1ヶ月に渡り行われる欧州一番を決める国別対抗戦、欧州選手権の2024年大会が遂に開幕する。私自身の優勝予想国は例のごとくポルトガルですが、良くも悪くも飛びぬけたチームが無い今回はどの国にもチャンスが転がっていると思います。
【Match Review】ドイツvsスコットランド
ドイツで開催されるEURO2024。オープニングセレモニーでは、キックオフ前に今年1月に亡くなった皇帝 フランツ・ベッケンバウアー氏の業績を讃え、晩年のパートナーであったハイジさんが亡き夫に代わり欧州選手権の優勝トロフィー、アンリ・ドロネー杯をピッチに運び台座へ設置し、涙ぐみながら天に向かってメッセージを送ったシーンは観衆の心を動かした。
前半
【ラインナップ】
ドイツ
3 Raum, 5 Groß, 9 Füllkrug, 11 Führich, 12 O.Baumann, 13 T.Müller, 14 M.Beier, 15 Schlotterbeck, 16 W.Anton, 19 L.Sané, 20 Henrichs, 22 Ter Stegen, 24 Koch, 25 E.Can, 26 Undav
スコットランド
5 G.Hanley, 9 Shankland, 12 Liam Kelly, 14 Gilmour, 16 L.Cooper, 17 S.Armstrong, 18 L.Morgan, 19 Conway, 20 R.Jack, 22 R.McCrorie, 23 K.McLean, 24 G.Taylor, 25 J.Forrest, 26 S.McKenna
スコットランドはてっきりブロックを敷いてカウンターと屈強な選手が揃っているセットプレーでの得点にかけてくるとばかり思っていたのだが、蓋を開けてみると5バックながら両ウイングバックは比較的前目にポジションを取り、尚且つDFラインとプレスラインが高いので前線守備の際にはマッギン,クリスティーが1stプレス隊に吸収される3--3に可変。
ただ、チェ・アダムス→リュディガーへのプレッシャーが緩めで守備の始動の基準が決めにくく、更にレアル・マドリーでの役割をそのまま持ってきた2CBの左脇に降りてビルドアップのハブになるクロースを捉えきれないので彼らからのロングボール一発でスピードに優れたドイツのアタッカーに序盤から危険なシーンを作られてしまう。
開催国ドイツは相手が真っ向からぶつかってくれた事で引いた相手をどうこじ開けるかという強者の永遠の課題と向き合う必要が無くなった為に非常にプレーしやすい試合の入り。クロースの相方として起用されたアンドリッヒはボールタッチの感覚のズレなど少し流れに乗れていない感もあったが、ギュンドアンやキミッヒがカバーしてくれるのでこの試合では破綻しなかった。
10分には先述の通りプレスがかかりきらないクロースから右サイドのキミッヒへロングフィードが通り、キミッヒの丁寧なグラウンダーパスに中央に入っていたヴィルツがダイレクトで合わせてドイツ先制。
更に、19分のムシアラの追加点に関しても元を辿ればクロースに自由を与えてMF-DFライン間へ気配を消して表れたギュンドアンへの縦パスを通された事がキッカケなので、スコットランドはゲームプランの裏目を引いた事とその修正が遅れた事がそのまま致命傷になってしまった。また、ゴール前に人数をかけて守る際、後ろから勢いをつけてバイタルエリアを突いてくる選手に対する中盤のケアが欠けている点も気になった。
2-0になって時点でかなり厳しいスコットランドに追い打ちをかけたのはムシアラの個人技でミドルサードを突破された後、キミッヒのクロスでゴール前の攻防になった42分のシーンで3CBの右で先発しているポーティアスがシュートに移行しようとするギュンドアンの軸足へ足裏を見せるタックルをしてしまい退場+PKという判定を下された事。当たり方が悪ければ相手のキャリアを終了させかねないプレーだった上に、チーム今後の試合にも大きく影響を与えるファウルであまりにも軽率だった。
後半
逆転ではなくいかに消耗を抑え傷口を広げずに残り45分を消化するかというテーマになってしまったスコットランドはCFのアダムスを下げてCBのハンリーを投入。余裕が生まれたドイツはより守備負荷の高い試合に余力を温存しておきたいアンドリッヒに代えて30歳を超えようやく正しく評価されてナショナルチームでの活躍の場が与えられたパスカル・グロスが登場。クロースとのプレイメイカー2人体制は押し込みたい試合ではかなり魅力的に映る。
ドイツの追加点は70分手前、ムシアラのキャリーに対しマクトミネイを釣るデコイランでアシストしたミッテルシュタットのアンダーラップから、DF-MFライン間にスペースが出来た事を見逃さないギュンドアンの熟練のオフボールでボックス内でのチャンスが生まれ、落としのパスを豪快なパワーショットでフュルクルクがゴールネットに突き刺して4-0。
VARによりオフサイドと判定されキャンセルされたがフュルクルクは76分にもネットを揺らしており、やはり彼こそがドイツの点取り屋の系譜の現継承者なのではないかと思わせる見事なパフォーマンスだった。
試合のラストプレーでは途中出場のエムレ・ジャンがミドルショットを決めてドイツは5得点の大勝劇を飾り、スコットランドもセットプレーからピンポン玉のようにディフレクトしたボールがリュディガーの身体に当たりオウンゴールという形で得点をマークしたものの、初戦で得失点差-4という非常に苦しいスタートに。