※22/23 UEFAヨーロッパリーグ
レアル・ソシエダvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
逆転での1位突破には2点差以上の勝利が必要だったユナイテッド。前半の早い段階で1ゴール目を挙げたものの、中々シュートまで行けない時間帯が長く、後半には自滅と言って差し支えない選手交代後のフォーメーション変更で勢いを完全に失い、終盤マグワイアFW起用の秘策も虚しく2点目を奪う事が出来なかった。
🏁 Closing out our #UEL group campaign with a win.#MUFC
— Manchester United (@ManUtd) November 3, 2022
【Match Review】
昨シーズン途中より長期離脱中のミケル・オヤルサバルを筆頭に、ダビド・シルバ,久保建英,ウマル・サディクなど中盤より前の選手を中心に故障者が多発しているラ・レアル。やはりシーズン途中のワールドカップ開催を受けた突貫日程の中で送る22/23は各国クラブにかかる負担が例年以上となっており、正確な統計は分からないがマンチェスター・ユナイテッドでも例年以上に筋肉系を中心にしたトラブルが多くなっている気がしてならない。
Starting lineup
試合前のメンバー表ではレアル・ソシエダが4-4-2フラット、マンチェスター・ユナイテッドが4-3-1-2。ユナイテッドは久々にワン=ビサカがベンチ入りしたほか、アカデミーからはショレティレ,イクバル,ヴィテクが招集された。
テン・ハフとしては前回対戦で中盤の枚数を合わせられず苦戦した事を踏まえてのフォーメーションだと思いますが、今まで試してこなかった戦い方をここに来て急ごしらえするタイプの指揮官だとは考えにくいのでいざキックオフしてみるまでは分からない部分が大半。
前半
いざ試合が始まるとソシエダはサイドアタッカーを置かない4-3-1-2、ユナイテッドは時折試していたブルーノ右サイドの4-2-3-1と全く異なるシステムでした。
期待したファン・デ・ベークはどうにも運動量に乏しく、悪い時のロナウド以上に傍観者としてただ漂流する時間が長く、ブルーノ・フェルナンデスの代替候補として考えた場合現状のままでは厳しいというネガティブキャンペーンのをこの絶好の機会に自らしてしまったのが痛恨。ブルーノが出場停止の週末アストン・ヴィラ戦も、復帰が間に合う可能性のあるマルシャル,サンチョの中央や他のプランを優先したくなる出来。
相変わらず視認性最悪の3rdユニフォームもあってか内容も良くなかったアウェイチーム。特に右サイド、相手の中盤に合わせブルーノが中に絞り気味で守らざるを得ない為に15番のDiego Ricoがフリーになってしまう場面があまりにも多く、放置したままだと失点に繋がりそうな危うさを孕んでいた。
しかし、以外にも先制に成功したのは劣勢のユナイテッド。
17分、GKまでボールを戻して最後方から攻撃をやり直す赤い悪魔。デヘアのフィードを受けたブルーノが右サイドハーフウェーライン付近でヘディングで軌道を変え、丁度相手CB前に落ちたボールをロナウドがコントロールし左サイドを激走するガルナチョへパス。スピードを殺さず丁度自身の足元にボールを収める絶妙なファーストタッチでボックス内に侵入した期待の新星は迷わず左足シュートを選択しボールはネット右最上部に突き刺さりアウェイチームが1位通過にリーチをかけた!!
