※21/22 イングランド・プレミアリーグ
アストンヴィラvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
トンガのフンガトンガ・フンガハアパイ火山噴火の影響で日本でも太平洋側に面した港では数十㎝~最大1m超の津波が観測され、アラートの音が鮮明に耳に残る1月16日夜中2:30(現地時間17:30)にキックオフを迎えたこの試合。
FAカップで対戦してから中4日の再戦となりましたが、ヴィラではあの新戦力が早くも決定的な仕事を果たしています。
プレビュー
アストンヴィラ
ジョン・マッギン
ベルトラン・トラオレ
レオン・ベイリー
マーベラス・ナカンバ
トレゼゲ
マンチェスター・ユナイテッド
クリスティアーノ・ロナウド
マーカス・ラッシュフォード
エリック・バイリー
ポール・ポグバ
スタメン
アストンヴィラはベニテスとの不和から移籍交渉成立にたどり着いたプレミア屈指の攻撃力を誇るLB ルカ・ディーニュが早速先発。一方のコウチーニョはベンチスタートですが、試合終盤得点が欲しい場面で切り札として投入があるかもしれません。
ユナイテッドは怪我人が戻ってくる公算との見方でしたが、蓋を開けてみればクリスティアーノ・ロナウドに加えマーカス・ラッシュフォードもスカッドから外れています。
そして、驚きなのがアンソニー・エランガの先発出場。
監督交代を機に出場機会が増える選手というのは毎度何人か出てきますが、ラルフになって彼は大きく信頼を高めているようです。
試合内容
前半
ロナウド、ラッシュフォード不在と前線の層と質に大きな不安を抱えてキックオフを迎えたユナイテッドでしたが、抜擢されたエランガは持ち前の爆発的なスピードを活かしてシンプルなパスアンドゴー等から左サイドで躍動。
4分にアレックス・テレスが敵陣左サイドのハーフスペースでFKを獲得すると、テレスはクロスではなく軽く足裏でボールに触れ、このトリックプレーから放たれたブルーノのシュートをヴィラ守護神エミリアーノ・マルティネスがまさかの後逸。
オンサイドでエディンソン・カバーニが丁度ブラインドになっていた事もありますが、思わぬ先制点を得たユナイテッドはその後も30分過ぎまで試合を制圧。
マティッチ、フレッジ、ブルーノの3人なので当初は4-2-3-1を想定していましたが、試合の中で彼の配置は寧ろ4-1-2(Bruno,Fred)-3に近く、ヴィラも予想外の形だったのか前半の前半は中央でもサイドでも完全にこちらの作戦勝ちといえるような状況で、開始~30分までのパスマップを見るとホームチームは一度もボックス内でのパス交換を記録しておらず、勿論シュートも0。
ただ、時間経過と共にユナイテッドの選手の技術力の問題からか低い位置でパスがズレてカウンターを貰い始めるシーンが徐々に増加。32分にはカバーニがセンターサークルでボールを奪われオリー・ワトキンスのシュート、36分にはCKからエミリアーノ・ブエンディアがニアで合わせたヘディングがゴールマウスに飛びますが、いずれもデヘアの牙城を崩すには至らず。特に後者のセーブは彼以外不可能なのではないかと思わせるような素晴らしいプレーでした。
後半
前半の最後で足を負傷したエズリ・コンサに代わり、アストンヴィラは前回のリーグ戦直接対決で決勝点を挙げているコートニー・ホースを投入。
後半に入るとユナイテッドは前線のプレス始動の位置を高くし、フレッジとブルーノも前線に吸収され4-1-5のような守備時の陣形に変化。
しかし、結論から言えばこの変更が後の大失態に繋がる事となり、改めて中盤のクオリティーとクオンティティの問題が解決しなければタイトル争いは無理だと知らされるような45分でした。
立ち上がりから両コートを行き来する展開。47分にはユナイテッドのカウンター。カバーニの浮き球をトラップしてそのままボックス内に侵入したエランガが左足で強烈なシュートを放つもファンブル後は安定を取り戻したマルティネスのセーブに阻まれ、49分にはヴィラも負けじとユナイテッドの右サイドを崩して最後はジェイコブ・ラムジーのシュートがゴールに迫りますが、この日のデヘアを突破するにはまだ足りなかった。
その後も高い位置を取るフレッジと守備参加をせず彼の空けたスペースを埋める事もないグリーンウッドの右サイドには常にスペースがある状態で時間が進みますが、67分にはこのリスクのある守備体系が功を奏しフレッジのパスカットからブルーノがこの日2点目となる追加点を記録。
