6月も終盤、いよいよ前シーズンの残り香も薄くなってくるというこのタイミングで22/23のマンチェスター・ユナイテッドについて総括をしたい。
本来ならば新選手加入やオーナー交代といったポジティブな話題をしたかったのですが、そのグレイザーズのまるで最後の悪あがきのようなグダグダっぷりもあってどちらにも進展が見られないので、振り返りの手始めとして今回は前シーズンの選手の貢献度をランク付けしてみる。
選手個人の評価
(出典:fbref.com)
- 最多試合出場:ブルーノ・フェルナンデス(59試合)
- 最多出場時間:ダビド・デヘア(5250分)
- 最多ゴール:マーカス・ラッシュフォード(30ゴール)
- 最多アシスト:ブルーノ・フェルナンデス(13アシスト)
- 最多得点関与(G+A):マーカス・ラッシュフォード(39回)
- 最多シュート:マーカス・ラッシュフォード(167本)
- 最多インタ―セプト:カゼミロ(65回)
- 最多イエローカード:カゼミロ(13枚)
- 最多レッドカード:カゼミロ(2枚)
ゴールキーパー
ダビド・デヘア(David de Gea)
主な成績:58試合出場,クリーンシート25試合,PKセーブ1回
かつては圧倒的なショットストッパーであったがその強みも今やリーグ内で平均程度。クロス対応やポゼッションでのボールプレーでは気が利かない上に技術的にもついていけないような内容で、現在の週給£375K,1990年生まれの33歳という情報も考慮すればここらが道を分かつタイミングだろう。ゴールデングローブ受賞を最後の手土産にこれ以上晩節を汚して欲しくないという感情もある。
採点:5 ★★★★★☆☆☆☆☆☆
Martin Dúbravka(マルティン・ドゥブラフカ)
主な成績:2試合出場.クリーンシート1回
リザーブGKとしてニューカッスルからローンで加わったドゥブラフカ。冬のマーケットで保有元へ帰ったが、半シーズンでカラバオカップの2試合に出場した。足元に自信を持っていそうに見えたが技術的には心許ないという印象。
採点:4 ★★★★☆☆☆☆☆☆☆
トム・ヒートン(Tom Heaton)
主な成績:2試合出場,クリーンシート2回
実はクリーンシート率100%のヒートン。前述のとおりドゥブラフカがローンバックした事でカップ戦での出番が訪れ、ボックス外に飛び出してのカウンター処理で危機を未然に凌いだフォレスト戦のパフォーマンスは間違いなくクラブのカップタイトル獲得に繋がっている。
採点:6 ★★★★★★☆☆☆☆
ディフェンダー
ディオゴ・ダロト(Diogo Dalot)
主な成績:42試合出場,2ゴール2アシスト
実はリーグ屈指のトップスピードを持つダロト。GKがボールを持った際の動き直しやカウンターで攻めあがる場面でそれを伺い知ることが出来るが、最大の魅力はチャンスクリエイト能力。90分辺りのキーパスはチーム5位、攻撃性能を評価される事が多いショーをも上回っている。守備面で特に大きな粗があるわけでもなく、なぜ彼がそれ程評価されていないのかと個人的に不思議に思っている。
採点:7 ★★★★★★★☆☆☆
アーロン・ワン=ビサカ(Aaron Wan-Bissaka)
主な成績:34試合出場,1アシスト
タックラーといえばワン=ビサカ、この対外的印象の強烈さは恐らくピッチ上にも有利な形で作用しているだろう。シーズン前はインテリジェンスの面で彼に関して正直諦観していたが、立ち位置であったりオフボールの動きはかなり改善されているので良い意味で驚かされた。あとは兎に角ボールプレーです。
採点:6 ★★★★★★☆☆☆☆
ルーク・ショー(Luke Shaw)
主な成績:47試合出場,1ゴール6アシスト
LBのみならずCBとしても新たな才能を開花させたショー。心配になる程守備面の出来が悪かった昨季に比べると球際の強さやトランジションの手抜き具合は健全な状態に戻ったように見える。ただ、自身のボールプレーの才能に甘えてサポートの動きを疎かにすることがよくあるので、様々な意味で自分に厳しく律し続けて欲しい。
採点:7 ★★★★★★★☆☆☆
タイレル・マラシア(Tyrell Malacia)
主な成績:39試合出場
Inverted-Fullbackとしてのプレーは最もスムーズに溶け込んでいたマラシア。恐らく戦術理解はチーム内でも5本の指に入ると思われるが、空中戦と相手に背負われた際の弱さをどうするかが来季の課題。そしてクラブ加入後最初のゴールも近く挙げたい所だ。
採点:5 ★★★★★☆☆☆☆☆
ブランドン・ウィリアムズ(Brandon Williams)
