※23/24 イングリッシュプレミアリーグ
マンチェスター・ユナイテッドvsエバートン戦の記事です。
週一の試合間隔ならば今回のようなロングボールからのルーズボール回収に重きを置いた戦い方も十分持つと思います。理想はテンポを自分たちでコントロールするポゼッションフットボールですが、今のスカッドに合っている戦い方はこちら側。
— Manchester United (@ManUtd) March 9, 2024
【Match Review】
Starting lineup
マグワイア、ホイルンドは翌週末のリバプールとのFAカップを復帰目標に定めるとの事で引き続きベンチ外。LBのマラシアは結局今シーズン中の復帰が難しいという報道も出始めており、それならば何故冬の市場でレギロンをローンバックさせたのかというフロント陣及びメディカルスタッフの見通しの甘さには呆れて声も出ない。
前半
マンチェスター・ユナイテッドはポゼッションを諦めてオナナのフィードやハイプレスからのショートカウンターベースの攻撃を主とし、寧ろアウェイチームの方が丁寧にボールを繋ごうという意図が強かった。そんな中でユナイテッドはフォルスナインのブルーノが攻撃時にエバートンのライン間に自由に顔を出し、ガルナチョとラッシュフォードはフルバックを牽制する高いポジショニングでワイドストライカーのように振る舞う可変システムを採用。
エバートンの方は4-4の2ラインの前にドゥクレ、ベトが立て並びの4-4-1-1で、前線プレスはその2枚に任せつつメイヌーがビルドアップに参加する素振りを見せるとガーナーかアマドゥ・オナナの片方が前に上がってマークという形。攻撃はシンプルなアーリークロスが中心で、左足の精度が絶好調のマクニールのミドルショットは脅威だったが全体のパターンはそれほど多くなく守り易かった部類だろう。
先読みしてクロスが来る位置に構えているエヴァンスのインテリジェンスと多少無理な体勢でもしっかりとクリアまでもっていけるヴァランのCBユニットはこの類のクロス乱打に対しては非常に強く、更にここ最近はオナナのショットストップが驚異的な領域に突入している為チャンスの数で上回りながらエバートンは中々得点を奪えずという展開が続く。
10分、中盤でのルーズボール合戦を制して攻撃に転じたユナイテッド。マクトミネイはシンプルに左外のラッシュフォードにパスを出し、背番号10は中央からダイアゴナルランで左ハーフスペースに現れたガルナチョへスルーパス。ターコウスキとの1on1を迎えたガルナチョは相手に対し身体を正面に向けながら右足アウトサイドでマイナス方向へ切り返し、ボールを蹴り出そうとした所に丁度自身の左足が来るような上手いファウルの誘発で見事ペナルティキックを獲得。
動き出し ➡️ PKを獲得
— マンチェスター・ユナイテッド (@ManUtd_JP) March 11, 2024
それは我々の@AGarnacho7💪#MUFC || #PL pic.twitter.com/1RYUuXJ5gg
PKはブルーノがピックフォードにコースを読まれながらも手の届かない隅へしっかりと蹴り込んで先制はマンチェスター・ユナイテッド!!
エバートンの守備は割と足をちょんと出してくる傾向が強く、ガルナチョは25分にもゴールを狙える位置でのFKを奪い、ブルーノのフリーキックはピックフォードの好セーブが無ければゴールになっていた惜しい内容。ガルナチョ自身のプレーについては、余計な事を考えずシンプルな選択をしている時は高い確率でチャンスを生み出していたので、とにかく意思決定の向上を求めたい。
当初、ロングフィードの蹴り先は左右差なくという印象だったが、徐々にミコレンコのハイボール対処のマズさが露見すると右サイドを集中的に狙い始める。特にカゼミロのロブパスにブルーノが裏抜けを試みた32分のシーンやガルナチョの低いクロスに対し滑り込んだ際に完全に手でブロックしていたAT1分のシーンなどは支え手という解釈ではカバーしきれない程に疑惑の判定であり、今後も守備面でネックになりそう。
34分にはピックフォードが自陣から蹴ったエバートンのFKをボックス手前でカゼミロがしっかりと弾き、カウンターに転じてマクトミネイからパスを受けたガルナチョが右→中央へ長い距離をやや強引にドリブルで進んでいく。すると、ボックス内に入った所でゴッドフリーが完全に足裏で踏んづけてしまう迂闊で痛恨のタックルを犯して2度目のPK。
2回目のPKキッカーはブルーノではなくラッシュフォードで、完全にピックフォードの逆をつくキックで安心の追加点が生まれた。
是非触れておきたいのは良い変化があったマクトミネイとリンデロフ。マクトミネイは1つ1つのキックや相手とのコンタクトでの力強さを感じる場面が突然増加し、DFライン裏へのスルーパスが普段よりも効果的になり、リンデロフはアジリティ不足を準備早めるというアプローチでカバーしようやく光明が見え始めている。
切り替えの速さ👀 🏃♂️💨
— マンチェスター・ユナイテッド (@ManUtd_JP) March 11, 2024
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前半終了直前には欲張ったエヴァンスが低い位置でボールを失いマクニールに決定機を与えるが、ヴァランの素晴らしいブロックによって何とか最初の45分を無失点で終える事に成功。
