どうも皆さんこんにちは、いろ覇です。
遂にやってきましたノースウエスト・ダービー。
以前はナショナルダービーと呼称されてきましたがイングランドはサッカークラブが非常に多く熾烈なライバル関係もそこら中で繰り広げられているので何をもって”ナショナル”とするのかが大変難しいです。
それ故にこの2クラブ間の対戦は地理的な対立も含めてノースウエスト・ダービーとするのが一番分かりやすい表現だと思います。
ライバル関係とされる所以
この激しいライバルマッチを紐解くにはまずは両チームのホームタウンの位置関係を見る必要があります。
この両都市と言えば1830年に世界初の都市間鉄道が通った事でも有名ですが、関係が悪化したのは1894年にリバプールのマージ―川から内陸部を約60キロ進む運河がマンチェスターまで開通した事が発端と言われております。
この運河が出来たキッカケはリバプール側が港の使用料や鉄道料金に過剰な上乗せをしていた事にマンチェスター側が反発したのがキッカケなので元より火種が燻っていたのですが、運河建設がそれに拍車をかけた形。
因みに、マンチェスター・ユナイテッドとマンチェスター・シティのエンブレムに描かれている帆船はこの運河を象徴するシンボルマークで、マンチェスター市の紋章にもなっています。
もっとも、現在は同じノースウエスト・イングランドの都市として地域全体の利益を第一にという思想が主流になりつつあるのでかつて程都市間でバチバチにやり合っているという訳ではありません。
ただ、そのように直接的な軋轢が解消されていくのと比例してマンチェスター・ユナイテッドとリバプールのライバル関係は白熱したものになっていき、特に1970年代~80年代は当時イングリッシュ・フットボールでフーリガンが過熱化していた影響もあったか対決がある度にサポーター同士の暴力沙汰が絶えず繰り広げられていたようです。
近年だと2011年10月15日に行われたアンフィールドでの試合でルイス・スアレスがパトリス・エヴラに対して人種差別発言をした一件が最も両者がヒートアップした出来事だと思います。
スアレスは8試合の出場停止処分を言い渡され、年が明けて2012年2月11日のリターンマッチでは試合前の握手を拒否するなど、この一連の騒動は世界中で大きく報じられる事になりました。
試合プレビュー
順位表の1位と2位がぶつかる今節きっての注目カードですがここ最近の調子は対照的なものとなっております。
ホームのリバプールは直近5試合で2勝2分け1敗と取りこぼしが目立つ戦績で、特にここ3試合を見るとウエスト・ブロム、ニューカッスルに連続ドローの後、サウサンプトンにはかつて所属していたダニー・イングスのゴールによって1vs0で敗戦を喫するなどここにきて不調の波が到来しているように見えますね。
アウェイのマンチェスター・ユナイテッドは直近5試合で4勝1分けと絶好調なチーム状況が続いています。
最後にプレミアリーグで敗れたのは11月1日のアーセナル戦で、この敗戦から11試合の無敗記録を継続中。
マンチェスター・ユナイテッドはブランドン・ウィリアムズがコンディション不良で欠場の見込み。
リバプールはCBに怪我人が続出しており、フィルジル・ファン・ダイク、ジョー・ゴメスの欠場が確定。
更にはジョエル・マティプも試合に間に合うかどうか微妙な状態で、他には中盤のナビ・ケイタも欠場するとユルゲン・クロップ監督が自ら明かしています。
スタメン
リバプール
ベンチ入り
7ミルナー、15チェンバレン、17C.ジョーンズ、18南野拓実、27オリギ、46R.ウィリアムズ、47N.フィリップス、62C.ケレハー、76N.ウィリアムズ
先述の欠場者に加えLBのツィミカス、アタッカーのジョタもスカッドから外れました。
チアゴ・アルカンタラを真ん中に置き、両端を支える2人も攻撃的な選手を揃えてきたので狙いとしては複数得点を取って攻め勝とうという意図でしょうか。
