素早く作ったり背中で抑えつけるボールキープが出来るようにならなければ今後も同じ事を繰り返す気がしてならない。
もう1つ、ボトルネックになり兼ねない部分はラッシュフォードの左サイド起用による守備面。サイドで前を向いた受けた際の突破力を期待してウイングに置き、ヴェフホルストらが確保したスペースを使って斜めに切り込んでいくアタッキングサードでの貢献は勿論優秀ですが、サバリが上がって行っても全くついていく素振りが無かったように攻撃的なRBを擁するチームと対する際はデメリットが上回る恐れも孕んでいる。
後ろからの組み立てで良かった場面はデヘア→ブルーノのミドルレンジのグラウンダーパスから始まった38分20秒~の攻撃。ブルーノが横パスを出しやすく、自身のその後前進しやすい丁度いい位置にいたワン=ビサカもGood。一方でボールを受ける前に次のプレーを思い浮かべられず相手に突進してしまったフレッジはもっと首を振って周りの情報を逐次取得して欲しい。
アディショナルタイムには左サイドからのFKから、ブルーノのクロスボールにカゼミロが反応。こぼれ球にペリストリが叩きつけるようなボレーシュートでゴールを狙い、更に軌道上にいたヴェフホルストが押し込もうとするも決められず。正直これは得点にしなければいけないチャンス。
後半
51分、ベティス左サイドからのコンビネーションプレーで深い位置まで入られたものの、最後のパスが長くなってGKのスローイングからユナイテッドがカウンター。デヘアからボールを受けたフレッジは相手RBの裏にいるペリストリへ見事なパスを通し、ペリストリもサイドに出てきたエドガー・ゴンザレスの股を抜いてボックス内へ侵入。突破力を活かす為にも、ガルナチョと同じくスピードを上げた際にどうしてもボールタッチが乱れバウンドしてしまう所を解消したい。
その後、ペッツェッラのクリアボールをカゼミロがカットして更にユナイテッドのチャンスは続くが、フレッジは無謀にも見えるミドルシュートを放ちボールは観客席へ飛び込んでいった。
52分、左サイドでベティスに押し込まれた状態からボールを奪い、マラシア→相手DM裏のブルーノへ絶妙なロブパスが通った所からカウンタ―開始。外でフリーになっていたペリストリにボールが渡ると、公式戦初先発のウルグアイ代表MFは後ろから追いついたファンミのスタンディングタックルを物ともせずボールを運び、その後はブルーノを経由しラッシュフォードに決定機が訪れるもシュートはルイ・シルバの左足にブロックされる。
53分にはベティスCKでアジョセのニアフリックが枠内へ飛んできたがデヘアが相手のいない反対サイドへパンチング。この数分間はコートを行き来する激しい展開が続き、マラシアのキャリーからユナイテッドも再びゴール前までボールを繋ぐと、最後はまたしてもブルーノのラストパスに決定機を活かせないラッシュフォードという形になった。
連続してビッグチャンスを決められなかった背番号10。
しかし、カゼミロのサイドチェンジを足元に納めると、斜め45度からこの2つよりも遥かに難易度の高いロングショットを決めてしまった。ただただ圧巻させられる。
— Marcus Rashford (@MarcusRashford) March 17, 2023
通算のリードが4点に広がったアウェイチームは75分までにラッシュフォード,フレッジ,ブルーノ,ワン=ビサカ,リチャと負荷のかかる選手を変えて週末のFAカップに備えた。交代で入った選手で言えば、エランガの肉体が青年トランクスのような変貌ぶりで明らかにバンプアップしていた事が印象的。ここまで身体を大きくすると加速や持久力が損なわれないかと若干不安にもなるが、30分程度の今回の出場時間では特にその懸念も感じず。元々オフ・ザ・ボールで良さを発揮する選手なので、これでコンタクトプレーに強くなれば相手を背負ってのプレーにも期待できるかもしれない。
オフサイドだったのでどちらにせよというシーンではあるが、デヘア→ヴェフホルスト→ペリストリとダイレクトで繋ぎ、ペリストリのスルーパスにサンチョが抜け出した後のプレー選択には不満が残る。逆サイドのエランガに出せば確実にゴールを奪えるシチュエーションだったので、普段の冷静な彼ならばそちらを選んでいたはず。
終盤、ホームチームもゴール前までボールを送り込んで得点まであと一歩というチャンスを数度作ったがフィニッシュワークの精度を欠いて一矢報いる事は出来なかった。合計スコア4-1でマンチェスター・ユナイテッドがベスト8進出!
データ
Standard
シュート数15:17、ユナイテッドとしてはもう少し安全にゲームを運ぶべきだったというのが個人的な感想。オフサイドの多さを見ても分かるように前半はDF裏への一発のロングパスでゴールに近づこうとするシーンが多く、確かにベティスの守備陣形は裏にスペースを残すような形だったとはいえ連戦の疲労を考えればもっと早い時間帯からまったりとした流れにしたかったところ。
ただ、意識的に繰り返された逆三角形の頂点にカゼミロを置いてバックパスをダイレクトで展開する形は相手の目線と足を釘付けにするのに非常に効果的だったので、ペースを落ち着かさせながらも隙を見てコンビネーションで突破するプレーはこれっきりではなく今後も継続しなければいけない。
なお、圧巻のパワーショットを決めたラッシュフォードはそれ以外に2度の決定機失敗があるので、今の彼からすればハットトリックを達成して欲しかった内容。プレスバックやコース限定の守備はやはり求められそうにないのでフィニッシュワークでの貢献でそれを越えるプラスを生み出し続けたい。
Real Betis 0 : 1 Man Utd
— markstats bot (@markstatsbot) March 16, 2023
▪ xG: 1.0 - 1.67
▪ xThreat: 1.88 - 1.5
▪ Possession: 46.2% - 53.8%
▪ Field Tilt: 48.7% - 51.3%
▪ Def Action Height: 42.5 - 40.5#msbot_uel #uel pic.twitter.com/1Xgh86B1EI
markstats算出のゴール期待値はベティス 1.0 - ユナイテッド 1.67。
xThreatで上回っているようにホームチームもシュートの手前までの攻撃は質で劣っておらず、ユナイテッドのビルドアップの完成度不足、具体的に言えば後ろから縦のボールが入った際の大外の選手の位置が高すぎてパスコースになっていない点をよく理解した外に追い込むプレッシングでボールを奪い、裏抜けを狙うアジョセやDF-MFライン間にスッと入り込むホアキン,ファンミにボールを入れて得点に繋がる場面を幾つも作り出す。右サイドでは、ラッシュフォードの戻りが緩いところを大外からRBのサバリが上がって2on1を形成し、アタッキングサードでのチャンスに繋げた。
あとがき
試合翌日に行われた抽選会の結果、準々決勝でユナイテッドが戦う相手はセビージャに決定。
Who ya got? 🤤#UELdraw pic.twitter.com/c3iNH68dfR
— UEFA Europa League (@EuropaLeague) March 17, 2023
またしてもラ・リーガ勢か……というのが率直な感想で、個人的にはモウリーニョのローマとの対決が見てみたかったのですが、これは準決勝以降の楽しみとして取っておきます。
その為にもまずはセビージャにしっかりと勝ってください。
FAカップのフラム戦はカゼミロが出場停止な上にマクトミネイもゲームに出場できるか微妙という報道があるので中盤構成はフレッジ-サビツァーでしょうか?どちらも前に出ていくタイプであり、正直噛み合わせの悪いユニットなので不安はあります。思い切ってメイヌーを先発で使ってみるのもアリなのでは。