※22/23 イングリッシュプレミアリーグ
マンチェスター・ユナイテッドvsリバプール戦の記事です。
前後半を通じてポゼッションをライバルに握られる苦しい展開でしたが、鋭いカウンターと自陣ゴール前での球際の強さ,オーレ期のビッグゲームによく見られた最後の粘りを見せてリバプールとのノースウエストダービーで今シーズンの初勝利を達成!!!
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— Manchester United (@ManUtd) August 22, 2022
【Match Review】
注目度の高いライバルマッチという事もあって試合前にはグレイザーファミリーへの抗議運動が活発に行われましたが、ゲーム自体は予定通り進行。
試合前の週末に入団が発表されたカゼミロはスタジアム内で試合を観戦しており、昨年のヴァランと同じような形でお披露目が行われました。
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— Manchester United (@ManUtd) August 22, 2022
なお、この試合はMUTVにてフルマッチが無料配信されています(8/23日現在)
Starting lineup
試合前コメントによればプレッシングが出来る11人を選び、マグワイア→ヴァランの理由に機動力と俊敏性を挙げたテン・ハフ。
相手に主導権を渡す事は織り込み済み。結果的にカウンターベースで前掛りになったリバプールの隙を突いてスコアを有利に進めたいという想定通りの試合運びでした。
前半
ブレントフォード戦の後テン・ハフの怒りを買い、いわゆる罰走を課せられ運動量とスプリントの欠如を再認識したであろうトップチームのメンバー達。それが良く伝わってくるような前線からの組織的なプレッシングが序盤から機能していたように見えます。
GKからのビルドアップは完全に放棄し、一応素振りだけ見せてウインガーへのロングフィードを徹底。パスの精度や長さ,キックの強さが十分では無く相手にセカンドボールを回収される事が多かったものの、上述したプレスもあって失点のピンチになる事は無かった。
対してリバプールはボールに多く触りながらリズムを作り自ら散らして左右の揺さぶりが出来るチアゴ不在、更にフィルター役が抜群にうまいファビーニョもベンチスタートという構成。エリオット,ミルナーのIH2枚はチャンスメイクの面ではさほど脅威になり得ず、ホームチームはサイド攻撃のみに意識を集中しやすい状況であったと思う。
また、ユナイテッドのバック4はいずれもスピードがある陣容なので多少裏に出たボールを追いかけさせられる形になっても脆さは感じません。左のマルティネス,マラシアは最警戒のサラーがライン際で斜めにボールを持つ形になってもゴールへの道を開けず、業を煮やして縦に行った所を刈り取ってほぼ完封。RBのアーノルドがエランガのマーク+中盤構成の問題で普段ほど高い位置に進出しなかった事も赤い悪魔にとってプラスに働いたかもしれない。
最初の決定機はユナイテッド。
ダロト,サンチョが右サイドで厳しく寄せ、ロバートソンの苦し紛れの縦パスを誘うとこれをマクトミネイがカット。すぐさま相手CB間の広大なスペースに走り込むブルーノへボールを送り、8番は倒れ込みながら横にボールを繋いでエランガのシュートチャンス。残念ながらインサイドでファーを狙ったキックは右ポストに嫌われたが、連動したプレスでサイドに追い込み得点機会に繋げるという一連の流れはラングニックが標榜したスタイルを想起させる見事なモノ。
自陣深い位置までリバプールに侵入されるがボックス内で跳ね返し一転攻勢に出たユナイテッド。アタッキングサードで隙を伺いながらボールを動かし16分、エリクセンとのワンツーでアーノルドを突破したエランガのマイナスクロスをサンチョが受け、足裏で一度ボールを舐めて対面のミルナー,守護神アリソンに尻もちをつかせてゴールマウスに空白地帯を生み出し無人のネットに流し込んで先制!!
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— SPOTV NOW JAPAN (@SPOTVNOW_JP) August 23, 2022
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抜かれた後に歩くアーノルド、ブロックするわけでもなくただ立っているファン・ダイクに助けられた面もあったが、この状況でワンタッチ多く挟んで相手の裏をかいたサンチョの判断は恐ろしいまでに冷静でした。
更に、この得点シーンはDFラインの設定や位置取り、Inverted Fullbackとして振る舞ったマラシアなどテン・ハフの意向が現れているのではないかと思われる部分がいくつも存在し、今後の参考になる可能性もあるのでピックアップ。
ユナイテッドの攻撃は対人守備に隙のあるアーノルド-ジョー・ゴメスの裏,あるいは2者間への配球を徹底。24分にはボックス手前で前者のイエローカードを誘発するファウルを獲得するなど、香車タイプのエランガを上手くチームの中に組み込んでいたように思います。
41分にはリバプールのCKで枠を捉えなかったミルナーのヘディングシュートに何を思ったかブルーノが自陣ゴール方向へ蹴ってしまい、ポストを守っていたマルティネスの身体を張ったカバーリングで九死に一生を得るというプレーもありましたが、最初の45分で本当に危なかった場面はこれくらい。全体としてはリバプール相手によく守っていたと評価できる。
後半
HT明けのユナイテッドは先制点アシストのエランガに替えてマルシャル投入。
🔄 Erik makes a change at the break.
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意図としては中央での起点とアーノルドへの負荷を更にかける為によりテイクオンの脅威があるラッシュフォードを左に配置したかったという事だと思います。勿論デメリットとしてプレッシングの強度低下の懸念はあり、実際にそうなりましたが後述する追加点は正にこの交代策がハマったと言えるでしょう。
キックオフ直後のサインプレーに失敗し、早速嫌なボールの失い方をした始まった折り返しの45分でしたが、アーノルドのアーリークロスをヴァランが跳ね返しセカンドボールをヘンダーソンが後ろにミスコントロール。これを拾ったマルシャルが中央でDF2枚を背負いながらタメを作り、左サイドの広大なスペースへラストパスを送ると最後はラッシュフォードがニアサイドに流し込んで2点目!!
