フットボール界、いや世界がEuropean Super Leagueの乱に振り回されたこの5日間。
irohasesun-fm-foot.hatenablog.com
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一報が出た翌日に参加クラブの1つトッテナムでは指揮官のジョゼ・モウリーニョが解任され、後任には暫定的にクラブOBで試合中の事故により選手としては早期引退を余儀なくされていたライアン・メイソンが就任。
激動の中で扱いがどうしても小さくなってしまった稀代の名将の解任について、荒れに荒れたESL騒動も一段落ついたことですし振り返っていきたいと思います。
トッテナムの監督就任前のモウリーニョについて
第一次チェルシー監督就任時のインタビューで放ったSpecial Oneという言葉はジョゼ・モウリーニョの代名詞となり、他の監督にはない独自性とカリスマ性を備えたボスとしてこれまでに数多くのタイトルを獲得してきました。
"Please don't call me arrogant, but I'm European champion and I think I'm a special one. "
しかしながら第2次チェルシー時代には就任3シーズン目(15-16シーズン)にチーム崩壊を引き起こし、年を跨ぐことなく2015年12月18日に解任されてしまいます。
思えばスペシャル・ワンの監督キャリアに陰りが見えるようになったのはこの頃からで、翌16‐17シーズンから2シーズン半率いていたマンチェスター・ユナイテッドではコミュニティシールド、カラバオカップ、ヨーロッパリーグとトーナメントでは多くのタイトルを獲得したものの、結局プレミアリーグのウィナーになる事は出来ず同じ街のマンチェスター・シティに後塵を拝する日々が続きました。
そして、マン・シティを率いているのは自身の監督人生最大のライバル、ペップ・グアルディオラだった事もあり、メッシ‐ロナウド論争と同じくらい過熱していたペップ‐モウリーニョ論争もペップが上であると格付けが完了してしまった感。
ユナイテッドでは主力選手との不和もあり、第2次チェルシー時代同様に3シーズン目で大きく戦績を落とし何の因果かまたもや12月18日(2018年)に解任。
キャリアワーストの成績で終えたトッテナムでの日々
2021年4月19日、ジョゼ・モウリーニョ及び彼と共に行動するコーチ陣のジョアン・サクラメント、ヌーノ・サントス、カルロス・ラリン、ジョバンニ・セラはトッテナムから解任され後任にはライアン・メイソンが就任。
Club statement | Tottenham Hotspur
メイソンは29歳312日とプレミアリーグ歴代最年少でトップチームの指揮を執る事になり、就任後最初の試合であるプレミアリーグ33節サウサンプトン戦に勝利して最年少勝利記録も大幅に更新
僅か17ヶ月でマネージャーの座を追われたジョゼ・モウリーニョ。
就任時には、それまで5年に渡りクラブを指揮し18‐19シーズンにはトッテナムをチャンピオンズリーグ準優勝に導いたマウリシオ・ポチェッティーノが成績不振を理由にシーズン途中で解任され、サイクルの終わりを予感させたクラブを救う救世主としての期待が高く一部には懐疑的な声もあったものの概ね歓迎ムードで迎えられました。
最初のシーズンは就任後のプレミアリーグ26試合で13勝6分け7敗、獲得ポイントは20クラブ中リバプール、マン・シティ、マン・ユナイテッドに続く4位と奮闘しましたがポチェッティーノ時代のマイナスを埋め合わせるには至らず総合順位は勝ち点59で6位。
そして、ホイビェア、ドハーティらプレミアリーグ有数の実力派に加えレアル・マドリーからLBのセルヒオ・レギロンを完全移籍、ガレス・ベイルをローンで獲得するなど積極的な補強を敢行してローンから完全移籍へ移行したジョバンニ・ロ・チェルソを含めると合計1億1千万ユーロの大補強を行った今シーズン。
加入初シーズンからチームの要としてプレミアリーグ全試合出場中(2021年4月22日時点)のピエール=エミール・ホイビェア
新戦力のうち完全に主力に定着したのはホイビェア、レギロンくらいでパフォーマンスのムラが大きいセルジュ・オーリエに代わるレギュラーとして期待されたマット・ドハーティは4バックのSBにフィットする事が出来ず今季ワースト補強の有力候補。
ロ・チェルソはピッチ外で問題を起こし12月にはイギリスの新型コロナ下プロトコルに違反してホームパーティを開くなどプレー以前の問題。
ベイルはここ2ヶ月でリーグ戦5ゴールとエンジンがかかり始めましたが2000万ポンドとされる高額なレンタル料に見合うかと問われると何とも言えない成績でこの大補強に関しては成功とは言い難いものになっています。
With Christian Eriksen on the verge of leaving Spurs...
— Footy Accumulators (@FootyAccums) January 15, 2020
Erik Lamela will soon be the last man standing from their £110m post-Bale spending spree in the summer of 2013.
Time flies! 😅 pic.twitter.com/qFd0qHuT72
思い返せばベイルがレアル・マドリーに高額移籍金で旅立った2013年夏の総勢7選手の大補強も成功と断言できるのはクリスティアン・エリクセンただ1人。エリック・ラメラも現在までチームに残っているのでそこに含めるとして残り5人はプレミアリーグへの順応に苦しむかチーム内でポジション争いに敗れる等で2~3年の内に全員クラブを去っています。
そんな今シーズンのトッテナムは好調な出だしでリーグ戦9節~12節の間は首位に立つなど流石は2年目のモウリーニョ。強いチームを作り上げたと思ったのですがその後はズルズルと成績が下降し、1月下旬からの6試合では僅か1勝という大スランプに陥るなど32試合を終えた段階でプレミアリーグ10敗。
これはモウリーニョのプレミアリーグでのキャリアとしてはワーストの数字で、プレミアリーグでの各クラブ毎の成績(チェルシーは第1次、2次に分割)を表にすると就任を重ねる毎に各指標が低下。
平均勝ち点で見るとトッテナムでは歴代最低のポイントに留まっているので彼の栄華には終わりが来ていると言われても仕方がありません。
こうして振り返ってみるとチェルシー第1次時代は3シーズンと5試合、通算119試合で僅か9敗という極めて優秀な数字を残しています。
先述の通り今シーズンのモウリーニョは32試合で10敗を喫しているのでこれを物差しにするとその異常さがよく分かると思います。
確かにいつ結果を見ても勝っている印象しかなく、マンチェスター・ユナイテッドのファンの立場からするとペトル・チェフ、ジョン・テリー、マイケル・エッシェン、フランク・ランパード、ディディエ・ドログバら当時の主力選手は07‐08シーズンのCL決勝までは本当にトラウマ的存在で、記憶が正しければモウリーニョがボスの間はリーグ戦で1度しか勝てていなかったはずですからまさに「顔も見たくない」チームでした。
シーズンを通して僅か1敗、向かうところ敵なしだった04‐05シーズン
解任後にSkysportsの取材に対して答えたインタビューでは今後について何も明かしませんでしたが、監督業の継続に対しては意欲的なコメントを残したので次は前々より口に出していた代表監督就任の夢を叶えようとしているかもしれません。
個人的にはポルトガル代表を率いるモウリーニョを一度はこの目で見てみたいので、近未来に実現する事を心の内で願いつつ、ここ数年の失敗を取り返す大成功を信じて次のニュースが来るまで気長に待ちます。