主な成績:1試合出場
怪我人続出の終盤はそれなりにベンチ入りをしていたが、正直試合に出ていた印象は全くない。それもそのはず、今季の出場機会はEFLカップのバーンリー戦で終盤の守備固めとして1試合のみで時間にして5分程度だった。フットボーラーとしてのキャリアを考えるならば間違いなく新天地を求めた方が良い。
採点: None(あまりに時間が短い為)
リサンドロ・マルティネス(Lisandro Martínez)
主な成績:45試合出場,1ゴール
加入初年度からDF陣をまとめるリーダー的存在になったリチャ。ユナイテッドのビルドアップは彼の個人能力で何とか解決していたシーンが多く、パスの正確性と視野の広さは実質CBにプレイメイカーがいるような心強さ。自陣ボックス内でも決定機を防ぐブロックやスライディングタックルを何度も披露し、個人的には今季のチームMVP。
採点:10 ★★★★★★★★★★
ラファエル・ヴァラン(Raphaël Varane)
主な成績:34試合出場
22/23シーズンは負傷離脱が多かったヴァラン。リチャとのユニットの補完性を考えれば、高いアスリート能力を持つ彼は必須なのだが正直心象はあまり良くない。良い面を見ると、チームがポゼッションフットボールへ舵を取った中で大きく進歩したのはボールキャリー能力。年齢的に来期以降は出番が減少かもしれない……
採点:6 ★★★★★★☆☆☆☆
ヴィクトル・リンデロフ(Victor Lindelöf)
主な成績:35試合出場
CBのファーストチョイス2名が立て続けに離脱した終盤、何とか踏みとどまる事が出来たのは彼がハイパフォーマンスを継続したからに他ならない。テン・ハフもチームにとって重要な戦力とその評価を改めたようで、来期以降も彼のロングフィードにラッシュフォードを筆頭にアタッカーが抜け出してのビッグチャンスがしばしば見られそうだ。
採点:7 ★★★★★★★☆☆☆
ハリー・マグワイア(Harry Maguire)
主な成績:31試合出場
出場すれば必ずと言っていい程失点に繋がるエラーをする、悪い意味で再現性が高く完全に信用を失ったマグワイア。首振りを怠り、ファーストタッチもその後をあまり考えず何となくで済ませる事が多く、今のチームでは居場所が無い。ローブロックで跳ね返すような戦い方ではまだやれる筈なので個人的には移籍を推奨。
採点:3 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
ミッドフィールダー
ブルーノ・フェルナンデス(Bruno Fernandes)
主な成績:59試合出場,14ゴール13アシスト
シーズン中盤までは無謀な前方向への意識でボールロストを招く事も多かったが、流石はブルーノ、リスクマネジメントとチーム全体のテンポを考えたプレーが出来るようになって気が付けばまた1つ選手として高みに昇った感もある。もしかすると来季は部分的にDeep-Lying Playmakerのようなタスクを負うかもしれないが、今の彼なら間違いなく対応できると断言する。
採点:9 ★★★★★★★★★☆
カゼミロ(Casemiro)
主な成績:51試合出場,7ゴール6アシスト
開幕からブレントフォード,ブライトンに連敗しどん底だったチームに表れた救世主。連戦になると信用し切れない所はあるが、コートの広範囲をカバーする守備面、特に押し込んだ状態からロストした時のカウンターを防ぐインターセプトには幾度となく助けられた。ポゼッション時は前方向への意識が強いので、出来れば彼を1つ前に持っていける選手を補強したいところ。
採点:8 ★★★★★★★★☆☆
クリスティアン・エリクセン(Christian Eriksen)
主な成績:44試合出場2ゴール10アシスト
エリクセンをフリーエージェントで獲得出来た事は昨季のマーケットで一番の成功と言えるだろう。前への気持ちがはやり過ぎるユナイテッドの面々において、数少ない緩急の緩をもたらせられる選手で、トランジションゲームではついていけない事も度々あったが彼抜きだと一気にボール保持の質が低下。(特に怪我前は)
採点:8 ★★★★★★★★☆☆
フレッジ(Fred)
主な成績:56試合出場,6ゴール5アシスト
他の追随を許さぬ守備アクションの数は勿論、不思議なゴール前での落ち着きと運を持っていた今季のフレッジ。全般的に質より量というスタイルで、迂闊なプレーも少なくないが疲労した終盤に登場する彼は何と頼もしかったことか。年齢を考慮したなのか放出の噂も根強いが、その場合代替選手に求められるハードルは想像以上に高いはず。
採点:7 ★★★★★★★☆☆☆
