※22/23 UEFAヨーロッパリーグ
マンチェスター・ユナイテッドvsレアル・ソシエダ戦の記事です。
主力のターンオーバーをしながらラ・レアルをホームに迎え臨んだEL初戦。ユナイテッドとしては勝ち点3を計算したかったゲームですが、思惑通りにはいかず無得点で90分を終え、受け入れがたいPKでの失点が決勝点となり敗戦。
Defeat for the Reds.#MUFC || #UEL pic.twitter.com/fLBvEHpoEK
— Manchester United (@ManUtd) September 8, 2022
【Match Review】
健康状態に懸念ありと前日に発表されていたエリザベス女王逝去の報が試合前に届き、この試合でもキックオフ前の黙祷が行われ、ピッチ脇のスポンサーシップも全て電源を切って黒一色に染められるという普段とは異なる状況で開催されたEL初戦。
Manchester United shares the sorrow of the entire nation following the announcement from Buckingham Palace on the passing of Her Royal Highness The Queen Elizabeth II. pic.twitter.com/QwLRZ9z4yf
— Manchester United (@ManUtd) September 8, 2022
改めてご冥福をお祈りします。
Starting lineup
前半
4-1-3-2(或いは4-3-1-2)でワイドアタッカーを置かずフルバックが代わりに大外のレーンを使ってくるソシエダに対し、中盤の数的不利を作られポゼッションを奪われる入りとなったユナイテッド。マグワイア-リンデロフはちょっとしたプレスでも直ぐに横or後ろへのパスを選択しがちで、サイドチェンジで揺さぶる事も出来ず縦方向のリズムも中々生まれずらい悪循環。
一方のソシエダもミドルサードまでは比較的楽に侵入出来るものの、前段階ではユナイテッドのハイラインプレッシングに苦戦気味。ディストリビューションに定評のあるGKレミロのパスもエラーが目立ち、アタッカーのウマル・サディクは連携,個人戦術の両方でチームにフィット出来ていないという端的に言えばグダグダな試合序盤。
14分、ダロト→フレッジへの斜めの楔を前で潰そうとした相手CB ジョン・パチェコがボールを後ろへ流してしまいこれがロナウドへのスルーパスに。目の前にはGK1人という絶好のオープンな展開も後ろからエルストンドに追いつかれ切り返しを図った所をカバーが間に合ったRB ゴロサバルに奪われシュートまで到達出来ず。かつての彼ならばこのスプリント勝負で負ける事は無かったようにも思う。
20分前後から久保とサディクの前線が左右を入れ替わり前者が中央寄りに位置取りする事が増えましたが、結果的にユナイテッドにとってはサイドの圧力が減ってこれが吉、ソシエダとしては裏目に出た形。23分にはエランガが左サイドゴールライン際から中にドリブルで侵入しフレッジのシュートを創出、直後のCKでもエリクセンのキックからゴール前の混戦になりますがこれはサディクが外にクリアし難を逃れる。
まだ直線的な動きの一辺倒になりがちなエランガですが、静止状態からトップスピードに乗るまでの速さは相手にとって非常に厄介な武器で魅力的。
35分、右サイドのアタッキングサードで短いパスを繋ぐユナイテッド。クリアされても高い位置でDFが刈り取る事で圧をかけ続けダロトのボックス手前ハーフスペースからのカーブボールをロナウドがゴールマウスに入れますがオフサイド。形としては悪くなくダロトのクロス精度がめきめき向上しているのはプラス要素。
45分が迫ってくるとプレッシングが少し緩んで相手GKレミロから評判通り低く伸びてくる高精度のフィードが配球されるように。カゼミロ,フレッジからはチャンスメイクのパスは皆無でほぼ全ての起点がエリクセンとダロト由来だったユナイテッド。リザーブ組の中からゲームメイク出来る選手を早めに見つけられないと過密日程で勝ち点を落とすケースが増加するのではという悪い予感があります。
また、CBからきつめのバックパスが多かったデヘアに関してはこの日はショートパスに関して普段よりも周りが見えていたように思いますが、やはり中長距離のキックで貢献が低いというのは継続的な課題のまま。
後半
連戦続きのダロト、エリクセンを下げてリンデロフがRB、マルティネスが左CBに。また、フレッジはDMに一列下がってブルーノがトップ下に収まりましたが、Deep-Lying-Playmakerとして新境地を開拓するエリクセンの不在はボール保持のぎこちなさと前の選手に供給されるボールの質の低下を意味し、試合途中からソシエダが引き気味で守るようになったのでポゼッションこそ上回っていますが点が入る気配は無かった。
また、ラ・レアルは中央重視の4-1-3-2から両翼を広げた4-1-4-1に陣形を変え、急遽サイドに回ったリンデロフは久保のテイクオンに終始劣勢を強いられ結果的に後述する疑惑の判定にも繋がった。
46分、ブルーノのクロスがゴール前を通過しロナウドに決定機到来もヘディングシュートシュートは枠外に。プレシーズンの遅れが影響しているのか今季のCR7はあの神がかった得点能力を一向に発揮出来ていない。
