いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

football managerというシミュレーションゲームであれこれやっていきます。気付いたらユナイテッドの事ばかり書いてます

【 #Euro2024 】イタリアのお株を奪うスイスのモダンな3バックシステム

ウイングバックのポゼッション時の中盤化というのは今大会の隠された裏テーマでありトレンドなのかもしれない。

 

 

 

【Match Review】スイスvsイタリア

 

ベンチ入り

スイス
2 Stergiou, 4 Elvedi,6 Zakaria, 9 Okafor, 11 R.Steffen, 12 Mvogo, 14 Zuber, 15 Zesiger, 16 Sierro, 18 Duah, 21 Kobel, 23 Shaqiri, 24 Jashari, 25 Amdouni, 

イタリア
3 Dimarco, 4 Buongiorno, 6 Gatti, 7 Frattesi, 8 Jorginho, 10 Pellegrini, 11 Raspadori, 12 Vicario, 15 Bellanova, 19 Retegui, 20 Zaccagini, 24 A.Cambiaso, 25 Folorunsho, 26 Meret

 

前半

 

 

3CBにこだわっているように見えたアズーリはここに来ての4バック、スイスはフリーマンとしてトップ下に入れていた大エースのシャキリを起用せずシンプルな3-4-2-1で右WBにはアタッカーのエンドイェが入る。

 

前評判とは異なり、試合の主導権を握ったのはスイス。イタリアの中盤3枚の守備強度不足、特にアンカーでの試合経験の乏しいファジョーリの周囲を狙ってボールを集め、なおかつクリスタンテのトランジションとアンカー脇を埋める意識の低さ、バレッラが試合序盤に脚を痛めて本来のパフォーマンスを発揮出来てなった事も彼らにとってはプラスに作用し、苦労せずアタッキングサードでボールを持てるような状況が多くなった。

 

スイスは左右で相手陣内でのポゼッションに大きな違いがあり、右サイドはファビアン・リーダーがハーフスペースに入って大外ではエンドイェの推進力を活かすというシンプルな造りである一方、左はWBのアエビシェールが内に入ってアタッカーのルベン・バルガスは1on1の質的優位性でディ・ロレンツォを圧倒。WBが内に入った分薄くなる後方サポートには左CBのリカルド・ロドリゲスが入り、この3者の役割は流動性を持たせているのでイタリアは中々マークを整備する事が出来ず。

 

アエビシェールのWB起用はキミッヒをフルバックで起用してプレッシャーの薄い所にプレイメイカーを置くドイツ,或いはFCバイエルンと同じ狙いがあり、実際に24分には彼のロブパスからエンボロが裏抜けしてGKと1on1になるビッグチャンスが生まれており、イタリアはMFとDFのラインの間にアンカーが入る4-1-4-1なので1の周囲にどうしても空間が生まれてしまい、スイスの大外に張る選手やアンカー脇を突く選手への対応が後手後手に。

Embed from Getty Images  

 

37分、スイスは相手陣内でのポゼッションから、ゲームを通してマンチーニに対して優位性があるエンボロがアカンジからのラインブレイクの縦パスを収め、ここに内側に寄ってサポートに加わるエンドイェがボールを中継して左外のバルガスへパスが渡る。バルガスはタメを作りながら味方の攻撃参加を待ち、フロイラーがタイミングよく相手のアンカー脇に走り込んた所にグラウンダーのクロスを送ると、最後はスイス中盤のハードワーカーが見事なボレーを叩きこんだ。

 

戦術的な噛み合わせで負けているイタリアだが、更に厳しいのはダルミアンvsエンドイェ、ディ・ロレンツォvsバルガスと両サイドのデュエルで劣勢に回っている点。ダルミアンをLBで起用した意図は正直分からないが、エル・シャーラウィ含めて人選を一新した左の縦ユニットは全くと言っていいほど機能していない。

 

また、イエローカード累積で出場停止だったカラフィオーリはともかく、不慣れなファジョーリアンカーに踏み切ってまでジョルジーニョを控えに置いた理由は一体何だったのか、この試合のルチアーノ・スパレッティにはアズーリに精通しているわけではない私ですら疑問に思う判断が多く、初戦のワクワク感は一体へ何処へいってしまったのかと困惑した。

 

 

後半

 

