※24/25 FAカップ 5回戦
マンチェスター・ユナイテッドvsフラム戦の記事です。
やはりエリクセンのシャドー起用は気の利き方が他の選手との比較で明確に優れているのでストレスが少ない。フィジカル的な部分も割と隠せるポジションなので今の彼に一番いい起用法だろう。
After 120 minutes, we are level.
— Manchester United (@ManUtd) March 2, 2025
Penalties will be required to determine which club reaches the #FACup quarter-finals.#MUFC pic.twitter.com/THcuBlddwH

【Match Review】

Starting lineup

前半

4-2-3-1のフラムはユナイテッドのWBに対してFBが前にスライドしてマークする前線で捕まえる意識の高い守備隊形で、ロビンソンとカスターニュはフットワークが軽いので縦の運動量を要求されてもそれほど順応に苦労する様子は無かった。
ただ、WBを捕まえる意識の高さとは裏腹に相手のビルドアップでCBに積極的にプレッシャーをかけようとはせず、プレスラインがセンターサークルの上端あたりなので最もユナイテッドを陥れやすい部分で自由を与えていたのは失策かもしれない。
赤い悪魔は左WBにダロトを起用しマズラウィを久々にCBではなくサイドに当てはめ、なおかつエリクセンをシャドーに置く事で孤立しがちなダロトのサポート+ハーフレーンでバランスを取るリンクプレイヤー兼ブルーノの補助になる2人目のプレメイカーとしてポゼッションで欠かせない潤滑油に。
全体的に制約を減らして選手の自主性をより重視しているような印象があり、ジルクゼーとホイルンドは初期位置から互いにポジションを入れ替える事で前者は得意の10番的振る舞い、後者はCBを釣り出しつつロングフィードやスルーパスのターゲットになるハーフレーンでの起点役としてプレー。また、ボール保持での判断の遅さや悪さが目立つデ・リフトもダロトへのサイドチェンジを基準に優先順位を遠>近とした事でいくらか状況判断の改善が見られた。
守備面に関してはエリクセンとブルーノの縦スライドでその都度人数を調整しながら、撤退してブロックを構える際には本職FW2枚を残して5-3の2ラインで対処し、フラムのサイドでの3ユニットでのコンビネーションに対して人数不利が生まれないように注意を払う。
また、アダマ・トラオレ対策として一定のスペースを確保しながら縦を切って左足でのプレーに誘導する事でスピードに乗らせる事を防ぎ、なおかつ質の低いインスイングクロスを量産させるという守り方は一定の成果を上げており、彼が選択肢の少ない突貫タイプかつ味方とのコンビネーションで打開するのが得意ではない事もそれを助長した。
よってフラムの打開策は器用さがあって縦横内外どの状況でも脅威になれるイウォビがいる左サイド中心となり、イウォビは基本的にハーフレーンに移動してロビンソンのオーバーラップを促しつつ右足でゴール方向を向きながらのボールプレーを選ぶ事が多かった。また、左で展開している際は右DMのルキッチがクロスターゲットとしてボックス内へ走りこんでいく。
フラムは高身長の選手が多い事もあって積極的にコーナーキックを狙いにいき、この姿勢が前半の最後に実を結ぶ。アディショナルタイム1分、ペレイラのアウトスイングキックに対しニアでムニスが擦るように頭で触れて軌道を変えると、ボールウォッチャーになるユナイテッドのセットプレー守備の悪癖がまさに露呈して形でフリーになったバッシーが合わせて先制はコテイジャーズ。
BASSSEYYY!
— Emirates FA Cup (@EmiratesFACup) March 2, 2025
Old Trafford is silenced as Calvin Bassey has his first FA Cup goal in his first-ever FA Cup game for @FulhamFC ⚪️#EmiratesFACup pic.twitter.com/VZZub4sUam
マズラウィはファー側のストーンだと推測すると、本来バッシーをケアしなければいけないのはヨロだったのだが、彼自身がまだ経験の浅い若手という点だけでなく、過去何年にも渡る傾向からしてユナイテッドにはセットプレー守備のセオリーを教えられる人材がいない為、今後もこのようなボールに目線を取られてマークを見失う良くない守備は頻発する恐れがある。
後半
最後の最後にビハインドを負ったユナイテッドと狙い通りの先制ゴールのフラムの両クラブ共にハーフタイムの入れ替えは無く同じ22人で後半スタート。
しかし、キックオフの余韻残る53分には先述した割り切った対応によって封じられていたアダマが負傷し代わりにスミス・ロウがピッチに投入され、同じタイミングでユナイテッドも一気に2枚を入れ替えて陣容は大きく変化。

ただ、ユナイテッドは負けていたとはいえオープンプレーのバランスは決して悪くなく、ウガルテがいなくなった事で中盤の運動量が減少した点に加えガルナチョとダロトでプレー傾向が被っている部分を考慮すると却って悪くなってしまった感も。
更に、シャドーでエリクセンが担っていた2↔3の切り替えによる降りてくる相手アタッカーへの対応も無くなり、単純にウガルテという汗かき役が消えた以上の損失。
ガルナチョがこれらのマイナスを補填してかつプラスを生み出すほど圧倒的な個の質を見せられるかと言えばそうではなく、以前にも言ったが彼は3-4-3の3では正直器用さや柔らかさの部分で限界が見える為、純粋なスピードや動きの量を評価されやすいWBの方がまだフィットするのではないかと考えている。
ユナイテッドの積極的な交代策は更に続き、70分前には調和を取っていたエリクセンと両シャドーの空けたハーフレーンで自分の得意なシチュエーションを確保出来た事で久々にらしさが見えたホイルンドに替えてカゼミロ、チド・オビを投入。先程の入れ替え同様、はたから見て勝ちに行くというよりは先発した選手たちのコンディション管理の方に比重が傾いているように見えた。

