いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

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football managerというシミュレーションゲームであれこれやっていきます。気付いたらユナイテッドの事ばかり書いてます

【 #Euro2024 】オーストリアの首位通過、内容を見れば決して波乱ではない

オーストリアはトーナメントの山も恵まれたので04大会のギリシャ、08大会のロシア、16大会のウェールズのようなムーブメントを起こしても不思議ではない。

 

 

 

 

【Match Review】オランダvsオーストリア

 

ベンチ入り

オランダ
3 De Ligt, 7 X.Simons, 8 Wijnaldum, 9 Weghorst, 12 J.Frimpong, 13 Bijlow, 15 Van de Ven, 17 Blind, 20 Maatsen, 21 Zirkzee, 22 Dumfries, 23 Flekken, 25 Bergwijn, 26 Gravenberch

オーストリア
1 Lindner, 3 Trauner, 4 Danso, 11 Gregoritsch, 12 Hedl, 14 Querfeld, 16 Mwene, 17 Kainz, 19 Baumgartner, 20 Laimer, 21 Daniliuc, 22 Seidl, 24 Weimann, 25 Entrup, 26 Grüll

 

 

前半

 

 

ニュートラルな状態のシステムを見ると4-2-3-1ミラーのこの試合。代表チームとは思えない強度の高さを見せているオーストリアはサビツァー,グリリッチュ,サイヴァルトといった替えの利かない一部メンバー以外は疲労を考慮し入れ替えながら臨み、オランダは初戦スカッドから右サイドのユニットを変えたラインナップで挑む。

 

オランダはオーストリアの2CB-ダブルピボットの4枚で行うビルドアップに対し、ボールサイドと反対側のウイング+メンフィスでCBを、ラインデルス-フェールマンが2ライン目にチェックをかけるが、ここでカギになってくるのが+1として余るGKペンツの配球能力。彼はボールプレーがスムーズでショートパスだけでなく中長距離レンジのキックも精度が高い為、オランダは中々高い位置からボールを奪う事が出来なかった。

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元々、ポゼッション・コントロールよりもカオスの状況の好むラングニックが指揮するチームなだけあってオーストリアは無理に足元でボールを繋いで奪われるというケースが他国に比べると少なく、ロングパスとショートパスの塩梅がいいのでオランダはここだという奪いどころを作れない上に、ボールが横軸に動いていく際の守備対応で誰が何処を埋めるのかというマーク・スペース管理が全体的に緩く、なおかつRWのマレンが対面の相手LBアレクサンダー・プラスをフリーにしてしまいがち。

 

オーストリアの先制点はまさにその左サイドの優位性から生まれており、ラインハートの縦パスをアルナウトヴィッチがDF-MFライン間で受け、ぽっかりと空いた左サイドに上がるプラスに後を任せて自身はゴール前に向かって走り込むと、プラスのクロスを遅れ気味ながら何とかボックス内までプレスバックしていたマレンがスライディングブロックを試みたボールはそのまま自陣ゴールへ吸い込まれていった。

 

ヘールトロイダのポジショニングがいて欲しい所よりもやや内寄りである事も影響を与えているが、彼に関してはプレーを見る限り空中戦対応が苦手なタイプである上に背負われた状態でボールをキープされ起点にされてしまうケースが目立ったので、ポゼッション時にInverted-WBとしてプレーする際の位置取りや判断に光るモノがあった点を加味してシンプルにDMでプレーさせる方が良さそうである。現状では、フルバック起用だと隣のCBのカバーリング負荷がかなり高い。

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オーストリアの守備はボールに対しかなり強めに食いついてくるので、レイオフなど複数人が少ないタッチでボールを繋ぐコンビネーションが決まれば14分の中央を綺麗に崩したカウンターのようにビッグチャンスを生み出す事もあるが、この場面では中継地点として完璧なプレーでボールを運びつつ自身に視線を集めたタイミングで警戒の薄れた左サイドの味方にパスを出したラインデルスが最後の詰めで上手くボールをミート出来ずに同点に追いつく機会を逃した。

 

ただ、オランダのチャンスに必ず顔を出しているのもラインデルスその人であり、ミドルサードでのボールレシーブやその後のパス,キャリー,フェイクの判断がいずれも上質なので、彼を最終局面から遠ざけつつ機能していないダブルピボットを解体するという点で35分というタイミングでの選手交代に及んだロナルド・クーマンの判断は妥当だったように思う。

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一方で、見方を変えればラインデルスを一列落として起用する事が改善に繋がるのはポーランド戦の後半には既に判明していた事なので、何故わざわざ機能しない組み合わせをもう一度試したのかという点でクーマンに疑問符が浮かぶのもまた事実。最初からシャビ・シモンズをトップ下に起用しラインデルスをダブルピボットで運用していれば、前半途中に戦術的理由で交代されるという屈辱的経験を選手に経験させずに交代枠を消費する必要も無かった。

 

 

後半

 

