チェルシーとマンチェスター・シティは非常に多くのプレイヤーを抱え、前者は主に英国圏のクラブ、後者は欧州中に世界中にネットワークを拡大しつつあるシティ・グループの傘下クラブへのローンでそれぞれ選手の出場機会を確保しています。
このようなやり方には批判も多く、私自身もどちらかと言えば否定的な立場ではありますが今夏のチェルシーを見ているとチームの戦力としてだけでなく、選手売却においても一定の成果を出しているのは事実。
ロメル・ルカクを€115Mという大金で引き抜いてこれたのもアカデミー出身のプレイヤーを売却して国内外のクラブから高額な移籍金収入を得られたことに起因しているのはまず間違いないでしょう。
リスト
(順番は移籍金の降順)
*タミー・エイブラハム
↪ASローマへ完全移籍(€40M)
フィカヨ・トモリ
↪ACミランへ完全移籍(€29.2M)
*マーク・グエイ
↪クリスタル・パレスへ完全移籍(€23.34M)
*ヴァレンティノ・リヴラメント
↪サウサンプトンへ完全移籍(€5.9M)
ルイス・ベイト
↪リーズへ完全移籍(€1.75M)
ディネル・シメウ
↪サウサンプトンへ完全移籍(€1.75M)
マイルズ・パート=ハリス
↪ブレントフォードへ完全移籍(€1.5M)
ピエール・エクワー=エリンビー
↪ウエストハムへ完全移籍(€1.4M)
*買い戻しOP付きと報道された選手(漏れがあったらごめんなさい)
チャンピオンシップのクラブへのローンを増やしたい
一昔前はルーカス・ピアソンやマルコ・ファン・ヒンケルなど、ティーンの頃に名を馳せた選手を10代のうちに連れてきては長期のローン生活でいつまでも保持し続けるという悪辣な青田買いクラブの代名詞だったチェルシー。
ただ、18歳未満の選手の国外移籍禁止など、徐々に規制が厳しくなる中で国内組の育成により重点を置き始め、現在トップチームの主軸であるメイソン・マウントやリース・ジェームズは小学生の段階からクラブの育成プログラムで育った秘蔵っ子です。
今夏の取引を見ても高額な移籍金を残したエイブラハム、トモリ、グエイの3人はいずれもイングランド人プレイヤーかつホームグロウンの条件を満たしている選手。
結果的に前2人はイタリアへの移籍でしたが、やはり価値が高くなるので20代前半かつ国内育成の条件を満たした選手と言えそうです。
また、この3名に共通するもう1つの大きな遍歴といえば選手としてブレイクするキッカケになったのがチャンピオンシップのクラブへのローンということ。
エイブラハムは18/19シーズンにアストン・ヴィラへローンで加わり37試合25ゴールでティーム・プッキに次ぐ得点ランク2位に輝き、同シーズンのリーグベストイレブンにも選出。
ジャック・グリーリッシュと共に攻撃の中心に君臨し、ユナイテッドからローンで加わっていたアクセル・トゥアンゼベ同様サポーターには残留を熱望されましたが翌シーズンは保有元へローンバック。
フィカヨ・トモリもこのシーズンにヴィランズとプレーオフファイナルで戦ったダービー・カウンティで芽を出しました。
ランパード指揮下のラムズは同じくチェルシーから出向したマウント、リバプールから加わったハリー・ウィルソンらのローン組とジェイデン・ボーグルらクラブのアカデミー出身の若手が多くの出場機会を得て評価を上げましたが、トモリは主に右CBのレギュラーとしてプレー。
グエイに関しては昨季の話なので記憶に新しいと思いますが、スウォンジーでは3CBの左右で起用され、上背の物足りなさを補って余りある身体能力と対人の絶対的安心感でクラブのプレーオフ進出の立役者となりました。
今季のユナイテッド
今夏の移籍市場では何と言ってもジェイドン・サンチョとラファエル・ヴァラン(クラブ公式ではヴァランヌ表記)の加入が目玉補強ですが、私はアカデミー組のローン先についてもこれまでとは違い適切なクラブを選択出来ているのではないかと見ています。
トップチームでの経験に乏しいウィル・フィッシュは同じマンチェスターに本拠を置くナショナルリーグ(5部相当)のストックポート、同じく初ローンとなるイーサン・ガルブレイスはリーグOne(3部相当)のドンカスター・ローバーズでそれぞれタフなリーグに適応できる身体作り+出場機会の確保。
昨季リーグTwo(4部相当)のサルフォードで研鑽を積んだディショーン・バーナード、リーグOneのMKドンズでは半年ながら持ち前の身体能力で右サイドを蹂躙したイーサン・レアードはチャンピオンシップでトップ層に近いレベルへの挑戦。
ドイツ、ベルギーへのローンが上手くいかなかったタヒス・チョンは元々育成に定評のあるバーミンガム(現在のクラブを取り巻く状況は決してよくありませんが)、プレシーズンでインパクトを残したファクンド・ペリストリはアラベスへのローンを継続。
また、ヴァラン加入で出場機会の減少が危惧されたアクセル・トゥアンゼベもヴィラでミングス、コンサとのレギュラー争いに参加し、ブランドン・ウィリアムズ、アマド・ディアロ、アンソニー・エランガ、ショラ・ショレティレにもそれぞれローンの取引が進んでいるとの噂。
来年のW杯出場を目標としてブラジルの強豪フラメンゴへの移籍を決断したとされるアンドレアス・ペレイラを含め、概ね選手の要望と状況に沿った場所を提示できているのではないでしょうか。
Andreas Pereira will fly to Rio de Janeiro later today. New and final details of the deal after late change: Flamengo will not pay any loan fee but will share salary with Man United 🔴🛬 #MUFC
— Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) August 20, 2021
Flamengo will have €20m buy option in 2022. Man Utd would receive 20% of future sale.
一方で移籍金収入は現時点で0。
勿論スールシャール監督が移籍の噂のある選手をチームの戦力と見なしている事は考慮する必要がありますが、新型コロナの影響がいつまで続くか分からない昨今の世界では選手売却による直接的な収入はより重要性が増すので、余剰戦力になっている選手の放出に関してはまだまだ他クラブに遅れを取っていると言わざるを得ません。
厳しい話をするのであれば、今季のローン組のうちトップチームに定着できるのはおそらく1人、2人なので、飛びぬけた才を持つ場合を除き目覚ましい成績を残した選手が出現した暁には需要がある内に放出するというのもお互いの為かもしれない。
あとがき
ガーナーとの契約延長のニュースを早く聞きたい😢
一方でこのまま話がこじれるならば、ここまで書いてきたように早く次の移籍先を探すという割り切りも必要になってくるでしょうからファン心理としてはかなり複雑。。。