交代からしばらく経った71分、敵陣左サイドで継続的なチャンスを得ていたユナイテッドはガルナチョに対し複数の相手がプレッシャーをかけて大外がフリーになった一瞬の守備の乱れをつくと、ガルナチョからスルーパスを受けたダロトはニアのマイナスでじっとその時を待っていたブルーノへグラウンダーのクロスを送り、少しマイナス気味で処理の難しいパスに対してキャプテンは迷うことなく左足を振り抜いて芸術的なボレーショット炸裂。名手レノもお手上げという見事な場所に吸い込まれたボールはゴールネットに到達しユナイテッドは試合を振り出しに戻した!!
Bruno Fernandes delivers for @ManUtd when they need him most 🤩
— Emirates FA Cup (@EmiratesFACup) March 2, 2025
Their captain fantastic with an incredible finish on his weak foot 😮💨#EmiratesFACup pic.twitter.com/jSzVPoGbAt
イプスウィッチ戦でローブロックで逃げ切りを図る際にクローザーとして活躍したカゼミロは今度はより広いスペースの管理を求められた事で輝きを失い、いつものただ漂っているだけの状態へ逆戻り。ブルーノは低い位置でのビルドアップに奔走しチャンスの匂いを醸し出すジルクゼーまでボールは供給されず、当初の懸念通り悶々とした時間を過ごしたまま90分で決着をつける事が出来なかった。
フラムはサイドから切り崩してマイナスで待つスミス・ロウをフィニッシャーにする攻撃で何度かオナナを脅かしたが裏を突くような形にはならなかったのであと一押しが足りず。
後半アディショナルタイムにはチド・オビが身体能力に優れるバッシー相手に空中戦のデュエルで勝利してゴール前でシュートチャンスを生み出したものの得点に至らず。ただ、相変わらずフィジカル面での底知れ無さはプレーの端々から醸し出しているのでトッププロスペクトとして今後も注目必至。
一番勿体なかったのはAT10分のカウンターでジルクゼーのロブパスからガルナチョが相手DFラインの背後を奪い完全にGKレノとの1on1になった決定機をモノに出来なかった点。パスを受けた後のビジョンが毎回不明瞭なので考える時間がラグとなり、相手に追いつかれてまともにシュートを打ち切れていないという悪循環をここ最近は繰り返すばかりだ。
The skill from Zirkzee 🥶
— Emirates FA Cup (@EmiratesFACup) March 2, 2025
A huge chance for Garnacho and @ManUtd!#EmiratesFACup pic.twitter.com/E8uwgDQ1E4
延長・PK
延長に入っても後半終盤と展開は変わらず、疲労の色が顕著なカスターニュの裏をガルナチョが蹂躙する流れが続くが、やはり先読み不足で肝心のフィニッシュワークのごたつきも変わらないので得点には出来ず。
皮肉なことに得点の匂いが一番強かったのはピッチ上で最年少のチド・オビで、ルーズボールから生まれた延長前半ATの決定機では角度的に厳しかった事もあってレノのセービングに阻まれたものの、体勢の作り方やフォロースルーで身体を流すようにしてバランスを取る身体操作はとても17歳とは思えない大人びたものだった。
シルエットからするに完成系はプレミアリーグでも一、二を争うスコアラーに成長したアレクサンデル・イサクだと考えているが、チド・オビを見ていると一度スランプを経験しているイサクよりも早くトップクラスの選手になる未来があるかもと思わせる。
結局、120分でも雌雄は決さず次のラウンドへ駒を進める一席はPK戦の結果に委ねられることに。
ユナイテッドのトップバッターであるブルーノが持ち前の精神力で強いキックを左下に叩きこむと、フラムの1人目ラウール・ヒメネスも意趣返しの如く同じコースにシュートを決めて一巡目は両クラブ成功。
2人目、3人目も両クラブきっちりと決めて迎えたユナイテッドの4人目、途中出場のリンデロフが短い助走から甘いコースへのキックで完璧にレノに読まれてストップされると、続いて5人目のジルクゼーもレノに止められてフラムの5人目を待たずとして決着。そもそもPKまで行ってしまった事が問題なのでこの結果自体にとやかく言うつもりはないが、現実的に来季の欧州コンペティションを期待出来る唯一の場所だったのでそれが潰えた事は非常に手痛い。
データ

Standard

120分のスタッツなので一概に鵜呑みにする事は出来ないが、ユナイテッドはポゼッションコントロールに見切りをつけてカウンターベースの戦い方に活路を見出した。特にエリクセンが下がってからはこの傾向が顕著であり、逆説的にアモリムの哲学を表現するために彼の存在が鍵になる事を示唆しているか。
20本シュートを放ってうち9本がオンターゲット、表面的には悪くないスタッツでありながらゴールは僅か1つに留まった理由として、個人としてもチームとしてもフィニッシュワークでどのような形で得点に結びつけるかというアイディアが存在しない、或いは共有されていない点が挙げられる。とりわけガルナチョはボールを受けてから考え始めているように見えてならないので、ボールプレーの技術だけでなく意識の部分で向上が求められる。
あとがき

ヨーロッパリーグはレアル・ソシエダ戦という事で日本での注目度も格段と高くなると思われる。正直今のユナイテッドなら呆気なく敗戦してしまっても何ら不思議ではないものの……