※23/24 イングリッシュプレミアリーグ
バーンリーvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
内容が悪かろうと勝ち点3を得る事に価値がある、このターフ・ムーアでの決戦は正にそのような試合でした。止まらない怪我人、相次ぐ主力のトラブル、そして指揮官の資質にすら言及され始めるチーム状態のなか、抜擢された2人の選手がどちらも良い働きぶりを見せた事も収穫。
United take home all three points! 🙌#MUFC || #BURMUN
— Manchester United (@ManUtd) September 23, 2023
【Match Review】
Starting lineup
アムラバトがベンチ入りを果たし、ハンニバルが先発抜擢など怪我人の復帰や疲労を考慮した選手起用などこれまでとは異なる箇所が幾つか。エヴァンスはまさかこの早い時期に先発出場の機会が巡ってくるとは契約当初考えていなかったかもしれない。
前半
バーンリーはジョシュ・カレンがアンカーに入る4-1-2-3をベースに、ビルドアップではフルバックが内に絞ってカレンの両脇に入る2-3の形で、プレッシングはお馴染みのGKまで猛烈に追いかけるハイプレスとブラウンヒルが縦にスライドしてCBを見ながら一定のラインを維持するミドルブロックを併用。
そんなホームチームに対してマンチェスター・ユナイテッドはボールポゼッションを諦めてカウンター中心のスタイルで臨み、必然的にロングボールが増加してウイングプレイヤーのタメ・仕掛けに頼る場面が減った事から機能しないケースの多かったブルーノのサイド起用もそれほど気にならず、ダロトとの内外の使い分けがスムーズに為されていたので右サイドは予想よりいい内容。
ただ、ビルドアップでリンデロフが外に開き過ぎて相手のプレッシングのハマりやすい状態を作っていたり、そもそもGKから足元で繋いでいこうという場面でCB2枚からの前進は(マクトミネイ,カゼミロらのパスコース作りの甘さも影響しているが)中々思う通りに行かなかった。
一番気になるのは前線からプレスをかけようとする割に毎回相手のバックスをマークし切れていない事で、大体のケースはラッシュフォードがアル=ダヒルに対しサイドからズレて見に行かない所がプレス網の抜け穴になってしまっていた。
今回は背番号10のプレーに焦点を当てているが、それ以外でも2列目から瞬間的に降りてくる相手の中盤を捉えきれなかったり、ウイングがCBにジャンプして見に行った後のフルバックのカバーが希薄であったりとユナイテッドの前線プレスには問題が山積している。
上記画像でも少し触れているが、ハンニバルの守備面はチームの攻撃的MFの中ではブルーノに次いでやるべきことを理解していて信用できる。
元々闘争心が強く、かつてはファウルやカードの多さというデメリットばかりに効果が出ていたものの、今ではそれを運動量の多さやプレスバックへの献身性に活かされており、オン・ザ・ボールでまだ変な選択をしたりパス精度のバラツキはあるが、前節のミドルシュートやこの試合でも終盤85分に見せたアウトフロントでのスルーパスなど、このレベルでもあっと言わせるプレーが出始めた。
25分のユナイテッドは右CKからレギロンのインスイングクロスにエヴァンスがヘディングで合わせてジェームズ・トラッフォードの守るゴールネットを揺らしたが、その際にホイルンドがオフサイドポジションでGKの視界をブロックしたとしてVARは判定を覆して得点が認められず。
ただ、左利きのキッカーが欠けていた現在のチームにおいて、レギロンにセットプレーテイカーとしての役割を見出せた事の価値は得点と同じくらい大きい。
バーンリーは(恐らく怪我による影響で)グズムンドソンを早い時間帯で交代せざるを得ず、LWで先発したルカ・コレオショを右へ、交代で入ったマイク・トレゾールを左ウイングに起用。コレオショのテイクオンの質は左に居た時の方が上で早々にダロトがイエローカードを貰うなどここに波乱の予感を感じていたので、トラブルによる変更なので複雑な心境だがユナイテッドとしては運が良かった。
そして、バイエルン戦で酷評したマクトミネイはポジショニングの取り直しが少なく使えるパスコースになっていない頻度の高さや、ボールを要求してから自身の懐に到達するまでにその場に適した身体の向きを作らないので仮にパスを貰ったとしてもロストしてしまう場面が目立っており、このように細かい準備を怠りがちにしている事の積み重ねが自身を苦しめている。
地上戦3/8,空中戦3戦3敗というホールディングMFとして失格といっても差し支えないスタッツが出てしまったのも驚きではない。
45分、一度右サイドで相手の圧縮プレスから逃げ切り、後方にボールを戻してエヴァンスがノンプレッシャーでボールを持つと、瞬間的にエアポケットになっていたベイヤー-チャーリー・テイラー間を突いたブルーノのオフボールに対し左足で完璧なロブパスを届ける。
特別な選手による、スペシャルなゴール🚀
— マンチェスター・ユナイテッド (@ManUtd_JP) September 24, 2023
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そしてブルーノは斜め後ろからやってくるボールに対して半身になりながらタイミングを調整すると、何とダイレクトでのシュートを選択し強烈な一撃がゴールネット左隅へ突き刺さって先制!!