27分、Diego Ricoを狙ったRemiroのフィードをカゼミロがカットすると、ブルーノがクリアボールを頭で落としこれを受けたファン・デ・ベークはリターンパスを送り、ボールに触れず180度ターンでマークを剥がしたブルーノはチャンネルを通すスルーパスを左サイドへ送ると、最後はガルナチョが追加点のチャンスを得るもシュートに行ったタイミングでスリップしてしまいキックの軌道は大きく枠を越えた。
リチャ(マルティネス)に自由を与えず、同じく展開力のあるダロトがボールを持った際に全体を大きく押し上げパスコースを制限するという完璧なマン・ユナイテッド対策を見せるレアル・ソシエダからポゼッションでチャンスを作る事は難しく、残り5分を迎えてもまだシュートは上述の2回に留まっていたアウェイチーム。
42分にはDF裏にリチャのロングフィードが刺さり、相手CB:Jon PachecoのエラーもあってRemiroとの1on1の機会を迎えたロナウドだったが、ループシュートは枠を越えゴールを奪えず。(どのみちオフサイドだったかもしれないが)
43分、今度はソシエダの反撃。ユナイテッド陣内でエリクセンからMerinoがスライディングタックルでのボール奪取に成功すると、ショートカウンターからGorosabelのボレーキックが枠内を捉えるがデヘアが右手一本で防ぎ、続けてこぼれ球に詰めたMarínの近距離シュートにも素早く反応し今度は頭でセービング。正に彼の真骨頂とも言える見事なショットストップ。
守護神の活躍もあって何とかリードを保ち前半を終えたユナイテッド。相手の攻撃パターンは2トップにボールを入れさせなければ然程脅威では無かったが、自分たちの攻撃も見事に封じられているのでこのままでは2点目は生まれそうにもないという内容。
後半
HTの交代は両チーム無し。
やはりチャンスになるのはトランジションゲームになった際で、52分にはエリクセンのパスに抜け出したファン・デ・ベークがボックス内からクロスを試みるもののサイドネット直撃。本来の意図から言えば右ハーフスペースでプレッシャーの緩むブルーノから得点機会を作りたかったが、ラ・レアルは4-3-1-2というシステム上これに容易に対応出来たので機能せず、業を煮やしたテン・ハフは60分を前に2枚のカードを切って大胆なシステム変更に舵を取る。
IN:Rashford,McTominay OUT:Van de Beek,Lindelöf
結論からいえばこの交代、本当に大失敗。センターバックを1枚削って中盤の選手投入、バックスを4→3に減らすというのは悪くなかったが、前の7人が必要以上に前が掛かりになった結果、今のチームで攻撃の大きな比重を担うショー,リチャ,ダロトの3枚が後ろに留め置かれる状態が続いてしまう事に。
それならばいっそのことMartínez-Casemiro、Martínez-McTominayの2バックにして2-4-1-3で相手中盤3枚に対し常に数的優位を確保するくらい極端な方が結果的に良い結果になったかもしれず、シンプルに4-2-3-1のままでもブルーノを中央へ移しエランガ投入でハイプレスの相手DF裏を狙わせてもこの3バックよりは遥かにベターだ。
自ら翼を捥いでしまったマンチェスター・ユナイテッド。残り時間が気になり始めた試合は、ホームチームが審判の目を盗みながらより頻繁にピッチに倒れたり交代の際に過剰に時間を稼いだりと過去にも散々苦しめられたスペインのクラブらしいずる賢さを遺憾なく発揮し、成すすべなく時計の針が進んでいく。
IN:Fred,Maguire OUT:Eriksen,Garnacho
テン・ハフ3の矢はマグワイアのターゲットマン起用。またしても想定しないやり方で何としても2点目を奪いに行ったアウェイチームだが、トレーニング段階であまり研鑽を積んでいなかったのかパワープレーはあまりにも雑で、マグワイアも中央では無くサイドでロングボールを要求する場面が目立ち、圧倒的な競り合いの強さをまるで活かすことが出来ず。
アディショナルタイムにはショーのロブパスからボックス内でカゼミロにチャンス到来もシュートはゴールラインを割らず尚且つオフサイド。
結局グループステージ1位通過にはあと1点及ばず試合は1-0のまま終了。
公式戦3連続クリーンシートを素直に喜べないゲームになってしまった。
データ
Standard
90分で僅かにシュート4本、たった1度のオンターゲットでよく先制点が決まったなというようなスタッツ。
アタッキングサードに通したパスの数はダロト,ショーの1,2で、彼らを攻撃に関与させなくした交代策が裏目に出た事を如実に表しているかもしれません。逆に守備面ではMerinoを自由にさせ過ぎた事が反省点。
Sociedad 0 : 1 Man Utd
— markstats bot (@markstatsbot) November 3, 2022
▪ xG: 0.99 - 1.01
▪ xThreat: 1.32 - 0.92
▪ Possession: 47.5% - 52.5%
▪ Field Tilt: 65.7% - 34.3%
▪ Def Line Height: 51.4 - 39.8#msbot_uel #uel pic.twitter.com/QO2slW75ps
markrstats算出のゴール期待値は0.99 - 1.01とほぼイーブン。試合を通してレアル・ソシエダはCB2枚とZubimendiを除きかなり高い位置から厳しくプレッシングを敢行していたので、その背後を狙う的確なロングボールをもう少し多くチャレンジして得点に繋がるようなカウンター展開に持ち込みたかった。
あとがき
カップ戦のグループステージ特有の勝ったとて素直にそれを喜べないというゲームになったサン・セバスチャンでの90分。ピッチ中央にパスの出し手になる選手が不在(特に3バック後はエリクセンが左のサポートに回るようになった事でより顕著)だった事を考えると、ブルーノがいないアストン・ヴィラ戦をどう乗り切ればいいのか不安になってしまいます。
得点を決めたガルナチョに関しては遅刻癖には細心の注意を払ってもらい、トップチームの有効なゲームチェンジャ―になってもらいたい。