エバートンvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
怒りを通り越して呆れるほど弱く、技術的要素以前に試合に対しての情熱もまるで伝わってこないマン・ユナイテッド。もしかするとプレミアリーグで最も対処しやすいクラブなのではないか? 今のチームには思わずそんな感想を抱いてしまいます。
腐ったリンゴが1つ2つに留まっているようにはとても思えません。
プレビュー
エバートン
アンドロス・タウンゼント
トム・デイビス
ネイサン・パターソン
ドニー・ファン・デ・ベーク
マンチェスター・ユナイテッド
ラファエル・ヴァラン
ルーク・ショー
スコット・マクトミネイ
エディンソン・カバーニ
スタメン
RBにはワン=ビサカが前月6日のマンチェスター・ダービー以来のスタメン出場。
正確な意図は分かりませんが、恐らくリシャルリソンの個人能力を警戒した配置だと考えられます。
また、ラッシュフォードも最初からピッチに立つのはトッテナム戦以来で、ネガティブトランジションで手を抜く部分やテイクオンでDFに突っ込んで奪われる悪癖をどこまで抑える事が出来るか、そして決定的な貢献を見せてくれるかどうかに期待がかかる。
試合内容
前半
CBの並びはいつも通り右リンデロフ,左マグワイアで、ウイングに関しては左にラッシュフォード、右にサンチョという並びで始まったレッズ100回目のグディソンパーク。
さほどプレッシャーのかかっていないパス回しでミスが多発するのもいつもの事で、攻撃のエンジンがかかりきらない展開が多いユナイテッドですが、6分には左サイドテレスとラッシュフォードのワンツーから初めて相手ゴールライン際まで侵入。
序盤は主に左から大外ラッシュ,ハーフスペースにテレスという位置関係で後者のアンダーラップが効果的に作用しており、8分にはアタッキングサードでテレスがマイケル・キーンのファウルを誘いFKを獲得。
FKテイカーのブルーノはバックスピンでファーサイドを狙うと、リンデロフが頭で折り返して最後はラッシュフォードが中央やや左寄りから右足のパワーショットでゴールマウスを捉えますが、ピックフォードの見事なセービングに阻まれます。
11分のユナイテッドはビルドアップでリンデロフの縦パスがカットされボールを失いかけるものの、リシャルリソンのファーストタッチが大きくなってピンチには至らず。ただ、このシーンはマティッチがリンデロフのパスコースを確保するようにもっと素早く真ん中に降りてくれば存在しない場面で、こういった細かい味方への心遣いの欠如が失点を生む事になりがち。
12分、アウェイチームは前線からのプレスで左サイドライン際に相手を追い込みボールを奪うと、パスを繋いでブルーノのインスイングのクロスにラッシュフォードがヘディングシュート。枠を捉えましたがこれもピックフォードの範囲内。
15分、マイケル・キーン→アランへの縦パスをフレッジがカットしユナイテッドのカウンター。ブルーノとロナウドが2人でパスを回しながらボックス内まで進み、ロナウドが左足でゴールを狙いますがピンチを作ったキーンが足を出してシュートブロック。
21分、またしてもキーンのパスミスを誘い前線でボールを奪ったユナイテッドは素早く左サイド前方にボールを展開しますが、ブルーノのクロスはそのままボックスを横切って誰にも繋がらずラインを割ります。
23分、エバートンはスローインからワンタッチで左サイドを突破。リシャルリソンのパスを受けたイウォビがボックス手前までキャリーし、バトンを渡されたキャルバート=ルーウィンがクロスを入れるもキックが弱くニアサイドでマグワイアがカット。
27分、フレッジから斜めのボールを受けたマティッチですが、直前のプレーで足を痛めたのかそちらに気取られ後方からエバートンの選手がプレッシャーをかけている事に全く気付かず最悪の形でロストすると、センターからLWのリシャルリソンへスルーパスが通り、ワン=ビサカの対応も杜撰であっさり中央へのパスを許すと最後はアンソニー・ゴードンのシュートがディフレクションしてそのままゴールネットを揺らしました。
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— Everton (@Everton) April 9, 2022
この失点も長年の問題がそのまま出ている場面で、エバートンの人員はボールに向かうゴードン+ボックス内で使える駒は3枚(ミコレンコはオフサイド位置)ですが、ユナイテッドはバック4+DM2枚が全て横一線の6DFのようになっており、シュートシーンは下がり過ぎたDMの分をトップ下のブルーノがカバーする必要に迫られてマークが崩れています。更にバック4は殆ど相手選手を捉えられておらずただその場にいるだけなので、ヴァラン不在で結果が悪くなるという今季のジンクスは選手間の声かけ,コーチング面にその要因があるのかもしれない。
30分にはマティッチが自陣左サイドでファウルを取られ、ゴードンのFKにマイケル・キーンがニアで合わせるも枠上。こちらもお馴染みのやられ方で、この時キーンについていたのはラッシュフォードですが、キックの直前に手で払われて距離を取られるとそのまま追う素振りも見せず彼をフリーにしており、こういった淡白さは当事者意識の欠如がもたらすものなのだろうか。
直後31分には左サイドの連携,アンダーラップからのワンツーで抜け出したテレスがクロスを入れるもゴッドフリー気迫のスライディングクリアに防がれフィニッシュまで到達できません。
