※23/24 イングリッシュプレミアリーグ
マンチェスター・ユナイテッドvsニューカッスル・ユナイテッド戦の記事です。
出場機会に飢えていたアマドが一気にレギュラーポジション獲得へ輝きを爆発させた23/24シーズンのホーム最終戦、ゴールを決めたのはいずれもティーンから20歳前後の若い選手たちで、彼らが中心となって強いマン・ユナイテッドを再び見せてくれる日が来る事を信じたい。
Signing off at Old Trafford with three points 🫡#MUFC || #MUNNEW
— Manchester United (@ManUtd) May 15, 2024
【Match Review】
Starting lineup
前半
1トップがホイルンドからブルーノに変わり、少し変化が見られた部分がある。例えば、GKからショートパスで繋ぐ際のビルドアップの楔はブルーノが担当してプレッシャーが無ければ反転、寄せられている場合はシンプルに近くの味方にはたくか持ち前のインスピレーションでウイングにスルーパスを通すなど彼の個人技をベースにニューカッスルのプレスを回避。
昨シーズン終盤、怪我人続出の影響でブルーノが一時的にダブルピボットで起用されていた際にプレー選択の傾向が良い意味で無難になり、チャンスクリエイト能力を維持しながら不用意なロストが減少した事について取り上げたが、フォルスナインで起用された今回も同様の傾向が見られた。もしかすると定期的に役割に変化をつけていくのが彼との一番良い向き合い方なのかもしれない。
ブルーノCFには他にもメリットがあり、トップ下で起用すると周りの準備が間に合っていなくてもボールホルダーにチェイスし、結果として中盤のスペースを空けてしまいピンチを広げる事が少なくないが、一番前でそれを行ってくれる分にはミドルプレスで相方になるマクトミネイがコースブロック中心の守備でスペースを埋めるので補完性が高く、最初からブロックの外に配置してしまえば強すぎるボールへの食いつきも一転して良薬に。
また、後方からのロングフィードのターゲットとしてはホイルンドがいないのでマクトミネイ,メイヌー,勢いをつけて走り込むダロトらがその代役を担い、ボールにタイトに食いつくニューカッスルの守備意識の高さを上手く利用した入れ替わりからカウンターに繋がったケースが何度か見られた。
カゼミロ,ワン=ビサカのポゼッション時のパスのズレの多さについては相変わらずで、そこに今回はガルナチョも横パスやバックパスがほぼ毎回相手へのチャンスボールになるので自滅のようなショートカウンターを何度も招くも、チーム全体のプレス強度やトランジションの速さが普段とは違った。エラーを減らしつつこのテンションをあと2試合維持できるかどうかがカギとなる。
ニューカッスルはゾーンで守るというよりも人につく意識が高いので、ホームチームとしてはボールホルダーに対する後方から水平のパスコースを作る上がりや逆に前から降りて瞬間的な数的優位を作る動きが肝心で、なおかつビルドアップでオナナをネットワークに入れられれば相手がマンマークでついてきた時に必ず1人余る事になるので、自分たちが円滑なポゼッションに至るために何が足りていないのかを炙り出す絶好の機会といえる。
そんなマグパイズも赤い悪魔と似たようなポゼッションの課題を抱えており、それは自陣の低い位置にボールがある時に主にフルバックがタッチライン際いっぱいに広がって尚且つそこに積極的にパスを入れるので出しどころに困って前線に蹴り込むかボールをカットされてショートカウンターを食らう場面が目立ったこと。特に戦線復帰したトリッピアーについては後述の得点シーンに代表されるようなプレー全体のポジショニングの悪さが露呈した。
更に、ショーン・ロングスタッフも自分のマークをあっさり手放してフリーにしてしまう事が少なくないため、ニューカッスルの右サイドは主に守備面でやや機能不全に陥っているように見えた。本職ではない役割を任されているクラフトやシンプルに縦突破からのクロスでダロト相手にやや優勢だったマーフィーは相対的によくやっている。
31分、トリッピアーの仕方なく蹴ったようなDFライン裏を狙うロングフィードをカットしてボールを奪ったユナイテッドはニューカッスルのタイトなプレッシングをブルーノの見事なフリックで突破して相手陣内深い位置へ侵入。そのまま右サイドでボールを保持し、アムラバトのパスを大外で受けて中央に向けてカットインを試みたアマドからメイヌーへのラストパスは少々弱すぎるように映ったが、丁度いいコースを通って繋がりこの決定機をメイヌーがしっかり決めきって先制マン・ユナイテッド!!
