いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

football managerというシミュレーションゲームであれこれやっていきます。気付いたらユナイテッドの事ばかり書いてます

【 #MUNCHE 】求心力低下の報道を一蹴するような前線プレス

※23/24 イングリッシュプレミアリーグ

マンチェスター・ユナイテッドvsチェルシー戦の記事です。

 

細かいところを詰めれば幾らでも課題は出てきますが、「チームの為に走れるか」という根本的なところでようやく水準をクリアする試合を見ることが出来ました。今回のゲームを見た限りでは、指揮官のロッカールームでの支持が低下しているというゴシップの類いは今のところ事実ではないように感じており、結局は選手個々の資質という所に原因があった可能性が高い。

 

 

 

 

【Match Review】

 

Starting lineup

 

ベンチ入りマンチェスター・ユナイテッド
1 Bayındır, 9 Martial, 10 Rashford, 15 Reguilón, 28 Pellistri, 29 Wan-Bissaka, 34 Van de Beek, 35 J.Evans, 37 Mainoo

チェルシー
5 Badiashile, 19 Broja, 24 R.James, 28 Đ.Petrović, 29 Maatsen, 36 D.Washington, 42 A.Gilchrist, 52 A.Matos, 54 Castledine

 

 

前半


ラッシュフォード、マルシャルと守備で献身性の見られない選手をベンチスタートにしたテン・ハフ。ロッカールームでの支持を失ったという報道を巡ってひと悶着があったばかりの試合だったが、序盤からFW,MF,ボールサイドのフルバックの7人でGKから繋ぐチェルシーに対し猛烈なプレッシングを行い、出しどころが無く苦し紛れでパーマーやスターリングを狙った縦パスをインターセプトしてのショートカウンターから得点機会を圧倒的スピードで積み重ねていく。

 

アウェイチームはというと、ニコラス・ジャクソンが連携面でパスのタイミングやコースがズレたりムドリク,スターリングの守備が気まぐれなので全くユナイテッド陣内での圧が無く、更にこの両ウイングの背後を取るダロト,ショーの攻撃参加から何度も展開されるなど非常に苦しい立ちあがり。

 

6分、ホイルンドが素早くGKロベルト・サンチェスのパスコースを限定し、低い位置で水平の出し先を作るディサシ以外の選択肢を潰したユナイテッド。対してサンチェスは前線から降りたスターリングへの縦パスを試みたがややズレた所をショーがカットしてショートカウンター。ボックス内でパスを受けたアントニーはバレバレのカットインで時間的余裕を失ってしまいシュートに移行出来なかったものの、遅れ気味に足を伸ばしてきたエンツォ・フェルナンデスが足裏で踏みつけていた事でPK獲得。

 

しかし、ここしばらく封印していたタイミングを外すスキップ式で得点を狙ったブルーノのキックはぎりぎりまで動き出しを我慢したサンチェスの読みに負けて敢え無くストップされてしまう。

Embed from Getty Images  

 

一気に精神的優位を失いかねない痛恨の失敗となったが、この後もチェルシーの守備組織は機能不全のままでユナイテッドが安定してチャンスクリエイトを続けていく。

 

10分、サンチェスのゴールキックが短くなってチアゴ・シウバが何とか頭で繋いだチェルシーだが、パルマーに対してブルーノがタイトにプレッシャーをかけて前線への縦パスをリンデロフがインターセプトしてユナイテッドの反撃。ボックス幅でパスを受けたダロトは反転から一気にギアを上げてムドリクを一瞬突き放すと、2レーン飛ばしてコート左側にいるブルーノへチャンスを広げる見事なパスを通す。

 最終的にアントニーのインスイングのクロスは距離が長くなってゴールラインを割ったものの、攻撃の形としてはターンオーバーで一気に出力を上げ、素早くボールを左右に振って内巻き→ファーポストという計画性のある内容だったのでこれを今後の試合でも続けてもらいたい。

Embed from Getty Images  

 

アントニー→ダロト、ダロト→ブルーノという連続のトリベーラ(アウトフロントキック)で意表をついた18分の攻撃はゴール前でのアントニーの詰めを防がれてコーナーキックになるが、そのCK後のカウンタープレス、及びショートカウンターから最後はマクトミネイがゴールネットを揺らしてユナイテッド先制!!

