(更新:2023-08-15)
どうも皆さんこんにちは、いろ覇です。
マンチェスター・ユナイテッドに関してここ数日紙面を賑わせている話題と言えば、エクアドルリーグでプレーする19歳のMF、モイセス・カイセドの獲得が近づいているというニュースです。
カイセドという名前を聞いて最初に思い浮かべたのはかつて過渡期のマンチェスター・シティで1シーズンレギュラーFWとしてプレミアリーグで活躍し、現在はイタリア セリエAのラツィオでプレーしているフェリペ・カイセドでしたが、彼のことではありません。
あまり聞き覚えのない(私が無知なだけかも)ヤングスターの加入が近づいているという事で、今回はそんな彼について書きだしながら私自身も予習していきたいと思っています。
モイセス・カイセド(Moisés Caicedo)
フルネーム:モイセス・イサーク・カイセド・コロソ(Moisés Isaac Caicedo Corozo)
生年月日:2001年11月2日
国籍:エクアドル
出身地:サント・ドミンゴ
身長:178㎝
ポジション:MF(CM、DM)
経歴
プロデビューは2019年10月1日のセリエA(エクアドル)第27節、対リーガ・デ・キト戦。
67分から途中出場を果たし、17歳でプロキャリア最初の一歩を踏み出しています。
2019年シーズンは計3試合に出場。
数年後の主力候補という扱いでこの時点ではトップチームのレギュラーではありませんでした。
しかしながら翌2020シーズンは急成長の1年となりました。
リーグ開幕戦からスターティングラインナップに名を連ねると、3月12日に行われたコパ・リベルタドーレス vsアトレティコ・ジュニオール戦では途中出場からプロ初ゴールを挙げてチームの3vs0の勝利に貢献するなど、急速にチーム内での立場を確立させました。
2020年は公式戦28出場で6ゴール2アシスト(2020年12月23日時点)。
主にセントラルハーフで出場する機会が多い選手にしては高い決定力を発揮しました。
充実のシーズンを過ごしエクアドル国内でも有数の若手有望株となったカイセドは2022カタールW杯の南米予選を戦うエクアドル代表に招集されました。
代表初出場となったのは9月10日に行われたアルゼンチン戦。
この試合を勝利で飾ることは出来ませんでしたが続く10月13日の対ウルグアイ戦では格上と目される相手に対し自らも1得点を挙げ、チームの4vs2での勝利に大きく貢献しています。
19歳を迎えるシーズンでこれだけの結果を残したカイセドの元には欧州の名だたるクラブからオファ―が到着し、現在、最も獲得に近いとされるマンチェスター・ユナイテッドの他にCLグループリーグで対戦したドイツのRBライプツィヒやイタリア セリエAで首位に立つACミランも彼の確保に向けて動いていたらしいです。
(Man Utd outbid RB Leipzig to close in on Moises Caicedo transfer | Metro Newsより)
プレースタイル
(5大リーグでプレーする選手ではなく、普段のような細かいデータを入手できなかったので動画サイトに無数に転がるプレー動画を見た感想です。)
最も分かりやすい傾向としては、ミドルシュートを積極的に放つという印象を受けました。ボールタッチは繊細で、時折ポール・ポグバを彷彿とさせるプレーも。
しかしながらポグバ同様低い位置でもドリブルでボールを運ぼうとしすぎるきらいがある為、当たりの激しいプレミアリーグでは失点に直結するボールロストを招いてしまう危険性も感じますね。
Transfermarktや各種データサイトによればセントラルハーフ、ディフェンシブハーフが得意ポジションとされているのですが、個人的にはトップ下にコンバートしても面白いのではないかと思っています。
次世代のCMやDMで判断した場合、現在チャンピオンシップのワトフォードにレンタル中のジェームズ・ガーナ―やU-23カテゴリーのプレミアリーグ2で得点量産中のアルナウ・プイグマルと比べると攻撃センスでは勝っているように見えますが、その反面、リスク管理が少し甘く不用意なプレーを選択している事が多い様に見えるので、特にディフェンシブハーフでは使いづらい選手かもしれません。
追記:原石から光り輝くダイヤモンドへ
ディフェンシブMFでは扱いづらいかも、そんなことを2023年夏現在のモイセス・カイセドに言う人間が居ればそれはプレーを全く見ていないか長い間眠っていたかのどちらかでしょう。そう断言できるくらいにカイセドのプレースタイルは大きく変化し、持ち前のインテリジェンスを攻守の多くの局面で発揮している。
これはOptaによるカイセドの22/23シーズンのレーダーチャートだが、DMやCMで起用する際に求めたいポゼッション能力や守備アクションで中央値を大きく上回り、チャンスクリエイト能力も一定の水準で備えている事が分かる。反面としてペナルティボックス内での貢献度や得点力ではオンターゲット率28.6%という数字が示すように改善が必要だが、セカンドストライカー以外ならば中盤のどのポジションでも期待を裏切る事は無いだろう。
