いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

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football managerというシミュレーションゲームであれこれやっていきます。気付いたらユナイテッドの事ばかり書いてます

【 #TOTMUN 】見飽きた展開、ロングパスから崩され続けた右サイド

※22/23 イングリッシュプレミアリーグ

トッテナム・ホットスパーvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。

 

2点リードから同点にされたという既視感のある内容ですが、確実に勝てる試合だったかといえばそうではなく、同じやられ方で右サイドを何度も崩されたことへの不満が残り続けるゲームでした。

 

 

 

 

【Match Review】

 

Starting lineup

 

ベンチ入りトッテナム
6 D.Sánchez, 16 Danjuma, 21 Kulusevski, 25 Tanganga, 27 L.Moura, 29 P.Sarr, 33 Ben Davies, 40 B.Austin, 55 Mundle

マンチェスター・ユナイテッド
9 Martial, 12 Malacia, 15 Sabitzer, 17 Fred, 27 Weghorst, 28 Pellistri, 31 Butland, 33 B.Williams, 36 Elanga  

 

出場がブルーノがまさかのスタメン起用。その鉄人っぷりには頭が上がらない。

 

前半

 

3-4-3(3-4-2-1)と4-2-3-1のマッチアップなのでまずはホームチームがボール保持でWBをどう使うか、或いはアウェイチームがそれにどう対処するかという点が重要になる。

 

スパーズのCBはそれほど配球能力のある選手で構成されていないので狭いところをダイレクトプレーで突破されるシーンはあまり無かったが、ユナイテッド右サイドの奥、ワン=ビサカ目掛けてロングキックを蹴ってリシャルリソンをぶつけに行くという狙いを明確にすることである程度それをカバーし、前半を通してここから一定のチャンスを作られてしまう。

 更に言えば、多少キックがアバウトになったとしてもリンデロフもそこまで空中戦に絶対の自信がある選手では無いので、今後も対ユナイテッド戦ではこれを狙ってくるクラブが多くなりそうな予感。

 

一方、彼らのポゼッション時の選手間距離が広いので、ユナイテッドとしてはボールを奪った後に前線の選手にある程度余裕を持たせたボールを入れやすく、更に相手DM2枚のうちホイビェアがブルーノや降りてくるラッシュフォードに対して前に出てくる事から楔パス→反転持ち運び、或いは落としから3人目が絡む素早い展開が成功すると一気にバックス裏やDF-MFライン間でのチャンスに繋がる。

 

実際に7分のサンチョの先制点もリンデロフから中盤に降りたラッシュフォードへの縦パスを起点に左サイドへボールを繋ぎもぎ取ったものである。そして、この局面ではエリクセンがサンチョの外を回ってしっかりと他の選択肢を作っている点も目立ちにくいものであるが注目したい。

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先制したユナイテッドだが、リード時の試合運びに難があるのはここでも同じ。詰まらない位置にパスコースが空いているにも関わらず相手に囲まれやすい所や足が伸びてカットされる程度の隙間を狙う場面が多く、更に前進気勢とでも言うべきなのか、とにかく前へ前へ急ぎがち(最近はカゼミロが顕著)なのでボールロストが生まれやすい構造。

 

他にも落としの短いパスがズレたり、ボールホルダーへのサポートの動きが少なかったりといった問題を抱えているが、共通しているのは味方の配置,対戦相手含め周りの選手の動き,空いているor空きそうなスペースを見つける視野確保及び情報処理能力の不足であり、もっと具体的に言えば首振り(Scanning)が足りていないということ。

 

18分~19分にかけてのユナイテッドはじっくりとポゼッションしながら、サイドチェンジのボールを相手にカットされても後ろからリンデロフが飛び出して即時奪回。最終的にサンチョの追加点のチャンスはロメロとペリシッチの連続ブロックにより阻まれてしまったが、ボール保持ではこれくらい丁寧に繋いでいくことを当たり前にしなければならない。

 

 

序盤から"Levy-Out"のチャントが度々鳴り響いていたトッテナム・ホットスパー・スタジアム。22分過ぎ、ユナイテッドがGK始動の美しいダイレクトプレーで一気にトッテナム陣内の深い位置まで侵入した際、コーナー付近には黒い物体が複数散乱し試合を妨げているようにも見えましたが、これもダニエル・レヴィに抗議するスパーズサポーターが持ち込んだものらしい。

