日本では、時差の関係でリアルタイムでは深夜に起きている人だけに与えられる特権であることが多いヨーロッパのクラブの新戦力獲得成功のニュース。
7月28日午前2:59にその瞬間は唐突に訪れました。
𝗕𝗼𝗻𝘀𝗼𝗶𝗿, 𝗥𝗲𝗱𝘀 👋
— Manchester United (@ManUtd) July 27, 2021
We have agreed a deal in principle for the transfer of @RaphaelVarane to United! 🔴⚪️⚫️#MUFC
まだメディカルチェックが完了していないので完全な決定ではありませんが、特別大きな問題が発生しない限り来週にも100%契約が成立するでしょう。
ヴァランの経歴
カリブ海に浮かぶフランスの海外領土、マルティニーク島にルーツを持つヴァランが生まれたのはベルギー国境にほど近い観光都市リール。
街の強豪クラブLOSCリールからも関心を集めていたヴァラン少年が選んだプロクラブのアカデミーはLes Dogues(リールの愛称)のライバルクラブRCランス。
90年代後半~00年代初頭にかけて隆盛が続き、リーグアンや国内カップを制しUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)でもセミファイナルまで駒を進める等絶頂期のクラブに籍を置いたヴァラン。
2歳上のガエル・カクタ(現RCランス所属)やティモテー・コロジエチャク(現ASサンテティエンヌ所属)と同じトレーニング施設で研鑽を積んだ彼は08/09シーズン、トルガン・アザール(現BVBドルトムント所属)やジェフリー・コンドグビア(現アトレティコ・マドリー所属)といった同世代の有望株と共にU-16のフランス全国リーグを制し翌シーズンはU-19、その年のオフにはランスとのプロ契約を締結。
あっという間にプロフットボールの世界に歩みを進めたヴァランはデビューシーズンの10/11に17歳ながらレギュラーに定着し、同オフにはその潜在能力を買われてスペインの白い巨人へ6年契約、移籍金1,125万ユーロ(推定)で加入。
レアル・マドリーでの活躍はご存じの通りですが、11/12~20/21までの10季で公式戦360試合10G7Aと成績を記録し計19個のクラブタイトルを獲得しています。
マドリーではペペ、セルヒオ・ラモスとDFリーダーの相方としての印象が強く、近年それ以外の若い選手と組んだ際のパフォーマンスから新天地での活躍に疑問符が付けられる事もあるこのフランス代表CBですが、3連覇を含む4度のチャンピオンズリーグ優勝もを経験しており、クラブ史全体でCL優勝3度、昨季はシルバーコレクターに甘んじ、あと一歩が足りない今のマンチェスター・ユナイテッドにとって1人でチーム全体を上回る彼の経験値はチームにこれ以上ない最高のプラスをもたらすのではないかと期待せずにはいられない。
因みに、8歳年の離れた弟のジョナタン・ヴァランもかつての兄と同じようにRCランスの下部組織に所属しているのでいつの日か兄弟で同じ試合に出場する日がやってくるかも?
ユナイテッド既存CBとの相性
(おそらく)ペアを組む回数が多くなるであろうハリー・マグワイアとの相性を考えてみると、マグワイアは攻守両面で積極的なプレーが多く、ビルドアップでは自らボールキャリ―でチャンスの起点を作り守備では比較的1stDFとしてボールを奪いに行く傾向の強い選手なので、マドリーではカバーリングに回る機会の多かったヴァランにとってプレーしやすい相棒になると考えられます。
言語の問題さえクリアできればリオ-ヴィダに匹敵するクラブ史上に残るパーフェクトなユニットになる事も十二分に考えられるので、この補強はユナイテッドの大きな転換点たり得る。
一方、ヴィクトル・リンデロフと組む際にはお互いそれほど積極的にボールへプレッシングするタイプではなく、お互い右CBを主戦場にしている等やや特徴が似ている同士なので少し連携面で時間がかかるかもしれません。
マグワイア-ヴァラン⇒◎
リンデロフ-ヴァラン⇒△~〇
バイリー-ヴァラン⇒△~〇
トゥアンゼベ-ヴァラン⇒〇
ジョーンズ-ヴァラン⇒未知数(経緯を考えると一度見てみたいペアではある)
バックアップ組との予想を考えると、不用意に感じる事もある程に積極的にボールへアプローチするバイリーとはまずまずハマりそうで同じく身体能力に優れ統率力も備えている(ユナイテッドでは中々発揮できませんが)トゥアンゼベとも恐らく良好な相性。
そして、契約を打ち切って今夏フリーでの放出も噂されるフィル・ジョーンズとはある種因縁のある立場で、レアル・マドリーへ移籍が完了する前のヴァランはサー・アレックス・ファーガソンがその能力を高く評価していた事もあってユナイテッドのターゲットと目されていました。
結果としてユナイテッドが選んだのは当時ブラックバーンで10代ながら接触をまるで恐れないそのメンタリティとリーダーシップからイングランドの将来と絶賛されていたフィル・ジョーンズを選択し、少年時代にユナイテッドのファンだった過去を持ち、リオ・ファーディナンドをヒーローとしていたヴァランはその2週間後にスペインでのプレーを選択しています。
(Manchester United target Varane is a boyhood Red whose hero was Ferdinand - Manchester Evening News)
ユナイテッドにとっては(或いはヴァラン本人にとってもそうかもしれない)10年越しのラブコールが叶う形となり、怪我続きでプレー出来ない期間の長いジョーンズと継続的にクラブ・代表で絶対的レギュラーとして出場しているヴァランとでは今や大きく差が開いてしまいましたが、こういった因縁を考えるとあの時違う選択をしていたらどうなっていたのだろうというifが脳裏に浮かびあがりますね。。。
ともかく、彼の加入でユナイテッドのCB層は世界のメガクラブと比較しても引けを取らない陣容となったので来季は失点数をモウリーニョ1季、2季と同じ20点台まで減らす事は夢物語ではなく最早達成しなければいけない通過点。