56分、リンデロフを突破しファーに蹴った久保のクロスはマルティネスが身体を投げ出しCKへ逃れるが、リスタート後のプレーでダビド・シルバのシュートをマルティネスが手で阻止したという判定で主審Marco Di BelloはPKを指示。
It would be one thing if the ref hadn’t seen it hit his leg first, which still would’ve been pretty shit, but how the fucking didn’t VAR spot it? Getting beyond a joke how appalling officiating is. pic.twitter.com/242ydvibwj
— Scott Patterson (@R_o_M) September 8, 2022
しかし、どう見てもマルティネスの腕は身体の周囲に留まっていて尚且つ最初に足に当たってから腕(というかこれも脇の下に見えますが) という順番なので、あらゆる意味で理解に苦しむ判定。
つまりDi Belloが解釈するフットボールにおいて、ディフェンダーは腕を使って身体のバランスを取る事が出来ず全身を地面に強く打ち付けてむち打ちや脳震盪の高いリスクを負わなければルールに基づいたプレーが出来ないという事になる。
失点後のユナイテッドはサンチョ,ガルナチョとテクニカルなウインガー2枚を投入し同点を狙いますが、まだトップチームでの経験の浅い後者にとっては少し難しい展開だったようで瞬発力でDFを抜き去るような得意のプレーは飛び出ず。じっくりと時間をかけて戦力にしたい。
そして、ボールを奪ってテンポアップしたい場面でのパス不成立が目立ち、キックの強さにも疑問符がついたカゼミロに関しては2Pivot(2ボランチ)適性が想像よりも低いのか、このままいくと4-2-3-1ベースの現ラインナップではマクトミネイの後塵を拝すことになりそう。
いずれにせよ、リーグ38試合+3つのカップ戦を戦う上でスカッドを大きくしたかったであろうテン・ハフの思惑とは裏腹にスタメンとリザーブの差が明確になってしまう90分を戦ったマンチェスター・ユナイテッドは0-1で敗戦。RBとしてリンデロフ以下の優先順位と判断されたワン=ビサカに奮起を促したいところだが、正直に言えばもっと早く売却オペレーションを進めて代替候補を獲得すべきだったように思う。
データ
Standard
当初はラ・レアルにポゼッションを握られ試合自体も両クラブミスが多く締まらない試合でしたが、ユナイテッドは中央偏重のソシエダの守備陣形を把握してサイドから、アウェイチームも後半に入り配置を修正するという戦術面では中々見ごたえのあるゲームでした。そして15本中僅か3本しか枠内にシュートを飛ばせなかったアタッカー陣、とりわけロナウドへの不安が増してしまった。
次にMarco Di Belloについて。
イタリア人審判の彼は記憶に新しい2021年10月にもセリエA ヴェネツィアFC vs USサレルニターナ戦で致命的なエラーを犯しており、フランク・リベリのドリブル突破を阻止したイーサン・アンパドゥのクリーンなタックルに対しレッドカードを提示。このような誤判定を短期間で連発するというのは何か特別な事情でもあるのでしょうか。。。
— Venezia FC (@VeneziaFC_EN) October 27, 2021
Man Utd 0 : 1 Sociedad
— markstats bot (@markstatsbot) September 8, 2022
▪ xG: 1.17 - 1.09
▪ xThreat: 1.77 - 0.85
▪ Possession: 55.3% - 44.7%
▪ Field Tilt: 56.7% - 43.3%
▪ Def Line Height: 45.6 - 49.5#msbot_uel #uel pic.twitter.com/5NP4fJQMhk
ペナルティキック(おおよそ0.76程度のxG)を考慮するとラ・レアルの攻撃を殆ど完封したユナイテッドですが、パスネットワークを見ても3番 スビメンディを経由して前線にボールが思惑通りに入った相手チームとは違って苦戦した事が伺える。
ほぼ0から構築しているアントニーとダロトの縦関係に関しては、互いの呼吸が合うまでしばらく時間がかかる気もしますが、それぞれプレーの特徴を踏まえれば相性は良いはずなので現段階で心配する必要は無いと思う。
あとがき
エリザベス女王の崩御に敬意を示し週末のリーグ戦は全試合延期。翌週ミッドウィークのEL シェリフ・ティラスポリ戦は予定通り開催されるとクラブ公式が発表しています。
此度の敗戦はブレントフォード戦とは違い罰走が必要なモノとは思いませんが、ボールプレーの貢献ができるセントラルMFをエリクセン以外にも作り出せなければ今後も同じような試合を何度も見る羽目に陥りそうで今から憂鬱な気分になります。
シェリフはオモニア・ニコシアとの初戦を3-0で完勝しており油断ならない相手。フルメンバーで行くのかどうかは分かりませんが、恐らく前半フルスロットルで勝負を決め控え組は後半からという事になるのでは。