控えには普段アンダーカテゴリーでプレイする選手が複数人入る緊急事態なのでこの試合を勝利で終える事が出来れば単純な3ポイント以上の価値があると思います。
マンチェスター・ユナイテッド
ベンチ入り
3バイリー、7カバーニ、8マタ、11グリーンウッド、26D.ヘンダーソン、27テレス、31マティッチ、34ファン・デ・ベーク、38トゥアンゼベ
CBには腰の怪我で欠場していたリンデロフが復帰。
SNS上ではバイリーの出場を望む声が大きかったですが、スールシャール監督としてはこの試合は低いDFラインを敷いて待ち構える試合運びを想定してリトリートの上手いリンデロフを選出したのだろうと私は捉えました。
ブルーノには激しいマークが想定されるので鍵となるのはポグバ、マルシャルのパフォーマンス。
彼ら全員を徹底マークする事は難しいと思うので比較的警戒が緩むであろうこの2人が試合を決める働きをしてもらいたいところ。
試合内容
リバプールのアンセム"You'll Never Walk Alone"をシングルとして世に出したリバプール出身のバンド、ジェリー&ザ・ペースメイカーズのボーカルであるジェリー・マースデン氏が1月3日に亡くなった事を受けて試合前には黙祷が行われました。
フィルミーノに助けられた前半45分
予想通り前線からハイプレスを仕掛け攻勢に出るリバプールとラインを上げずカウンターの好機を待つマンチェスター・ユナイテッドという構図で試合が始まりましたが、前半開始15分間で放たれたシュートはリバプール2本、ユナイテッド0本とお互いにゴールの匂いはあまり感じられない時間が続きました。
しかしながら徐々にリバプールの優勢が目立ち始め、15~30分の間にリバプールは6本のシュートを記録してマンチェスター・ユナイテッドの守備網が崩され始めるシーンがちらほら出始めるように。
特にリバプール9番のロベルト・フィルミーノの前には幾度も得点に繋がる好機がもたらされていましたが、この日の彼は精彩を欠いていていずれもシュートの威力・コースが甘くユナイテッドとしては彼に助けられる事になりました。
リバプールはこの押している15分間で得点を決められず、再び試合には静かな時間帯が訪れました。
マンチェスター・ユナイテッドの初シュートは33分のブルーノ・フェルナンデスのフリーキック。
ルーク・ショーの持ち上がりから得たチャンスでしたが、ブルーノのシュートは枠の僅かに左に逸れる軌道で惜しくもゴールとはならず。
マンチェスター・ユナイテッドはひたすらリバプール両SBの裏を集中的に狙っていたのですが、この30~45分の間で5つのオフサイドを記録してしまうなど、中々効果的なプレーが出来ずに前半を終了しました。
2つの決定機をモノに出来ず
後半に入ってもやはりリバプールが主導権を握る展開がしばらく続きましたが、運動量が多く負荷のかかる戦術で臨んでいるホームチームに疲労の色が目立ち始めた60分以降はこれまでとは打って変わってマンチェスター・ユナイテッドに得点機会が回ってきました。
一度目のビッグチャンスは75分、ラッシュフォードの絶妙なパスで抜け出したルーク・ショーのラストパスにブルーノが右足インサイドで合わせます
ですがこのシュートは左足一本で反応したアリソンのビッグセーブにより得点には繋がらず……
デヘアもこの足を使ったセーブを得意としていますが、咄嗟に足で反応できるのは本当に凄い。敵としては厄介この上ありませんが。
しばらくして79分にはチアゴ・アルカンタラの狙いすましたミドルシュートがゴールに襲い掛かりましたがこれはデヘアがパンチングで得点を阻止。
2度目の大チャンスは82分
ワンビサカが不意を突いてドリブル突破からペナルティエリアのライン上まで侵入すると、そこからグラウンダーでポグバにボールが渡りゴールから16m程の位置でニアサイドを狙った強烈なシュートを選択
遂に均衡が破れるかに思えた一撃でしたが、眼前にはアリソンが見事なポジショニングで壁として立ち塞がりボールを弾いた先もコーナーキックに逃れる完璧な対応でまたしても得点には至らず。