スコット・マクトミネイ(Scott McTominay)
主な成績:39試合出場,3ゴールアシスト
求められた役割はホールディングMFながら実際に強みが出るのはそれよりも前のポジション、しかし攻守に気の利かないプレーが多くどのように起用すれば真の意味で力を発揮するのか未だに分からないというマクトミネイ。右サイドに寄って時折見せる3~4人の連携は面白いが、より試合をコントロールしながら戦う方向へ進むであろう今後のユナイテッドとは正直相性が良くない。
採点:5 ★★★★★☆☆☆☆☆
マルセル・サビツァー(Marcel Sabitzer)
主な成績:18試合出場,3ゴール1アシスト
半シーズンローンで冬に加入したオーストリア代表MFはアグレッシブなプレーと無駄走りを厭わない姿勢で一気にサポーターの心を掴んだ。4-2-3-1のDMとしては被カウンターのケアが至らない点もあったが、エリクセン離脱後はブルーノと役割をチェンジしてトップ下としてプレーする事も多くなる。
採点:6 ★★★★★★☆☆☆☆
ドニー・ファン・デ・ベーク(Donny van de Beek)
主な成績:10試合出場
過去2シーズンはピッチ上に漂流しているかのように悉く味方と意図が噛み合わずにいたものの、恩師の指揮官就任で一気に立場が変わると期待されたドニー。しかしながら、スタメン出場の機会を得た年明け初戦のボーンマス戦で相手DFのスライディングが伸展した右脚にもろに入ってしまい無念のシーズンアウト。悪夢のような1年に……
採点:3 ★★★☆☆☆☆☆☆☆☆
コビー・メイヌー(Kobbie Mainoo)
主な成績:3試合出場
アカデミーの中盤では最もテン・ハフの期待が高いと思われるメイヌー。アンダーカテゴリーで見せる才気あふれるボールプレーの片鱗をトップチームでも披露し、今季のジミ・マーフィー賞(クラブの年間最優秀若手選手に贈られる)に輝いた2005年生まれのワンダーキッドの未来は明るい。
採点:None(来期以降の活躍に期待)
フォワード(ウインガー含む)
マーカス・ラッシュフォード(Marcus Rashford)
主な成績:56試合出場,30ゴール9アシスト
造反や相次ぐ戦線離脱、中々メンバーを固定できなかったアタッカー陣の中でコンスタントに出場し続けたラッシュフォード。守備時の怠惰は確実にチームの首を絞めているが、シーズン30ゴールに到達したゴール奪取能力については素直に評価したい。恐らく来季はCF一本化で、強力なライバル加入も予想されるが赤い悪魔の背番号10に相応しい活躍を引き続き期待する。
採点:8 ★★★★★★★★☆☆
アントニー(Antony)
主な成績:44試合出場,8ゴール3アシスト
アントニーの良さはテクニカルなウインガーにも関わらず、サボり癖が無くプレッシングにも積極的なところだろう。得点関与は少し物足りないがチーム全体の配置を整えるボールキープや右斜め45度からの左足のショットは十分に勝利に貢献している。終盤の怪我が来季にどれだけ響くかどうかは気がかりであるものの、引き続きRWのファーストチョイスである事に疑いの余地は無い。
採点:7 ★★★★★★★☆☆☆
ジェイドン・サンチョ(Jadon Sancho)
主な成績:41試合7ゴール3アシスト
相手の動きを見ながらいわゆる後出しじゃんけんでその場に沿ったプレーを選択できる冷静さがサンチョの魅力だが、メンタルヘルスの問題も影響していたのか試合単位での安定感が無かった。1人で何とかしてこいという起用だと輝けないが、複数枚の絡むユニットを重視しコンビネーションで崩す力に関してはチームでも3本の指に入る。
採点:6 ★★★★★★☆☆☆☆
ヴァウト・ヴェフホルスト(Wout Weghorst)
主な成績:31試合出場,2ゴール3アシスト
ヴェフホルストをストライカーとしての基準で判断するかチームプレイヤーとしての評価で見るかどうかという点は人によって分かれる。私は後者で判断するので、周りを活かす囮のオフボールや手を抜かない前線プレスとサイドに追い込むコース制限といった目立ちにくいが確実に必要な泥臭い仕事を完遂した点に深く感銘を受けた。予言ではないが今後のキャリアはより低いポジションでプレーする事が増える気がする。
採点:7 ★★★★★★★☆☆☆
アントニー・マルシャル(Anthony Martial)
主な成績:29試合出場,9ゴール3アシスト
本来ならばエースストライカーとして君臨していなければならなかったマルシャル。出場試合に対する得点の割合は0.56とそれなりに優秀だったが、筋肉系のトラブルで何度離脱すれば気が済むのかというくらい肝心な場面でスカッドに存在せず、怪我から戻る度にスプリント出来なくなっていったようにも感じた。これでは計算に入れられないので放出もやむなし。
