※23/24 イングリッシュプレミアリーグ
マンチェスター・ユナイテッドvsリバプール戦の記事です。
運も味方につけて、戦前は圧倒的不利が見込まれたカードで一時は勝てそうな展開だったが故、ケアできるはずの判断からPKで勝ち点2を失った事は大変残念に思うが、そもそもこれほど白熱するゲームが出来るとも考えていなかったので、その立役者になった若きヒーローたちには拍手喝采を送りたい。
⚖️ It finishes level at Old Trafford. #MUFC || #MUNLIV
— Manchester United (@ManUtd) April 7, 2024
【Match Review】
Starting lineup
2007年生まれのハリー・アマスがベンチ入り。今季のマンチェスター・ユナイテッドのU-18は20試合17勝とトップチームの不振とは真逆の圧倒的強さを誇っているが、その中で不動のLBとしてフィールドプレイヤーでは2番目の出場時間を記録している期待のティーンエイジャー。
Football Manager 2024でもワンダーキッドのシェア・レイシーには劣るが、ジェイス・フィッツジェラルドと同程度でこの年代では比較的高めのポテンシャルが設定されているため、同ゲームを遊んでいる方には馴染みがあるかもしれない。
前半
マグワイア-カンブワラで臨むリバプール戦、一体どうなってしまうのかと不安いっぱいでキックオフを迎えたが、良くも悪くも普段通りの前者に対してホームで初先発となったティーンエイジャーはリバプールの強く速いアタッカー達とのデュエルにも五分五分以上で付いていき、身体能力の高さはかつてのアクセル・トゥアンゼベを思わせるものだった。勿論ショートパスで繋ごうとする際のキック精度や状況判断はやはりまだまだ危ういがこのレベルに混ざっても違和感が無いこと自体がまず素晴らしい。
主導権をリバプールに握られるのは覚悟の上でカウンターの矛にかけるというユナイテッド。2分には早速狙い通りの形からガルナチョがゴールネットを揺らすもDFラインから抜け出すタイミングが僅かに早くオフサイド。
リバプールもゆっくりと時間をかけて相手陣内を攻略していくというよりはトランジションの素早さをベースに走れる選手を重用して少ない手数でゴールまで迫るというのが黄金パターンである為、やはりこの2クラブの対戦はトランジションゲームとなりやすく、そうなるとマグワイア、カゼミロといった走力勝負についていけないユナイテッドの年長者は穴になる瞬間が増えていく。
13分には中盤のルーズボール回収で敗れソボスライ→ヌニェスとパスが通り完全に中央を崩されるが、ディアスのマークを捨ててボールホルダーに素早くアプローチしたダロトの見事な割り切りと寄せの鋭さでこの危機を凌ぐ。取捨選択の精度が日々向上していくダロトは不運な形でPKを与える事になったチェルシー戦から中2日でもしっかりと気持ちを切り替えられていて、精神的な強さも今季の安定感を支えているように映る。
その活躍は守備のみならず、ビルドアップでもリバプールのプレスを交わせるのはメイヌーがCBのサポートに入った時かダロトが中盤化してボールを裁く時なので、あらゆる局面で今名前を挙げた2人の負担と貢献度は高くなる。怪我人多発の事態でも彼らだけは絶対に守り切らなければならない。
22分、リバプールは右CKからロバートソンのややゴールから距離のある場所を狙ったニアへのインスイングキックに対しヌネスが頭で軌道を逸らし、ファーで構えていたルイス・ディアスがハーフバウンドボレーを沈めて先制。
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— SPOTV NOW JAPAN (@SPOTVNOW_JP) April 7, 2024
リヴァプール・ディアス🇨🇴
セットプレーから先制!
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🏴プレミアリーグ 第32節🏴#マンチェスター・U🆚#リヴァプール
ヌニェスのヘディングのそらしを
ルイス・ディアスがボレーでフィニッシュ👊#MUNLIV #ルイスディアス#SPOTVNOW で見逃し配信をチェック🎥 pic.twitter.com/cvTWlJ8lEI
ここでヌニェスのマークを外しているのはワン=ビサカで、相手についていきながらボールを先に触らせない、或いは少しでも妨害になる行動を取るという基本的な動きが全く出来ておらず、見る限りではゴール正面にヌニェスを入れさせなければそれでいいと思っている節があるので、勿論ハイボール対応がそもそも悪い事も影響はしているが、根本にあるものは1on1で簡単にCKを与えてしまう問題やビルドアップでタッチライン際にポジショニングしてプレスのハマり所になる傾向と同様に優先順位の付け方や状況判断が良くないという点に集約される。
リバプールの状態も決して万全には見えず、ビルドアップの人数はユナイテッドの前線プレスに対して安全にパスコースを選べる数が確保されていない事が多い為、仕方なくのクリアやサイドで後ろ向きの選手にパスを誘導してからのボール奪取、及びその後のカウンターから定期的にアタッキングサードまでは侵入出来ていたのだが、ここぞという時の相手のプレス強度の高さとこちらの技術・戦術的な積み重ねの無さでシュートは一向に打てず。
後半
HTでの選手交代はなく、前節はヴァラン🔁エヴァンスで既に1人目の交代枠を消費していたのでこの時点でまず一安心。
50分、リバプールはユナイテッドを敵陣内に押し込んでポゼッションしている最中、ボールの出し先を探すも難易度の高いコースしか無かった事で一度ターンして横のファン・ダイクに戻そうとしたクアンサのパスがズレてしまい、常に隙を狙っていたブルーノがこれをインターセプト。そのままダイレクトで前に出ていたGKケレハーを抜くロングショットを決めて同点に追いついた!!
