20‐21 Sky Bet Championship 最終節、残された残留への切符は21位のシートただ1つという状況で4クラブが争う熾烈な戦いとなりました。(ウィコムは得失点差で実際には殆ど絶望的でしたが)
結論から言えばその最後の1枠を勝ち取ったのはウェイン・ルーニーがシーズン途中より監督に就任したラムズことダービー・カウンティ。
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降格回避に向けて直接対決となったシェフィールド・ウェンズデイとの死闘を追いつき追い越されの結果3vs3のドローで終え、先んじて他会場でロザラム・ユナイテッドがカーディフ・シティと引き分けていた事により残留が確定。
最終的な順位表は以下のようになりました
優勝クラブはノリッジ。
最終的に97まで勝ち点を伸ばし2位ワトフォードに6Pts差をつけて圧巻のシーズンを締めくくりました。
ウィコムは3ゴールの快勝でチャンピオンシップでの挑戦を終える
悲壮感に溢れる3クラブとは対照的にある意味開き直って目の前の試合を一番楽しんでいたのがウィコム・ワンダラーズ。
シーズン最後の5試合を抜き出してみると3勝1分け1敗と見事な成績を出しており、リーグ全体でも6番目の勝ち点なので彼らは敗者ではありますが自信と誇りをもって来季リーグOneに戻る事が出来ますね。
そして最終順位もシーズンのほぼ全期間を過ごしてきた最下位から2つジャンプアップに成功し残留圏内のダービーとは僅か勝ち点差1。
前評判では彼らの実力が本当にチャンピオンシップを戦える水準なのか疑問視する声も多かったですが、そのような評価を下した人々もこの戦いぶりを見て自らの見識が誤っていた事を認めざるを得ない結果と言えるでしょう。
88分までは手の中にあった残留チケット
過去10シーズンで6度の昇降格を経験しているイングランドプロフットボール界きってのヨーヨークラブ ロザラム・ユナイテッド。
昨シーズンはリーグOneで2位につけてこれまでとは違い自動昇格でチャンピオンシップへの挑戦権を手にした彼らは今度こそという強い意気込みで20‐21シーズンに挑みましたが新型コロナウイルスのクラスター発生などで試合消化が遅れ、更に2021年に入ってから5連敗を2度記録するなど不安定さに拍車がかかって気が付けば定位置になってしまった降格圏に。
不運という印象が強いですが、それでもカーディフと対峙した最終節は8分に中盤のルイス・ウイングのゴラッソで先制しそれ以後も30分、32分と立て続けに相手ゴールを脅かすシュートを撃つなど終始主導権を握っていました。
ところが、1点リードで迎えた終盤88分にカーディフのシンプルな放り込みに対して対応を誤り痛恨の失点.
先制点のウイング、途中出場で好パフォーマンスを見せたリンゼイが跳ね返りに対してお見合いしてしまうなんとも言えない幕切れで彼らの残留は立ち消えになりました……
同時刻のプライド・パークではダービーが丁度PKを決めて3vs3の同点に追いついていたので正しく天国から地獄。
そして、対戦相手カーディフ目線でも実はこの試合は特別な1戦でした。
非ホジキンリンパ腫というガンである事が2021年1月に発表されていた元コートジボワール代表のベテランCB ソル・バンバが後半ATにピッチに復帰。
"It's just brilliant to see!" 💙
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@Sol14Bamba 🙌
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本来なら昇降格に関係ない立場でモチベーションを失っていてもおかしくない立場の彼らから強い情熱を感じたのは彼の存在が大きかったのだろうと思っています。
カムバックおめでとうございます!!
そして病気が再発しない事を心より祈っております。
ラムズ-アウルズはオフサイド見逃し連発で壮絶な点の取り合いに
プレミアリーグのレフェリーを務める事が多いマイク・ディーンが主審を務めたこの直接対決は"オフサイド"が1つのキーワードになった試合でした。
まずは38分、冬の移籍期間最終日にマンチェスター・シティよりローンで獲得したかつての神童パトリック・ロバーツのミドルシュートのこぼれ球にカジム=リチャーズが詰めて最初にゴールネットを揺らしたのはラムズ。
しかしこれは明らかなオフサイドという事でゴールは認められずすぐさま試合再開。
続いてはシェフィールド・ウェンズデイの先制シーン
前半AT3分にアウルズはロングスローからゴールを挙げるのですが問題なのはダービーLBクレイグ・フォーサイスの一連の動きとポジショニングとゴールを挙げたサム・ハッチンソンとの位置関係。
そもそもフォーサイスがロングスローを後ろに逸らしてしまった対応がまずいのですがゴールに直結する事になった場面を見るとハッチンソンはVARによるより正確なライン判定を挟めばオフサイドとジャッジされてもおかしくない微妙な位置でした。
後半に入るとラムズがワグホーン、ロバーツの連続得点で52分までに逆転に成功してこの時点ではダービーが残留圏内の21位へ。
You 𝗗𝗢𝗡'𝗧 save those ☄️
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⭐️ @patrick7roberts ⭐️ pic.twitter.com/71H28dNuJr
これがラムズでの初ゴールとなったロバーツ。
セルティックで活躍したのが20歳の時で、あれから4年が経過し順風満帆とは言えないキャリアを送っていますがこれをキッカケに浮上してもらいたい選手です。