イタリアのキックオフプレーで前線へのロングフィードを狙っていたであろうファジョーリのキックが短くなっていきなりスイスが高い位置でのポゼッションを得る。ゲームの立ち上がりだったからかイタリアのネガティブトランジションはかなり遅く、ボックス内左45度ほぼノンプレッシャーで横パスを受けたバルガスはゴールマウス右上を狙いすましたコントロールショットでドンナルンマの牙城を破った。

 

自分たちのエラーでリードを広げられてしまったイタリア。後半からはエル・シャーラウィを下げてLWにクロアチア戦のヒーロー,ザッカーニを投入し中盤構成をアンカー+CM2枚からダブルピボット+OMの形に変更しアンカー脇を使われ続けた問題に対して対策を講じた。

 

ただ、ファジョーリ,クリスタンテはそもそも純粋にセントラルMFとしての守備力に長けている訳ではなく、前者はストレングス、後者はトランジションと明確なウィークポイントがあるので劇的に何かが改善された訳ではない。

 そんなアズーリが最もゴールに近づいたのはファジョーリのロブパスをファビアン・シェアが頭で弾き返そうとしたボールが運悪くゴールポストに向かっていった52分のプレーなのだから、いかに彼らの攻撃が機能していなかったが反映されている。

 

そもそも論としてスイスはフロイラー,アエビシェール,エンドイェのボローニャ組をベースに、代表の中心選手であるジャカもレヴァークーゼンで3バックでのポゼッションに慣れているためユニット間のコンビネーションで上回っており、見方を変えればイタリアがイタリアに負けたとも言えるだろう。

 

 2点を追うイタリアは序盤の脚の怪我の影響か本調子ではなかったバレッラに変えてレテギを投入した後は4-2-4で前線の枚数を増やしてゴールを狙ったが、5-4ブロックに切り替えてスペースを潰すスイスの堅牢なブロックを最後まで突破できず、そのまま2-0で敗れラウンド16での敗退となった。

 

 

【Match Review】ドイツvsデンマーク

ベンチ入り

ドイツ
5 Groß, 9 Füllkrug, 11 Führich, 12 O.Baumann, 13 T.Müller, 14 M.Beier, 16 W.Anton, 17 Wirtz, 18 Mittelstädt, 20 Henrichs, 22 Ter Stegen, 24 Koch, 25 E.Can, 26 Undav

デンマーク
4 Kjær, 7 M.Jensen, 12 Dolberg, 13 Zanka, 14 Damsgaard, 15 Nørgaard, 16 Hermansen, 17 V.Kristiansen, 19 Wind, 20 Y,Poulsen, 22 Rønnow, 24 Dreyer, 25 R.Kristensen, 26 J.B.Larsen

 

 

前半

 

 

ドイツは4-2-3-1、出場停止のヨナタン・ターに代わる左CBとしてW杯の日本戦ですっかり評価を落としてしまったシュロッターベックに汚名返上のチャンスが巡ってくる。他にはLBにミッテルシュタットではなくよりキック精度にパラメータを振ったラウム、RWには左利きのサネを起用し所々に変化を加えてきた。

 

一方のデンマークも中盤で見事なパフォーマンスを見せていたモルテン・ヒュルマンドが出場停止なので代わりに以前のレギュラーであったディレイニーを起用。また、左サイドに降りてバック3を形成するクロース対策の面もあるのか、ここまで先発していたよナス・ウィンドではなくウインガータイプのスコヴ・オルセンを3人目のアタッカーに起用し、5-2-3↔5-3-2の併用で開催国を迎え撃つ。

 

4分、ABEMAゲスト解説の長谷部誠氏からも良い時と悪い時の差が大きいと評されたシュロッターベックがCKから豪快にヘディングシュートを決めるもGKへのファウルを取られて得点は幻に。この日の彼はハヴァーツへのミドルレンジのボールやセットプレーでのターゲットとしての仕事など非常に効いているプレーが多く、まさしく良い時の姿だった。

 

ドイツは初戦から一貫して相手DFラインの背後を使う意識が高く、リュディガーの対角線パスにハヴァーツが反応した9分の得点チャンスのように後方でボールをもっている状態から一気に相手のゴール前まで迫る事が出来る為、極端なブロック守備を敷かない限りは非常に練度の高いプレッシングを続けなければ彼らの攻撃を防ぐ事は出来ない。

Embed from Getty Images  

 