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— SPOTV NOW JAPAN (@SPOTVNOW_JP) April 7, 2024
B.フェルナンデス🇵🇹
相手のミスを突きゴール!
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🏴プレミアリーグ 第32節🏴#マンチェスター・U🆚#リヴァプール
クァンザーのパスミスを見逃さず
同点に追いつく🔥#MUNLIV #B・フェルナンデス#SPOTVNOW で見逃し配信をチェック🎥 pic.twitter.com/3mfuXISDZx
これも一見すればただのボーンヘッドだが、リバプールのポゼッションが前比重過ぎてバックスの選手の技術・状況判断の負荷が高まっている事がその失敗を招いており、基本的なボールプレーは上手い方であるとはいえまだ経験値の面では今季がプロ1年目のクアンサに全ての責任をおっつけるのは酷だろう。
また、ブルーノのロングキックに関してはこの一瞬でアウトサイドに少しかけてGKから離れていくような回転をかける判断をしている事が素晴らしい。ケレハーのポジショニングに関しては本来ボールを失うような状況ではなく、むしろフィールドプレイヤーのサポートに入る事も意識して欲しい所だったので問題ではない。
ラッシュフォードの股関節の使い方の上手さからくる膝下の振りの速さは特筆すべきものがあり、今まではそれをミドルショットでしか発揮してこなかったのでこの宝物を活かしきれているとは到底言えなかったが、このリバプール戦ではゼロモーションからのインスイングクロスで複数回得点の可能性があるボールを供給していて少し前から触れていた意識の変化を更に強く思わせるようなシーンが増加した。流石に本人も今がキャリアの正念場である事は分かっているはずなので、守備面も合わせて引き続き注目していきたい。
67分、後半からダロトがInverted-WBとして中央に入るビルドアップを増やしてCBのサポートにメイヌーorブルーノという1つの形が機能していたユナイテッドは、ブルーノからパスを受けたカゼミロが浮いたファーストタッチのリカバリーをオーバーヘッドパスという即興で解決。MF-DFライン間でフリーになっているメイヌーへの素晴らしいボールを供給し、メイヌー→ガルナチョ→ワン=ビサカと左サイドに映りながらボールを繋ぐと、マークを背負った状態で横パスを受けたメイヌーはあらかじめ決めていたかのようなスムーズな動きで遠い方のゴールポスト目掛けてコントロールショット!!
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— SPOTV NOW JAPAN (@SPOTVNOW_JP) April 7, 2024
マンチェスター・U メイヌー🏴
脅威の18歳がスーパーゴール!
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🏴プレミアリーグ 第32節🏴#マンチェスター・U🆚#リヴァプール
コントロールシュートが炸裂!
マンチェスター・Uが逆転💥#MUNLIV #メイヌー#SPOTVNOW で見逃し配信をチェック🎥 pic.twitter.com/8RDUs15WDo
もうこれはただただ凄いの一言しか感想が出てこず、カゼミロからボールを受けた後猛烈にプレスバックしてきたディアスに対してボールを隠しつつその勢いを削ぐようなコース取りで中央に入ったキャリーの時点で既に拍手していたので、その後の展開には思わずこれは本当に現実なのか?と疑ってしまった。それくらい彼は飛びぬけた才能を持っている。
なお、ガルナチョが左サイドでプレーに関与している事からも分かる通り、この得点の直前に選手交代が行われており、更にリバプールは失点直後にも続けて2枚の選手を入れ替えたので両クラブ合わせて数分の間に5人の顔ぶれが入れ替わっている。
80分が近付く頃には各々の集中力が切れ始めるシーンが増え始め、危機感を抱いたであろう指揮官はガルナチョを下げてアムラバト投入。アムラバトを入れて守り切れというメッセージを伝えたこと自体は間違っていないと思うが、変えるならばカゼミロかブルーノだったのではないか。
そして82分、サラーとエリオットのコンビネーションでボックス内に侵入されると、まだ十分ユナイテッド側の守備の人数と態勢は整っていたにも関わらずワン=ビサカが一か八かのスライディングをしてしまいPKを与える。エリオットはダイブ気味に倒れていたのでPKが相応しいかどうかは微妙なところだが、それを差し引いてもここでブロッキングならまだしも完全にボールを奪う目的で右足から滑りに行った判断自体がおかしいので結局は自らが招いた種だ……
Here's a really slow clip of the penalty incident.
