今回は制度自体の存在意義や改善策を問うのではなく、現時点で一憶8千万ユーロに迫る金額を市場につぎ込むチェルシーを題材にし、あくまで今起きている事象をそのまま観察しています。
イングリッシュプレミアリーグの選手登録に関する主な規則は以下
①シニア選手の登録上限は25人
↪うち17人まで外国人選手の登録が認められる
↪残り(最大8人)はホームグロウンプレイヤーで無ければならない
②U-21の選手は無制限に登録する事が出来る
(22/23シーズンの場合は2001年1月1日以降の生まれ)
③ホームグロウン
↪21歳までに3シーズンFAに加盟するクラブでプレーしていた選手
(国籍や出身は問われず、仮にイギリス国籍所持者であったとしても現トッテナムのエリック・ダイア―のように外国のクラブで育った選手は対象外)
これに加え外国籍の選手は労働許可証発行の条件をクリアする必要がありますが、注目すべきなのは②のU-21枠について。
本来はクラブアカデミー出身の選手に道を作る為のルールであると考えられますが、早熟化の進む現代フットボールにおいて21歳という年齢は既に少なくない実戦経験を積んだ一流の選手が多数含まれる基準。
例えばスリーライオンズで既に20を越えるキャップ数を記録し、移籍市場の度に噂が飛び交うジュード・ベリンガムがプレミアリーグにやってきた場合、彼は2003年生まれなので24/25シーズンまでこの資格を有する事となります。
他にも、昨年のワールドカップで大会最優秀若手選手に選ばれたアルゼンチンのエンツォ・フェルナンデスは満年齢では22歳ですが、2001年1月17日生まれなので今季にイングランドへ上陸した場合U-21の対象下に。
これらを踏まえた上で今冬のチェルシーの補強を見ていくと
ジョアン・フェリックス(1999年11月10日生まれ)
↪半シーズンのレンタル Loan fee:€11M
ミハイロ・ムドリク(2001年1月5日生まれ)
↪完全移籍 推定€70M
ベノワ・バディアシル(2001年3月26日生まれ)
↪完全移籍 推定€38M
ノニ・マドゥエケ(2002年3月10日生まれ)
↪完全移籍 推定€33M
ダヴィド・ダトロ・フォファナ(2002年12月22日生まれ)
↪完全移籍 推定€12M
アンドレイ・サントス(2004年5月3日生まれ)
↪完全移籍 推定€12.5M
現時点までに6人の選手を外部から獲得しているものの、シニア登録が必要なのはアトレティコ・マドリーからドライローンで獲得したフェリックスただ1人。今後2000年12月31日までに生まれた選手を登録する場合には枠の調整が必要となるが、マーケット開幕前の時点でシニア登録枠には1つ空きがあったので、今は全員がプレミアリーグでのプレーが可能な状態。
これが欧州コンペティションになると登録のルールが少し異なり、無制限に追加出来るBリストの対象は「15歳の誕生日からUEFA主催大会の登録日までに2年以上連続して当該クラブに所属した選手」とより厳しい条件が設定されるのでこうはいかないのだが、プレミアリーグのみを考える場合、現状の仕組みではU-21の選手を毎シーズン入れ替えていく事で過剰にも見える潤沢なスカッドを組むことが出来ます。
Noni Madueke will become the 🔟𝘁𝗵 forward in Chelsea's squad 😳 pic.twitter.com/HRbaAkVM7B
— LiveScore (@livescore) January 20, 2023
なお、ムドリクとバディアシルは来季からU-21の対象外となるので、少なくともシーズン終了後には2人以上の選手放出があるのは確定的。ローンバック,或いはユースからのトップチーム昇格や外部からの補強を考えれば更に多く外に出される可能性も高いので、ハキム・ツィエクを筆頭に現体制で燻っている選手が移籍する場合、相場より大幅に安価で取引が纏まるのではないかと予想している。