※21/22イングランド・プレミアリーグ
マンチェスター・ユナイテッドvsウエストハム・ユナイテッド戦の記事です。
ミッドウィークのビーズ戦では、ラルフが監督になってからワーストの試合前半から後半の立て直しに成功し、初めて試合をするブレントフォード・コミュティ・スタジアムで勝利を記録しプレミアリーグのアウェイ通算300勝を達成したレッズ。
キックオフ前の順位表でTOP4につけていた順位争いのライバル アイアンズをホームに迎え入れて開催したMatchday23では、9月の対戦同様に試合終了直前に大きなドラマが生まれ、マーカス・ラッシュフォードの決勝ゴールで対ハマーズダブルを達成したユナイテッドは試合終了直後の順位表で4位につけています。
プレビュー
マンチェスター・ユナイテッド
ポール・ポグバ
ルーク・ショー
アーロン・ワン=ビサカ
エリック・バイリー
ジェイドン・サンチョ
ヴィクトル・リンデロフ
ウエストハム
アンジェロ・オグボンナ
サイード・ベンラーマ
スタメン
マンチェスター・ユナイテッドのスターティングラインナップは前節と同じ11人。
恐らく、中盤構成はマクトミネイが真ん中に入りブルーノ、フレッジの2IHと考えられますが、ブレントフォード戦のようなぬるい試合の入り方をするとジャロード・ボーウェンやミカイル・アントニオの強烈な個にやられる事になるので、最初の10分に特に気を付けてもらいたい。
一方、ウエストハムはクル・ズマやトマーシュ・ソーチェクといった怪我人がスタメンに復帰し、多くのメンバーを欠くホームチームとは対照的にフルスカッドに近い陣容。
GKには正GKウカシュ・ファビアンスキではなくアルフォンス・アレオラが入りますが、彼も昨季フラムでレッズと対峙した際にはビッグセーブを連発し非常に苦しめられた相手。
試合内容
前半
主審を務めるのがジョナサン・モスという事もあり、ある程度ファウルは流される可能性が高いという事を両クラブ把握済みだからか序盤から非常に激しい球際の攻防が続き、試合間隔から来る疲労回復の面で大きく不利のあるレッズでしたが、それを感じさせないプレーで全体のラインを押し上げて積極的なプレッシングを選択。
また、陣形に関しては予想された4-1-2-3ではなく、これまで通りMcFredがそれぞれ左と右に2DMとして入りブルーノ・フェルナンデスは中央に位置取りする攻撃時4-2-3-1,守備時4-4-2の形に見えました。
3分、ブルーノが自陣低い位置でデクラン・ライスに奪われるとそのまま彼ライスにボックス内侵入を許しますが、折り返しのボールはラファエル・ヴァランがブロック。
4分のユナイテッドはウエストハムバックライン間のパスが短くなったところをブルーノがカットし、そのまま大きく空いた中央をドリブルで駆け上がります。その後、引き付けて右サイドを走るグリーンウッドにパスを出しますが、相手のチェックが早くシュートコースをブロックされこの好機を得点に結びつけられません。
7分、自陣右サイドにボールを受けに行ったブルーノがサイドチェンジを試みますが、少しボールが短くボーウェンにカットされ、パスに反応したアレックス・テレスと入れ替わるような形で空いた左サイドで単騎カウンター。
ボックス内まで侵入されますが最後はマグワイアがタイミングよくボーウェンの前に入ってボールを弾き危機を防ぎました。
13~14分のホームチームはデヘアのゴールキックをエランガが左サイドライン際で収め、その後左右に揺さぶりながら短いパスを繋ぎ最後はロナウドが意表をつくターンから左足でシュートを放ちますが、ボックス外から狙ったミドルはクレイグ・ドーソンがスライディングでブロック。
更に、ブロックしたクリアボールがアントニオへのパスになり、トラップでマクトミネイ、2タッチ目でヴァランを交わしたハマーズのエースは右に流れながらドリブルを続けますが、7分の危機同様マグワイアがリトリートしながらゆっくりと距離を詰めて最後はボールをタッチラインに逃しボックス内への侵入を防ぎます。
20分、少し前から立ち位置を左DMから右IHに変えていたフレッジの対角線を狙ったパスをエランガがヘディングで後ろに繋ぎ、左サイドでパスを繋いだ後ブルーノのインスイングの速いクロスにロナウドがピンポイントで合わせに行きますがタイミングがほんの僅かにズレてボールに触れる事は出来ませんでした。
22分のユナイテッドは中央から左にボールを移し、エランガのクロスに大外で待ち構えるダロトが頭で合わせますがシュートは枠外。彼はクロスの出し手としても受け手としても常に一番外のスペースを使う意識が高いので、継続的に試合に出てもう少し連携面が積み重なっていけば主要な得点源の1つになるかもしれないと期待させられます。
また、26分にはそのダロトが自陣右サイドでパブロ・フォルナルスとの1on1に勝利しボールを奪い守備でもアピール。