クロスバーに当たってから入ったこの一撃は彼自陣開幕戦以来の1試合複数得点となり、1ヶ月以上足止めを食らっていた得点関与もこれで10の大台に到達(7G3A)。
68分のヴィラはノーインパクトのモルガン・サンソンに変えてプレミアに帰ってきたコウチーニョを早速起用。明確に攻撃の意思をピッチに伝えたこの交代によって2点ビハインドながらジェラードのチームは更に迫力を増します。
73分のFKからのディフレクションを何とか凌いだユナイテッドでしたが、77分にはタイロン・ミングスの持ち運びにフレッジが尻もちをつかされ、その前後でコウチーニョへのマークの付き方が非常に曖昧でフラフラと前に寄せられたグリーンウッドも含め2人が突破されたところから守備のズレが生じ、最後は数で勝っていながらジェイコブ・ラムジーをボックス内でフリーにしてあえなく失点。。。
更に、81分にはやはりフレッジが前線に出て中盤の枚数が足らなくなったところを突かれ、代わりに前でボールを止めようとしたリンデロフが交わされその後ラムジーからラストパスを貰ったコウチーニョが同点弾を記録。
結局2点のリードを台無しにしたユナイテッドは勝ち点1を得るに留まり、これで今シーズンはリーグ戦でこれまでカモにしていたアストンヴィラから未勝利という結果に終わりました。勿論、ジェラードの采配も良かったと思いますがどちらかと言えば勝手に前半ハマっていた形を変えたこちらの自滅に近い内容。
ハイライト
選手交代
46分 コンサ🔁K.ホース
68分 M.サンソン🔁コウチーニョ
76分 イングス🔁チュクウェメカ
78分 エランガ🔁サンチョ
89分 ブルーノ🔁ファン・デ・ベーク
89分 グリーンウッド🔁リンガード
データ
この試合は前半と後半で全く異なる様相を呈しており、端的に言えば修正に成功したアストンヴィラと自滅のシステム変更で自ら勝利を手放したマンチェスター・ユナイテッドの構図。
ヴィラのシュート13本のうち、半分近い6本が70分以降に記録されたことにもそれは顕著に表れており、元々守備が上手いとは言えない上に時間経過でプレスが弱くなったグリーンウッド+監督の指示なのか前線まで上がってプレッシャーをかけるフレッジとの合わせ技で後半の右サイド、マティッチの横には常に大きなスペースが生まれてしまっていました。
勿論、こちらの2点目はそのフレッジの守備から生まれたので全てが悪いという訳ではないものの、残り20分強で2点リードとなったタイミングで彼を一列下げるかグリーンウッドとファン・デ・ベークを交代させるなり試合を締める交代を行えなかったラングニックのミスと言えるかもしれない。
xG
ユナイテッドとしては、18分にDFとGKの間に落としたテレスのクロスから生まれたグリーンウッドのチャンスがxG0.46で最大の値でした。
Selfish(利己的),或いはdecision making(意思決定)と言葉のキツさは異なりますが、日本のみならず英語圏でも強引に可能性の薄いシュートを放ちに行く事やフリーの味方を使わない事を指摘されているグリーンウッド。その根底にあるのはこういった大きなチャンスを決めきれていない事からくる焦燥感なのかもしれない。最も、守備時の怠慢とも取られかねないプレーの数々はこれとは別の話なのであらゆる面で今が彼の1番目の関門なのかもしれない。
xG Timing chartを見ると70分時点では倍以上の差をつけてアウェイチームがリードしていましたが、時間経過によるスタミナ切れと配置の問題を放置しつつけた結果最終的にスコアは逆転。試合の終え方に大きな課題があることを端的に示すデータ。
あとがき
エランガがスムーズにプレミアに適応出来そうな事はポジティブな発見。
4本のシュートのうち2つは紙一重でゴールマウスを外れた惜しい弾道。攻撃ではシンプルなプレーでテレスと上手く連携し彼の良さを引き出し、守備でもディフェンシブサードまでサボらず降りてくる献身性を備えており、ライバル達に不足している部分をストロングポイントに今後も一定のチャンスが与えられることでしょう。
モウリーニョ→オーレがあまりにスムーズに行きすぎていたのですっかり忘れていましたが、やはりシーズン途中からチームを引きづぐのは非常に難しいという事を改めて実感するここ数試合。
ミッドウィークにはCovid-19によって延期されたブレントフォードとの試合が予定されており、ロングパスやセットプレーなど浮き球を多用するビーズはやややりにくい相手ですが、彼らの3-5-2システムで負荷の高いウイングバックの裏をどれだけ活用できるかどうかが勝敗に関わると思われます。