※22/23 イングリッシュプレミアリーグ
マンチェスター・ユナイテッドvsブレントフォード戦の記事です。
カゼミロ、エリクセンと中盤の主力不在の中でどのようにポゼッションの配置を整えていくのか、個人的には試合を通しこの難問に関して1つの答えらしきものが見えてきたような感覚があります。
— Manchester United (@ManUtd) April 5, 2023
【Match Review】
前回の敗戦から中2日、カップ戦に勝ち残っている事もあってリーグ戦の試合消化が遅れているユナイテッドはホーム オールド・トラッフォードにブレントフォードを迎えて4位へのカムバックを目論む。
Starting lineup
前半
この4バックで試合をするときはリチャ-ヴァラン-ダロトのバック3に前に上がって幅を取るショーというビルドアップの構成が多かったですが、今回はフルバックの役割が左右で入れ替わっていました。こちらの方がそれぞれの良さを発揮しやすく、どうしても孤立しがちなアントニー問題をある程度フォローできるので今後もこれを継続するべきだと思う。
また、2戦目となる4-2-3-1の2でのブルーノの起用に関しても彼自身のプレー判断の改善、ショーがInverted-Wingbackとして振る舞いブルーノが左サイドでプレッシャーを受けずフリーでボールを受けられる環境が整っていた事など、個人・チームの両面で練度が上がっている。
ラッシュフォードのCF起用はイメージとしてはカタールW杯のエンバペが近い。彼らのような守備貢献の低いアタッカーをウインガーとしてサイドに置いた場合、相手フルバックの持ち上がりに対し数的不利が容易に生まれるので、前線のコース限定や2度追い等が鈍くなるとしても一番前に置いている方がデメリットを抑えやすい。中央で使われたとてそこに留まる必要は無く、攻撃時は外に流れて得意な仕掛けの形に持って行ってもいいので、その辺りは周りの選手とのコンビネーションが大切になるだろう。
マンチェスター・ユナイテッドのビルドアップは前述のように後ろの3を軸に前にマクトミネイorブルーノを置く3-1-5-1(時折2-3-2-3)。サイドに厚みを作ってブレントフォードのセントラルMFを外に釣り出してハーフスペースに空間を作り、更に右サイドではダロトの中→外のダッシュでチャンネル(CB間)やCB-WBの隙間を広げるなど、縦方向に押し込みつつ横のギャップを常に生じさせる理想的なポゼッションが出来ていた。
ただ、マクトミネイのサポート意識の低さやボール・イン・プレー時のデヘアのボールの置き方といった課題についてはまだ解消されず。
ブレントフォードとしてはトニー-エンベウモのカウンターやロングスロー等の飛び道具で少ないチャンスをモノにしたかった所だが、5バックが機能せず中盤も外に誘われる回数が増えた事で頼みの2TOPも位置取りが低くなり中々カウンターへの移行がスムーズに行かない。更にスローインもベックのような強力なスローワーがおらずイェンセンが投げるボールは然程脅威では無かった。
21分、CB脇に降りたブルーノからダロトに対角線のロングパスが通ると、そこからWB裏に走るアントニーへ絶妙な縦のパスが入りアントニーはダイレクトで右足クロス。マイナスの折り返しに対しフリーで待ち構えていたマクトミネイがハーフバウンドで合わせるがシュートは枠上。形としてはかなり良かった。
25分を過ぎた所で入った給水はラマダン期間中に選手の健康状態を考慮して導入される事が決まった休憩時間で、飲水のみならず栄養補給のためにバナナなどを口にする選手も見られる。
27分、ラッシュフォードが後ろからのボールを収めて上がってきたサビツァーとスイッチしてカウンター。この流れからコーナーキックを得ると、CK後のセカンドボールをアントニーが収めてボックス内へループパスを送り、サビツァーが頭で落とした所にラッシュフォードがインサイドで合わせて先制!
