21/22イングランド・プレミアリーグ
リーズ・ユナイテッドvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
土砂降りの中で90分を戦った両クラブ。
ピッチコンディションの悪化と共にファウルの数も増加し、終わってみればリーズがイエロー6枚、マン・ユナイテッドが3枚の警告祭りとなりました。
一時は2点リードから1分で同点にされパニックに陥ったアウェイチームですが、ラルフ・ラングニックの交代策がズバリと当たり、途中出場の選手が2人ゴールを奪い最終スコア2-4でこのタフなローズダービーをモノにしています。
UP. THE. REDS! 🔴#MUFC | #LEEMUN
— Manchester United (@ManUtd) February 20, 2022
プレビュー
リーズ
カルバン・フィリップス
パトリック・バンフォード
リアム・クーパー
サム・グリーンウッド
マンチェスター・ユナイテッド
エディンソン・カバーニ
トム・ヒートン
スタメン
リーズは欠場の可能性が高いと思われていたスチュアート・ダラスが先発出場。
フルバック~中盤にかけてどこでも出来るポリバレントな選手で、マンチェスター・ユナイテッドとの直接対決では過去3試合で1G1Aと相性の良さを見せています。
アウェイのレッド・デビルズはRBにアーロン・ワン=ビサカが1月3日のウルブス戦以来9試合ぶりの出場。ディオゴ・ダロトとの比較では攻撃面の拙さからリードを許していますが、今回は対面にダン・ジェームズが来る事が濃厚なので彼のスピードへの対処で強みをアピールしたい。
また、ジェシー・リンガードはこれがリーグ戦初先発。
序盤は少ないチャンスで高いゴール関与率を記録し待望論が高まっていましたが、ここのところはプレーに迫力がなくアンソニー・エランガに押され気味。このチャンスを活かして再び自身の立場を良くしたい。
試合内容
前半
イングリッシュ・フットボールらしいどんよりとした雨の中で始まったダービー。
リーズはワン=ビサカの右サイドから攻略を試み、大外→大外への展開を狙います。
最初のチャンスはホームチーム。
マテウシュ・クリヒがワン=ビサカに足裏を見せたタックルをしますが主審のポール・ティアニーは何故かノーファウルのまま試合を続け、驚くレッズをよそにカウンター攻撃を続けるリーズはクリヒの浮き球パスにジャック・ハリソンがダイレクトシュートを打つもタイミングが逸れて枠外。
6分、今度はレッズのチャンス。
リンデロフからの低いフィードをリンガードが右サイドで収め、ライン際で細かいパスを繋ぐと最後はブルーノがクロスを狙いますがここはパスカル・ストライクのタックルが一枚上手でした。ブルーノはこのプレーで足を痛めますが、その後問題なく試合に復帰しています。
10分、リンデロフから縦パスを貰ったポグバが背中でボールを隠しながらアダム・フォーショーを交わしそのまま右斜め45度から右足を振り抜き強烈一閃。
GKイラン・メリエは一度横に弾きますがすぐさま追いかけボールをキャッチ。
12分、マクトミネイとロビン・コッホが交錯し、前者の肩か肘が後者の眉尻付近にモロニ入ってコッホは流血。暫く試合が止まり、治療の後このドイツ代表DFはヘッドバンドを巻いてピッチに戻ってきました。
(しかし、ダメージは残っていたようで30分過ぎにジュニオル・フィルポに後を託しピッチから退きます。)
20分、まずはレッズが敵陣右サイドでボールを保持し、リンガードから中のロナウドを狙ったクロスが入りますが距離が長すぎて繋がらず、逆サイドのライン際まで転がったボールを拾ったリーズが仕返しとばかりにカウンター。アタッキングサードまで進むと、左サイドのボックス手前から逆側のハーフスペース目掛けてロドリゴがロブパスを狙いますがこちらも長すぎてミスパス。
22分、ユナイテッド陣内でスローインを獲得したリーズはダラスとのワンツーでフリーになったフォーショーがボックス内から右足シュートを放つもデヘアが安全に反対サイドの遠い位置に弾いてこれを凌ぎます。
26分のレッズはショーが左サイド前方にスローイン、追いついたポグバがコーナー付近からフォーショーにテイクオンを仕掛けそのまま中に侵入。ロナウドへ絶好球を出しますが、左足で放ったゴールエリア内からのシュートはメリエに阻まれ無得点。
大きなチャンスを活かせなかったユナイテッド。それでも32分には敵陣左サイドで獲得したスローインからポグバがヒールシャペウでマークを交わし、パスを受けたブルーノのミドルをメリエが横に弾いてこの試合最初のCK。
ロナウド、マグワイア、ポグバの3名が一箇所に集まってからそれぞれニア、中央、ファーに分散し、珍しく自身へのマークが甘くなったキャプテンが汚名返上のヘディングシュートを決めて先制!!