試合はスコアレスドローに終わり、リバプール、マンチェスター・ユナイテッドの両チームが勝ち点1を分け合いました。
(https://twitter.com/ManUtd/status/1350879552134918146より)
マンチェスター・ユナイテッドはこれでリーグ戦無敗記録を12試合に伸ばし、アウェイマッチに限って言えば昨年1月19日、およそ1年前のアンフィールドでの敗戦以来16戦負けがないという驚異的な記録を更新中。
動画ハイライト
交代選手
76分 in:C.ジョーンズ out:シャキリ
85分 in:オリギ out:フィルミーノ
89分 in:ミルナー out:ワイナルドゥム
61分 in:カバーニ out:マルシャル
89分 in:グリーンウッド out:ブルーノ
データ
ホームのリバプールが試合をコントロールする時間帯が長かった事が伺い知れる内容となっておりますが、枠内シュートの数ではマンチェスター・ユナイテッドに劣る3本とシュート精度に欠き得点を挙げる事は出来ませんでした。
パスの内訳を見ると両チームの差異が明らかとなっており
リバプールは667本中576本がショート~ミドルレンジのパスでロングボールの割合は僅か8.5%と細かいパス交換でユナイテッドの守備組織を崩そうという意図が見えました。
マンチェスター・ユナイテッドは反対にロングボールの比率が53/344と全体の15%以上を占めており、リバプールのサイド裏のスペースに対角線のロングパスを狙い続けた90分間だったようです。
リバプールのMVPはチアゴ・アルカンタラ
ボールタッチ数122回はチーム最多でパス成功率も83/96で約86%と高い精度を誇り文字通りチームの心臓といえる活躍でした。
試合を見ていても彼が簡単に目の前の相手を往なして数的優位を作り出すシーンが幾度もあり、彼がいなければこの日のリバプールは機能不全に陥っていた可能性が高いのではないでしょうか。
マンチェスター・ユナイテッドからはルーク・ショーを推薦
- 地上戦勝利:6/9(66.7%)
- クリア:4回
- 被ファウル:4回
- キーパス:2回
と攻守両面で大車輪の働きを見せ、パス成功率33/41(約80%)はロングボール主体の戦術をとったチームでは十分合格の値。
対峙したモハメド・サラーに殆ど仕事をさせずリバプールの強力なサイドアタックを封じ込める事に成功したのはショーの貢献が特に大きかったと思います。
xデータ
(参照:Liverpool 0 - 0 Manchester United (January 17 2021) | EPL | 2020/2021 | xG | Understat.com)
xGは1.20:1.19と見事なまでにスコアが並びビッグチャンスの数ではリバプール1つ、マンチェスター・ユナイテッド2つと量のホームチームvs質のアウェイチームという対決であったようです。
個人成績に目を向けると、リバプールはxG0.71のロベルト・フィルミーノが最もスコアを稼ぎました。
5本のシュートは両チームを通じて最多で決定機も58分にロバートソンのクロスから記録しましたが、マグワイアの好ブロックによりゴールを奪えず結局無得点のまま85分にオリギと交代でピッチを後にしています。
マンチェスター・ユナイテッドではxG0.66のブルーノ・フェルナンデスがトップ。
こちらもフィルミーノに次ぐ4本のシュートを放ちゴールに襲い掛かりましたが、GKアリソンのビッグセーブに阻まれ得点を奪う事が出来ませんでした。
この試合のブルーノはパス成立20回に対してボールロストが19回と普段に比べると精彩を欠いた印象を受けました。
交代直前にはワイナルドゥムと言い合いになり、ピッチを下がる際には誰かに向けて指を立てるシーンが映し出されるなど本人も相当フラストレーションをため込んでいたようです。
ブルーノに対してプレー面での注文はありませんが、アンガーマネジメントだけはもう少しうまくなって欲しいところ。