2021年11月15日現在、イングランド代表チーム(通称:スリーライオンズ)でマンチェスター・ユナイテッドのキャプテン ハリー・マグワイアは同年に開催された代表チームの10試合で4ゴールを決めており、これを上回るイングランド人プレイヤーはラヒーム・スターリング(14試合5ゴール)、ハリー・ケイン(15試合12ゴール)の2人のみ。
※今朝行われたイングランドvsサンマリノ戦でまたしてもマグワイアがセットプレーからゴールを決めたので11試合5ゴールに記録更新。
この2名がFWである事を考えると、DFながらチームの主要な得点源となっているマグワイアのセットプレーはチームにとって大きな財産となり得るものですが、今季、ユナイテッドはセットプレー,特にコーナーキックからはチーム全体で1つもゴールを奪えておらず、マグワイア自身もヘディングシュートが枠内に収められないシーンをファン・サポーターは幾度となく見せられています。
今回は彼のスリーライオンズにおける得点を改めて見直し、どのようなパターンでゴールを奪っているのかを確かめるとともに、ユナイテッドでは何が足りていないのか考えてみようと思います。
2021年マグワイアの代表戦ゴール
vsポーランド(ワールドカップ予選)
1-1で迎えた85分、ファーサイドを狙ったCKをジョン・ストーンズが頭で中に折り返しマグワイアがハーフバウンドボレーを決めて勝ち越し。
セットプレーのフォーメーション
vsウクライナ(EURO2020準々決勝)
Congratulations to the players from North West clubs who had a vital role in England's 4 nil win over Ukraine! Harry Maguire and Jordan Henderson scored, Raheem Sterling created the opening goal, Luke Shaw assisted two more, and
— BBC North West (@BBCNWT) July 4, 2021
Jordan Pickford and Kyle Walker were great too. pic.twitter.com/F0YYn7mecx
2点目は後半開始早々、ケインが獲得したFKからルーク・ショーのキックにマグワイアが頭で合わせた得点。
セットプレーのフォーメーション
▼試合の詳細
vsハンガリー(ワールドカップ予選)
上述のウクライナ戦と同じく、ルーク・ショーのCKにパワーヘッダーを決めてチーム3点目のゴール。
セットプレーのフォーメーション
vsアルバニア(ワールドカップ予選)
9分、右サイドからのFK、リース・ジェームズのボールに大外で合わせてこれがこの試合の先制点。
耳に手を当てるゴールパフォーマンスには多くの批判も飛び交いましたが、クラブでの不調はスリーライオンズでは無縁だったようで、Sofascoreではハットトリックのケインに次ぐレーティングを獲得しています。
セットプレーのフォーメーション
vsサンマリノ(ワールドカップ予選)
地力の差を見せつけて0-10の快勝でワールドカップ本戦出場を決めたスリーライオンズですが、この日も先制点はハリー・マグワイアの頭から。
セットプレーのフォーメーション
この日は普段の背番号6ではなく4を背負っていたキャプテン。
やはり過去の例と同様に3人で密集してその最後方に位置取りする事でマークしづらい状況を作り、最後はパワーヘッダーをゴールマウス右下に沈めて2試合連続得点。
ジョン・テリーの6ゴールを抜いてイングランド代表の歴史に名を残す事になったマグワイア。クラブでも彼の得点力を活かしたいものです。
ユナイテッドが取り組むべき課題
CK
他のシーンを見ても5番・6番・9番は基本的に最初ワンセットで密集します。
まず、ストーンズがニアorファーに大きく位置取りを変えて1stレシーバーの役割をこなし、ケインは囮のような形でマークを引き連れてその後のシュートチャンスに向けてスペースを作る動きをします。そして最後にマグワイアが合わせて得点を狙うというのがどうやらイングランドの十八番のようで、この形は何度も繰り返されていますからおそらくガレス・サウスゲート監督を筆頭にコーチ陣から選手に与えられたルールである可能性が比較的高いと考えられます。
FK
こちらもウクライナ戦、アルバニア戦共に同じ形でゴールが決まっており、ニアサイド3枚(いずれもFW2枚+MF1枚)は相手の守備陣形を崩す陽動の役割で実際にはファーサイドに放たれたボールをマグワイアがパワーヘッダーで沈めています。
ユナイテッドの試合を見ていてもマグワイアは上半身を捻って流すヘディングはあまり得意ではないように見受けられ、しっかりとミートするヘディングは得意ですが細かい制御は苦手であるように感じます(ゴールまでの距離が短いニアで合わせると大体枠上に消える)。
おそらく代表チームはそのような特徴を踏まえた上で、彼を最も活かせる形をこのように見出したのではないかと考えられるので、クラブでもこのような形をそのままパターンの1つとして取り入れてしまうのが最も早いセットプレー改善策。
また、彼はアタランタ戦で見せたようにクロスボールにダイレクトボレーで合わせるのが上手なので、やはりファーでマグワイアにボールを受けさせるところを終着点として、そこから逆算したセットプレーの構築を複数パターン作る、或いは既存のモノの完成度を上げていく事を個人的には推奨したい。
仮パターン
ユナイテッドで同じような形を作る場合、エディンソン・カバーニ、クリスティアーノ・ロナウドと難しい体勢からでもゴールマウスにボールを飛ばせる一流のヘッダーが2人いるので、1.彼らをニアサイドに走らせる 2.長身のマクトミネイ,ポグバ,マティッチ,ヴァランからその時試合に出ている選手を配置、3.フィニッシャーにマグワイア或いはポグバというのが順当な組み合わせでしょうか。
いずれにせよ、長身選手が多く個別で見ればセットプレーに強い方の選手が揃うユナイテッドで未だにセットプレーからの得点が無いというのは異常事態なので、インターナショナルブレイク明けの試合では状況が改善されている事を願います。