21/22イングランド・プレミアリーグ
マンチェスター・ユナイテッドvsサウサンプトン戦の記事です。
ラルフ・ラングニックとラルフ・ハーゼンヒュットル。
現在はそれぞれユナイテッドとセインツの監督を務める両名ですが、RBライプツィヒ時代はスポーツダイレクターとマネージャーの関係性にあり、手の内を知っているであろう今回の直接対決。
結論から言えばハーゼンヒュットルは今のユナイテッドの弱みを把握済みで、アウェイチームの思惑通り(いや、勝ちきれなかったことを悔いているかもしれない)赤い悪魔は公式戦3試合続けてのドローに甘んじる事に。
Yet another BIG away performance 👏 pic.twitter.com/3H3jMVa55O
— Southampton FC (@SouthamptonFC) February 12, 2022
プレビュー
マンチェスター・ユナイテッド
エリック・バイリー
フレッジ
エディンソン・カバーニ
ネマニャ・マティッチ
サウサンプトン
アレックス・マッカーシー
リャンコ
ネイサン・テラ
ネイサン・レドモンド
スタメン
マンチェスター・ユナイテッドは3戦連続同じメンバー。
マクトミネイはパフォーマンス下降傾向なので中盤の主導権争いを考えるとマティッチ不在は痛いですが、そこは年長者のポグバ、ブルーノ、そしてCB2人のサポート込みで何とかカバーしたい。
一方、アウェイのサウサンプトンはRBティノ・リヴラメントは大事を取ったかベンチスタート。恐らくラルフ・ハーゼンヒュットルお馴染みのコンパクトな4-4-2フラットが予想されますが、師弟とも言える指揮官との対戦で想定外の秘策を仕掛けてくる事はあるのでしょうか。
試合内容
前半
ユナイテッドのスタートはマクトミネイアンカーの4-1-2-3。
2分、高い位置でボールにアプローチしたマグワイアが抜かれサウサンプトンのカウンター。アルマンド・ブロヤの単騎突破で左サイド深い位置まで侵入されますが、モハメド・エルユヌッシを狙った折り返しのクロスは通らず得点には繋がりません。
4分、セインツの激しいチェックを交わし左から右サイドへ展開したユナイテッド。
ラッシュフォードはシュート性の速いクロスを上げますが中途半端なところにボールが飛んでしまいそのままラインを割ってゴールキック。
続く5分にはカイル・ウォーカー=ピータース(以後KWP表記)、スチュアート・アームストロングのプレスを立て続けに交わしたポグバがライン際に走るサンチョへスルーパス。徐々にタッチを細かくしながらボックス内に斜めに侵入した25番はロナウドへのパスを選択しますが、全力疾走で戻ってきたオリオル・ロメウが足を伸ばしてクリア。これは自分でシュートに向かってもいい場面だったと思います。
7分、ルーク・ショーからの楔のパスを後ろ向きで受けたポグバはダイレクトで振り向きざまに前のスペースへパス。相手フルバックとの競争に勝ったサンチョがセンターバックの背後を狙うロナウドに完璧なタイミングでボールを送り、CR7は飛び出してきたフレイザー・フォースターを冷静に交わして後は無人のゴールネットを揺らすだけでしたが、やや体勢が流れシュートの威力が弱かった事もあって最後まで諦めていなかったロマン・ペローがボールの軌道上に入りこれをカット。
/
— DAZN Japan (@DAZN_JPN) February 12, 2022
ロナウドの決定機も
ファインプレーで
ゴール許さず!
\
サンチョのパスに抜け出したロナウドがGKをかわしてシュートを流し込んだが、戻ったペローがギリギリでブロック!
🏴プレミアリーグ第25節
🆚マンチェスター・U×サウサンプトン
📱#DAZN ライブ配信中#PremierLeagueDAZN pic.twitter.com/mp2E4VZ8uZ
9分のサウサンプトンはダビド・デヘアのパスミスからチャンスを得て、エルユヌッシのインスイングクロスをKWPが折り返しゴールエリアに陣取るチェ・アダムスにチャンスボールが入りますが、足がもつれたかアダムスは転倒してシュートを撃てず、こぼれ球を拾ったウォード=プラウズのシュートはショーがブロック。
すると今度はユナイテッドのカウンターに移行、再び得意な形でボックス内に侵入したサンチョは今度はシュートを選択。GKとの実質1on1になりますがフォースターのフットワークが良く、股下を狙ったシュートは彼の左足に阻まれ互いに決定機をモノに出来ないまま最初の10分が経過。
いつものように通る筈もないアーリークロスを連発するユナイテッド。
ゴールの匂いはしばらくしませんでしたが21分、自陣右サイドでプレスを交わし前を向いたブルーノは前線に走るラッシュフォードへのスルーパスを選択。
マークに付いていたモハメド・サリスは斜め後ろに走りながらクリアを試みますが上手くミート出来ず空振り。一気にスピードを上げた10番は逆サイドにラストパスを送り、最高のお膳立てにサンチョがゴールで応え先制ユナイテッド!!
