ノリッジ・シティ、ワトフォードがそれぞれ2位以上の順位を確定させて自動昇格の2枠は既に埋まっているSky Bet Championship。
残すところは3位~6位までの4チームによる昇格プレーオフ枠争いとなっていましたが44節を終えてそちらに関しても顔ぶれが決定致しました。
プレーオフ進出チームは
の4チーム。
ESL騒動でUEFA会長アレクサンデル・チェフェリン会長から蛇のようだと揶揄された事でもお馴染みのユベントス会長アンドレア・アニェッリに言わせれば世界で最も"価値"がある試合というこのPLへの昇格プレーオフ。
形式はまず初めにリーグ戦3位vs6位、4位vs5位がホーム&アウェイで戦い、それぞれの勝者が聖地ウェンブリーで一発勝負の決勝戦を戦うという内容になっており、昨シーズンのプレーオフ勝者フラムはチャンピオンシップで4位のクラブでした。
過去10年のデータ
過去10シーズンのプレーオフ勝者についてまとめた表がこちら
10‐11シーズンのスウォンジー、11‐12シーズンのウエストハム、12‐13シーズンのクリスタルパレスはそれぞれプレミアリーグに定着する事に成功し、後ろ2クラブは今もイングランド最高峰の舞台の1員。
それ以降はプレミアリーグの放映権料の増大の影響でリーグ間の差が更に開いたのか1シーズンから2シーズンで元の場所に戻ってしまうケースが多いです。
そんな中で希望になりそうなのが18‐19のプレーオフ勝者であるアストンヴィラ。
今シーズンのプレミアリーグ残留を既に決めており、ジャック・グリーリッシュ(現在負傷離脱中)を中心とするアタッカー陣はリーグ有数の攻撃力を誇っていて守備面でもエズリ・コンサの台頭、そしてノッティンガムフォレストより獲得したマティ・キャッシュのフィットによりバックス4人の顔ぶれが揃ったので安定感が出てきました。
そして忘れてはならないのがアーセナルから2000万ポンドで獲得した守護神エミリアーノ・マルティネス。
セーブ率はバーンリーのニック・ポープを抑え77.2%でリーグ首位
PSxG±でも同じくリーグトップのスコアを記録しています。
参考:Premier League Goalkeeper Stats | FBref.com
:Premier League Advanced Goalkeeper Stats | FBref.com
各チームの情報
ブレントフォードFC
まずは"The Bees"ことブレントフォードFC
愛称の通りミツバチがエンブレム中心部に描かれていて、ロンドン・ヒースロー空港近郊に本拠地を置くクラブ。
グリフィン・パーク
2019‐2020シーズンまではグリフィンパークという100年以上の歴史がある由緒正しいスタジアムをホームにしていましたが、今シーズンからは新たにブレントフォード・コミュニティ・スタジアムという新球場に移り収容人数も5000人程UPしています。
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
ニール・モペイ、オリー・ワトキンスと2シーズン続けてエースストライカーを高値でプレミアリーグのクラブに売却しているブレントフォード。
今シーズン開始前の移籍市場ではワトキンスに加えてサイード・ベンラーマも買い取り義務付きローンでウエストハムへ移籍(冬のマーケットで完全移籍へ移行)するなど攻撃力の低下が懸念されていましたが新たなエース イヴァン・トニーの登場によりその心配は杞憂に終わりました。
irohasesun-fm-foot.hatenablog.com
以前このブログでも記事にしましたが、前シーズンのリーグOne(3部相当)得点王のトニーはチャンピオンシップにステップアップしても勢いは衰える事無く、44節を終えたリーグ戦で42試合28G10Aという素晴らしい成績を残し連続得点王をほぼ手中に収めています(2位のプッキは現在25ゴール。リーグ戦は残り2試合)。
クラブのオーナーがデンマークのFCミッティランも所有しているのでクラブには多くのデンマーク人スタッフ・選手が在籍しており、指揮官トーマス・フランクもデンマークのアンダー世代のコーチを長年務めてきた人物です。
ただ、不安要素もあり、ユースを撤廃する代わりに各国名門クラブのアカデミーから溢れ出た逸材を獲得するという今まで一定の成果を上げていた選手獲得方針がイギリスのEU離脱の影響により難しくなったので今後は国内からの補強が中心になると思われます。
AFCボーンマス
ここ数年はプレミアリーグの常連クラブでしたが昨シーズンは18位に終わり、国内でも最も評価の高かった若手指揮官エディー・ハウもクラブを去ったチェリーズ。
チャンピオンシップの沼に飲み込まれるのではないかと正直思っていましたがドミニク・ソランケ、アルノー・ダンジュマが共に15ゴールを記録してブレントフォードと並んでリーグ最多の73ゴールを記録(第44節終了時)。
ソランケ(正面左)、ダンジュマ(正面右)
フィリップ・ビリング、デイヴィッド・ブルックスなどプレミアリーグのクラブから関心を集めていたプレイヤーがチームに残ったのがプレーオフ圏内に進出出来たもう1つの要因かもしれません。
プレミアリーグからチャンピオンシップに降格する際に主力の大半を失ったクラブはあっという間にリーグOneまで直滑降してしまうケースも度々見られます(ハル・シティ、サンダーランド、ウィガンetc.)