47分、オーストリアはオランダの後方でのボール回しに対し、LBアケにパスが入った所で一気にタッチライン際に圧縮するようなタイトなプレッシングをかけてラインデルスへのパスをカットし右サイドでボールを奪ったが、中央でボールを受けたグリリッチュが2枚のプレスを受けている状況で判断が遅れボールをオランダに明け渡してしまう。

 反転攻勢のオランダは相手前掛りになっていた事でぽっかり空いた中央でシャビ・シモンズがキャリー、バイタルエリアまで侵入したところでガクポへパスを出し、ファーストタッチで右足側に切り返した背番号11はお手本のようなコントロールカーブを決めて同点ゴールが生まれた。

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オーストリアからしてみれば思い通りのボール奪取が決まった直後だったが、好事魔多しとは正にこのことでボールの主導権が安定しない内はちょっとした事象がすぐ得失点に直結する、ラングニックの哲学の根底にある概念を皮肉な形で証明したようなものである。

 

しかし、格上相手という事で追いつかれるのは百も承知、特に慌てる素振りもなくピッチを狭く使わせて時間と空間の自由を奪っていく魚鱗の陣のようなアグレッシブな守備を引き続き行い、サビツァーのスプリント数やサイヴァルトのルーズボールを読んだポジショニングの優秀さ等、優れたチームプレイヤーたちが指揮官のコンセプトを体現する。

 

59分、ポッシュのクリアを前線でサビツァーが相手より先に触り、セカンドボールもヴィマーが真っ先に落下地点に到達してマイボールとし、ミスコントロールなのか狙ったのか分からない自身の前方のスペースへの浮き球でゲールトロイダの裏を取る。そこから左サイドでパスを回し、プラス→ニアポケットに走るグリリッチュへのパスで最奥を取ると、角度の付いた折り返しのクロスにシュミッドがダイビングヘッドで合わせて再勝ち越し。

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 その後、65分を前にオーストリア疲労の色が見える選手を複数枚下げ、オランダは相手の守備のハメどころになっていたアケに変えてファン・デ・フェン、ボックス内に飛び込んで得点に絡む選手が欲しくワイナルドゥムと一気に陣容が変化したが、ラインデルスを下げるよりはスハウテンだったと個人的には思う。

更に、追いつきたいオランイェはジョーカー役のヴェフホルストを投入しターゲットマンに彼、メンフィスをその周囲で積極的にボールに絡ませる2トップに。

 

 この交代が活きたのが75分のゴールであり、ヴェフホルストが2枚の相手を引き付けた状態をボールを収め、オーストリア守備の距離感が少しまばらになった隙にガクポの速めのインスイングクロスから、ファーポケットでこの長身ストライカーがボールを折り返してゴール前に待つメンフィスがジャンピングボレーを決めた。

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ヴェフホルストにボールを当てるという明確な形が生まれ、でチーム全体の意識が統一された事で生まれたゴールでもあり、攻撃でも守備でも中々狙いがハッキリしなかったオランダにとっては彼のような分かりやすく戦術を左右する選手が必要であるという事なのかもしれない。

 

80分、オランダのCKを凌いだオーストリアは左サイドからサビツァーが長い距離を持ち運んで敵陣深い位置に侵入。プラス,バウムガルトナーとのトライアングルでパスを繋ぎ、スハウテンの背後を取ってボックス内へ潜り込むと角度の厳しい所からゴールネット上部に突き刺すような左足のシュートを決めて3度目の勝ち越し!!

 

オランダ視点で振り返ると、裏抜けをちらつかせたグレゴリッチュの動きでファン・ダイクが押し下げられてオフサイドラインが低くなった事で布石となり、なおかつヘールトロイダ,スハウテンが完全にボールウォッチャーになってサビツァーのマークを見失った事が直接的因果となった生まれた失点で、ファン・ダイクは相手に対応した結果なので一概に悪いとは思わないが、目の前の相手に対して無頓着だった国内組2人については、エールディビジのレベル低下の象徴と言われても仕方がないくらいあまりにも杜撰な対応である。

 

裏抜けを狙う相手に対するヘールトロイダの対応のマズさはオフサイドに終わったバウムガトリンガーの幻の得点でも顕著であり、85分のヴェフホルストへのアーリークロスのように攻撃面では局面を問わず光るモノを見せているが5大リーグへの挑戦となるとポジションを変えるかかなり時間をかけて守備面の改善に取り組まなければいけない。

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アディショナルタイムになってもセカンドボールに対する寄せの速さを維持しオランダに3点目を許さなかったオーストリアはアップセット達成。死の組とも評されたグループDを首位通過する快挙となった。

 

 

【Match Review】イングランドvsスロベニア

 

ベンチ入り

イングランド
3 Shaw, 8 Alexander-Arnold, 13 Ramsdale, 14 Konsa, 15 Dunk, 17 Toney, 18 A.Gordon, 19 Watkins, 20 Bowen, 21 Eze, 22 J.Gomez, 23 D.Henderson, 24 Palmer, 25 Wharton, 26 Mainoo