/
— DAZN Japan (@DAZN_JPN) February 12, 2022
高速カウンター
炸裂⚡⚡⚡⚡⚡
\
B.フェルナンデスのスルーパスから
ラッシュフォードが抜け出し、
折り返しをサンチョが押し込んだ👏👏
🏴プレミアリーグ第25節
🆚マンチェスター・U×サウサンプトン
📱#DAZN ライブ配信中#PremierLeagueDAZN pic.twitter.com/pOUDKmqXyJ
先制点が生まれる少し前から両チームの陣形は変化しており、のホームチームはマクトミネイとポグバを並べ4-2-3-1へ、アウェイチームはロメウをCBに下げて5バック気味。
ここまでは基本的にレッズペースと言っていい内容でしたが、それが変わってしまうキッカケになったのは30分のマクトミネイのファウル。CBからの縦パスをカットしようと前に飛び出たもののこれに失敗し、エルユヌッシに前に向かれかけた所を後ろから倒してイエローカード。
彼だけでなく全体的にプレスの勢いが落ち、それを補うために荒い守備が増えていったユナイテッド。34分にはセインツに左サイドをいい様に使われ最後はボックス手前からウォード=プラウズが左足シュート。
37分にもKWPをフリーにしてしまい余裕のある状態からクロスを許すなど、オーレ時代を思い出すかのような守備が目立ちましたが、この原因はいずれもラッシュフォードのサボりでした。
彼とサンチョは28分頃から左右をチェンジしましたが、ものの見事にこの付近から左サイドを崩されるケースが多発しており、今思えば早い段階でこれを修正出来なかった事が後半最初の失態を招いたのかもしれません。
41分にはサリスのロングスローからアームストロングにゴール正面でボレーシュートを許しますが、デヘアがジャンピングキャッチに成功しこれをセーブ。
43分、尚も主導権を握るセインツは中央でボールを繋ぎ、エルユヌッシへのチェックをラッシュフォードが怠った事でバイタルエリアで彼がフリーに。パスを受けたペローはカットインからシュートを打ちますがこちらも守護神の範囲内。
AT2分にはショーのロングボールがロナウドに通り、ロナウドを折り返しをポグバがゴールネットに沈めますが最初のパスがオフサイド。
前半は1-0マンチェスター・ユナイテッドリードで終わったものの、決してプラン通りとはいえない45分でした。
後半
セインツはヤン・ベドナレクに替えてジャック・スティーヴンス。
ハーフタイム明けに1枚目のカードを切ります。
開始最初のチャンスはアウェイチームでした。
一旦GKまで戻して最後方からパスを繋ぐと、常にフリーになっていたペローを中心として右サイドで1、2タッチで深い位置まで侵入し、最後はペナルティボックス角付近で待ち構えていたチェ・アダムスが前半の汚名返上とばかりに対角線のゴールポストに当てった入る芸術的なシュートを放ち、痛恨の同点弾を献上。
/
— DAZN Japan (@DAZN_JPN) February 12, 2022
後半立ち上がりに
セインツが追いつく!!
\
アダムスが見事なコントロールショットを鎮める👏
🏴プレミアリーグ第25節
🆚マンチェスター・U×サウサンプトン
📱#DAZN ライブ配信中#PremierLeagueDAZN pic.twitter.com/goOFUOmz9B
52分には左サイドでマグワイアが釣り出される形となり、一度はインターセプトに成功したもののその後のボールを回収され被カウンター。更に54分、コンパクトな守備陣形という指揮官の思惑とは真逆の形で大きく空いた中央でボールを失い、ショーの服引っ張っても止まる気配のないブロヤが勢いのままミドルシュート。
劣勢のユナイテッド。
それでも57分には左サイドでポグバが得たFKのチャンスから、ショーのキックが丁度マグワイアの所に入りDFにディフレクションしたボールは再び彼の元へ。
しかし、前にはフォースター1人しかいなかったこの絶好のチャンスでもシュートはその正面に飛ばしてしまい得点にはならず。
61分にはショー→ロナウドのラインで再びチャンスを作りますが、左足のボレーシュートはフォースターが冷静に処理、その後クリアボールを回収してディオゴ・ダロトが角度の厳しいところから右足でニアサイドを狙いますがこれもGKがブロック。
65分、またもこちらから見て左サイドのアームストロングがフリーに。
シュートは幸い枠の上に消えて行きましたが、カウンター局面ではなく1分以上ボールを回された末にそれでもマークに戻らないラッシュフォード。
少しでも首を振れば大外がフリーになっている事は一目瞭然なのだが……
67分、足が止まっているのが明らかなユナイテッドはセインツのカウンターに対処出来ず、3対4の数的不利を強いられますがブロヤのループシュートは枠を捉えず何とか致命傷は避けます。
