※23/24 UEFAチャンピオンズリーグ GroupA 第5節
ガラタサライvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
もう完全にアンドレ・オナナ攻略マニュアルが出回ってしまったので、ここからはチーム全体で彼の弱みをカバーするような守り方を意識するか、或いは自身の変化・成長が無ければ今後も似たような失点を見続ける羽目になってしまいそう。フィールドプレイヤーではリンデロフやショーも酷い対応だらけ。
⏹️ It ends all square in Istanbul.#MUFC || #UCL
— Manchester United (@ManUtd) November 29, 2023
【Match Review】
Starting lineup
前半
『Welcome to Hell』という満員のガラタサライサポーターからの文字通り手荒い歓迎を受けてラムズ・パークに乗り込んでいったマンチェスター・ユナイテッド。そんな会場の異様な熱気や茶色の目立つタフなピッチコンディションもあって試合は序盤から荒れ模様。
ガラタサライは4-2-3-1でメルテンスがシャドーストライカー、ポゼッション時には両サイドのフルバックにウインガー役を任せるのでアンヘリーノ,ブーイの2人は移動負荷が高く、ユナイテッドは彼らの空けた後方のスペースをカウンターで活用して安定してチャンスを作る事が出来ていた。
一方でフルバックに幅を取らせるという事はハーフスペースに顔を出す前線の枚数が増えるという事なので、縦横スライドが徹底されていない・純粋に遅い為に人数が足りている守備局面でもフリーの相手選手が頻繁に発生するユナイテッドの欠陥はより強調されやすい。基本的にはテン・ハフ以前から在籍している選手にこの傾向が顕著であり、チーム内で一番おざなりなのは個人的にショーかワン=ビサカだと思う。マグワイアとリンデロフに関してはA→Bという咄嗟の切り替えに対する情報処理速度が単純に足りていない。
先制点は相手のロングボールが長くなってオナナがキャッチしたところから。一度足元で繋いでいった際には3+1の前線プレスに閉じ込められてギリギリのプレーになったが、オナナに戻してそこからのフィードにマクトミネイが競り勝ってコントロールすると、右のアントニーに預けて自身はアンダーラップでリターンを受けて一気にアタッキングサードまで侵入。
ペナ角から中央にボールを動かしながら複数人のコンビネーションでゴール前のホイルンドへパスを付けると、ホイルンドが見事なポストプレーでキープして落としのボールがブルーノへ。最後はゴールラインの左端の延長線上に待っていたガルナチョがニア上への高難易度のシュートを決めて先制!!
続いて18分には相手RBブーイの背後へのブルーノのロブパスで陣地を一気に侵略したところから、スローインのリスタートでDFの縦スライド,或いは中盤の横スライドが皆無な事でフリーでパスを受けたブルーノがそのままボールを持ち運びながら右足一閃!!
ぶっちゃけた話、このと2得点目のガラタサライの守備を見てあまりにもディフェンシブサードでの圧が弱いので勝利を確信したのだが……
15分足らずで2点のリード、しかもより一層前掛りになる事が想定されてカウンターからの追加点の機会も巡ってきそうという絶好のシチュエーションに見えたが、何故か不要なリスクを取って低い位置でポゼッションを続けてボールロストを繰り返すユナイテッドのイレブンを見て嫌な予感を感じるという前半の中頃。マクトミネイとホイルンドの段差のダブルターゲットでハイボールを蹴っていればほとんど自分たちのボールに出来ていただろうと考えられるだけに、この辺りのゲームプランの甘さに目を向けてもらいたいところだ。
27分にはカウンターから右に流れたマクトミネイのクロスがGKにキャッチされた所からガラタサライのカウンター始動。ユナイテッドの後方の押し上げが無かったのでトレイラがフリーでボールを運び、更にパスを受けたツィエクの所でショーとプレスバックしてきたガルナチョが挟んで奪おうとするも、ショーの立ち位置と身体の向きが逆足ウインガーのツィエクに対して何にも制限になっておらず2人の間にスルーパスが通ってしまう。更にこの時に余っていて応戦できるはずのリンデロフが全く距離を詰めに行く準備が出来ていないため、長い距離を走って戻ってきたブルーノが後ろからファウルで泣く泣く止めてフリーキックを与えてしまった。
ツィエクのFKに関してはオナナの壁の指示のマズさが何よりの原因であり、後述する2失点目以上に個人的にはダメージの大きかった失点。自己完結型で周りに指示を与えて駒として操っていくのが苦手そうという意味では前任者デヘアと程度に違いはあれど(オナナの方がより苦手)似た部分があるようにも思う。
🟡🔴#UCL pic.twitter.com/e9LrBMPqd4
— UEFA Champions League (@ChampionsLeague) December 1, 2023
前半はこんなところだろうか。フィールドプレイヤーではショーとリンデロフが特に酷く、上述したシーンのデジャヴのようなやられ方を34分台にももう一度犯している。
後半
後半も両チームの守備面の脆さが随所に見れるオープンな展開は続く。
