トッテナム・ホットスパーvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
大きなビハインドを負っても最後まで勝負を諦めないメンタリティ、これこそマンチェスター・ユナイテッドに一番必要なものだったので今回の試合は負けたとはいえ非常に意味のある内容だったと思う。
⏹️ We exit the #CarabaoCup.#MUFC
— Manchester United (@ManUtd) December 19, 2024
【Match Review】
Starting lineup
前半
トッテナムが4-2-3-1、マン・ユナイテッドが3-4-3で始まったカラバオカップ準々決勝は両チーム共にそれほど試合を落ち着かせようという意図が無かったので序盤からコートの行き来が激しいトランジションゲームとなった。
質というよりも純粋に量が求められやすい展開になった事はマイナスだったが、やはりボールホルダーに対するエリクセンの水平のサポートはタイミングが抜群に上手く、特に後ろ向きでボールを受けて次のプレーに困っている味方をさり気なく助けているシーンが他のCMよりも多い。
15分、アタッキングサード入り口付近からのスパーズのFKに対し、ショートパスへの対応が完全に遅れてゴール正面でペドロ・ポロに十分なスペースと時間を与えると、右足から放たれたパワーショットはホイルンドを掠めて軌道が変化しバユンドゥルは外に弾く事が出来ずこぼれ球をソランケが詰めてネットを揺らされた。
🏹 @DomSolanke 🤝 scoring v @ManUtd #CarabaoCup | @SpursOfficial pic.twitter.com/IgGGJbA4ck
— Carabao Cup (@Carabao_Cup) December 20, 2024
ヨロがボールウォッチャーになってマーク担当だったソランケを自由にさせてしまったり、そもそもボックス外の相手への全体的なプレッシャーが弱すぎたりとセットプレーとその後の二次攻撃に対する守備の甘さが出た失点。
ビハインドを負ったユナイテッドはスローテンポなポゼッションではハーフレーンで相手を引き付け大外のダロトを解放しつつ、カウンターではペドロ・ポロの背後を積極的に狙ってチャンスの起点になるブルーノとあえてワンテンポ遅らせてフィニッシュワークに参画する事でカットバックのターゲットとして有効打になるエリクセンの2人のプレイメイカーを中心に主導権を奪い返したが、スパーズも中央のブロックは人数を確保出来ているので中々崩しきる事が出来ず。
順調だった赤い悪魔だが、またしてもアクシデントに見舞われる。45分手前のセットプレー後にリンデロフがその場で座り込んでしまい、前半のうちに交代枠1を消費する事に。リンデロフ自身のプレーはポジショニングやパスの気の利かなさが目立っておりあまり褒められたものではなかったものの、他の選手も試合を重ねていく中で改善傾向にあるケースが多いようにアモリムの修正能力の高さがあれば……という所だっただけにこの離脱が長くならない事を願う。
後半
後半開始早々、ユナイテッド陣内で右サイドタッチライン際に追い込むプレス網でヨロの選択肢を奪うと、クリアボールの飛距離が出なかったところからボールを回収してスパーズは高い位置でのチャンスを得る。ソン・フンミンが左45度でテイクオンの体勢を取りながらタメを作ってマディソンのオーバーラップを促すと、マディソンの折り返しがリチャのかかとに当たったこぼれ球をクルゼフスキが押し込んでリードは2点差に。
Man on fire 🔥 pic.twitter.com/7FILxHu1FF
— Tottenham Hotspur (@SpursOfficial) December 20, 2024
続けて54分にはスパーズ陣内左サイドでのボール保持でライン際のスペンスにマズラウィが出ていけず余裕をもって次のプレーを選べる余地を与えてしまった所から、スペンスはDFライン裏を狙うソランケへのロブパスを選択し、更にエヴァンスが簡単に背中を見せてしまった事もあって一気にスパーズの決定機へ。
ボックス内でも冷静なボール処理で間合いを作ったイングランド代表ストライカーはまるで定められていたかのような理想的なルートを通り、遅れてボールに食いついてきたエヴァンスをブラインドとして活用する技ありのニアショットで自身この日2ゴール目となるチーム3点目を決めきった。
Dom at the double! 💫 pic.twitter.com/HUXAXqRMdt
— Tottenham Hotspur (@SpursOfficial) December 20, 2024
ただ「単に判断やプレースピードが遅い」とは対極で「事前に予測しているからこその余裕」がこの日のソランケには見られ、それはセットプレーから生まれた1点目でも存分に発揮されている。相手目線ながら素晴らしい質だった。
少ないチャンスを高確率で得点に結びつけていくホームチームを前に、もう積極策に出るしかないユナイテッドは3失点目の直後に一挙3枚替え。アントニーを下げるよりも連戦の疲労が見えるマズラウィを休ませてアマドRW、アントニーRWBの方が個人的には好みだったものの、手を加えた箇所自体には納得がいくのでこの辺りの的確さは信頼できる。