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— SPOTV NOW JAPAN (@SPOTVNOW_JP) August 23, 2022
🔴不振を乗り越えた神童❗️
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試合を決定付けた #ラッシュフォード の一撃!😈
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フットワークが軽くライン外への飛び出しが高く評価されるアリソンですが、この場面に限って言えばゆっくりとバックステップを踏みながら後退した方がアタッカーとしてはやりづらいシーンだったかもしれない。とはいえ、ラッシュフォードのオフサイドラインギリギリの抜け出しで1on1を作られた時点でGKの責任が問われる失点ではない。
失点直後のリバプールはRB,IH2枚,RWが少ないタッチパスを繋ぎボックス内へ侵入しますが、最後ルイス・ディアスのシュートはゼロ距離でデヘアがブロック。ここも元を辿ればこちらの左ウインガー(この時はラッシュフォード)が相手についていかず自由にさせた所から始まっているのでまだまだツメは甘い。
65分辺りからはリバプールの猛攻をしのぎ続ける時間が続き、テン・ハフはすぐさまサンチョに替えてフレッジを投入。マクトミネイをDMに置き、ブルーノ真ん中からを右へずらし4-3-3へ陣形を変更。
フレッジが入った事で左サイドのプレッシング強度に関しては多少改善が見られ、76分のラッシュフォードのパワーショットでアリソンを脅かしますがそれでも試合はアウェイチームのペース。
81分のリバプールはアーノルドのクロスが流れた所を逆サイドでロバートソンが拾い、再び中に折り返しますがマルティネス,デヘアが気迫の守備で失点を阻止。
その直後、CKのセカンドボールから途中出場ファビオ・カルバーリョのシュートのこぼれ球をサラーに押し込まれ1点差。センターサークルにボールを戻そうとしたサラーとその前に自らボールを掴んでいたブルーノがひと悶着。
試合終盤には残り3枚のカードを使用し、(恐らく)セントラルMFを4枚並べて4-4-2ブロックへ移行し逃げ切りを図ったユナイテッド。
可能性の低いボレーを選択したロナウドやATに時間稼ぎではなくカウンターの危険を孕んでいるパスを選択したブルーノ等プレー選択に疑問の浮かぶ場面もありましたが、最後は気持ちの面でも相手を上回り勝ち点3を獲得!!!!!
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— Manchester United (@ManUtd) August 22, 2022
データ
Standard
カウンターベースとはいえ、Park the busではなく高い位置からプレッシングをかけて真っ向勝負を選んだユナイテッド。ポゼッションで大差を付けられた割りにシュート数で4差、枠内を捉えた回数は同じであったように決して運だけでもぎ取った勝利ではありません。特に相手の枠内を0に抑えた前半は完璧な試合運びでした。
全選手にMoMを与えたくなるようなチーム一丸の勝利でしたが、特に相手両ウインガーにほぼ自由を与えなかったダロト,マラシアのフルバック2人、楔のパス,カバーリング,最終局面での球際の粘りといずれのシーンでも高い貢献を示したマルティネス、そしてDFリーダーとしての資質を改めて顕示したヴァランのバック4は本当にお見事。
また、エランガのシュートチャンスを演出するスルーパスや守備時のポジショニングに改善傾向が見られたマクトミネイもテン・ハフ自ら言及したように良いパフォーマンスだったと思います。球離れがワンテンポ遅い事やボールを受ける前の準備などの課題はまだ残ったままですが、カゼミロ加入で出場機会減少が予想される中で更なる奮起を期待したい。
Manchester United covered more distance (114km) & made 51 more sprints than Liverpool this evening.
— Statman Dave (@StatmanDave) August 22, 2022
Erik Ten Hag’s Running Reds. pic.twitter.com/9nvl8t0rOA
ブレントフォード戦後のランニングを選手と共に行ったというテン・ハフ。それに選手が感銘を受けたという報道もありますが、正に効果てきめんだったのかこのゲームではチーム総走行距離、スプリント回数の両方でクロップのチームを上回る結果。
得点期待値で上回ったのはビッグチャンスを4回作ったユナイテッド。
その内試合回顧の方で触れなかったブルーノのシュートは相手にエアポケットが生まれたプレーで、決まっていてもオフサイドだったかもしれませんが失点シーンで批判を集めたアーノルド,ファン・ダイクのみならず全体的に集中力を欠いているように見えるシーンが何度も見られた。
因みに、決勝点のラッシュフォードはリーグ戦で今年1月のウエストハム戦以来7カ月ぶり、出場時間にしておよそ1,000分ぶりのゴール。ようやく長いトンネルに出口が見えてきたのかもしれない。
あとがき
発表当初は不評だった22/23シーズンの1stユニフォームも、公式戦初勝利がリバプール戦になるという結果で後々好意的にみられるようになるかもしれません。そうなる為にも今後の反撃は必須で、過去5シーズンの優勝チームの勝ち点を平均すると95.2Pts。残り35試合で92.2ポイントを上積みするには1試合平均約2.63点が必要。つまり、ここから負けられる試合は2~3試合しかありません。
CL争いまで水準を落とせばもう少し余裕が出ますが、いずれにせよこの勝利をキッカケにチーム全体が生まれ変わって連勝街道に乗れる事を願っています。そして信じたい。