採点:5 ★★★★★☆☆☆☆☆
アレハンドロ・ガルナチョ(Alejandro Garnacho)
主な成績:34試合出場,5ゴール4アシスト
現状はゲーム後半に出すジョーカーという立ち位置で、先発ゲームでの貢献度が課題だったが、怪我から戻ってきた終盤戦は自身がボールを持っている際に向こう見ずに相手DFに突っ込む事が減り、本格的にサンチョとのレギュラー争いに突入するのではないかと期待させた。その為にも来季はパスの分野で成長したい。
採点:6 ★★★★★★☆☆☆☆
クリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)
主な成績:16試合出場,3ゴール2アシスト
クイックネスで突破しにくくなったり、ゴール前でもらしからぬエラーが頻発したが、それ以上にチームに対しての裏切り行為とあまりにも酷い去り方に大きなショックを受けた。既に多くのファン/サポーターの中で彼の存在は無かった事にされている感もあるが、それでも心のどこかでもう一度クラブレベルでも再起して欲しいと願う位には自分の中で特別な選手。
採点:1 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
アンソニー・エランガ(Anthony Elanga)
主な成績:26試合出場,2アシスト
プロデビュー当初に比べると明らかに身体の幅が広くなっており、試合中のプレーを見ても自分に厳しくあれる選手なのだがどうにも結果がついてこない。まずは枠内シュート率を向上させてゴール数を増やしたいところだが、現状では出場機会が巡ってこなそうなので一度外に出てみるのもアリ。
採点:4 ★★★★☆☆☆☆☆☆
ファクンド・ペリストリ(Facundo Pellistri)
主な成績:10試合出場,1アシスト
縦突破メインの順足アタッカーという特徴で周りと差別化を図る事が出来ているが、正直彼がユナイテッドで重要な戦力になれるかと言えばその可能性はあまり高くはないだろう。周りを活かすオフボールを厭わず、瞬間的なスピードで相手を出し抜ける点は大きな強みになるので、その辺りを伸ばしていきたい。
採点:4 ★★★★☆☆☆☆☆☆
チャーリー・マクニール(Charlie McNeill)
主な成績:1試合出場
22年9月のELソシエダ戦で交代出場を果たしプロデビュー。この試合は疑惑の判定によるPKで敗れた曰く付きで、正直彼に対する印象はあまり無いが、今季アカデミーの選手でプロデビュー出来たのはメイヌーとマクニールの2人のみなのでそれを自信にして欲しい。恐らく来季もローンで下部リーグのチームへ行くことになりそう。
採点:None(今後の成長に期待)
総括
以上の30人が22/23シーズンのマンチェスター・ユナイテッドのシニアチームで試合に出場した選手たちとなる。ベンチ入りを含めればより対象者は増えるが、あくまでトップチームでのプレーに対しての評価なので今回は除外。
因みに、出場試合数と私個人の採点の2軸でグラフをつくるとこのようになる。
平均出場試合数は34.6,平均採点は5.93(採点不能とした一部選手は含めず)で、シーズン3位のチームとしてはやや厳しい評価のつけ方になっていたのかもと後になって気づく事もあったが、4区分の右上に入った選手たちの顔ぶれにはそれほど驚きは無かった。
よって、個人的に今季のパフォーマンスが水準以上と私が考えたのは
(順不同)
この11名ということに。
シーズンMVPは選手の項でも少し触れたがリサンドロ・マルティネスを挙げる。
そして、最後にこの人を忘れてならない
エリック・テン・ハフ(Erik ten Hag)
意中のフレンキー・デ・ヨングは結局獲得叶わず、開幕から連敗するなど困難な船出となったが、思い切って自分の哲学を一部曲げて現有戦力に適応すると、公式戦9連勝を含む堅実な勝ち点積み上げて目標であったチャンピオンズリーグ出場権をしっかり確保。思っていたよりもモチベーター寄りなタイプで、選手と激突して去るような雰囲気では無さそうな事からも長期政権を期待できる。是非ともサー・アレックス期の1998/1999や2007/2008を越える黄金世代をこのクラブで築き上げて欲しい。
採点:8 ★★★★★★★★☆☆
満足の行く内容だった人もそうでない人も、クラブに関わった全ての方々、本当に長い長いシーズンお疲れさまでした。来季は是非リーグタイトルを手にして下さい!!