*20‐21UEFAヨーロッパリーグ決勝
ビジャレアルvsマンチェスター・ユナイテッドについての記事です。
どうも皆さんこんにちは、いろ覇です。
遂に今シーズンのマンチェスター・ユナイテッド最後の公式戦であるEL決勝の日がやってきました。
このブログでユナイテッドの試合を振り返るようになってから半年以上が経過していますがこれで一旦終わりなんだと考えると何だか感慨深いような寂しいような複雑な感情を抱きます。
勝っても負けてもこれがラストゲームなので90分を目の奥に焼き付けるようにしっかりと見ていきたいですね。
試合プレビュー
マンチェスター・ユナイテッドはマグワイアに加えフレッジに関してもリバプール戦終盤に負った怪我の影響で100%ではないという報道があり、今季のキーマンを2人欠いてスタートする見込みが高くなりました。
ビジャレアルに関しては戦前予想から特に大きなニュースは入ってきていませんが、トッテナムからレンタル中のフアン・フォイスに関してはどうやら起用可能とのことなのでRBにはマリオ・ガスパールではなく彼が起用される公算が高いです。
スタメン
ビジャレアル
エメリの選択は今季最も多い4‐4‐2。
私の予想とは異なりカルロス・バッカを先発に起用しジェラール・モレノと並びELチーム内得点王のパコはベンチスタート。
おそらくユナイテッドのカウンターを封じる為に低いラインでブロックを敷いてくる時間が長くなると考えられます。
マンチェスター・ユナイテッド
ユナイテッドは3列目にポグバ-マクトミネイを起用した4‐2‐3‐1。
ポグバのDMは正直機能していない試合が圧倒的に多くかなりの不安要素で、フレッジがフル出場出来ないならばマティッチと2人で1試合持たせる方がどう考えても無難だと思うのでこの判断が吉と出るか凶と出るかで試合の結果が180度変わりそうです。
そしてもう1つの不満はリンデロフを左にスライドさせてバイリーとのペアを選択した事。
トゥアンゼベのここ数試合のパフォーマンスを見て彼を抜擢できないところにオーレの肝心な試合での弱さが現れている気がしてならない。
もう少し戦力層の拡充という点に対して気を遣って欲しいのですが……
試合内容
はじめに言い訳させていただくと、正直延長後半以降は興奮しすぎて結構な割合で記憶が飛んでいるかもしれません😇
99分にデヘアのパスミスからアルベルト・モレノにシュートを打たれたシーンから後の記憶がかなり曖昧……勿論PKに関しても
ユナイテッドはポグバ、リンデロフとロングレンジのキックを蹴れる選手からサイドアタッカーに向けたロングパスでビジャレアルSBの裏を意識的に狙う場面が目立ち、初シュートは7分にラッシュフォードのマイナスのパスからマクトミネイが記録。
直後の8分にはポグバとビジャレアル8番フォイスが接触しフォイスの鼻からはどす黒い血が大量に流れる場面も。
その後ティッシュを詰めて試合に復帰しますが中々血が止まらず1度詰め物を替えた際にはかなりショッキングな映像も流れていましたがパフォーマンス自体はそれを感じさせない素晴らしいものだったのでこの試合での彼には感銘を受けました。
いい加減にしろと思わず口に出たセットプレーからの失点
主導権を握っていたのはユナイテッドでしたがバイリー-リンデロフはかなり消極的なパス交換を繰り返し、マグワイア不在によるCBからの縦の展開の欠如が大きく足を引っ張る時間が続きます。
そしてポグバもやはり3列目にしてはリスクとリターンが見合わない危険なパスを選ぶシーンが多く後述する失点は彼とデヘアのパスミスがその伏線になってしまいました。
29分、ビジャレアルはミドルサードの中央やや左寄りでFKを得るとダニエル・パレホのキックにジェラール・モレノが合わせて先制に成功。
当初モレノを見ていたのはルーク・ショーでしたが、あっさり斜めにランを許してマークを外されるとリンデロフの前に入られデヘアの中途半端なポジショニングとそれに伴う体重移動の遅さによってセービングすらままならず失点。
セットプレーにおけるデヘアの前に飛び出るかその場に留まるかを迷った挙句何も出来ずに失点というパターンは2月6日のプレミアリーグ第23節 エバートン戦の後半ATのゴールによく似ていますね。
90+5' @CalvertLewin14 🙌#MUNEVE pic.twitter.com/8W31yXaBIB
— Everton (@Everton) February 7, 2021
ユナイテッドはゾーンディフェンスでセットプレーを守っていますが、マーカーの受け渡しでしくじって失点するケースが余りにも多すぎるので個人的には来季以降マンマークとの併用に変更して欲しいと強く願っています。
先に点を加えたビジャレアルは早くもバスストップのような戦い方に変更しカウンター封じとユナイテッドのポゼッション下での無力さを信じる(変な表現ですが)割り切りを見せましたがこれがピタリとハマり、ポゼッションは7割近い支配率でしたが前半を終えた段階でユナイテッドが放ったシュート数は僅か3つに留まりました。
それでも46分にはメイソン・グリーンウッドの縦の突破からゴールエリアにチャンスボールが供給されますがベテランのラウール・アルビアルが先にボールに触れて中にいるエディンソン・カバーニへは通らず。
