※22/23 UEFAヨーロッパリーグ
オモニア・ニコシアvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
必勝態勢というよりは調整・確認といった要素の強い試合で、前半のパフォーマンスはあまり良くありませんでした。スコアラーは全て途中出場の選手であり、週末のプレミアリーグでも彼らを中心にスカッドを組むのではないでしょうか。
Job done in Nicosia! ✔#MUFC || #UEL
— Manchester United (@ManUtd) October 6, 2022
【Match Review】
オモニア・ニコシアの監督はニール・レノン。現役時代はセルティックの中心選手としてプレーし、中村俊輔と同僚だった事もあって日本でも知名度のある闘将ですが、2022年3月より監督を務めるオモニアでもプレーオフでベルギーの強豪KAA ゲントを2戦合計4-0で破りグループリーグ進出決めるなど手腕を発揮。
また、この試合のスタメンにも名を連ねる元ウェールズ代表アダム・マシューズを始め、自身のスコティッシュ・プレミア人脈を使い以前のクラブで指導した選手を集めています。
Starting lineup
控えがいないCB、特にフル稼働のマルティネスのコンディション管理に気を付ける必要があり、出来るだけDF陣にプレッシャーのかからない試合展開にしたいはず。ロナウドにはオープンプレーからの得点を求めたい。
前半
力の差がある組み合わせかつ、オモニアは5-3ブロックでバスを止めるような低いライン設定なので序盤からユナイテッドが相手陣内で比較的楽にボールを保持する展開。
相手のバック5にこちらも4-1-2-3の2-3をぶつけて空いているディフェンダーを無くしつつ、ブルーノorエリクセンが降りて縦パスを引き出しつつ、マーカーを前に釣り出す事で生まれた背後をダロト,マラシアの両フルバックが突くという攻撃を頻繁に試み、実際にこのやり方でボックス内まで複数回侵入しています。
また、違う方法としてはダロトが横幅を目いっぱい取り、相手LWB:Lecjaksを押し下げて左から25-7-8-21-20(背番号)で5枚を確保するセットアップも多く採用し、この際は1つ下がってフリーマンになったエリクセンが攻撃のタクトを振るっていました。
これらのような前後左右のスイッチを使った攻撃は引いた相手を崩すのに必須となってくるので完成度を高めていきたいところ。
9分、エリクセン→アントニーへ楔のパスが入り、21番は左に流れながら機会を伺うロナウドへのラストパスを選択。左足のシュートは枠を捉えるもののGK正面で得点には繋がらない。
17分、今度はマルティネス→ブルーノを狙うキックがそのままアントニーへのスルーパスとなり、GKと1on1になったものの、アントニーはより確実に点を奪おうとブルーノへの横パスを選択してタイミング合わず。これはキック自体の失敗というよりは典型的な悪い判断の例。
18分にもアタッカー陣のダイレクトプレーから最後はブルーノがループシュートでキーパーの頭上を狙ったもののクロスバー直撃。ゴール前まで侵入するもののあと一歩フィニッシュワークの精度を欠くシーンが続きます。また、プレミアリーグのクラブ相手を考えると攻撃のテンポも不足しており、緩急の急が殆ど無い事もこの得点欠乏に繋がっていたと考えられる。
主導権を握りながら先制点を得られずじまいのアウェイチーム。すると34分、アントニーが右サイド深い位置で獲得したFKのリスタートでエリクセンのパスを受けたサンチョがマラシアに中途半端なバックパス。更にオランダ代表LBもファーストタッチが大きくなって相手にボールを奪われ、セットプレーで前掛りになっていたユナイテッドは自滅の被カウンターで失点……
上手いシュートではあったがニアサイドを抜かれてしまったという事でデヘアにも責任が追及される。最も、それは本題では無くこのようなカウンターを喰らっていること自体が問題だが。
先述したようにボール保持でも幅を取れず機能不全に陥っていた左サイドだが、更に失点に直結するエラーを犯したという事でこの日の試合の彼らを評価する事は出来ない。特にマン・シティ戦に続き精彩を欠き、それまでの好調が嘘かのようなサンチョは何があったのか心配だ。
後半
HT明けのユナイテッドはサンチョに替えてラッシュフォード、マラシアに替えてルーク・ショーを投入し左サイドのユニットをテコ入れ。既に強いネットワークを構築している2人に変わった事でオーバーラップ/アンダーラップを巧みに使い分けて大外及び左ハーフレーンを崩すシーンが圧倒的に増加した。