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NIC OUTの£はEと読ませるものと思われ、ENICとはつまりENIC Group,レヴィが所有する投資会社の名前であり、トッテナムの最大の株主です。このEnic Outという文字列はユナイテッドにおけるGlazers-Outのようなもので反レヴィで連帯する為のキーワードと考えればいいのでしょう。

 

 

FAカップのブライトン戦では三笘薫の縦の仕掛けを封じ一躍日本でも知名度を高めたワン=ビサカですが、何度も言っているようにコンビネーションプレーで挑めばそれほど嫌な相手では無く寧ろ間合いの詰め方が緩いのでクロッサーにとってはやりやすいくらいであり、正にリシャルリソンとペリシッチのスパーズ左サイドのユニットはこの攻略法通りに彼を陥れる。

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スパーズGKはロリスではなくフレイザー・フォースターだったが、WBへつけるプレス回避のロブパスやハイボールに対するアプローチなど全体的にそつのないパフォーマンスで、ブルーノのクロスからのラッシュフォードのビッグチャンスを防いだのは後々大きな影響をもたらす。

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先制点の後に2度の決定機を逸し、試合の展開としても然程主導権を握れている訳ではなかったユナイテッド。それだけに相手に押し込まれた状態からのカウンター、ロングボール一発でラッシュフォードがダイアーとの瞬発力勝負に持ち込んで得た2点目は大変貴重だったわけだが。

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後半

 

HT明けの交代は両クラブなし。個で崩してくるわけではないので、随所に緩慢さが見られたワン=ビサカを下げてマラシア、そしてダロトを左から右へ持っていくとばかりに思っていましたが、敢えてテン・ハフの采配にケチをつけるとするならば間違いなくここの交代を決断するのが遅れた点でしょう。

 

48分のスパーズはラングレがハーフスペースで相手を誘引しながら持ち運び、高い位置に張らせておいたペリシッチへパスを渡すと、クロスボールからボックス内でのチャンスを作るがケインのシュートは味方へのディフレクション、ゴール前に上がったラングレのヘディングもクロスバー直撃と最後の一押しが足りない。

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残念ながらユナイテッドの守備は後半も明確な突き所が存在したまま。スパーズからの優しい警告?も虚しくホイビェア→ペリシッチへの斜めのロングフィードで一気にアタッキングサードへ侵入されると、スライドの遅いワン=ビサカをあざ笑うかのようなトリベーラでケインへの正確なボールが送り届けられ、一度はシュートブロックに成功したもののペドロ・ポロがこぼれ球をアウトサイドにかけたボレーで決めきる。

 

ユナイテッドも失点直後にダロト→ダイアー前で要求するラッシュフォードへの楔→ラッシュの落としからサンチョとのパス&ムーブと所謂レイオフの形でボックス内へ侵入し、一度後ろへ戻して最終的にエリクセンのパスに反応したブルーノの決定機に至るも、肝心のシュートはクロスバーが跳ね返す。

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61分、ホームチームはリシャルリソンに替えクルゼフスキを投入しソンを左へ移動させる。同時にアウェイチームもエリクセン🔁フレッジ,サンチョ🔁マルシャルと2枚を入れ替えるが、この人選だと守備面に難のあるラッシュフォードをウイングに配置する事になるので、出来るならばCF同士の交代にしてもらいたい。

 

後の結果を暗示しているような崩され方をしたのは66分。カゼミロ両脇にソン-ケインが構える上にDFラインとMFラインの距離感が遠いというボールロスト時のリスクが高い状態でのポゼッションで相手にボールを奪われると、ケインが中央から右へ進路を取りながらドリブルし、アタッキングサードに入るくらいのタイミングで逆サイドのソンへ低い弾道のアーリークロス。幸いにもソンのシュートがゴールマウスを捉えなかった事で難を逃れているが、結局のところ問題修正出来ないままであった。

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69分にはやはりワン=ビサカ-ペリシッチ対面での後手後手の対応から危機。ワン=ビサカが対峙する相手のキックモーションに入った際に見せる大きく足を振り上げる隙の大きい動きを見逃さなかったペリシッチは、フェイクを入れて一度斜め後ろのソンを使い、リターンを受けてフリーの状態でゴール前へボールを蹴る。

 フレッジが捕まえられなかった事でクロスボールに対しダイアーがノンプレッシャーの決定機を得るが叩きつけたボールは枠外。何故か首の皮一枚繋がっているものの、ほぼほぼ失点に等しいくらい杜撰なやられ方。