 

ずっとボールウォッチャ―になっていてチアゴ・シウバのフォローに目が回らず、パスを待つ選手もボールホルダーも両方をフリーにしてしまうアクセル・ディサシの一連の対応に強い既視感を覚えたが、そう考えるとこの試合のユナイテッドのDFは普段よりも周囲の状況に注意を払えていてよくやっていたのだと思う。

 

そして、何より素晴らしいのが敵陣ボックス内でのマクトミネイの貢献だが、その前のマグワイのシュートシーンにおいて、彼がニアポケット,ホイルンドがGK前,アントニーがファー待ち,そして中央でマイナスのパスへの準備+こぼれ球対応を狙うマクトミネイとバックパスの選択肢を作るショーを含め、ボックス内にいるボールホルダーではない選手全員が役割分担出来ていた点も評価したい。

参照:MUTV | Manchester United
研究・批評目的の引用であり、著作権侵害の意図はありません

 なお、ディサシ(2番)の場所にいるDFがもっと上手な対応を出来る相手だった場合を想定すると、欲を言えばマグワイアの位置にいる味方もニアに走り込んで上記画像のブルーノの位置に相当する選手が1つ前にズレていくようにフィニッシュワークの形をより詰める必要があると思うが、それについては今後に期待。

 

ユナイテッドはチーム全体としてプランを統一出来ていて、個々のパフォーマンスについても概ね良かったと思っているが、唯一その流れに乗れていなかったのがリンデロフ。先制点直後の21分にはロベルト・サンチェスのフィードを処理しようとした際に思い切りスリップしてチェルシーのチャンスにしてしまい、それ以外にも球際の守備で味方のフォローも間に合っていて強く当たりに行くべき場面でもズルズルと下がってしまうケースが目立ったように、マグワイアとの序列はあっという間に逆転してしまった。

 

もう1つ、チーム全体としては前掛りになった後のターンオーバー、特にファウルかもしれないというコンタクトプレーの直後などにまだ気持ちが切れている瞬間があり、アムラバトのカバーでギリギリ凌いでいるか、或いは完全にひっくり返されてがら空きの中央をムドリクやスターリングに持ち運ばれて失点の危機を作られてしまっていた事もしばしばあった為、審判が笛を吹くまでは集中を切らさないという基本を改めて徹底してもらいたいところ。

 

45分、低い位置でのショー→ガルナチョへの中途半端な長さでしかも浮かせたパスをキッカケにチェルシーにボールを奪われると、サイドから中央に降りてきたムドリクがフリーになっていてチアゴ・シウバからの縦パスが通る。更にアムラバト-ショーの間から裏のスペースへタイミングよく走り込むパーマーにムドリクからのスルーパスが通り、少年時代にマンチェスターの両雄からの勧誘を受けて最終的にライバルクラブを選んだ21歳の若者のパターショットで試合は振り出しに。

(動画の15秒からが同点弾) 

 

ニューカッスル戦の回顧でも話した通りショー-リンデロフの左側は後手に回る守備がどうしても多くなりがちなので信用出来ない部分がある。この場面、リンデロフはもっとはっきりと左側のシュートコースを潰すべきで、仮に交わされても味方の数が確保されている状況なのだから強気にボールへアプローチせねばならなかったし、ショーもその前の所で大外を捨ててでもより危険なゾーンへ走り込む相手選手を真っ先にマークする必要があった。

 

 

後半

 

ハーフタイム明けの両クラブは1人ずつ選手交代。ユナイテッドはか弱さの目立ったリンデロフに替えてレギロン、チェルシーは左利きながらRBに起用されていたククレジャを下げてリース・ジェームズ投入でより攻撃貢献の質と量を重視する変更を行った。

 

ガルナチョに関してはアウト・オブ・ポゼッションで手を抜く選手にならなくて済みそうな事を非常に喜ばしく感じており、下記動画のように自分にボールが入った際のプレーでまだ若さからかノリと勢いで行ってしまう所はあるものの、冷静になって考えればこの年齢で既に洗練されているような選手(メイヌー)の方が逆にどこでそれを身に着けてきたんだと不思議なくらいなので温かく見守っていきたい。

 

因みに、後半に入ってエバートンの指揮官、ショーン・ダイチがスタジアムで観戦(偵察)している様子がカメラに抜かれていたが、丁度次の日に行われたニューカッスルとのホームゲームで3-0の快勝を収めており、この視察がポジティブな影響を与えていたのだとすればユナイテッド視点で大変ありがたい結果である。

 

69分、チェルシーのビルドアップにしっかり人数をかけてプレスをかけていくユナイテッドは、チアゴ・シウバからのロングボールを自陣でコントロールしてポゼッション開始。ダロトから縦パスを受けてスムーズに反転したマグワイアからアンダーラップするレギロンに斜めのパスが通ると、更に視点を自分に集めてレギロンは大外のガルナチョにボールを解放。ボックス角付近からインスイングクロスでファーを狙ったガルナチョのキックにマクトミネイが頭で合わせてユナイテッド勝ち越し!!

