今シーズン、一番初めに指揮官を変えたのはワトフォード(シスコ・ムニョス→クラウディオ・ラニエリ)。
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そこにオーナーが変わったニューカッスルが加わり、先週はトッテナムのヌーノ・エスピリト・サントが更に名を連ねました(後任にはアントニオ・コンテが就任)。
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そして今週末、更にノリッジのダニエル・ファルケとアストンヴィラのディーン・スミスの解任がそれぞれ両クラブからアナウンスされ、11月初旬の段階で早くも5つのクラブでマネージャー人事が発生している異常事態。
Norwich City can confirm that head coach Daniel Farke has left the club with immediate effect.
— Norwich City FC (@NorwichCityFC) November 6, 2021
Full statement ⬇️#NCFC
Aston Villa Football Club can confirm that the Club have parted company with Head Coach Dean Smith.
— Aston Villa (@AVFCOfficial) November 7, 2021
因みに、20/21はシーズン全体で監督交代が4クラブだったので今季は既に昨季を上回っています。
チェルシー:フランク・ランパード→トーマス・トゥヘル{↪詳細}
シェフ・ユナイテッド:クリス・ワイルダー→ポール・ヘッキンボトム(暫定){↪詳細}
トッテナム:ジョゼ・モウリーニョ→ライアン・メイソン(暫定){↪詳細}
そして、この監督人事に動いた5クラブを見ていくと1つ面白い傾向が見られます。
understat.comの算出しているxPTS(勝ち点期待値)で20クラブをソートすると、指揮官が変わった5つのクラブはいずれも下位に沈むチーム。ショーン・ダイチに全幅の信頼を置くクラレッツのようなケースを除けば、実際の勝ち点でそれなりに結果が出ていたとしても試合の内容が芳しくなければ解任される、というのが21/22の情勢。
正にヌーノ・エスピリト・サントのトッテナムがその代表例で、傾向に従うのであればオーレ・グンナー・スールシャールのマン・ユナイテッドやブレンダン・ロジャースのレスターといったシーズン前の期待と今の現実が乖離しているチームも今後監督交代に踏み切る可能性が十分に考えられます。
特に守備崩壊の様相を呈し、Twitterでは#OleOutがトレンド1位、リオ・ファーディナンドからも退任を促すようなコメントが出る等スールシャールへの風当たりが日増しに強くなるユナイテッドはこのインターナショナルブレイク中にも大きな動きがあるかもしれません。
ユナイテッドに適応できるマネージャーは存在するのか
さて、そんなマンチェスター・ユナイテッドのボスの席について。
サー・アレックス・ファーガソン退任後の8年でデイヴィッド・モイーズ→ルイ・ファン・ハール→ジョゼ・モウリーニョ、そしてオーレに至るまで4人のマネージャーがチームを率いてきましたが、いずれもSAF時代のような安定した強さを発揮する事はなく、ファン・ハール時代の一年目終盤(キャリック離脱まで)やオーレ2季目19/20の新型コロナによる中断明けなど、一時的にタイトル争いに参加できるチームを形成出来た事はあっても長続きはしていません。
この4名で最もクラブを率いていた際の評価の低いモイーズも決して無策個人頼りの監督だったわけではないという事は現在のウエストハムが証明していますが、そんな海千山千の彼らでさえもユナイテッドで力を発揮できなかった最大の要因として、グレイザーの影響を無視する事は出来ません。
ユナイテッドの次代監督としてよく名前が出るのはエリック・テン・ハーグ、マウリシオ・ポチェッティーノ、ブレンダン・ロジャース、ラルフ・ラングニックといった有名どころ。
彼らについてより注意深く見ていくと、CEOに元選手のファン・デル・サールを配置し、今でもリヌス・ミケルス→ヨハン・クライフのフットボール哲学が根幹にあるアヤックスのテン・ハーグは満足なサポートを期待出来ないユナイテッドで直ぐに結果を残せるかどうかは未知数。ラングニックは監督とディレクターを兼ねた全権に近い体制を希望するので、オーナーと衝突する恐れも強い。
そうなると現実的にはロジャースかポチェッティーノになりそうですが、仮にこの2名からどちらかを選ぶとすれば後者により適性がありそう。
というのも、未だに強い影響力を持つSAFはモウリーニョ解任の当時、後任としてこのアルゼンチン出身指揮官を第一希望としていたという記事も出ており(新聞のTierはこの際考えないものとする……)、ライバルクラブを率いていたロジャーズに比べれば就任時のイザコザも少なく済むと考えられます。
とはいえ、彼はPSGのマネージャーなのでシーズン中の引き抜き難易度は非常に高く、現実的にはオーレが退任しても現状のコーチ陣の誰か(アシスタントのフェランかキャリック)が暫定監督としてチームを率いる可能性が最も高く、今の状態が劇的に改善するとは考えられません。そういった背景もあって個人的には監督交代にどうしても希望が持てない。
エディ・ハウ就任でアタッキングフットボール再興を目指すニューカッスル
スティーブ・ブルースの後任に選ばれたのは、ボーンマスで評価を上げたイングランド人若手指揮官のホープ、エディ・ハウ。
🤝 𝗛𝗢𝗪𝗘-𝗔𝗬 𝗧𝗛𝗘 𝗟𝗔𝗗𝗦 🤝
— Newcastle United FC (@NUFC) November 8, 2021
We are delighted to confirm the appointment of Eddie Howe as the club’s new head coach.