すると、GKを含む3枚でゴールラインスレスレの低い位置でショートパスを繋ごうとするスパーズのリスキーなポゼッションを咎めるような連動プレスでまずはジルクゼーが1点を返した。
ジルクゼーはニアポケットに飛び込んで最速でボールに触れるorデコイになるというポーチャー型ではなく、DFと距離を保ってマイナス側でシュートを打ちたいタイプで、ボールに突っ込みたがる傾向があるドラグシン-グレイの相手CBユニットとの相性も良かった。また、ボールを奪った前線守備4枚のうち3人は交代選手であり、この点ではフレッシュなメンバーをピッチに同時に送り込んだアモリムの采配が当たった。
更にユナイテッドはプレッシングからもう1ゴールを獲得する。70分、グレイからのやや距離のあるバックパスの処理でGKのフォースターはアマドの寄せの速さを過小評価した結果、ファースタッチが乱れた事も影響してロングキックを試みる瞬間にアマドのプレスが間に合ってそのままスライディングした彼の臀部に跳ね返ったボールはゴールラインを越えた。
押せ押せムードの中ウガルテに代わって投入されたガルナチョについては、どうやらマン・シティとのダービーでベンチ外になった要因に関して彼自身からの謝罪で解決したらしく、勝手にインタビューに答えて騒動を大きくしているラッシュフォードとはいい意味で対照的な対応でこの違いがクラブでの将来にも影響する可能性がある。
とはいえ、そろそろピッチ内外ですぐにフラストレーションを外に見える形で露わにする癖は改善してもらいたいが。
60分以降は常に押し込んでいる状況が続いており、いつでも同点弾が生まれておかしくないように思われたのだが純粋な流れの中だとどうしてもフィニッシュワークで一手余計なケースが多く、これは自信の無さからなのかそれとも前政権・前々政権から長い間パターン化されていなかったからなのか、恐らくアモリムになってから時間が経過して初めて分かる難問だろう。
そうこうしている内にスパーズは後半の後半で唯一といってもいいチャンス、ソンのカウンターで得たコーナーキックを彼が直接沈めてリードを再び2点に広げる事に成功。
Sonny's Olimpico 🤯 pic.twitter.com/8BL6Jg1A1B
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アディショナルタイムにはエヴァンスがアマドのクロスに反応してCKからゴールを奪い再び1点差に詰め寄ったが、反撃はここまで。ユナイテッドとしては3点差でもゲームを捨てなかったメンタリティは評価できるものの、1つ1つボールコントロールやキック、そしてマークとボールの関係性など個人戦術に頼る部分の多い分野での積み上げ不足をまたしても痛感させられるような敗戦となった。
データ
Standard
シュート数ではスパーズに倍の差をつけたが、オンターゲットでは6:5と負けているようにフィニッシュ精度の低さが目立ったカラバオカップ準々決勝。また、オフサイドに引っかかるシーンも多く、ライン設定が高めでいくらでも裏抜けの機会があった相手に対して自分からそのチャンスを逃しているようにも見えた。
2ゴールのソランケはシュート2本で得点率100%と完璧な内容で、以前の彼ならば慌ててボールに向かい空回りしていたであろう先制点の場面でも別人のような冷静さを保っており、昨年の活躍は決してフロックではないと眼前で見せつけられた形。
Spurs 4 : 3 Man Utd
— markstats bot (@markstatsbot) December 19, 2024
▪ xG: 1.7 - 2.94
▪ xThreat: 0.78 - 1.27
▪ Possession: 46.4% - 53.6%
▪ Field Tilt: 37.3% - 62.7%
▪ Def Action Height: 45.1 - 47.5
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markstats算出のゴール期待値はスパーズ1.7、マン・ユナイテッド2.94でアウェイチームが1ゴール分以上リード。xTでもユナイテッド優勢は変わらず、それだけにこの試合を逃した悔しさは増してくるのだが、内訳は後半の残り30分の猛攻稼いだものが大半なので反省するとすればそこまでの試合運びという事になる。
PASSING NETWORKでは右で密集を作り左は広いスペースでアバウトにチャンスに直結させるという全体の意識共有が進んでいるような内容で、あとはホイルンドとジルクゼーの生存競争、ダロトが左WBへ適応できるのか或いは他の選手の台頭があるのかという部分で骨格は大分固まってきたのではないか。
あとがき
今年は年末の試合日程が普段よりも空いているので残すところは日本時間でボーンマス戦(22日)、ウルブス戦(27日)、ニューカッスル戦(31日)の3試合。まずはチェリーズ相手にいい形で勝利して残りの2戦に勢いをつけてほしいところだが。