The header 👌
— Manchester United (@ManUtd) February 20, 2022
The celebration 😎
We enjoyed that, @HarryMaguire93 👏#MUFC | #LEEMUN pic.twitter.com/XOfOICBRqP
この形はスリーライオンズで彼が何度もゴールを決めている得意パターンであり、シンプルながら強力な形です。
スコアが動いたエランド・ロードでは赤色の発煙筒がピッチに投げ込まれ暫く視認し辛い状況が続きますが、これが後に起こる一歩間違えば大惨事の事件の伏線でした。
38分、ミドルサードでフォーショー→ダラスのパスをインターセプトしたショーが右サイドに張るロナウドへパス。切り返してからの左足は防がれますが、セカンドボールをサンチョが拾って細かいタッチで目の前のDFからズレながらシュート。枠の上に消えていきましたがそれまでの形は非常に良かった。
先述のコッホの治療の影響からATは長めの6分。
AT5分、サンチョにボールを預け意表を突いた攻撃参加でリーズのマンツーマン守備をリンデロフが完全に崩すと、再びボールを受けたサンチョのふんわりとした優しいクロスにブルーノが地面に叩きつけるヘディングシュートでメリエの腕の下を抜いて2試合連続ゴール!!
前半は赤い悪魔の2点リードで折り返し。
後半
リーズはハーフタイム明けに残り2名の交代枠を使い切る大胆な策でジャック・ハリソン🔁ハフィーニャ、ディエゴ・ジョレンテ🔁ジョー・ゲルハルトと攻めのカードを切ってきました。
雨足は強まる一方で、ピッチコンディションは更に悪化しグラウンダーのパスはまともに成立しないという中で始まった残り45分。特殊な環境を活かしたのはホームチームでした。
53分、リンガードからフィルポがボールを奪うとワン=ビサカが上がっていた事もあって誰もいないレッズの右サイドをロドリゴがドリブルで駆け上がり、(恐らく)クロスを狙ったであろうキックがファーのサイドネットへ吸い込まれ予想だにしない失点。
そしてセンターサークルから試合再開の直後、勢いに乗ってハイプレスをかけるリーズはワン=ビサカ→ブルーノのパスを他の試合なら確実にファウルを取られているであろうフォーショーのハードタックルで奪い、ボックス付近でパスを受けたダン・ジェームズがリンガード、ワン=ビサカのマークをずらして中にクロス。ハフィーニャがこれを決めて1分足らずでリーズは2点を奪い試合は振出しに戻ります。
こういう事が往々にして起こり得るのがライバルマッチ。
その後も雨の影響から来るロストやパスミスで危ない場面を作られるもののデヘアの活躍もあってそれ以上の失点は許さず。
65分には再びドリブルで右のハーフスペースを攻略したリンデロフからロナウド、ロナウドからボールを受けたサンチョがボックス内でシュート。
67分、ここまで持ち前のキープ力を活かして攻撃の起点になっていたポグバに替えてフレッジ、今季リーグ初先発のリンガードに替えてエランガとラルフは2枚替えを決断。
ポグバ交代の理由を試合後に問われた指揮官は"60分を越えた辺り疲労が見え始めていた"とその訳を語り、結果的にこの判断はチームの勝利を手繰り寄せる会心の一手だったかもしれない。
70分、エランガがファウル紛いのタックルで潰されたところから始まったリーズのカウンター攻撃をすんでの所で防ぐと、フィルポのトラップが乱れた瞬間にブルーノがボールを奪いレッズもカウンター。ブルーノ→ロナウド→フレッジ→サンチョと前進しながらボールを右から左へ移し、サンチョからリターンを貰ったフレッジが左足を思いっきり振り抜いて意外性の愛されキャラが勝ち越しゴールを記録!!!