メイヌーのオフボールも良かったが、この得点自体はどちらかと言えば中央への絞りが甘くゴール前にスペースを作っていた上に、いざそこを突かれた瞬間に思考が止まってただただオフサイドラインを1人で下げるだけになってしまったトリッピアーの対応がお粗末だった。もしかすると今回が復帰戦で試合勘が鈍っていた事も影響したのかもしれない。
予想外の形で先制した後、得点・失点の直後に緩むのが癖になっているホームチームはアムラバトがルーズボールに対し後ろ向き(自陣ゴール側)で取りに行く際のボールタッチの乱れという悪い意味で再現性のあるロストから危機を招くもカゼミロのスライディングタックルで何とか失点阻止。
更に、数十秒後に与えたFKから今度はカゼミロがしっかりとクリア出来なかったところからボールを繋がれマーフィーのクロスに長身ダン・バーンが上から叩きつけるヘディングシュートを放ち、きっかけを与えた背番号18がゴールライン上で間一髪弾き出すという事で連続した間の抜けたプレーが出てしまう。
また、アウェイチームが攻撃時に前線に配置する人数を増やしたので、ガルナチョには押し込まれた際の守備対応でウイングバック化してボックス内まで戻って欲しかったのだが、カウンター時に余力を残す為なのか最後までついていかないので左サイドへの対角線のロングボールから崩されるシーンが目立つように。
後半
48分、GKからのビルドアップで全体的にライン間の距離が遠くルーズボールを回収できる状況が整っていない中でオナナが前線へのフィードを送り、弾き返されたボールに対し後ろ向きでアムラバトが対応するという先述したボールロストを再現するような流れでニューカッスルのチャンスになると、マーフィーの低く鋭いクロスにカゼミロの背後で完全フリーとなっていたゴードンが合わせて同点に追いつかれる。
ボールを収められなかったアムラバト,ボールに意識を取られてマーフィーに背中側を走られたダロト,自分のマークであるゴードンをずっと視野に入れられていないカゼミロ,外を捨てて内に絞るのが遅いワン=ビサカと良くない対応が続いたが、そもそもロングボールを蹴る際の条件やターゲットの場所及びその後のリカバリーなど細部が全く詰められていない事が一番の問題だろう。
52分にはこれまたアーセナル戦に続いて噴出したCK攻撃時にカウンター対処要員として後ろに残るワン=ビサカの判断の悪さ・遅さからくるボールロストとその後のトランジションの緩さという問題から失点不可避というカウンターを食らうが、アムラバトの素晴らしいスプリントとボールホルダーへの的確なプレッシャーでイサクのシュートをブロック。得点を奪ったのと同じくらい価値のあるスーパープレーだ。
Sofyan saves the Reds 🛡️#MUFC pic.twitter.com/J3A83b94nO
— Manchester United (@ManUtd) May 16, 2024
57分、前半から左CKでファーにアマドを配置してストレート系の速いボールにボレーで合わせるという形を繰り返していたマン・ユナイテッド。この時はニアへのボールだったがマーフィーが頭で逸らしたボールが丁度アマドの足元へ吸い込まれていき、ハーフバウンドの簡単ではない状況で正確にボールの芯を撃ち抜いた強烈な一撃がゴールネットに突き刺さる。
アマドの放つ矢🎯#MUFC pic.twitter.com/AA6U1rI6Rz
— マンチェスター・ユナイテッド (@ManUtd_JP) May 16, 2024
再びビハインドになったニューカッスルは62分に一挙3枚替え。
パフォーマンスの良くなかったトリッピアーを下げてファビアン・シェアを投入しクラフトをRB、RWをクロッサーのマーフィーからテイクオンの脅威があってレシーバーにもなれるアルミロン、左のCMをアンダーソンからジョエリントンへ変更し、セットプレーのターゲットになれる選手が2人増えた事でCKやFKが更に脅威に。
72分のニューカッスルのカウンターはワン=ビサカが曖昧なロブパスを蹴って弾き返された所から始まり、相手のパスが流れ一度はユナイテッドが所有権を取り返したものの、今度はオナナが向う見ずにロングキックを選んで再びボールを奪われて自陣ボックス内ではカゼミロが無闇に飛び込んで交わされるという最悪の状況判断が連続した結果で、ゴードンのラストパスはゴール前を横切って失点やむなしという場面だったが幸運に恵まれて失点だけは避けられた。