 

リードした後も幾度となく追加点のチャンスを作りながら、最後の所でシュートを撃ち切れなかったり、打ったとしても精度が悪かったりとことごとく機会を逃していくユナイテッド。それ自体も大いに問題があるのだが、後半の戦いぶりで一番不満を抱いたのはホイルンドに代わって試合終盤に投入されたラッシュフォード。

Embed from Getty Images  

 

ブルーノが必死にボールホルダーに食らいついている様をみてもただ後ろで傍観していたり、体力が有り余っているはずなのに疲労した味方の分のフォローに回る素振りがまるで見られなかったりと完全にわがままな王様になってしまったらしい。実際に彼が投入されてプレッシャーが緩んだ事でディサシからの縦パスがガンガン通るようになったチェルシーはリース・ジェームズのクロスにゴール前でエンツォ・フェルナンデスが反応した85分のシーンをはじめ、終盤に入り立て続けに得点機会を作り続けた。

Embed from Getty Images  

 

アディショナルタイムには疲労困憊のガルナチョを下げてスカッドに戻ってきたエヴァンスを投入。無事リードを守り切ったユナイテッドだが、次節以降のCBユニットがどのように変化していくのかにも注目が集まる。

 

 

データ

 

Standard

 

シュート数は28:13、ビッグチャンスもそれぞれ5回ずつと正にノーガードの殴り合いとなった訳だが、10度の決定機で得点に結びついているのはマクトミネイの2点目のただ1度きり。正直この内容で3ゴールしか生まれていないのは不思議で仕方がない。

 

ポゼッションは45-55でチェルシーにリードを許したが、ユナイテッドのチャンスの大半は彼らのGKからのビルドアップに対してハイプレスをかけてボールを奪ってからのショートカウンターだったため、寧ろ相手がボールを持っている状況は好都合。よってこの試合においてはそれは問題ではない。

 

 左を見ても右を見てもピンチの芽を未然に刈り取っていたように思えたアムラバトは地上デュエル6/9、タックル4回という守備スタッツに加えてボールタッチ62回でパス成功率45/49(約92%)、ポゼッションロスト6回と攻撃面でも抜群の安定感を誇った。それだけに数少ないエラーが失点に直結しかねない性質のものだった事だけが勿体なく感じる。

 

なお、この試合でも球際での足の一伸びが印象的でフィットネスの部分に関しては明らかに一時期よりも状態がよくなっているマグワイアは2023年11月のプレミアリーグ月間最優秀選手に輝き、最優秀ゴールにはエバートン戦のガルナチョのバイシクルシュート、そして最優秀監督をテン・ハフが受賞とマン・ユナイテッドづくしのアワードとなった。

 

 

xG

 

参照:

Manchester United 2 - 1 Chelsea (December 06 2023) | EPL | 2023/2024 | xG | Understat.com

 

ゴール期待値はマン・ユナイテッド4.04、チェルシー2.35とシュート数とビッグチャンスの多さが反映されるスコアとなっている。ホームチームの記録した4.04という数字は8月のフォレスト戦の3.03を1点上回るリーグ戦での今季最多の数字で、個人ではマクトミネイのxG2.22が最上位。

 

今季の彼はここまでxG3.34に対し5ゴールを奪っているチーム内のトップスコアラーであるが、この得点数は既にキャリアハイで90分辺りのゴール数0.57は各クラブの主力アタッカーと比較しても遜色ない高水準となっている。

参照:Premier League Player Stats | FBref.com

 

 PASSING NETWORKを見るとアムラバトが中央でバランスを取り、左ではショー-ブルーノ-ガルナチョ、右ではダロト-マクトミネイ-アントニーとそれぞれ3ユニットのコンビネーションが機能していたことが分かるが、やや距離があるマクトミネイの所にアントニーがボールを持った際の水平のサポートがまだ足りていないという実際の試合を見て感じる事象がしっかりと反映されている。

 

チェルシーはポゼッションの中で3バック化していた事もあるが、コルウィルから前進する矢印が1つもないところにも表れているように全体的に左サイドの関係性が希薄で、3トップが殆ど流れの中に入れていない。

 

 

あとがき

 

ここまで対BIG6戦績1勝3分けと負けが無かったチェルシー相手の勝利は素直に嬉しい。

 ディサシ、ムドリク、スターリング辺りのプレーはまるで普段のユナイテッドの選手を見ているような物足りなさだったので、恐らくチェルシーファンの怒りを買っているに違いない。

 

週末の相手はボーンマス。ようやくアンドニ・イラオラの哲学が浸透し始めているのか、ここ4試合で3勝1分けと目下絶好調のチェリーズに対し今回のような情熱と気迫の溢れる試合を出来るかどうか、継続性という点が一番の注目どころになるだろう。