今思うとグリーンウッドがチャンスに顔を出したのはこれがラストだったのでもっと早く交代カードを切るべきでしたね。
Vamos!! エル・マタドール
後半開始早々にはエリック・バイリーのまるで酔っぱらっているかの如く理解不能な選択であわや2点目のゴールが生まれるピンチに直面したユナイテッド。
— No Context Eric Bailly (@NoContextBailly) May 26, 2021
このフラつきを立て直したのはカバーニ、そしてその前に身体を張ってコーナーキックを獲得したマクトミネイでした。
55分のコーナーキックは一度相手に跳ね返されますが後方にいたラッシュフォードがこれにダイレクトボレーで合わせると混戦のボックス内中央でボールは二転三転し最後はエル・マタドールが押し込んで赤い悪魔は同点に追いつきました。
この試合でのカバーニは普段以上にエンジンとしてピッチ上を走り回り、インターセプト4回・タックル3回という数字は正に往年のウェイン・ルーニーを思わせる獅子奮迅の働き。
出場したメンバーではマクトミネイ、ルーク・ショー、そしてカバーニの3人を除くと決勝のプレッシャーに飲まれたのか精彩を欠く選手が殆どだったので、経験豊富な彼のような選手がチームにいるのは心強かった。
そしてカバーニは70分のラッシュフォードのビッグチャンスでも右サイドタッチライン際でタメを作りブルーノへのスルーパスに繋げています。
結局この決定機は10番が外してしまうのですが……
監督の差?積極的にサブを起用したエメリと彼らを信用しなかったオーレ
両チームで非常に対照的だったのが交代策。
エメリは延長に入る前に5人の交代枠を全て使い切りチーム全体でこの1戦を勝ちに来ていましたがスールシャールが1人目の交代カードを切ったのはなんと延長に突入して合計時間100分を経過した後です。
グリーンウッドとラッシュフォードはビジャレアルがスペースを消して守りを固めてきた段階でほぼほぼ有効打を打てなくなり、特にグリーンウッドは後半45分間全くと言っていいほど存在感が無かったので本来ならば狭いスペースでも決定的な仕事を果たせるベテランのフアン・マタ、或いはアマド・ディアロの個人技に後を託すべきでした。
ラッシュフォードも同様で、ポグバを左へスライドさせて今季最大の発見となったポゼッション時のポグバ左アタッカーというカードを切ってDMにはウルブス戦で好パフォーマンスのファン・デ・ベークで更に攻撃の手を強めるか、マティッチorフレッジで低い位置でのビルドアップを改善させるなどの手を打てたのでは。
控えの手札を全く信頼していないのがオーレの悪い所で、シーズン終盤にマグワイアやフレッジが相次いで離脱してしまった遠因。
選手の質が悪いという擁護もありますが、マンシティを除く他のPLのクラブや今回対戦したビジャレアルと比較して明らかに劣っているとは到底考えられないのでこれはスールシャール自身が克服しなければいけない弱点だと思っています。
という事で手詰まりになった後半~延長にかけて効果的な策を殆ど打てなかったマンチェスター・ユナイテッドは結局ビジャレアルのブロックを崩す事が出来ずにあっという間に勝敗はPK戦にまでもつれ込みました。
直前にみられたPK要員の選手交代、それならばデヘア→ヘンダーソンで完全に勝ちに行くべきだったかもしれない。
ユナイテッドはPK戦突入直前に立て続けに4枚の交代枠を使いますが、延長に入ると交代出来る人数が1人増えるので枠を1人余らせて勝負に挑みました。
ダビド・デヘアの異常なまでのPKセーブの苦手さはフットボールファンなら大半が知っている要素で、最後にストップしたのは2016年。
ヘンダーソンはその2016年以降PKセーブ3回、相手のミス2回と合計5つ得点阻止に成功しているかなりPKに強いGK(Dean Henderson Stats | FBref.com)なので本当にタイトルが欲しいなら交代は必要な決断でした。
GKを替えるのはデヘアに失礼という声もあるかもしれませんが、彼もチームが勝利するためにそちらの方が得策であると理解するでしょうしあくまでクラブ>選手の関係性は絶対で、サー・アレックス・ファーガソン時代にはこの法則を崩す気配を見せた選手はどれだけスターであってもチームから追い出されていたのでその愛弟子であるオーレにも毅然とした対応で臨んでもらいたかった。
肝心のPK戦に関してはビジャレアル-マンチェスター・ユナイテッドのプレイヤーが皆精度の高いキックを連発し、モイ・ゴメスとルーク・ショーのキックを除けばGKに責任を追及するには厳しい内容が続きました。
そして互いにフィールドプレイヤーが全員成功した結果勝負はGK対決にまで至り、強いキックをゴール右上部へ自信満々に蹴ったジェロニモ・ルジとは対照的に蹴る前から自信の無さが顔に出ていたデヘアはインサイドキックでゴール右下を狙い、コースも甘くルジにセーブされ歓喜の声を挙げたのはイエロー・サブマリン。
El héroe de la #UELFinal@gerorulli marcó ⚽ su penalti y detuvo el último 🧤💥.