スウォンジー・シティ
かつては新進気鋭の指揮官(当時)ブレンダン・ロジャースに率いられ"スワンゼロナ"という異名も付けられた攻撃的なフットボールを持ち味にしていましたが、今シーズンのスワンズは守備の堅さで勝ち点を積み上げてきたチーム。
弱冠20歳ながらCBのレギュラーの座を手にしたベン・カバンゴは今後の注目株。
4月には新型コロナウイルスプロトコルに違反してパーティーを開いてしまう等、ピッチ外ではまだ若さ故の過ちもありますがピッチ上では安定したパフォーマンスを続けています。
先程の過去10シーズンの昇格チームの成績と比較すると44試合54得点というスタッツはやや不足している感があり、プレミアリーグで通用するかと聞かれると厳しいと言わざるを得ません。
一方で守備力は過去のプレーオフ勝者と比較しても十分な力量だと思うので一発勝負のプレーオフでは強敵になりそう。
バーンズリーFC
4枠目には今シーズン最大のサプライズであるThe Tykesが入っています。
開幕から7節未勝利と降格候補にも挙げられていたタイクスでしたが10月に監督交代に踏み切るとその後は一転して勝利を積み上げていきます。
中でも今年1月27日の第26節カーディフ戦から続いた12戦不敗の記録を凄まじいものがあり、同期間内には最大7連勝、計9勝を挙げて一気にジャンプアップ。
この勢いはリーグ戦だけに留まらず2月11日のFAカップ5回戦ではチェルシー相手に試合を優勢に進め、敗れはしましたが相手の枠内シュートを1本に抑える大健闘。
今シーズンは3CBで挑む事が多いバーンズリーですが、中でもセンターを務めるミハウ・ヘリクと左側を任されるマッズ・アンデルセンはリーグ最上位のセンターバックでWhoScoredのCBレーティングではこの2名が1位2位独占。
特にヘリクはプレミアリーグでも間違いなく通用すると思うので今シーズンオフの移籍市場では人気になりそうな予感。
プレーオフを勝ち抜いたのはBees🐝
𝙒𝙀 𝘼𝙍𝙀 𝙋𝙍𝙀𝙈𝙄𝙀𝙍 𝙇𝙀𝘼𝙂𝙐𝙀#BrentfordFC #BeeTogether 🐝 pic.twitter.com/OlsPspeZMw
— Brentford FC (@BrentfordFC) May 29, 2021
ボーンマスとの準決勝を2戦合計3vs2で勝利したブレントフォードとバーンズリーを2戦合計2vs1で下したスウォンジーが衝突する事になった20‐21EFLプレーオフ。
ウェンブリーで行われた世界で最も熱い試合は前半の早い時間にビーズのチャンスメイカー ブライアン・エンベウモがペナルティボックス内でスウォンジーの守護神で今季リーグ最多クリーンシートを記録したフレディ・ウッドマンに倒されてPKの判定。
イヴァン・トニーがこのキックをゆったりとした助走から冷静に決めると、続く20分にはカウンターチャンスにエンベウモが再びドリブルで相手陣内を切り崩し30番ローアスリウのクロスにダイレクトボレーで合わせてみせたエミリアーノ・マルコンデスが2点目のゴール。
名前からも分かるようにブラジルの血を引くこのデンマーク人MFの追加点で早々に試合の大勢を決めたビーズはその後もトニーのポスト直撃ボレーなどで相手ゴールに迫り、後半に入って65分にはフラストレーションが溜まっていたのか或いは気合が空回りしてしまったかスワンズの中盤 6番のジェイ・フルトンが背後からスライディングタックルに及んでしまい一発退場。
1人少なくなって万事休すのスウォンジーはその後殆どブレントフォードゴールに近づく事も出来ずタイムアップを迎えました。
ブレントフォードがイングランドトップリーグに復帰するのは1946-1947シーズン以来74季ぶり。
(参照:Premier League 1946/1947 » 42. Round)
因みにこのシーズンはサー・マット・バスビーが正式に監督に就任してから初のフルシーズンでリバプールとの熾烈な順位争いを繰り広げていました。
クラブの面子を見ると今はリーグ1やリーグ2にいるチームの名前もちらほら。
最後になりますが昨季は目前で逃したプレミアリーグへの昇格切符を遂にその手に収めたブレントフォードFCとその全ての関係者・サポーターの皆さん、おめでとう!!