スロベニア
3 Balkovec, 4 Blažič, 5 J.G.Stanković, 7 Verbič, 8 Lovrić, 12 Belec, 14 Kurtić, 15 Horvat, 16 Vekić, 18 Vipotnik, 19 Celar, 23 Brekalo, 24 Žugelj, 25 Zeljković, 26 Iličić

 

前半

 

 

イングランドはアレクサンダー=アーノルドの中盤起用に一旦ストップをかけて代わりにコナー・ギャラガーを起用。過去の2試合で問題になっていたトリッピアーを適性ではない左大外で張らせてしまうポゼッション時の位置取りについては、フォーデンに外から動くなと言いつけるのは難しい+そもそも彼を起用する意味がないのでベリンガムを左のCMにする妥協案。

 

フラット4-4-2のスロベニアに対してイングランド4バックは誰が何処に立ってボールを捌くのか曖昧な部分もあり、それだったらクラブでリベロを任されるストーンズをポゼッション時にライスの横に上げて残りの3枚はペナルティボックスの幅で固定する方が良かったかもしれない。トリッピアーに外でのプレーを要求される事がほとんど無くなるという相乗効果もある。

 

また、ライスの相方に起用されたギャラガ―は典型的Box to Boxで運動量やカバー範囲の広さが持ち味である為、キャラクター性が被っていて効果的ではなかった。必要なのはボールプレーの質が圧倒的なプレイメイカーかある程度形が決まった際のポゼッション中にDF-MFライン間からDFの背後に走り込んで守備陣形を崩せるシャドータイプ。

 

というのも1トップのケインは自分がDFラインの裏に抜けてパスを引き出すというよりは寧ろ出し手側になってチャンスを供給する側である為、裏よりもハーフスペースに留まるベリンガム,フォーデンともまた異なるキャラクター、今大会で例えるならばドイツ代表のギュンドアン的な存在が1人は欲しい。

 

19分、左サイド深い位置でボールを持つイングランドはトリッピアーから中央のライスへ相手の守備ブロックを抜く鋭いパスが入り、ライスはダイレクトでニアポケットにボールを落とす。待っていましたとばかりにフォーデンが走り込んで綺麗なレイオフが成立し、フォーデンはゴール前を通過するプレゼントパスを出して最後はサカが丁寧に合わせたが惜しくもフォーデンの抜け出しがオフサイド

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圧倒的に自陣で相手の攻撃を待ち構えるシチュエーションが多いスロベニアイングランドにボールを持たれる事は許容してビヨル,ドルクシッチのボックス近辺まで来た相手を弾き返す力と絶対的な守護神オブラクのショットストップで問題なくイングランドの攻撃に対応し、同時刻開催のデンマークvsセルビアで後者が勝たなければこの3戦目もドローでトーナメントに進出出来る立場であった事から、冒険せず試合を塩漬けにする事を最優先事項としているように思えた。

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後半

 

攻撃が停滞するべきして停滞するイングランド、試合がこのまま無風で終われば願ったりかなったりなスロベニアの構図がひたすら続いた眠気を誘う45分を経て、ガレス・サウスゲートはギャラガーを下げて待望論の多かったコビー・メイヌーを投入。

 

メイヌーは持ち前のクリエイティビティと自身がデコイになってスペースを作る動きなど、前半のチームに足りていなかった要素をもたらすいい交代策になったが、彼1人では滞った血流を完全に取り戻すまでには至らず。ウォートンについては実際に起用してみないと分からない部分もあるが、現状ではライスの相方として最も相応しいのがこの才覚溢れるティーンエイジャーであるというのはものの5分の内に明らかに。

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もう1人、チーム状態の悪かったチェルシーでリーグ戦22ゴール11アシストというとんでもない得点関与数を記録したパルマーも70分からサカに代わって登場。プレータイムは長くなかったが特にメイヌーとはスペースの共有力が非常に高く、足元のパス交換ではなく動きながらの連携で崩す事が出来る為、終盤のイングランドのチャンスはほとんどがこの2人が共に関与するものだった。ラウンド16以降の試合ではフォーデン,ベリンガム,サカ,ケインの誰か1人を控えにして彼のスタメン出場があり得るかもしれない。

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なお、アディショナルタイム直前に投入されたアンソニー・ゴードンも大外から中にドリブル→相手MFラインの背後に走り込んだメイヌーへのラインブレイクの縦パスで好機を演出しており、名を捨てて実を取るような決断がサウスゲートに求められている事をさらに強調するような結果に。

 オーストリアvsオランダに比べるとずいぶん淡白だが、本当にこれくらいしか語る内容が無いくらい起伏の少ない試合だった。

 

3戦3分け勝ち点3、得失点差でノックアウトステージへの切符を掴んだスロベニアには素直におめでとうの言葉を投げかけたい。全員がフォアザチームの精神をもって(シェシュコの守備貢献はムラがあるが)とにかく失点を減らすという戦い方は持たざる者がアップセットを起こす可能性を高める最良の手段だと思うので、ある意味イングランドと似た問題を抱えているポルトガル相手ならば十分一波乱を起こせるのではないか。

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