Welcome to Newcastle United, Eddie! ⚫️⚪️
スタイルとしては守備を固めて試合を止めるというよりはポゼッションを維持してプレスの始動ラインも高い攻撃的なチームを作る傾向があり、フォーメーションとしてはイングランド伝統の4-4-2をベースに前線の組み合わせを1トップ1シャドーにした4-4-1-1などをボーンマスでは多く使用しています。
また、チェリーズ時代にはハリー・アーターとアンドリュー・サーマンの中盤ユニットで知られるように、セントラルハーフにはボックストゥボックスとプレイメイカーの組み合わせを好んで採用しており、今のニューカッスルのスカッドで考えると恐らくこのような陣容になると思われます。
現在のニューカッスルにはカラム・ウィルソン、ライアン・フレイザー、マッチ・リッチーとかつての教え子が在籍していますが、ウィルソンを除く2人はかつての輝きを失っており、リッチーは今季LBとしてフル出場ですがそのままDFになるのか再びサイドアタッカーに配置転換するのかは不明。
また、アラン・サン=マクシマンの起用法に関しても素直にFW路線を継続するのかどうか予想がつかず、ハウの好むセカンドストライカー像とこのフランス人アタッカーは微妙に食い違う点もあるので、指導によってプレースタイルを変化させるのか、或いはドリブルを活かすためにサイドに戻す選択も大いにあり得る。
降格圏に沈む今のチームに移籍をしてくれる選手が一体どれほどいるかは分かりませんが、半分近いポジションが補強ポイントになってもなんら不思議ではないと私は考えています。
特に、バックラインは上記画像で仮置きしたラッセルズ含め一新される未来も捨てきれず、前政権で居場所を失っていた選手には大きなチャンスにもなるでしょう。(チェリーズにおけるナタン・アケのように、ビルドアップの貢献で見るとファビアン・シェア辺りは復活する可能性アリ)
ジェラードが監督としてプレミアリーグに帰ってくる
ディーン・スミスの退任が発表されたアストンヴィラは11月11日、レンジャーズの指揮官を務めていたスティーブン・ジェラードの新監督就任を発表。
トップチームの指揮官としてのキャリアを始めたのはグラスゴーの名門を率いた2018-2019シーズンからとまだ経験は浅いですが、スコティッシュ・プレミアではセルティックの連覇を止める無敗優勝を昨季に達成するなど新進気鋭の監督です。
スタイルとしては古巣リバプールに近いハイプレッシングで、フォーメーションは4-3-3か4-2-3-1を好む傾向。
前線左右ウイングは幅を取るというよりインサイドフォワードとしてプレーし、彼らの空けた外のスペースを使うフルバックの攻撃貢献が古巣リバプール同様チームの躍進の要でありました。
特にRBのジェームズ・タヴァーニアはPKキッカーを務めているとはいえジェラード体制では3季+10試合でリーグ戦32ゴール40アシストという驚異的なスタッツを記録。
ヴィランズでは元々アタッカーであったRBマティ・キャッシュに同様の期待が持たれていると思われます。
また、LBのマット・ターゲットはどちらかと言えば守備が評価されているタイプの選手ですが、今季はxAやキーパスもフルバックとしては高水準、ジェラードにとっては自らの得意な戦い方を実践できる下地は既に整っていると言えるかもしれません。
昨季いっぱいでパレスの老将ロイ・ホジソンが監督業の一線を退き、後任にはパトリック・ヴィエラ。そして此度はスティーブン・ジェラードが監督として帰還するなど、2000年代のリーグを賑わせたスター選手が続々とコーチになり着々と指揮官の世代交代が進むプレミアリーグ。
今現在選手としてプレーしている選手も10年後には監督になっているかもしれないと考えると何だか不思議な気分になります。