ビアンコネロの愛称で親しまれる北イタリアの大都市を2分するビッグクラブ ACミランの次世代のバンディエラになるだろう、恐らくミラニスタがそう信じて疑わなかったであろうサンドロ・トナーリが今現在籍を置いているクラブはイングランド北部ニューカッスル・アポン・タインに本拠地を持つニューカッスル・ユナイテッド。
✍️ We are delighted to announce the signing of Sandro Tonali from @acmilan.
— Newcastle United FC (@NUFC) July 3, 2023
The 23-year-old joins the Magpies for an undisclosed fee and has agreed a contract at St. James’ Park initially until 2028.
Welcome to Newcastle United, Sandro! 🇮🇹 pic.twitter.com/BbxrNUzVNo
マグパイズにとっては会心の取引になったトナーリの移籍劇ですが、ズラタン・イブラヒモビッチの引退やTD:パオロ・マルディーニの退団なども含み、ミランの内で人知れず生じているパワーバランスの変動はそれらの専門家に任せるとして、今回は久々のCL出場を決め勢いに乗っているこのクラブが彼の加入でどのように変化するのかを考えてみたい。
指揮官が追い求めるはあのいぶし銀?
22/23シーズンのニューカッスルの中盤はブルーノ・ギマランイスが絶対的な柱で、それを支えるのがジョエリントン,ジョー・ウィロック,シーン・ロングスタッフ。シーズン後半にはジョエリントンがLWに入り全員同時起用もそれなりにあったが、基本的にはギマランイス+後ろの3人から2枚という形だと個人的には判断している。
この4人を比較したとき、パスのレンジ・精度と視野の広さからギマランイスがアンカーとして振る舞い全体のテンポをコントロールするのはある種当然の成り行きで、残りの選手は全体のプレー強度やパスのレシーバーとしての能力を第一に求められていたが、23/24シーズンのマグパイズはこれまでよりも対戦相手に強者として扱われる機会が増加し、必然的にポゼッションの質の重要度が高まると考えられる。
そうなった場合、ギマランイスをサポート、或いは彼を一列前へ押し上げられるような、いわば自分でポゼッションの緩急を制御できる一定以上のボールスキルを持った選手の補強はチームにとって真っ先に必要な行動であった。
チームの指揮官であるエディ・ハウ理想とするであろう名前を勝手ながら挙げるとすれば、彼が名声を高めたボーンマス時代を中盤の底で支えたアンドリュー・サーマン。
元々はトップ下やサイドアタッカーを主戦場にしていたように、技術的に劣る事はなく中長距離のパスの正確性に優れ、その上で深追いしすぎずクリーンな守備でピンチの芽を摘み取り続けた名いぶし銀である。
後述するように今すぐにという話ではないが、将来的な事を考えるとトナーリにも知性と落ち着きを兼ね備えたアンカーになれる素質は十分に備わっている筈。
印象とは異なる部分も
では、トナーリの技術面に関して、パス能力に焦点を当ててみていこう
ぱっとプレーを見て感じ取れる印象とは異なり、全体的にスケールが小さい事にまず目が行くと思う。特に精度という意味ではショート~ロングの3区分すべてで40を下回っていて、一方でキーパスのパーセンタイル値が95、プログレッシブパスの値が76である事から推察するにリスクを負ってでもゴール方向に近づくボールを選択する傾向にあるのではないかと思われる。
この記事を書き始めた当初、私はトナーリが4-1-2-3の逆三角形の頂点に収まると予想していたが、上記の事柄に加えて昨シーズンのリーグ戦における両者のヒートマップを比較すると、トナーリの方がタッチラインの近くまで移動してサイドでのユニット形成に参加している回数が多いように見える為、暫くの間はアンカーのギマランイス,前にジョエリントンとトナーリの2CMという構成で行くのかもしれないと考えを改めた。
なお、先ほどのパス能力に関してギマランイスでレーダーチャートを作成すると以下のようになる。
トナーリの課題として挙げた精度の部分でもへこみが無く、全体的にバランスの良い形で選手としての完成度でこのブラジル代表MFと比較するのは些か可哀想になってくる。そもそも彼はプレミアリーグ全体でもTOP3に入るDM,CMでしょう。
マグパイズの主要な中盤全員の比較はこんな感じに。
明確に出し手と受け手に分かれているが、当該分野においてこれといって尖った部分がない,言い換えるとストロングポイントを見つけにくいロングスタッフ兄辺りは技術的な向上を見せるか他で巻き返すかしないと来季の出場機会が減少しそう。