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— SPOTV NOW JAPAN (@SPOTVNOW_JP) April 6, 2023
ラッシュフォード🔴
勝利へ導く決勝弾❗️
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サビツァーは相手背負った状態での中継役や狭いスペースでのパス&ムーブに強みがあるという事が良く分かるゴール。
思い通りのゲーム運びで時間を進めるユナイテッドであったが、誤算だったのは前半の内にショーがアクシデントで途中交代を余儀なくされたこと。変わって入ったマラシアもしっかりと求められる役割を全うしたが、過密日程で消耗の激しいポジションに負傷者が生まれてしまったのは痛恨。
カットインからのファー狙いのカーブ、または左からのクロスボールに対し少し後ろから入ってボレーを放つなど、アントニーがシューターになる攻撃が多かったと感じているが、(恐らく)踏み込みの弱さに起因するであろうキックの弱さやシュート精度不足の課題が明確になった。
後半
HT明けの交代は無し。ブレントフォードが全体の守備位置を前に持っていき、更にボールホルダーへのプレッシャーを強めた事で前半程ワンサイドゲームでは無くなった。相手2TOP脇から楽にボールを運ぶのもやりづらくなり、ユナイテッドには相手のプレス下で著しくボールタッチの質が落ちる選手も多く不用意なエラーもちらほら。
上述のようにブレントフォードの前線はプレッシングの始動ラインが高くなったが、背後を警戒する最終ラインが低い位置に残ってしまうのでかえってライン間が広がってカウンターの餌食になりやすい状況が生まれていた。
62分のブレントフォードは大胆に3枚の選手を入れ替えるが、微妙にかみ合っていない3-5-2(5-3-2)はそのまま継続してきたのでこの点はホームチームにとって運が良かった
67分、ゴールキックを跳ね返されてトニーにボールが入ると、反転でリチャが交わされて更にヴァランもシャーデに先にボールを触れられてGKとの1on1のピンチ。ただ、ここはジリジリとゆっくり距離を詰めてシュートコースを潰したデヘアの処理が勝り相手の決定的なチャンスを凌いだ。
Clean sheet = preserved ⛔️
— Manchester United (@ManUtd) April 6, 2023
Nice one, @D_DeGea 👏#MUFC || #MUNBRE
・・・とハイライトで見れば恐らくデヘアの好プレーだけで終わっているだろうが、実際にはゴールキックでサンチョをターゲットにロングボールを蹴った判断の失敗からくる危機だったようにも……
70分を過ぎ、ユナイテッドも2回目の交代でマルシャル,フレッジをピッチへ投入。遂に戻ってきたマルシャルのボールプレーはやはり素晴らしいものがある。何回も言ってきているが兎に角怪我をしないでください。
押し込んだ状態からマクトミネイの短いパスがズレてしまったり、シュートシーンまで行っても中々ボールが枠を捉えなかったりと2点目は遠かったがシャーデの決定機以降は相手にシュートを打たせず最終盤まで試合を進める。
アディショナルタイムまで5分を切った辺りでアントニーに替えてリンデロフ、バックスを5枚にしてゴール前を厚くし1‐0で完封勝利を収めた。
データ
Standard
シュート数は18:6、ユナイテッドが3倍の数を記録しているものの、オンターゲット3というのはいささか物足りなさが残る。しかし、パスの総数が600本を越えてかつ成功率も86%と高スコアを出したようにポゼッションでは進展のある90分だったと思う。
因みに、コーナーキック12回というのは昨年10月のEL オモニア戦に次ぐ今季2番目に多い数字で、これはアタッキングサードまでコンスタントにボールを進められていた事を示すスタッツの1つと言えるだろう。
選手個人に焦点を当てるならば今回はブルーノ。
ボール保持の役割は大きく変わっていないが、初動の位置が低くなった事でエリクセンが任されていた"Deep-Lying Playmaker"としての仕事が多くなった。これまでのブルーノを見ると、一発のパスで英雄になり得るハイリスクハイリターンの選択肢を選びがちで、どちらかと言えば堅実さ,言い換えればペースを落とすようなボールプレーへの適応に不安があったものの、時と場合を判断し上手くプレースタイルを使い分けられていた印象を強く抱いた。
実際、ボールタッチ数114、パスの試行回数96回はいずれもピッチ上で最多であったものの、精度を見てもパス成功率86%、ロングボールも7/9で成立と素晴らしい結果を残している。
understat算出のゴール期待値は1.14 - 0.64とロースコアで決着。これは両クラブのオンターゲット数を合計しても僅か4とフィニッシュワークの質を欠いた点が直結していると考えられる。
結果を分けたのはそれぞれ1度ずつあった決定的な得点機会をモノに出来たかそうでないか。ユナイテッドはサビツァーの落としにラッシュフォードがGKの頭上を抜いてしっかりゴールに結びつけられたが、ブレントフォードのシャーデは1on1のチャンスをストップされて主人公になる機会を逃した。
あとがき
正直もっと苦戦するのではないかと危惧していたので、トーマス・フランクのビーズ相手に完封勝利を収めた事については驚きもあります。彼らの次の相手はニューカッスルなので、ホームに帰りオールド・トラッフォードでの鬱憤を晴らして欲しい。
さて、次のゲームは日本時間4月8日20:30、現地ランチタイムキックオフのエバートン戦。ただでさえニューカッスル戦↪ブレントフォード戦の間隔が中2日である上に今度はそれ未満という事で選手の疲労はピークを迎える事になるでしょう。
移動が無い事だけはせめてもの救い。