— UF (@UtdFaithfuls) April 8, 2024
How did VAR not see it was a blatant dive, manipulation, and cheating from Elliot?
Wan-Bissaka made absolutely NO contact with him.
Still fuming man.pic.twitter.com/HzebhuQ0SI
圧倒的な身体の柔軟さという武器を有していながら、それに頼るばかりで状況判断能力が一向に改善されないスパイダーの不用意なファウルで与えたペナルティキックをサラーが見逃してくれるわけもなく、ユナイテッドの勝ち筋は脆くも崩れ去った。
ダロト、カンブワラ、オナナの踏ん張りで何とか紙一重勝ち越しゴール被弾だけは避けていくユナイテッドだが、マグワイアの後を考えない見切り発車的な持ち運びや大きくクリアする事もままならぬほど身体が重いカゼミロなど、勝手に追い詰められるような危機の作り方が多く、中でもエリオットのロングキックからボックス内まで上がっていたロバートソンが折り返しゴール正面でディアスが合わせたAT4分の流れは完全に運だけで失点を回避した場面。
フィニッシュワークでのリバプールの最後の一押しの精度不足にも助けられる形で勝ち点1だけは死守したものの、リードを守り切れない今のチームの守備組織と局面での個の判断力の弱さにはもううんざりだ。
データ
Standard
前半シュートが無かったマンチェスター・ユナイテッドは降って湧いた得点チャンスをブルーノがきっちりと活かした所をきっかけに勢いを得て、最終的に5本のオンターゲットを記録し2ゴールを効率よく得点を加算。しかしながら当たり前のように30本近い被シュートを許して「オナナさんよろしくお願いいたします」という戦い方で勝ち切れるほどプレミアリーグは甘くない。
セットプレーにおけるチーム全体の守り方と個々の守備対応の拙さ、左右にボールを振られた際の横方向の移動の遅さ、深い位置まで切り込まれた際のマイナス側に入るクロス対応という明らかな弱点が改善されぬ限り今後も勝利を手放す試合を繰り返す事になるだろう。
一時勝ち越しゴールとなったコントロールショットを沈めているメイヌーは地上デュエル8/9、ドリブル2/3、タックル5回、ポゼッションロスト9回と攻守に絶大な安定感を誇り、特にポゼッションロストについてはダブルピボットの相方であったカゼミロが16回、CBのマグワイアが17回とセンターラインのベテラン2人が技術や首振り等の予備動作不足から来る不安定さを散々にさらけ出していた事とは対照的な素晴らしいパフォーマンスである。
Man Utd 2 : 2 Liverpool
— markstats bot (@markstatsbot) April 7, 2024
▪ xG: 0.85 - 4.53
▪ xThreat: 0.98 - 2.33
▪ Possession: 37.9% - 62.1%
▪ Field Tilt: 26.3% - 73.7%
▪ Def Action Height: 34.3 - 51.8#msbot_eng #epl pic.twitter.com/XZTcqSCtsm
PASSING NETWORKでホイルンドの立ち位置がMFに吸収されているような図を見るのも最早日常風景となったが、お膳立てされてボックス近辺でその時を待っていれば良質なボールが供給されるという環境では無いので、逆にスパーズ時代のハリー・ケインのように組み立てから自身が積極的に関与するオールラウンダーっぷりを身に着けやすい状況であるとも表現出来る。
また、ユナイテッドが一時リードできた要因の1つとして、リバプールのCB2枚と遠藤-マック・アリスターの距離感が恒常的に広くパスルートが開通しづらい状態であった事も挙げられ、クワンサのボーンヘッドにも間接的に関係している事象だ。
あとがき
試合そのものを見るか、前評判からの結果を見たかで大きく感想が変わりそうなオールド・トラッフォードでのライバルマッチ。個人的には勝てる展開だったと考えているので完全に悔しさが勝っています。
現実的には今後6位を守るという戦いになるでしょうから、来季の戦力構想に入らないという選手がいるならば無理して起用せず、若手の経験値を積ませる方向に少しずつシフトしていってもいいのではないでしょうか。