— Villarreal CF (@VillarrealCF) May 27, 2021
¡Eres enorme, Gerooooo 👏🏻!#EsNuestroMomento pic.twitter.com/tTSOWCGNpy
www.manchestereveningnews.co.uk
MENによれば、このPK戦の前にユナイテッドGKコーチのRichard HartisとCraig Mawsonからビジャレアルのキッカーの傾向についてメモが手渡されたようですが、デヘアはこのメモを信頼しきる事が出来ず、最も止められる可能性の高かったモイ・ゴメスのキックではメモと異なる判断を選択した結果、指示通り真ん中に蹴り込まれたボールをセーブする事は無くその後の残酷な結末に至っています。
(https://twitter.com/ManUtd/status/1397915745661505546)
動画ハイライト
交代選手
60分 in:コクラン out:バッカ
77分 in:パコ・アルカセル、モイ・ゴメス out:Y.ピノ、M.トリゲロス
88分 in:A.モレノ、M.ガスパール out:ペドラザ、フォイス
123分 in:D.ラバ out:カプエ
100分 in:フレッジ out:グリーンウッド
116分 in:ダニエル・ジェームズ、トゥアンゼベ out:ポグバ、バイリー
123分 in:マタ、テレス out:マクトミネイ、ワン=ビサカ
データ
シュート数は12:14。
互いに精度に欠いて枠内へのショットは両チーム合わせて僅かに3本とエメリにとっては作戦通り、オーレにとっては想定外の試合だったでしょう。
マンチェスター・ユナイテッドは6割を超えるポゼッションを記録したにも関わらずxGはたった1.11に留まり、メンバーを入れ替えて攻撃の活性化に動けなかった指揮官の消極的な姿勢も結果に反映されてしまったかの如くチャンスの乏しい試合でした。
ビジャレアルはコーナーの数を見ても分かるようにセットプレーでワンチャンスを生かして逃げ切るか試合を潰してPKに持ち込む想定だったかもしれません。
ヨーロッパリーグではなくエメリリーグに改名しても良いぐらいにウナイ・エメリはこのカップ戦に強いですね……
あとがき
正直思い出したくもない最低の試合でこの記事を書きながらも何故このような酷い内容になってしまったのかと頭の中を様々な要素がグルグル駆け回っていますが、一方でこの敗戦は今季常に指摘されていたウィークポイントが明らかに足を引っ張ったと思うのでオフシーズンでセットプレーやビルドアップの課題を解決して欲しい。
ダビド・デヘアに関しては今季のようにメディアを煽動して正GKのポジションを失う事へ不信感を表明するならば放出待ったなしだと考えていますが、冷静に考えると彼の給与を払うクラブが現れるとは思えないのでヘンダーソンの2ndに一度収まることを受け入れてクラブに残留するのがベターなのではないかな。
また、ジェイドン・サンチョが噂される右ウイングの補強に関してはこの試合でも分かった通りメイソン・グリーンウッドはウインガーとしては相手に脅威を与えられないので、彼を本格的にストライカーとして育て上げる為にも補強はマスト。
そうなってくると進退が囁かれるのがアントニー・マルシャルで、彼に今から献身性を求めてもカバーニにはなれないでしょうからもしかすると今夏での放出も。
それと、デヘアに真っ先に駆け寄ったトゥアンゼベとジェームズには感動しました。
Tuanzebe and James went straight over to console De Gea after his missed penalty.
— ESPN UK (@ESPNUK) May 26, 2021
Class 👏❤️ pic.twitter.com/NxIpD87io7
この2人は普段スケープゴートにされがちなので、このように辛い状況にある仲間の気持ちが人一倍理解できるのかもしれませんね。
どうか彼らに幸あれ