後半
後半も基本的には両チーム同じ戦い方で挑み、ユナイテッドのボールサイドへの圧縮が甘くなるとエバートンがミドルレンジの横パスからチャンスを生み出し、逆にしっかりと寄せきれるか相手の攻撃をボックス近辺で跳ね返せばホームチームのカウンターという展開が続く。
なお、前半はプレスバックをしっかりとやり切っていたラッシュフォードだが、ターコウスキに淡白に突っ込んでいって交わされた50分の場面を皮切りに後半はムラっ気が出てきてしまう。1回で奪い切れる事は基本的に少ないので、ブルーノのアンガーマネジメント同様にラッシュフォードの守備対応も忍耐を身に着けるべきだろう。
エヴァンスのボールキャリーを起点にブルーノへの斜めのパスで一気にスイッチを入れた54分の疑似カウンターはエバートンのライン間の広さを突いた見事な攻撃で、ガルナチョのニア上を狙ったシュートは枠を捉えなかったものの全体のデザイン自体は綺麗にハマっていたので今後の試合でも見てみたい。
60分を過ぎてエバートンは一気に3枚のカードを切る。存在感の乏しかったベトに替えてキャルバート=ルーウィンが入り、ユナイテッドキラーの登場に戦々恐々。やはりクロスに対しての動き出しや縦パスを引き出す身体の向きなどFWとしてのオフボールは彼に一日の長があり、ベトはFootball Manager2024ではそれこそカラム・ウィルソン並みに無双する選手であるが、現実では正直まだ心許ない。
ゲーム終盤に入りカンブワラ投入、同時にダロトがLBへ移動しリンデロフがCBにスライドという形もお馴染みになり、メイヌーとアムラバトの交代カードも同様、貧弱なスカッドではどうしても固定された交代策になりがち。更に80分台には集中力が少し切れているかのようなプレーがチーム全体に散見されたが、オナナが常に緊張の糸を張っていた事は救いである。
良くも悪くも前半の焼き直しのような内容なのでこれ以上語るような事も特にないが、アディショナルタイムの時間の費やし方は無駄にシュートを狙ってカウンターのリスクを招くようなプレーを避ける意識は見られた。それでもやや不用意な前線への楔のパスからエバートンのチャンスになりかけるシーンがあったが、90分を戦ってなお瞬発力が求められる守備対応で完璧なプレーを見せたダロトの貢献もあって無事無失点で試合を乗り越えた。
データ
Standard
オンターゲット数はユナイテッドが8本とエバートンを2つ上回っていて、逆にシュート数そのものではエバートンが8つリードするという結果に。自分たちでボールの主導権を握りながら進めていくという戦い方を放棄していたのでこのスタッツ自体には驚きも不満も無いが、オナナのスーパーセーブ頼りという局面を作られ過ぎている点については明確な課題。
その守護神については今回もセーブ6回、ハイクロス対応2回とゴール前に入ってくるボールやゴールマウスを捉える相手のシュートに対し抜群の対処を見せており、それだけでなく主に相手フルバック裏を狙うレーザーのようなロングフィードでの攻撃貢献も含め、この試合の最優秀選手は彼が一番相応しいだろう。
PKが2回あった事でマンチェスター・ユナイテッドのゴール期待値は2.90まで伸びているが、エバートンもノーゴールではあったがxGは1.82とまずまずのスコアを記録しており、オープンプレーに限っていえばこちらの方がチャンスを多く作っていた。
低い位置からポゼッションしようとするとヴァラン、カゼミロでほぼ確実に詰まるため、レンジの広いオナナのキックによって一気にアタッキングサードまでボールをかっ飛ばした方が現時点のチーム状況ではゴール前まで運びやすいという事が分かる結果でもある。
Man Utd 2 : 0 Everton
— markstats bot (@markstatsbot) March 9, 2024
▪ xG: 2.49 - 1.48
▪ xThreat: 0.99 - 2.09
▪ Possession: 50.8% - 49.2%
▪ Field Tilt: 29.6% - 70.4%
▪ Def Action Height: 40.3 - 46.3#msbot_eng #epl pic.twitter.com/gE5yBrZZJ7
PASSING NETWORKをみるとユナイテッドの配置はカゼミロが中盤底に入るダイアモンド4-4-2のように見えるが、実際にカウンターの際にはブルーノが前線から降りてエバートンFW-MFライン間、またはMF-DFライン間でボールを受け、高い位置に留まっているガルナチョとラッシュフォードの両翼にパスを渡すというパターンが多く見られたので見た目上4-2-3-1の変則4-4-2というこの試合の戦い方がハッキリと表れていた。
あとがき
おそらくリバプール戦も今回のブルーノフォルスナイン+カウンター時の前残りガルナチョ-ラッシュフォードをベースに構成してくるものだと思っています。仮にホイルンドがプレー可能ならばラッシュフォードのところを彼にしてもそのまま適用出来るので、後は一週間でどれだけ相手への対策が出来るか、チーム戦術の上積みがあるかがライバルに勝利する為に必要な条件でしょう。
正直に言えば負けて当然と言ってもいいくらいに差があるので、失うものなどない挑戦者という立場から余計なプライドを捨てて目の前の試合を全力で取りに行く姿勢を見せてくれれば。