更に、39分にはチーム全体で前線から厳しいプレスをかけ続け、余裕の無くなったズマのパスがずれた所をダロトがインターセプトからグリーンウッドとのワンツーで一気に加速。リターンを受けてファーストタッチはロナウドチョップでフォルナルスを交わし、その後ランシーニとズマもマークに参加し1vs3の状況になりますがこれもダブルタッチで突破。その後はズマのカバーでCBに入ったライスにボールを回収されますが、1人で複数人のプレスを外せる選手だと警戒されれば、その分他の味方へのマークが緩むので今後他の試合に向けても大きなプレーになったかもしれない。
45分、マクトミネイのブルーノを狙ったであろうパスが短くなって自陣でボールを失うと、ボックス内まで繋がれて前半最大のピンチが訪れますがアントニオのヒールパスはダロトがクリアし、セカンドボールを拾われた後のランシーニのチャンスではマクトミネイ自身がボールを奪い返してこの場面を凌ぎ、前半は0-0で折り返します。
ウエストハムはデクラン・ライスがCBと中盤のリンク役、代わりに両フルバックが前線近くまで顔を出す2-1-2-5のような変則的な形でロングボールのターゲットを増やしていましたが、その割にはサイドからクロスを上げさせるシーンは多くなかったのでユナイテッドの守備面は成功と言えるでしょう。ただ、アタッキングサードでの組織的な崩しは殆ど見られず、かといってアイアンズのブロックを単独突破できる訳でもないのでこちらが得点する事もあまり期待できないという45分でした。
後半
48分、マクトミネイがポール・スコールズを思わせる低い弾道で到達の速いロングパスを左サイドに張っていたエランガに通し後半最初のチャンス。エランガのカットインからのシュートはツォウファルにブロックされたものの、形としてはまずまず。
49分にはブルーノから楔のボールを受けたフレッジがスルーして後ろのロナウドに通そうと試み、この狙いはライスが足を出して防ぎますが、ボールが偶然にもフレッジに当たり変則ワンツーとなってそのままボックス内へ。
前が空いた状態でフレッジはシュートを選択しますが、インステップで強く振り抜いたボールはアレオラの正面に飛びあえなく防がれます。
52分のウエストハムはGKのクリアのセカンドボールを回収。右サイドボーウェン→ツォウファル→ソーチェクと繋ぎ、逆サイドを狙ったソーチェクのクロスを受けたフォルナルスがシュートを狙うもののユナイテッドの中央ブロックは固くマグワイアがサイドにクリア。
54分、ウエストハムは左CKからライスがニアで後ろにボールを流し、大外でこのボールをフリーで受けたボーウェンのシュートはサイドネット直撃。
58分にはレッズがお返しとばかりに左CKからヴァランがニアでヘディングシュートを放ちますが、こちらも僅かに枠の上。
66分、自陣中央の低い位置でボールを受けたボーウェンはブルーノ、フレッジを加速して振り切りそのままレッズのゴール一直線にロングドリブルを敢行。内側に絞ってきたテレスも彼を止めるには至らず、結局ペナルティボックスまで進まれますが数的優位だったこともあって最後は追い出しながらグリーンウッドがボール奪取。
62分からエランガに替わりピッチに登場したラッシュフォードは当初そのまま左サイドに居ましたが、68分のFK守備で反対サイドに回るとそのまま右サイドに留まるようになり、左利きのグリーンウッドがLW、右利きのラッシュフォードがRWに入り順足ウイングの形に変化。
配置を何度も変えながらどうにかアタッキングサード突破の糸口を探すユナイテッドでしたが、ボックス付近からのハマーズのブロックを崩す決定打は一向に掴むことが出来ず、焦りからか可能性の薄いミドルシュートを連発するなど夢の劇場には嫌な流れが立ち込めていきます。
どうしても点の欲しいホームチームは82分に残り2枚のカードを切り、フレッジに替えてカバーニ、グリーンウッドに替えてマルシャルを投入し、4FWのパワープレーで前線の圧を強めます。
一方のアウェイチームは初志貫徹。徹底してクロスボールやセットプレーからの得点を狙い、87分にはボーウェンの蹴った右CKに中央からニアへ斜めのランでフリーになったソーチェクのヘディングはファーサイドに流れてきますが、ボールには誰も走っておらず何とか命拾い。
高い緊張感と運動量を継続した両チームのスタメンは終盤に入り疲労の色が色濃く見られ、AT2分にはマグワイアが余裕をもって前を向きロングパスを通すと、そこから繋いだチャンスでブルーノからパスを貰ったマルシャルがボックス内ゴール正面で前を向きますが、ファーストタッチがやや大きくなってシュートを撃ちきれず。
しかしながらAT3分、ほぼラストプレーになるという攻撃でテレスから前を狙ったボールを途中出場のライアン・フレデリクスがクリアに失敗。その先にいたロナウドがボールを収め、マルシャル→カバーニとパスを繋ぎ、エル・マタドールのラストパスに走り込んだラッシュフォードが大事に繋がれたバトンを丁寧に受け取るかのようにゴールに流し込み、タイムアップ直前に劇的なゴールが生まれました!!!!!