しかし、デンマークもDFラインだけがズルズルと下がってMF-DFライン間を広げてしまってギュンドアンやムシアラにスペースを与えてしまうという事は全くもってなく、ある程度の高さで最終ラインを維持し続ける。ドンピシャのタイミングで出た裏へのボールでは一度抜け出されてしまうものの、その後のリカバリーが早いのとGKシュマイケルが最後の所で踏ん張ってくれるので押され気味ではあったものの0-0でドイツにじわりじわりとプレッシャーを与えていく。

 

35分を過ぎた所で主審マイケル・オリバーは突如ゲームを止める。何があったかと一瞬戸惑ったが、会場であるジグナル・イドゥナ・パルク(ドルトムントの本拠地)上空に雷が光っていた事で事態を察し、さらに雹までふってくるとんでもない悪天候に見舞われ一旦試合は中断となった。

Embed from Getty Images  

 

20分ほど様子を見た後、雷が鳴りやんだ事を確認してウォーミングアップを挟んで試合再開というレアイベントを見届けた後、残り10分ではスコア動かずゴールレスで前半を折り返す。こんな酷なコンディションですらお祭りにしてしまうフットボールファンはとても楽しむ事が上手である。

 

 

後半

 

 

ドイツは後半キックオフから中盤及びバックラインの動かし方に少し変化を加え、クロースが左に降りるのではなく彼を中央に残してアンドリッヒがCB2枚の間に落ちるバック3へ切り替えた。理由としてはクロースに対するマークを混乱させるという攻撃面と被カウンター時の守備強度を懸念した守備の面の両方が考えられる。

 

48分、デンマークは敵陣で獲得したFKから始まるセットプレーのチャンスでゴール前の混乱状態を作り出すと、アンデルセンがこぼれ球を左足で押し込んだ。

Embed from Getty Images  

 

しかし、彼が反応したこぼれ球のキッカケになったディレイニーのシュートの際、ほんの僅かに左足が飛び出ていたとして得点は取り消されてしまう。

 

更に彼の悲運は続く。ドイツはリスタートから手数をかけずシュロッターベックのロングフィードでムシアラを走らせてカウンターチャンスを作ると、デンマークも一度はボールをゴール前からクリアするがラウムリカバリーされ、スタメン出場の機会を得たLBのクロスはバランスを取るために無意識的に出ていたアンデルセンの右手に当たってPKのジャッジが下される。

 

PKテイカーのハヴァーツはコースを読まれながらも好調シュマイケルの手が僅かに及ばぬコースにボールを流し込んでドイツが先制点を奪った。

 

59分にはアンデルセンとヴェスターゴーアがダブルコミットしてパスを受けるハヴァーツへの守備対応が中途半端になったところからドイツに追加点のチャンスが生まれるが、前に出てきたGKの上を狙ったループショットは僅かに枠を逸れてデンマークは命拾い。

Embed from Getty Images  

 

攻撃面ではホイルンドのボールキープ力や反転の巧さなどを活かす形でエースストライカーにボールを集めるが、ドイツの非ボール保持での5-3-2化によってWBが攻撃参加した際のギャップを生み出せなくなる。

 

68分、シュロッターベックのロングフィードに対し、一度マイナス方向への動きを入れてアンデルセンを釣り出したムシアラが完全に抜け出して状態でこれを収めると、斜めに侵入していってGKシュマイケルとの1on1を冷静に決めきってドイツ追加点。

 

5バックでリスクをかけずに相手の陣形が乱れたところにロブパスを入れていくドイツに対し攻略の糸口を掴めないデンマーク。高身長の選手が集まっていて得点の脅威になるCKでもギュンドアンに変えて投入されたフュルクルクが守備面でも競り合いの強さを発揮してニアポスト前でボールを弾き返すなど相手の交代策・修正力に上回られてしまい、80分過ぎには前回のEUROでチームのエースだったドルベアなど一挙3選手を投入するがノイアーの牙城を崩す事は叶わずラウンド16で大会を去る事に。ドイツはカウンターから途中出場のヴィルツがゴールネットを揺らしたがオフサイド取り消されている。

Embed from Getty Images  

 

終盤のデンマークに1つだけ注文をつけるとすれば、しっかりと自分たちの戦い方を貫いた上で、それ以上にドイツ代表の質が高かったという試合なのでやれる事はそれほど多くなかったと思うが、アディショナルタイムに入ってからようやくヴェスターゴーアを前線に上げてロングボールを多用するようになった点について、高さでは確実にこちらが上だったのでもっと早くこの決断に踏み切るべきだった。