自陣でのダイレクトプレーやレイオフを多用するハイリスクのビルドアップを採用するロベルト・デ・ゼルビのブライトンにおいて、カイセドはCBからの縦のパスをテンポよく中継,或いは前へターンして自ら持ち運んでいくという最重要の役割を任されており、時間・空間的な余裕が少ない中でのボールプレーが圧倒的に多いが、それでもショートパスおよびミドルパスの成功率は9割越え、更にロングボールでも8割近い驚異的な成功率を記録。
また、ブレイク前の彼を見て「ポール・ポグバのようだ」と感じさせた全身のしなやかなバネを想起させるプレーをそのままに、タックル,インターセプトといった読みが重要な守備面でもチーム内断トツのスコアを叩き出し、よくいる身体能力頼りのホールディングMFとは全く違うという事を証明している。
それらを可能にした類まれなるフットボール的知性をもってジュード・ベリンガムと並び今後10年はフットボール界のトップ級に君臨するであろうコンプリートMFに変貌を遂げたのが今現在のモイセス・カイセド、これが私の見立て。
追記:万能選手に成長したカイセド、英国最高額での移籍金まで昇り詰める
He's Chelsea! ✊ pic.twitter.com/RcJHJtcHTm
— Chelsea FC (@ChelseaFC) August 14, 2023
この記事を書いた時点でのカイセドはまだ欧州フットボール未上陸、確かに当時の私の文通りプレーには若さも見られ粗削りな部分が目立っていた。獲得競争に勝利したブライトンが直ぐにトップチームで起用しなかった所にもそれは証明されている。
ただ、ベルギーへのローンを経てシーガルズへ復帰すると、21/22シーズンは終盤の8試合出場に留まりながらかつて憧れを語ったマン・ユナイテッドとの試合で抑えの利いたミドルシュートを叩きこむなどポテンシャルを見せつけ、同オフにイヴ・ビスマを放出する事になるクラブとしてもセントラルMFの後釜については全く心配していなかったに違いない。
フルシーズンを初めてプレーした22/23は前述したように期待以上の活躍を見せ、世界中のどのクラブでも予算に余裕さえあれば是非とも手にしたいプレイヤーに。
23年冬のマーケットの時点でアーセナル移籍の噂も流れたが交渉が纏まらず、満を持して訪れた夏の移籍ウィンドウでは当初アーセナル,チェルシーを中心とする争い、前者がデクラン・ライス獲得後はチェルシーとジャックを狙うリバプールとの一騎打ちが繰り広げられ、最終的には£100M+£15Mのアドオン、総額では英国フットボール最高額となる一億千五百万ポンドでの取引成立となった。
- £115M Moises Caicedo (Brighton ↪ Chelsea)
- £106.8M Enzo Fernández (Benfica ↪ Chelsea)
- £105M Declan Rice (West Ham ↪ Arsenal)
- £100M Jack Grealish (Aston Villa ↪ Man City)
- £97.5M Romelu Lukaku (Inter ↪ Chelsea)
- £93.3M Paul Pogba (Juventus ↪ Man Utd)
- £90M Romelu Lukaku (Everton ↪ Man Utd)
- £88.5M Mykhailo Mudryk (Shakhtar ↪ Chelsea)
- £86M Antony (Ajax ↪ Man Utd)
- £85M Darwin Nunez (Benfica ↪ Liverpool)
(参考:Moises Caicedo transfer: Midfielder completes medical after Chelsea agree British record fee with Brighton | Transfer Centre News | Sky Sports)
若手路線への転換について
ファーガソン退任後のマンチェスター・ユナイテッドはそれまでと比べるとやや即戦力重視の補強が増えていたと感じていますが、スールシャール体制になってからは再びティーンエイジャーを各国から集める方針に戻った気がします。
10月にウルグアイからリクルートしたファクンド・ペリストリも10代のプレイヤーなので、このまま3シーズンクラブに在籍すればホームグロウンの対象となります。
この動きは2020年に入ってからより顕著なものとなり、昨シーズンもモナコから1月に当時16歳のハンニバル・メイブリを1000万ユーロで引き抜いています。
その彼は17歳ながらU-23の中心選手として11試合中10試合に出場とその移籍金から伺える大きな期待に応える活躍。
今シーズンもスペインの2大メガクラブ、レアル・マドリーとバルセロナからSBのアルバロ・フェルナンデス、マルク・フラドを獲得。そしてその2チームに追いすがるアトレティコ・マドリーからもウインガーのアレハンドロ・ガルナチョをチームに加えるなど、国内外を問わず将来有望な選手を次々と手中に収めています。
アンダー18のチーム内得点王チャーリー・マクニールも同じ街のライバル マン・シティから獲得した選手で、得点ペースは92分に1点と順調に成長を見せています。
そんな彼らの中でもトップチームに加われるのはおそらく1人か2人なのですから本当に厳しい生存競争ですね。
ラッシュフォードやグリーンウッドもちょっとした歯車の掛け違いでもしかしたら今の位置にいなかったかもしれないと考えると、より一層彼らに愛着がわいてきます。