THIS FOOTAGE 🤯❤️#MUFC | #MUNWHU pic.twitter.com/F0aDXWHX7e
— Manchester United (@ManUtd) January 22, 2022
その後、カメラ角の問題でマルシャルからカバーニへのパスがオフサイドなのではないかと疑われましたがVARもオンサイドを支持、ゴールは無事認められています。
試合は最後のチャンスを生かしたマンチェスター・ユナイテッドが1-0で勝利。
この1勝で勝ち点は38に達しハマーズを1上回り、よりPtsペースの高いアーセナルやトッテナムの試合消化が進んでいない事は考慮する必要がありますが、暫定4位!!
ハイライト
選手交代
62分 エランガ🔁ラッシュフォード
82分 グリーンウッド🔁マルシャル
70分 ツォウファル🔁フレデリクス
データ
スタッツはディフェンシブサード~ミドルサードで抜群の安定感を誇ったマンチェスター・ユナイテッドが被枠内シュートを1に抑え守備の向上を見せつける結果。
一方、自らのシュートは18本記録していますが、最後の1本以外はビッグチャンスを作る事が出来ておらず、特に体力のある時間帯でペナルティボックス手前のブロックをどのように攻略するかというのが今後の課題。
個人で目立ったのはハリー・マグワイア。
アントニオ、ボーウェンといったスピードと強さを兼ね備えた強力なアタッカー相手に対面でほぼ全勝。彼の踏ん張りがこの試合の堅実な守備に繋がっています。
Three big tackles from @HarryMaguire93 during #MUNWHU 👊❌#MUFC | #PL
— Manchester United (@ManUtd) January 23, 2022
また、ディオゴ・ダロトとアレックス・テレスの両フルバックも元々のレギュラー2人を控えに落とす勢いでこの日もハイパフォーマンス。特にこの試合では攻撃でキーパス2本、守備でクリアとタックルが4回、インターセプト2回と右サイドを支配したダロトの評価は今やワン=ビサカを上回っているでしょう。12月に入るまでは有力な放出候補であったですが、僅か1月半でクラブの重要な選手に早変わりし今や絶対に欠かす事の出来ない戦力です。
xG
xG1.76:0.24という結果にも守備の奮闘が反映されています。
これは今季最少の被xGで、期待値の上ではセットプレーからも大きなチャンスを許していません。ただ、実際に試合を見るとCKのニアフリック→ファー詰めという大きな守備の弱点は変わっていないように見えたので、結果には喜びつつ今後も改善に努める必要があります。(正直に言えば、一向に修正されないこの欠陥に関して今季から就任したセットプレーコーチの某氏には少し思うところもありますが……)
攻撃面では最後のゴールシーンが完璧に崩してのものだったのでxGも0.94というハイスコア。逆にいえば、それ以外の17本のシュートで稼いだ期待値は0.82。1本あたり0.05未満と得点に繋がりにくい状況が多かった。
あとがき
ラッシュフォードは前節に続き連続ゴールとなりましたが、なんと不思議な事に彼が今季リーグ戦で挙げた4ゴールは全て途中出場からのもの。スーパーサブとして見ればこれ以上ない秀逸な結果で、90分辺りのゴールペースは19/20に迫る好記録ですが彼は本来毎試合レギュラーでピッチに立たなければいけない選手。自身にとっても4シーズン連続二桁ゴールの記録がかかっているのでここから数試合は勝負どころでしょう。
さて、日程を見ると次の試合はインターナショナルウィークを挟み2月。
つまり、トランスファー・リクエストを出しているとラルフも認めているマルシャルや、彼以外にも出場機会増加を目論み機会を伺う選手のうち何人かを試合で見れるのはここが最後であった恐れも……
やっぱり私はこの人のオンボールが大好きで仕方がありません。
確かに運動量もなければ献身性にも難がある。それでも彼がゴール方向にボールを持った際のひらめきはチーム随一。今なら元インテル会長マッシモ・モラッティ氏がロナウド、ヴィエリといったフォーリクラッセを差し置いてアルバロ・レコバを一番のお気に入りとしていた気持ちも少し理解できる気がします。