36分、エバートンはピックフォードのロングフィードがリシャルリソンに通り一気にアタッキングサードまでボールを進めると、リシャルリソンのミドルシュートがリンデロフの足を掠め強烈なドライブ回転でゴールを捉えますが、デヘアが右手で上に弾いて何とかセーブ。
そして、ボールが外に出て一旦プレーが切れたタイミングでフレッジに変わってポグバがピッチに投入されます。試合後のラルフのコメントによれば交代理由は彼が股関節の筋肉にトラブルを抱えたためという事で、アクシデントによるものでした。
前半は試合間隔の不利を感じさせない気迫のこもったプレーをみせるホームチーム1点リードで折り返し。ユナイテッドはキーンを奪いどころに設定して前線でボールを奪う場面も何度か見られましたが、最終局面の精度が著しく悪くビッグチャンスを1度も作る事が出来ませんでした。
後半
50分、左サイドでパスを受けたブルーノから最終ラインの裏を狙うラッシュフォードへロングパスが通りボックス内でシュートチャンスを迎えますが空振り。
56分、自陣右サイド深い位置のスローインからリシャルリソンに突破されクロスが入るもリンデロフがクリア、その後ボールを回収したエバートンは再び同サイドにボールを集め、リシャルリソンにアシカドリブルを許すプレスの緩さ。
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— Everton (@Everton) April 10, 2022
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ワン=ビサカのプレーが年々自分の1on1守備を過信してその他がおざなりになっているように見えるのは気のせいなのだろうか。この場面もさっさと寄せていれば最初のトラップが浮いた段階でカットできたはず
得点が生まれる気配を感じないレッズ。64分には残りカードを使いきりマティッチ🔁マタ、ラッシュフォード🔁エランガの2枚替え。
結論からいえば、マティッチが下がった事による守備不安とマタ投入によるパスワークの円滑化では後者に分が上がりましたが、折角マタが味方のオフザボールを促すようなパスを入れても周りの選手はその意図を把握出来ず足元で要求するばかりで、更にバランスを取る為にブルーノが低い位置に留まるようになってしまったので交代が機能したかと言われれば否。
10番が下がりサンチョが左へ移動し、連携で崩す彼がボールプレーに強い選手の多いサイドへ移動した事で輝きを取り戻したようにも見え、82,83分には連続してボックス内を突破しゴール前にパスを送りますが、肝心のシュートはどちらもGKに処理させる事すら叶わず。
AT3分には見せ場無しのCR7にようやくゴール前のチャンスが訪れますが、水かしい体勢からのボレーシュートはピックフォードが右腕で防ぎ結局マンチェスター・ユナイテッドはゴールレスで敗戦。
ハイライト
選手交代
71分 キャルバート=ルーウィン🔁D.グレイ
84分 デルフ🔁ドゥクレ
36分 フレッジ🔁ポグバ
64分 マティッチ🔁マタ
64分 ラッシュフォード🔁エランガ
データ
一見、マン・ユナイテッドが面目を保ったようにも見えるスタッツですが、攻撃は左サイドに大きく偏り、精度も不足しているので相手からすれば持たせていても脅威にはならなかったというのが実情。
ただ、ピッチ上の選手から言わせればそうなったのは右サイドの人員に信用を置けなかったからとも言われるかもしれない。RBワン=ビサカのパス成功率は26/44で6割を下回り、RWに起用されたサンチョも気づけば中央にポジション取りをする場面ばかりが目立ってしまった。
最近よく使われるようになった言葉でいえば、左サイドでオーバーロード(密集)をつくり、アイソレーション(孤立)した右サイドでドリブルが得意なワン=ビサカに1on1で突破してもらうという形にしたかったのかもしれませんが、彼の場合マークを交わすところまで上手くいってもその後ゴール方向に近づけるプレーの選択肢が無いので効果的とは言えない。このやり方ならばダロトの方が適応能力が高く、実際にラルフ体制で彼が優先されていた理由が目に見える形で現れました。
xG
ラルフも言及していますがそもそもここ数試合はまともにチャンスを作れていません。
一方で守備面は見た目ほど崩壊している訳ではありませんが、得点力でリーグブービーのバーンリーに3失点(xGA:2.32)の相手からゴール期待値1点未満というのは所属選手の力、年俸などから見ても恥としか言いようがない。
あとがき
ここのところラルフのやりたいフットボールとはかけ離れた内容の試合が続いていますが、原因は選手の能力不足なのか或いは外部からの圧力なのか。いずれにせよ、アドバイザーとしてフロント側になった後は内部からみた問題点を改善し、後任監督がやり易いような環境作りをしてもらわなければなりません。
仮に、献身性を要求されるのはまっぴらごめんだ、そうは言わずとも試合中のプレーにそれが現れている選手がいるのならば誰であっても放出する覚悟が必要になる。
今節ではトフィーズのアレックス・イウォビがそれこそ気持ちを全面に出して攻守に走り回っていましたが、本来マンチェスター・ユナイテッドの選手は皆あのように勝利に対し貪欲にプレーしなければならない。ライバルクラブにそれを改めて思い知らされたのは屈辱的。
追い打ちをかけるように、試合終了後ロッカールームへ引き上げる際、ロナウドがエバトニアンの少年の手を弾きスマートフォンを故障させたという事件も発生しており、すでに警察もこの件に関して調査を始めているとのこと。