いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

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football managerというシミュレーションゲームであれこれやっていきます。気付いたらユナイテッドの事ばかり書いてます

【 #MUFC 】ホイルンド加入!! 優れたスピードとペナルティボックス内での知性

ラスムス・ホイルンド(表記ゆれあり)を巡るアタランタBCマンチェスター・ユナイテッドの取引が遂に決着を迎え、ラファエル・ヴァランの古巣でもあるRCランスとの試合前にオールド・トラッフォードでお披露目となった。

 ホイルンドは兼ねてよりユナイテッドのファンである事を明らかにしており、この相思相愛さは交渉の円滑さに小さくない影響を与えたと思われる。

 

今回は憧れの赤いシャツに遂に自らが選手として袖を通す瞬間が訪れたデンマークの新進気鋭ストライカーが一体どのような特徴を持っていて、どのように現在のスカッドへ順応していくのか等を見ていきたい。

 

 

 

 

特徴① 多彩なシュートパターンとにじみ出るインテリジェンス

 

 

 ホイルンドの利き足は左だが、よくいる左足だけで全てのプレーを行おうとする不器用なタイプではなく、右足やヘディングでも苦労せずゴールマウスを捉えられる得点奪取に対しての総合力が非常に高い選手である事はよく知られている。

 22/23シーズンにクラブで挙げた16ゴールのうち、transfermarkt.comにその内訳が記載されている14回+今年に入ってから代表戦で積み重ねた6ゴールを足して精査したところ、右足10,左足9,ヘディング1と寧ろ利き足ではない方での得点の方が多くなった。

 

参照:Rasmus Højlund | Atalanta | xG | Shot Map | Goal stats | Understat.com

 更にシュートを放つシチュエーションを詳しく見ていくと、セリエAで記録されたオープンプレイからの計45本のシュートのうち、ボックス外からのものは僅かに4回。その中の1つがゴールに直接結びついている事からも、むやみやたらと脚を振り抜いてチャンスをフイにする刹那主義者ではなく、最良の瞬間が訪れるまでストイックにDFやGKとの駆け引きを続ける賢いストライカーである事が明らかに。

 

 

駆け引きという言葉が出たのでポジショニングを見ていくが、ボックス内では自身についているマーカーの背中から瞬時にニアorファーのより得点に結びつきやすい方を選択し、基本的にはカットバック(マイナスへの折り返し)ではなくオープンゴールを狙えるGKの背後や場所やGKとDFの間等を狙うので、彼にボールが届かなかったとしても最終ラインを押し込んで他の味方が使用するスペースを作り出す事も出来る。

 

この特性はゴール前で足元で受けたがる選手の多いユナイテッドのアタッカーの中に足りなかったアクセントで、昨季は途中加入のヴェフホルストが一部請け負う部分もあったが、相手目線でのシュートバリエーションの絞り切れなさと後述するもう1つの秀でた資質によって得点への期待が大幅に増す事は間違いない。

 

 

特徴② 並外れたスピード

 

 

190cm越えの長身,北欧にルーツ,レフティー,才能豊かなストライカーと共通項の多いアーリング・ハーランドと比較される事が目立つが、より素軽さに傾いているのがホイルンドで、アタランタの公式Instagramによれば22/23シーズンの最高速度は35.97km/h。

 

22/23のユナイテッドの面々が記録したスピードと比較すると、ラッシュフォードの35.95km/hを上回って全体一番手に躍り出る数字である事からもホイルンドの速さがひと際優れている事がよく分かる。

22/23 Fastest Man United Players

1. マーカス・ラッシュフォード: 35.95 km/h 
2. ディオゴ・ダロト: 35.76 km/h
3. アントニー: 35.29 km/h
4. ルーク・ショー: 34.85 km/h
5. タイレル・マラシア: 34.76 km/h
6. アーロン・ワン=ビサカ: 34.42 km/h
7. アンソニー・エランガ: 34.27 km/h
8. ジェイドン・サンチョ: 33.96 km/h
9. アレハンドロ・ガルナチョ: 33.92 km/h
10. アントニー・マルシャル: 33.56 km/h
 (参照:Who were the fastest Man Utd and Premier League players in 2022/23? | Manchester United)

 

また単に足が速いというだけでなくホイルンドの素晴らしい部分はそれが実戦で発揮しやすいモノであるという所。

 

