※22/23 イングリッシュプレミアリーグ
エバートンvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
マンチェスター・ダービーで6-3の敗北を喫した翌節のカード、エバートンとの地域ダービーをキッチリ制したユナイテッドはシーズン5勝目を記録。マルシャルの負傷はチームに暗い影を落とすが、ロナウドのゴールやヴァラン復帰などポジティブな材料も。
BIG. THREE. POINTS! 👊#MUFC || #EVEMUN
— Manchester United (@ManUtd) October 9, 2022
【Match Review】
Starting lineup
前半
直前ウォームアップでマルシャルが背中を痛めたという情報が出回りましたが、キックオフ段階では無事にスタメン入り。しかし、後述するようにこの報道は事実であった可能性が高く前半途中で負傷交代。またしてもユナイテッドはNo.9を失う事に……
試合の方は雨の影響もあってピッチコンディションの変化に戸惑ったのか、特にユナイテッドの選手のグラウンダーのパスにズレが目立ちます。普段よりも強烈なブレーキが掛かるので普段よりも強めに蹴るか、割り切ってロングボールを増やすかという選択肢がありますが、両チームの戦い方も正にこのように分かれていく。
5分、相手GKのフィードをアントニーが頭で跳ね返すしこれをカゼミロが収める。そしてこの2人でパス交換を行いつつ左サイドへの展開を試みようとしますが、マーカーを背負ってボールを受けたカゼミロがアマドゥ・オナナに弾き飛ばされロスト。こぼれた球を拾って前進するデマレイ・グレイは跨ぎからのスムーズなアウトサイドパスで自身に注意を引きつけつつイウォビに後を託し、ナイジェリア代表MFのお手本のようなコントロールショットがゴール右中段に蹴り込まれて先制エバートン。
敵ながら見事なキックでした。まるで『FIFA』シリーズから出てきたかのような一撃
自滅を除き基本的にはアウェイチームが支配していた前半序盤。当初は3(リンデロフ-マルティネス-ショー)-1(カゼミロ)のビルドアップを採用していたものの、失点場面のように1に入った所で複数人で囲まれると脆い部分も見せており、早い段階でエリクセンが下がってダロトがInvertedする形に修正し、以降は中盤の主導権争いを有利に進める事が出来た。
15分、中央でリンデロフからの縦パスを受けたダロトだが、カゼミロへのキックが中途半端になってイウォビにカットされる。その後エバートンは中盤3枚でパス交換を行うが、今度はゲイェがトラップに失敗しユナイテッドのチャンスになると、マルシャルから抜群のスルーパスを貰ったアントニーが得意の形で左足シュートをファーに決めて同点に追いつく!!
リピート確定
— マンチェスター・ユナイテッド (@ManUtd_JP) October 10, 2022
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それにしてもこれで3試合連続ゴールのアントニー、ここまでを見る限りプレミアではトップスピードの速さは一線級には劣るかもしれないが足の回転が速く1歩ごとの歩幅が短いため加速力は非常に優秀だと感じています。タッチライン際のボールに回り込んでからの1on1などにもこの長所がよく現れている。
この試合、前後半を通じパスの失敗が目立ったダロトについては、勿論彼自身の判断が甘かった部分が大きいですが、構造上の問題で右サイドのサポートが薄かったという事を考慮する必要があると思います。勿論、左サイドで攻撃している時はそれでいいのですが、左右に揺さぶる際にボールだけがスライドし選手の動きが間に合っていないケースが見られ、この試合の場合はブルーノにもう少し右側への意識を持ってもらいたかったというのが個人的感想。
ポジティブな上積みはデヘアの対スルーパスへの飛び出し意識向上が見られた点で、まだ物足りない所もあるものの、ディストリビューションに関しても味方のパスを引き出したり安易にロングキックを選ばず正確に繋いでいくプレーが目立った事は喜ばしい傾向でしょう。
25分過ぎ、ロナウドがジャンパーを脱いでユニフォームに着替えようとする姿が映り何事かと思っている内にマルシャルと交代でピッチに。早期の交代カード消費+キーマンのトラブル発生という最悪な状況になってしまった。
代わって入ったCR7。37分にはカウンターチャンスを自身のオフサイドポジションで台無しする手痛いプレーが出るなど当初は試合に入れていないように見えましたが、巡ってきたチャンスを逃さないのがスターの証拠だったようです。
44分、カゼミロのアウトサイドパスが無人の中央に転がりイウォビに拾われ嫌な形となったものの、欲を出したのかイウォビがパスでは無くドリブル突破を試み、汚名返上の1on1勝利でボールを奪い返したブラジル代表MFはすかさず長年のチームメイトへの縦パス。シュートを撃てという明確なメッセージ性のあるボールを受けたロナウドはスムーズなファーストタッチからスピードを維持したままキックモーションに入り、左足から放たれたシュートはGK:ピックフォードの脇下を通ってそのままネット直行。らしさ全開の今シーズンPL初得点でチームは勝ち越しに成功!!