ユナイテッドの選手がゴールセレブレーションを行っている最中、心無いリーズサポーターの投げた何かがエランガの頭に直撃するという最低のアクシデントが発生しますが、幸いにもエランガに肉体的ダメージはありませんでした。
ただ、こういった行為はライバル関係だからといって許容されるものではなく、当該人物への厳格な処分とリーズ・ユナイテッド自体への処分は最低限必要でしょう。
72分にはサンチョ自陣左サイドでハフィーニャ、ダラス、エイリングを立て続けに突破しそのままボックス内まで侵入すると、逆サイドへ決定的なパスを出しますが利き足ではない左足で撃ったエランガのシュートはメリエの正面に吸い込まれ悠々キャッチ。
75分以降、この試合はカード覚悟のファウルが多発。口火を切ったのはフレッジに交わされた後に服を引っ張って止めたフォーショーで、そこから試合終了までの20分弱でイエローカード6枚が提示される荒れた終盤となりました。レッズでは特にマクトミネイが気持ちを全面に出す厳しいチェックを連発しいつ退場になるかとヒヤヒヤさせられましたが何とか黄色で凌いでこの試合を終えています。
88分のマン・ユナイテッドはフレッジの楔のパスをブルーノがアウトサイドでポンと浮かせてストライクの背後を取りそのままゴール前に進出。最後はつま先でエランガのゴールをお膳立てして2-4、試合を決める4点目が生まれています。
𝗠𝗮𝗸𝗶𝗻𝗴 𝗮𝗻 𝗶𝗺𝗽𝗮𝗰𝘁 🔄🔥@Fred08Oficial and Anthony Elanga became the latest Reds to score off the bench on Sunday ⚽️⚽️#MUFC | #PL
— Manchester United (@ManUtd) February 21, 2022
フレッジは2ゴールに関与、エランガも途中出場からゴールを挙げてこれが今季2点目。
水しぶきが舞うエランド・ロードの1戦を制したのは過去の闘争同様赤薔薇、マンチェスター・ユナイテッド。終了後にはエランガのリーズサポーターへの意趣返しが話題になりました。
𝙈𝙖𝙣𝙘𝙝𝙚𝙨𝙩𝙚𝙧 𝙐𝙣𝙞𝙩𝙚𝙙 𝙨𝙪𝙥𝙚𝙧𝙨𝙪𝙗𝙨 ⭐️
— Football Daily (@footballdaily) February 20, 2022
Fred and Elanga help Man United to three points over Leeds pic.twitter.com/CMfljMM2hu
ハイライト
拡張版ハイライトは
マンチェスター・ユナイテッド公式サイトで公開されています。
選手交代
リーズ
31分 コッホ🔁フィルポ
46分 D.ジョレンテ🔁ゲルハルト
46分 J.ハリソン🔁ハフィーニャ
67分 ポグバ🔁フレッジ
67分 リンガード🔁エランガ
85分 ロナウド🔁ヴァラン
データ
ピッチ状況、久々にリーズのホームにマンチェスター・ユナイテッドがやってきた事で良い意味でも悪い意味でも興奮するサポーターという普段とは何もかもが違う特別な試合でした。
スタッツもただ単にこれを見るだけでは何の参考にもならないと思いますが、両チーム合わせてファウル32回、イエローカード9枚というのはもしかすると今季プレミア最多なのでは。
また、遂にコーナーキックから得点が生まれたことはポジティブなニュース。
139本目でようやく1点というのは他クラブからみればまだまだ劣っているかもしれませんが、空中戦に強い選手を多数抱えながら呪いという言葉で形容したくなるほど得点から見放されていたユナイテッドにとっては大きな大きなゴール。
xG
シュート数、ポゼッションで負けていたアウェイチームですが、枠内シュートの数で上回っている事からも分かるように期待値では1点近くリードを奪うという結果。
ポグバのテイクオンから生まれた25分のロナウドのシュートはxG0.77で、Understat.comの統計データに基づけばリーズ2点目、ジェームズのクロスからほぼオープンゴールだったハフィーニャの同点弾よりも大きな得点機会でした。
また、レッズはこれで直近6試合でxG2.00越えが4ゲーム。結果に直結してはいませんがこの1ヶ月のプレミアリーグにおけるゴール期待値はリバプールやマンチェスター・シティを抜いてリーグ1番、今後強豪との連戦が続く中で非常に心強いスタッツです。
あとがき
OptaJoe(@OptaJoe)によれば今節のフレッジ、エランガのゴールによってマンチェスター・ユナイテッドの途中出場選手の得点は10に達し、これは2位以下に4差をつけリーグ断トツ1位の数字とのこと。
個人的にはサンチョが遂にチームに完全適応し始めたのではないかというブライトン戦に続く圧倒的パフォーマンスを見せてくれた事が嬉しい。
2点目のアシストでも分かるように、決定機でも力押しだけでない崩しのパターンを持っている選手なので、長年クラブが彼をトップターゲットにしていた事が間違っていなかったと証明されつつあるのは良い兆候。
久々にベンチスタートとなったダロトは試合に出なかった事で自身の価値を証明したかもしれない。ワン=ビサカのタックルは唯一無二ですが、メガクラブに求められるオールラウンド型からは対極の位置にある選手で、オンボールの課題は勿論守備でも身体の向きやポジショニングの甘さを身体能力でカバーしている感は否めません。
とはいえ、圧倒的な対人守備という確かな武器は使いようによっては勝利に直結する要素たり得るので、マンマーク気味に見たいような強力なアタッカーにはワン=ビサカ、そうでない場合はダロトといった使い分けが現状はベストでしょう。