 上記のシーンは2023年2月11日のアタランタvsラツィオ戦での一幕。並走状態からまず1人目の相手を置き去りにしながらボールを持つ味方にスペースへのパスを促すと、ファーストタッチで更に前方へ大きく蹴り出し、自身より前にいた23番(ヒサイ),10番(ルイス・アルベルト)の2名よりも先にボールへ追いついてみせた。

 

アタランタの指揮官ジャン・ピエロ・ガスペリーニ

 「Considering his height, he has a low centre of gravity and can move his legs very fast, I am convinced he’ll have a great career, he just gets stronger every day.(身長に対して彼<ホイルンド>は重心が低く、素早く足を動かすことが出来る。私は彼が素晴らしいキャリアを築くと確信しており、彼は日に日に強くなっている。)」

 と語っており、"素早く足を動かすことが出来る"という点については正にガスペリーニの言葉通り脚の回転の速さ(ユナイテッドの選手ではアントニーを想起させる)がもたらす0からの加速力をホイルンのプレーの随所に感じる。最高速が早くても到達するまでに長い距離を要する選手は10~20mのダッシュが中心のフットボールにおいて中々それを活かしにくいが、彼の場合にはスピードを完全に自分のストロングポイントに出来るだろう。

 

体格を活かした中央でのボールキープは勿論のこと、サイドレーンに流れても純粋なスピードの緩急で相手を抜き去って得点に繋がるチャンスを生み出す様を頻繁に見られるかもしれない。そういった意味ではCFのみならず、アマド負傷で左利きアタッカーがアントニー1枚という事でシーズン開始後のチーム事情によってはインサイドフォワードでの運用も視野に入る。

 ポリバレント性はテン・ハフ体制での補強に一貫するテーマの1つだと私は考えているが、ホイルンドに関しても例外では無かったようだ。

 

なお、先述した動画でその後GKとの1on1を決められなかったようにフィニッシュの確実性にはまだ課題を残しているが、今年2月に20歳を迎えたばかりの若者がこのスピードを維持しながらストライカーとして必要な技術を更に磨き上げたとき、それはハーランドに匹敵する,あるいは上回る可能性すら持つ怪物の誕生となるのではないか。

 

 

スタッツから見る強みと懸念材料

 

参照:Player Comparison Tool: Opta Player Radars | The Analyst

 上記画像はスポーツ分析を専門に取り扱う「Opta」運営でフットボールを始め様々な球技のデータやコラムを提供する"theanalyst.com"の選手比較ツールによるホイルンのレーダーチャート。パーセンタイル値はプレミアリーグ,ラ・リーガ,セリエA,リーグ・アン,ブンデスリーガの所謂欧州5大リーグで22/23シーズンのリーグ戦1350分以上に出場した選手との相対比較で算出されている。

 

最大の特徴は相手ペナルティボックス内でのボールタッチの多さであり、全エリアでのタッチ数はやや少なめなものの、"POSSESSION WON"や"CHANCES CREATED"が中央値を上回っている事から、ボールポゼッション下のプレーを苦にしないボックスストライカーである事が分かる。

 また、画像ではチャートの形が似ている選手としてコロ・ムアニやマルクステュラムが右側に出ており、彼らもユナイテッドの補強ターゲットとして名前が浮上していた点から、具体的な名前に固執した訳ではなく、あくまでプレースタイルからホイルンドをリストアップしたのではないかとも推測可能だ。

 

"DEFENSIVE ACTIONS"が2と極端に低く、別のデータベース、例えばfbref.comの数値を見てもタックル,インターセプト,ブロックといった主要な守備アクションの量という意味での低水準は共通している。当初はアタランタのチーム戦術が影響しているのかとも考えたが、ストライカーの席を争ったドゥバン・サパタはまずまずの守備スタッツを記録している事からそういう訳では無さそう。

 

守備面の高い貢献を期待するファンベースとスタッツから見たホイルンドとの乖離は気がかりだが、ボールリカバリーはfbrefで90分辺り2.85回,パーセンタイル値77と優秀な数字が出ており、全ての試合を見ている訳では無いが(恐らく守備アクションに含まれていない)プレッシングの意識も高いように見えたので、その辺りの答え合わせは赤い悪魔で実戦に出始めてから改めて検証してみようと思う。