53分、FK後の被カウンター場面で一旦GKまでボールを戻し、そこから後方でパスを繋ぎブルーノからラッシュフォードへのロングレンジのキラーパスが通る。トラップがやや乱れ一度は相手DFに触られるが、身体を入れて冷静にボールをコントロールしハーフターンから右足パンチショット!! 見事な同点弾。
スポットが当たりにくい所だと思いますが、デヘアから左サイドでボールを受けたダロトのサイドチェンジが効いた得点。
その後はひたすらユナイテッドが押し込む時間帯。60分にはロナウドの近距離からのシュートがサイドネット直撃というチャンスもあったが、あと一押しが足りない。
そんなタイミングでブルーノに替えてマルシャル投入。すると、直後の63分にマルティネスの縦パスを受けたラッシュフォードがダイレクトヒールでプレゼントパスを送ると、マン・シティ戦で維持の2得点を奪った男が早速この日も結果を残した。
アタッキングサードで押し込む展開が続いたのでマルシャルがどのポジションに入ったかはいまいち分からない所もあったが、アントニーに替えてフレッジを投入してからは恐らくこの形に落ち着いている。
78分、前半で触れた3-2-5の攻め方で前線に上がっていたダロトが正面でGKとの1on1を迎え、左に流れてこれを交わすと中にいたロナウドに後は押し込むだけというお膳立てのパスを送るが、CR7は実質オープンゴールのチャンスでポストにキックしてしまいまたしても得点を記録できない。
それでも、84分にはラッシュフォードと2人でカウンターを完結し最後はボックス内左側からゴール前を通過する絶好のパスを通し遂に得点に関与。貴重なダメ押し点をチームにもたらした。
しかし、得点直後のユナイテッドはビルドアップ局面でダロトからのバックパスを受けてリンデロフのトラップが大きくなりボールを掻っ攫われると、最後は途中出場のNikolas Panagiotouにネットを揺らされ、またしても杜撰なエラーから失点。ボールを受ける前に首を振って相手の位置関係を見ておけば防げた失敗で、アイスマンはスキャンニングを怠りその後のプレーが手詰まりになる事が多い。折角いいパスを持っているだけに、自らその可能性を狭めるのは勿体ない。
アディショナルタイムには何度かダメ押し点のチャンスもあったが、ロナウドへの気遣いが強すぎたのかいずれもシュートを打てる場面でパスを選び上手くいかず。試合はそのまま2-3で終了。
データ
Standard
スタッツ自体はユナイテッドが圧倒し、崩されたピンチというのはほぼありませんでしたが、失い方が悪すぎた結果が2-3というギリギリのスコアに繋がっています。勿論ミスを0にする事は出来ませんが、何故その場面でそのパスを選択したか、毎回説明できるようなプレーをして欲しい。
尚、決定機を逃す場面が目立ったロナウドは断トツ最多8本のシュートを記録しており、そもそもフィニッシュワークに向かう事すら出来なかったそれまでと比べれば改善の兆しはある。ただ、やはり今季の彼は我々の知るCR7ではなく、4本中3本を枠内に飛ばしその内2回を得点に繋げてアシストも記録したラッシュフォードと今まさにエースFWの世代交代が行われている最中なのかもしれない。
Omonia Nicosia 2 : 3 Man Utd
— markstats bot (@markstatsbot) October 6, 2022
▪ xG: 1.59 - 2.96
▪ xThreat: 0.78 - 2.61
▪ Possession: 26.9% - 73.1%
▪ Field Tilt: 15.7% - 84.3%
▪ Def Line Height: 35.7 - 42.4#msbot_uel #uel pic.twitter.com/wBC2xyRq9E
xGも概ね実際のスコア通りの結果。
ただ、パスネットワークを見るとカゼミロ(18番)から縦の関係性は乏しく、2列目と前線へのリンクが完全にマルティネス依存になってしまっている事は不安要素。彼はファイティングスピリット溢れるプレースタイルが故、接触による負傷や累積警告などで起用出来ない試合もそれなりに直面する恐れがあるので早めに代替案も用意したい。
今のチームはマルティネスとエリクセンに支えられているといっても過言ではない。
あとがき
宝石のようなマルシャルはプレーの質をそのままに、ラッシュフォードとの関係性も19/20シーズン中断明けの最高の状態に戻っているように見えます。そしてカゼミロはまだまだ単純なパスの失敗も目立ちますが、デュエル勝率は地上5/6,空中8/9と守備面では期待されたパフォーマンスに近づいているかもしれない。
この日の収穫は主にこの2つ。LBに関してはショーがフィットネスを戻してきたように見えるので序列の再入れ替えがありそう。相変わらず失点後のドタバタ感は課題だが、後半45分のいい感触を週末のエバートン戦に繋げて貰いたい。