また、このゴールは自身のクラブ通算700得点目というメモリアルでもあった。
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— SPOTV NOW JAPAN (@SPOTVNOW_JP) October 10, 2022
👑CR7👑
\#C・ロナウド が今季プレミア初得点❗️クラブキャリア通算700ゴールを達成🙌
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この勝ち越しの前にはラッシュフォードのアーリークロスからカゼミロのヘディングシュートの決定機もあり、上述のエラーや得点機会をモノに出来なかった悔しさがこの抜群のデリバリーを引き出したのかもしれない。なにはともあれユナイテッドは前半をリードして折り返す。
後半
後半序盤、顕著だったのはルーク・ショーのスプリントで、特に攻→守,ネガティブトランジションで距離のある状況から相手に追いつき的確なタックルでボールを奪う、正にサポーターが期待していた彼が戻ってきた。ここ数年と比べると一見して分かるくらい今の身体は細く、もしかすると身体的強さ,もっと言えば怪我への耐性は犠牲になっているかもしれないがスピード勝負で遅れをとる事は無くなったのでは。
試合の方は前半に比べると主導権を受け渡すような恰好で、時間にして55分過ぎからは防戦が続く。開始から降り続いた雨によってショートパス主体のアウェイチームの良さが消され屈強な選手の多いホームチームの思惑通りといったところだろう。それでもカウンターからの一発は健在で、66分にはラッシュフォードが右サイドからボールスピードの速い低弾道クロスでロナウドを狙うが、ニアでコールマンが身体を投げ出しスライディングクリアに成功、得点に繋がらず。
大きく展開が動くきっかけになったのはエバートンの選手交代。マクニール,ガーナー,キャルバート=ルーウィンとパスの出し手と空中戦強者を次々に投入し、最後のカードもモペイ→ロンドンと上背に劣る赤い悪魔の弱点を狙いに来た。
80分のユナイテッドはデヘアのゴールキックに競り勝ったラッシュフォードがそのまま単独カウンター。①ターコウスキのタックルをジャンプして交わし、②続けてボックス内でピックフォードも突破すると最後は無人のゴールマウスにボールを流し込むが、①の際にハンドがあったとしてVARの結果得点が認められず。今節、非常に似通ったシチュエーションでミカイル・アントニオのゴールが認められている事を踏まえると全くもって納得ならないジャッジであり、ハンドから得点シーンが直結したとは言い難い(②で一度ピックフォードがボールにアプローチし触っている)事からもこれは認められるべきだった。優れたシステムがあっても運用する側が追いついていない。
●取り消されたラッシュフォードのゴール
●アントニオの得点シーン
ダメ押し点が幻となり、最少リードで終盤を迎えたユナイテッド。アディショナルタイムには古巣対決で新天地デビューとなったガーナーのミドルシュートがゴールネットを揺らす直前まで行くピンチもあったが、ここは守護神がプライドを見せるスーパーセーブで失点阻止!!
クラッチセーブ 💯@D_DeGea 👏#MUFC || #EVEMUN https://t.co/6gUEahFX1A pic.twitter.com/mHtzxsNFWY
— マンチェスター・ユナイテッド (@ManUtd_JP) October 10, 2022
ラスト数分、GKまで参加する全力のコーナーキックの連続を何とか凌ぎ切って試合はアウェイのマンチェスター・ユナイテッドが勝利。
データ
Standard
最終的なポゼッションは4:6、シュート数は11:12となったが、これまでのゲームで内容が悪かった前半だけを抜き取ると前者は3:7、後者に至っては1:8と見違えるような良い結果を残している。
後は失点の場面のような自爆エラーをどれだけ減らす事が出来るか、そして選手間の距離や全体の配置をどれだけ向上させられるかが安定した勝ち点3獲得に求められる。
マイナス面はマクトミネイのサスペンデッド。早くも5枚目のイエローを貰い、次節ニューカスル戦(H)では起用不可になってしまった。
後出しになるが、これを踏まえるとカゼミロのスタメン入りを試し始めたタイミングは抜群だったと思う。完全にテン・ハフとコーチ陣の功績。
終盤、キャルバート・ルーウィン,サロモン・ロンドンとハイタワーのFWを続々投入したエバートンのパワープレーに苦しめられましたが、粘り強くクロスをはじき返し続けたのでゴール期待値は0.37と低い数字で抑える事に成功しています。
アントニー、CR7の得点はいずれもビッグチャンスから生まれた確実性のあるものであり、エバートンの守備陣形が間延びしがちでカウンターがハマったという事を差し引いても良い形だった。
欲を言えばカゼミロのダイビングヘッド、微妙な判定でハンドボールの反則を取られたラッシュフォードの幻の得点で1-4の圧勝にしたかったところではありますが、マンチェスター・ダービーの敗戦から直ぐにチームを立て直しつつ、ロナウドにもようやく得点が生まれたという内容はメンタリティの面で良い方向に転ぶのではないでしょうか。
あとがき
オナナの空中戦、打点の高さにはかつてこの両クラブに在籍したマルアン・フェライニを彷彿とさせるものがありますね。まだ粗削りですが、カゼミロを吹っ飛ばすほどの身体的強さを兼ね備えているので今後が怖い/楽しみでもある選手になりました。
チームに話を移すと、ミッドウィークのEL以降、中2日前後が連続する4試合という非常にタフな日程が続くので固定スカッドで戦うには限界があります。出場機会が少ない選手や台頭を伺う若手の逆襲に期待したい。