前半の最後にもチラッと触れたが、体力が無くなって大外のフルバックの飛び込みに一層対応出来なくなってきたガルナチョと1G1Aのアマドの両ウイングを80分過ぎに交代させ、リチャとラッシュフォードが戦線復帰。
5バックになった事でバックスのマーク・空間の管理が明確になり、84分には入ったばかりのリチャのタックルでボールを奪い始まったターンオーバーから、ブルーノパスを中央で受けたホイルンドが斜め右にドリブルしながら足を伸ばしてきたルイス・ホールの股下を抜くブラインドショットでドゥブラフカを破り貴重な追加点を奪う。
パスが通る前段階の所に今回のゴールのポイントがあり、ブルーノとホイルンド、共に相手との距離を瞬間的に確保するオフボールが得意な選手同士だからこそ生まれた得点だと個人的には考えている。
アディショナルタイムにはニューカッスルのCKから、こぼれ球に対し迎撃に向かったエヴァンスがジョエリントンのマリーシアでバランスを崩し転倒した事もあってフリーでシュートを打たせてしまい、ホールのミドルショットで1点差に迫られたが何とか3-2で逃げ切りに成功。
試合後には退団を発表しているヴァランや同じく契約満了での別れが濃厚と見られるマルシャルもピッチに降りてサポーターに顔を見せ、下記ポストの写真は来季のキャプテン・副キャプテンを示唆するものなのではないかというくらいリーダー適性のあるコアメンバーが並んでいる。
Friends for life 🥰#MUFC pic.twitter.com/Cy3xzEjmhF
— Manchester United (@ManUtd) May 15, 2024
データ
Standard
ポゼッション、シュート数ともにニューカッスルが上回り、アタッキングサードや敵陣ボックス内でのタッチ数も全て相手にリードされる苦しい試合ではあったが、懸念された空中戦に関しては五分以上に戦えたのでセットプレーからの直接的失点を避けられたことが勝利を手繰り寄せた。
ショートレンジでのパス成功率が著しく悪かったカゼミロとガルナチョについてはポゼッションフットボールへの適応に疑念を残す結果で、前者は恐らく放出が既定路線なので言及を避けるが、後者がカウンター専からどれだけ発展できるかについてはやや悲観的な見方をしている。
ゴール期待値もニューカッスル優勢は変わらず、このマップでは勝敗を分けたのはアムラバトのスーパープレーで凌いだイサクのシュートと完全にメイヌーの背後を取ったロングスタッフの2度の決定機をマグパイズが決められなかった事だと示している。
マン・ユナイテッドには、勝利したもののゴールエリア内から1度もシュートを放てていない事に気付いてフィニッシュワークの明確な意思統一と精度の改善に取り組んでもらいたい。
Man Utd 3 : 2 Newcastle
— markstats bot (@markstatsbot) May 15, 2024
▪ xG: 1.46 - 2.29
▪ xThreat: 1.47 - 2.4
▪ Possession: 45.3% - 54.7%
▪ Field Tilt: 42.5% - 57.5%
▪ Def Action Height: 43.0 - 42.7#msbot_eng #epl pic.twitter.com/TrHNQjhpci
PASSING NETWORKではアムラバトとブルーノが中央で多数の線の起点となる重要なポイントになっている事が分かり、センターラインの充実がそのままチームの好結果につながるという証明のような形。ポゼッションで上回ったニューカッスルはサイドでの縦のポジショニング被りや中央を経由したパスワークが少なかった点などが反映される結果に。
あとがき
ホーム最終戦後の恒例のスピーチでは、ブライトン戦の勝ち点3とその後に控えるウェンブリーでのマンチェスター・ダービーの勝利の為に全てを捧げるとサポーターに誓い、カップトロフィーをオールド・トラッフォードに持ち帰ってくると心強い発言をした指揮官。本人の去就もFAカップを取れるかどうかで大きく変わってくるだろう。
Erik ten Hag has addressed the Old Trafford faithful...
— beIN SPORTS (@beINSPORTS_EN) May 15, 2024
Thoughts?#beINPL #MUFC pic.twitter.com/1l56lU5bOu