75分、この日も冴えないマクトミネイに替わりアンソニー・エランガを投入。
したがって中盤はブルーノ-ポグバの2センター、攻撃的な4-4-2へ変更。
78分、相手CKのこぼれ球を拾ったサンチョのサイドチェンジから久々にチャンスを迎えたホームチーム。パスを受けたダロトは前に走るエランガへスルーパスを試みますが、功名心にはやったかエランガはダロトの動きと相手のラインを確認することなく前に全力ダッシュ。結局両者の呼吸が合わず、80分のブルーノのスルーパスから生まれたラッシュフォードのチャンスも最後のシュートが上手くいかずチャンスの芽を自ら摘み続けたユナイテッド。
結果は公式戦3戦連続ドロー。
It finishes level at Old Trafford.#MUFC | #MUNSOU
— Manchester United (@ManUtd) February 12, 2022
ハイライト
選手交代
75分 マクトミネイ🔁エランガ
82分 ラッシュフォード🔁リンガード
46分 ベドナレク🔁J.スティーヴンス
71分 エルユヌッシ🔁リヴラメント
90⁺⁵分 ロメウ🔁I.ディアッロ
データ
シュート数はアウェイチームに上回られ、ポゼッションは後半に彼らが少しスタイルを変えてきたのでホームチーム優勢の結果となりましたが前半は47:53、特に30分前後から笛が鳴るまでの間は完全にセインツに主導権を握られていました。
ラルフ・ラングニックの試合後分析ではここのところ毎回のように突如コントロールを失う時間帯があり、それを修正する必要があると言及しており、正にその通りなのですが、原因が分かっていても一向に改善される気配のない展開をこう何度も見せられてしまうと選手かコーチ、或いは両方に大きな問題があるのではないかと疑ってしまう。
このような事象は前任者、前前任者時代にもよく見られたという事実から推測すると、恐らくプレイヤーサイドの意識に何か致命的な欠陥があるのではないかという結論にたどり着きます。
近年のユナイテッドは外部補強も多くマンネリ化という事は無いと思われますが、何かチーム全体に蔓延る怠惰になる空気のようなモノがあるのかもしれません。
そんなチームを悪い意味で象徴しているのが生え抜きスターのラッシュフォード。
この試合ではデュエル勝率2/8と対人戦にほぼ負けていて、更にフルバックへのプレス意識もムラが非常に大きい。48分の場面では相手GKにボールが戻った際に立ち位置を修正せず、その後もプレスバックする気配は皆無でロマン・ペローを自由にさせ続けた事が失点の最大の要因でした。
ユナイテッドの失点シーンでよくみられる前に飛び出すボールサイドのフルバック→外に釣られるセンターバック→必要以上に中に絞る逆サイドのフルバックという恒例パターンも元を正せばウイングの守備意識の低さに原因があるケースが多く、過去の例ではその大半は彼やメイソン・グリーンウッドといったクラブ生え抜きアタッカーでした。
こうなるとアカデミー段階で守備の意識を植え付けられていないのではないかと育成部門に追及の手が及ぶかもしれませんが、ジェシー・リンガードやアンソニー・エランガはそのようなプレーをほぼ見せないので彼ら個人の問題でしょう。
マンチェスター・ユナイテッドというメガクラブでは他クラブに比べ活躍すれば一瞬にして世界的名声とお金が得られやすく、もしかするとプロ野球 阪神タイガースの若手選手伸び悩み多発と似たような構造上の問題なのではないかと思ったり思わなかったり。
xG
xGは見ていて感じたものとは大きく異なり、2.99:0.68でユナイテッドが大きくリードするという結果だったようです。
ビッグチャンスが4回ありましたがゴールに結びついたのは1回のみ。
7分のロナウドがGKを抜いて最後の押し込みでベドナレクにクリアされた場面と57分のFKからマグワイアが混戦のゴール前中央でシュートを放ったシーンは確実に得点にしなければいけないところ。守備のパフォーマンスで苛烈な批判の対象になっているキャプテンにとっては汚名返上のまたとない機会でしたが、正に呪われてるかのような結果。
あとがき
3試合続けて追いつかれる形の1-1ドローが続く事になったマンチェスター・ユナイテッド。あのポール・スコールズですらコーチでは無く選手に問題があるのではと嘆く今の状況を打破するには、まだ良くも悪くもチームに染まっていない若い選手の力に頼る必要があるのかもしれない。年長メンバーにはこの不甲斐なさと散漫なプレーの数々を猛省してもらわなければならず、今のペースでいけばシーズン終了時に63Pts。これは昨季の6~7位、一昨季の5位相当のポイントなのでCL出場は厳しいと言わざるを得ない。