しかしながらこのままで試合が終わる事は無く、62分にはアウルズのロングボールのこぼれ球に対して先述のフォーサイスが再び致命的な対応をしてしまい2vs2の同点に。
そして順位表もこの時点ではロザラムがカーディフにリードを奪っていたので残留は彼らの手に舞い戻っています。
そしてオフサイドが絡む3度目の決定的場面が訪れたのは69分。
アウルズが右サイドで得たコーナーキック、ニアサイドを狙ったボールはカジム=リチャーズがクリアしますがボールはラインを割らずファーサイドに流れて丁度その先にいた23番ダンクリーの折り返しに13番ボルナーが合わせて勝ち越し。
しかしながらこのゴールもダンクリーの折り返し時点でボルナーは明らかにオフサイドラインの向こう側にいるので本来は認められるべきではない得点でした。
1点目はギリギリの位置だったので人間の目ではどちらか判断できなくても仕方がありませんがこの明らかなオフサイドを見抜けなかった審判団の力量には疑問が残ります。
この時点では正直ダービーの降格は待ったなしであると覚悟を決めていましたがまだまだドラマには続きがあったようです。
その場面はラムズ試合終盤のカウンターチャンスでした。
カジム=リチャーズが左サイドに展開すると、ボールを受けたワグホーンはピッチ中央を走る途中出場のポーランド代表アタッカー カミル・ヨズヴィアクにバトンを繋ぎます。
そしてスピードに乗ったヨズヴィアクは勢いそのままボックス内に侵入すると先程勝ち越しゴールをアシストしたダンクリーがたまらずスライディング。
このファウルで得たPKは1ゴール1アシストのワグホーンがきっちり決めて再び振り出しに戻った試合ですが、同時刻にロザラムが追いつかれていたので今度はダービーが21位にカムバック。
83分にはラムズに追加点のビッグチャンスがありましたがこれを決めきれず終盤10分+AT6分(実際には9分台まで時計が動いたままでしたが)という追われる立場からすると無限にも感じる果てしない時間を何とか凌ぎ切ったダービーが残留を勝ち取る事に成功しています。
ウェイン・ルーニーは最下位で受け持ったクラブを3つ順位を上げてシーズンを終える事に成功し未経験のマネージャーとしては及第点を与えられる出来。
しかしながら今後を考えるとやはりまだ監督を務めるには時期尚早だとクラブの試合を見ていて強く感じたのでキャリアを考えるならば一旦誰かの元に師事してもらいたいというのが個人的な感想。
振り返り
20:30 カーディフ-ロザラム キックオフ
↓
20:32 ダービー-シェフィールド・ウェンズデイ(以下アウルズ) キックオフ
↓
20:38 ロザラム 先制ゴール(8分、ルイス・ウイング)
{21位ロザラム 22位ダービー 23位アウルズ}
↓
21:21 アウルズ 先制ゴール(45+4分、サム・ハッチンソン)
{21位ロザラム 22位アウルズ 23位ダービー}
↓
21:47 ダービー 同点ゴール(49分、マーティン・ワグホーン)
{21位ロザラム 22位ダービー 24位アウルズ}
↓
21:50 ダービー 勝ち越しゴール(52分、パトリック・ロバーツ)
{21位ダービー 22位ロザラム 24位アウルズ}
↓
22:00 アウルズ 同点ゴール(62分、カラム・パターソン)
{21位ロザラム 22位ダービー 24位アウルズ}
↓
22:06 アウルズ 勝ち越しゴール(69分、ジュリアン・ボルナー)
{21位ロザラム 22位アウルズ 23位ダービー}
↓
22:16 ダービー 同点ゴール(78分、マーティン・ワグホーン)
カーディフ 同点ゴール(88分、マーロン・パック)
{21位ダービー 23位ロザラム 24位アウルズ}
↓
22:22 カーディフ-ロザラム 試合終了(1vs1)
↓
22:35 ダービー-アウルズ 試合終了(3vs3)
最終順位
21位ダービー 44Pts
22位ウィコム 43Pts
23位ロザラム 42Pts
24位アウルズ 41Pts
(参考:Championship Football News, Fixtures Results, Table | Sky Sports)
ダービーの同点弾とロザラムが同点に追いつかれたゴールがほぼ同時に生まれていたというのは天のいたずらを思わず疑いたくなるような出来すぎなストーリーでした。
ロザラムはあと6分リードできていれば悲願の残留を達成できていただけにそのショックの大きさは計り知れません。
一方で残留を決めたラムズは試合後にスタジアム外で選手とサポーターが揉みくちゃになってお祭り騒ぎでしたが彼らの戦力をもってすれば本来残留ではなくプレーオフを争う位置にいなければいけない立場なので今オフは首脳陣を含め体制の見直しが急務です。
3歩進んで2歩下がるを繰り返すクラブ売却問題についても同様。
そして最下位での降格となったシェフィールド・ウェンズデイはスタジアム売却を巡る勝ち点減点が結果に直結する事になり、オーナーのチャンシリ氏はサポーターへの謝罪を発表していますが2016年にはプレミアリーグ昇格のプレーオフ決勝に駒を進めていた同クラブは僅か5年でリーグOneへ向かう事になります。
また、プレミアリーグに所属する同じ街のライバル シェフィールド・ユナイテッドも既にチャンピオンシップへの降格が決まっており、Optaによればシェフィールドの両クラブが同一シーズンに降格を経験するのは今回が初めてとの事。
2 - Both Sheffield United and Sheffield Wednesday have suffered relegation in the same season for the first time in English football league history. Deflated.
— OptaJoe (@OptaJoe) May 8, 2021