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ユナイテッドは71分にマラシア,ヴェフホルスト投入でようやくRBにテコ入れ。スパーズは77分にベン・デイビス,ダンジュマをピッチに送り込み、ブロックを敷く際は3-4-3のままだが、攻撃時はクルゼフスキがウインガー、ダンジュマCFでケインが中盤に降りてよりボールに触れる回数が増加し、更に3CB+LWBの4バック気味になるケースも。

 

79分、ラッシュフォードをターゲットにしたデヘアのロングフィードが跳ね返され、セカンドボールへの態勢が整っていなかったユナイテッドはマラシアが重心の逆を突かれる形でケインにボールを与えてしまう。そして10数分前のケース同様ケインからゴール前を通過する絶好球を受けたソンが今度こそゴールネットを揺らし同点に。

 ここだけ見れば確かにマラシアの滑稽なエラーに感じるが、それまでの経過を見ればいつか起こり得る失点だったので1人の失敗と結論づけるのは間違っていると思う。

 

完全に勢いはホームチームかという展開で逆転も覚悟したが、同点に追いついた事で満足してしまったのだろうか、或いは同点に追いつかれたことでアウェイチームの尻にようやく火が付いたのか、終盤は不思議とユナイテッドペースに。この辺りが彼らの今のチーム状況を物語っているのかもしれない。

 

そして勝敗を分ける次の得点は生まれないままタイムアップ。

 

 

データ

 

Standard

 

スパーズのシュート数18の内なんと12本がペナルティボックスの中から放たれていて、クロスボールに対してチェックが甘すぎたのが大きな要因だと考えています。

 

特に68:00~68:20まで、最終的にダイアーのヘディングシュートが枠を外した事で何とか助かった場面では、そもそもの距離感が遠い上に相手がキックモーションに入ると背中を向けたり足を大きく上げたりと守備者として機能しなくなるという一向に改善されないワン=ビサカの欠点が顕著に表れていると思う。また、後ろ向きに走らされる浮き球への対応という面でも自陣の低い位置で到底やるべきではない対応が目立つ。

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基本的に間合いの詰め方が"1on1の突破さえされなければ後は領分ではない"というやり方なので、個人突破一辺倒の選手には有効でも味方を使えたりクロス中心のアタッカーに対しては全くもって鉄壁ではない。

 

因みに、このゲームのファウル数はスパーズ8,ユナイテッド7という事でクリーンな試合に見えますが、相手チームのコンタクトプレーの粗さは普段通りであり、この数字はアンソニー・テイラーのさじ加減によるものと捉えてもらった方が正確でしょう。

 

 

xG

 

参照:

Tottenham 2 - 2 Manchester United (April 27 2023) | EPL | 2022/2023 | xG | Understat.com

 

understat.com算出のゴール期待値はトッテナム2.37,マン・ユナイテッド1.97とこちらもホームチームが最終的に上回っている。79分のソン・フンミンの同点弾はxG0.64というビッグチャンスで、微妙な違いはあれどユナイテッド側のロストからフレッジ-カゼミロの後ろにポジショニングするケインへボールが渡り、右ハーフスペースからのアーリークロスにソンが合わせると66分の決められなかった決定機を瓜二つ。明らかな弱点を放置したままなのでそれを利用されるのは至極当然のことです。

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ユナイテッド視点では1失点目の直後、エリクセンのパスからゴール正面で得点機会を迎えたブルーノのシュートがクロスバーに直撃して再度突き放す事が出来なかったのも痛いですが、例年以上にビッグチャンスクリエイトを記録(現時点で既にPLにおけるキャリアハイの25回)しながらそれを活かせないチームメイトを鑑みれば彼を攻め立てる事はできない。ただ、今季は『Hit woodwork』が過去一番に多いというのも事実。

 

 

あとがき

 

中2日の次節は残り試合で1,2を争う重要な対戦です。OptaやFiveThirtyEightの予測モデルを見ると、現状でユナイテッドのCL圏内フィニッシュの確率は9割弱といったところで、今節のドローによりスパーズは事実上の脱落。残る不安要素はアストン・ヴィラ,ブライトン,リバプールの3チーム。

 うちリバプール以外の2クラブは直接対決で叩き落すチャンスが残り、オールド・トラッフォードでのヴィランズ戦に勝てば6ポインターズを制した事になる。