54分、一度オナナまで戻してポゼッションをやり直すユナイテッドは、CBを開かせて相手の1stプレス2枚の間でアムラバトが縦パスを受け、全くプレスがかかっていない中であっさり前を向けたアムラバトは右斜め前のマクトミネイへ預けた。更に2ndプレスとバックラインの間に空いた広大な空間でフリーになっていたアントニーにボールが入ると一気にプレースピードを上げてショートカウンターに移行し、大外で走るワン=ビサカにノンプレッシャーでスルーパスが通ると、最後はワン=ビサカのグラウンダーのパスにDFの間からスルッとニアを陥れたマクトミネイがしっかりと決定機をモノにして再び2点差にリードを広げた。
50分台後半から60分の間に両チームとも選手交代。ガラタサライは低めに残る事の多いセルヒオ・オリベイラを投入して中盤のバランス改善を試み、ユナイテッドは恐らく時間で決めていたであろうアムラバト,ホイルンドを下げてメイヌー,マルシャル。避けられなかったかもしれないが、結果的にはこの交代策が後の惨事を引き起こす。
61分、前に潰しに行くにしても初動が遅いのでただ持ち場を空けただけになるリンデロフの対応から、ガラタサライはブーイがボディバランスの強さでボールをキープしてタメを作り、戻しのパスを受けたツィエクがブルーノからファウルを誘って右45度でフリーキックを得る。
ゴールマウスまでは距離があったが、迷うことなく低く速いボールを蹴り込んだツィエクのキックは軌道上にいたマルシャルが不可解なスルーでただただブラインドになってオナナを妨害したというユナイテッドの自滅的要素も重なってまんまとプレースキックから2点目を獲得。
そして勢いのままにガラタサライは途中投入からフィニッシュ意識の高さを見せていたアクトゥルコールがユナイテッドの守備の中途半端さに付け込んでスーパーゴールを決めた。
Kerem Aktürkoğlu 🚀
— Galatasaray SK (@GalatasaraySK) December 1, 2023
Goal of the week! 🤩 pic.twitter.com/5ql40tFm4r
ボールを失ったキッカケはショーの無闇なスペースへのパスであり、更にマーカーを捨てた割にはパスを阻止出来ていないリンデロフの意味の分からない立ち位置、本来はアクトクルコールとボールを両方見れる場所が正解だろう。そしてオナナのポジショニングも訳が分からない。これでメイヌーの責任にされてはたまったもんではない。
決して堅牢な守備ブロックではないガラタサライを前にしてこのまま同点では終われないユナイテッドはペリストリ、ダロトを投入して打開を図る。
珍しく利き足と反対側のサイドで使われたペリストリだが、インスイングキックが求められる状況でのシュートが悉くボールを抑えきれず遥か上空に力なく消えていくものばかりだったので、残念ながら順足起用にしか対応していないらしい。
終盤は彼とマルシャルがひたすらビッグチャンスを無駄にしていく様を見せつけられるような拷問が続き、他にはマクトミネイも斜めに落とすようなミドルシュートが全く蹴れない事が判明する等ウィークポイントを洗い出すという点ではある意味収穫が多かったのかもしれない。
データ
Standard
シュート数は16-17と五分五分で守備組織の杜撰さが目についた試合らしいオープンな内容となっている。ポゼッションはガラタサライ優勢だが、それ自体は今回のスカッドならば下手に低い位置で繋ぐよりもマシな場合が多いので問題とは思わない。
ただ、ファウル18回という数字やイエローカードの数が示す通り危険な位置に容易にボールを運ばれてしまっている点は改善が必要であり、度重なるオナナのエラーも被シュートの数の多さがまず一番の原因である事は確か。
Galatasaray 3 : 3 Man Utd
— markstats bot (@markstatsbot) November 29, 2023
▪ xG: 1.73 - 1.95
▪ xThreat: 1.21 - 1.38
▪ Possession: 57.1% - 42.9%
▪ Field Tilt: 53.4% - 46.6%
▪ Def Action Height: 50.6 - 42.5#msbot_ucl #ucl pic.twitter.com/ImDsI0rJMM
markstats算出のゴール期待値はガラタサライ1.73,ユナイテッド1.95と僅差ながらもアウェイチームがリードする結果に。ただ、時間ごとに見ていくとユナイテッドが上回ったのは終盤の度重なる決定機でようやくなので、そこで勝ち越し点を奪えなかったフィニッシュ精度の低さとガラタサライにチャンスを作られ続けた守備の問題がこちらでも浮上してくる。
PASSING NETWORKは一見すると3-3-4でバランスよく見えるが、ホイルンドが完全に孤立していたりショーから前に進むブルーノしか存在せず、同サイドのガルナチョへのラインが途絶えている点などは問題。アントニーのエゴの無いプレー選択をチーム全体で活かせていれば……
あとがき
怪我人の多さからくる今シーズンのスカッドの薄さに加え、元々ターンオーバーに消極的なテン・ハフの傾向も加味すると欧州コンペティションと国内リーグを両方戦うのは無理かもしれない。中途半端にヨーロッパリーグに進むくらいならばいっそのこと……