エヴァンスの丁寧なパスとそれに応えたブルーノの圧巻のミート技術、これぞプロフェッショナルの世界という芸術的なゴールでユナイテッドは1点リードを得て前半を終えた。なお、前半のタイムアップ直前にもテイラーの背後をとったブルーノにエヴァンスからロブパスが入り、最後はホイルンドがクロスボールに合わせるチャンスがあったがこちらはオフサイド。
後半
今後に向けた収穫として挙げられるのはダロトとホイルンドのコンビネーション。クロス精度に問題ありとされる事の多かった前者だが、細かく内容を振り返っていくとDF-GK間やファーポスト裏のスペースに良いボールを出しているにもかかわらず味方の動きが無かった事で配球側の責任にされているケースが多かった。
そんなダロトも常にディフェンダーの背後を狙うストライカーらしい動きをしてくれるホイルンドがFWに入る事でようやくアシストが増えていきそうな気配。この場面こそ僅かにタイミングが合わずにボールがそのまま反対側へ通り抜けていったが、2人の関係性の深まりとチームとしてファーポストに詰める選手を配置できるようになれば、フィニッシュワーク改善の1つの糸口になるだろう。
50分台からブルーノとラッシュフォードがサイドを入れ替え、アタッキングサードでは2枚目のFWに。ラッシュフォードが前に出たフォローとしてカゼミロが相手フルバックをマークするために飛び出し、更にカゼミロの分を前に出てカバーしたリンデロフがアーロン・ラムジーからスライディングでボールをはじき出す所から始まった59分のショートカウンターは前線守備が正しく機能した良いプレー。
63分にはジョシュ・ベイヤーのボールキャリーを完璧な読みでブロッキングしたカゼミロの球際の守備からカウンターに転じ、その後右サイドに流れながらスルーパスを引き出してボールキープしたホイルンドが見せたダロトへのヒールフリックは先述した2人の相性の良さを更に強く感じるシーン。
ラッシュフォードが2トップ気味になってCBへの寄せをLW時よりも行うようになった事でこの辺りの時間帯は前からのプレッシングが良く機能していたように見えたが、レギロンのマイナスの折り返しから、少し距離はあったが折角自分でシュートを撃てるという絶好の場面でどう考えても通りようのないホイルンドへのパスを選択した64:52のプレーでその流れは途切れている。
75分を過ぎた辺りからマクトミネイ,カゼミロが自陣ボックス内まで押し込まれて5バック或いは6バックのようになってしまう良くない状態がしばらく続き、ヤコブ・ブルーン・ラーセンの裏抜けからエヴァンス必死のディフェンスで何とか窮地を凌いだ場面など失点の匂いが充満し始める。更にレギロンの途中交代でリンデロフがLBに回される緊急事態に陥り、いくらヴァランが戻ってきたとはいえこれは正直苦しかった。
85分にはチームが相手のCKをクリアし、ハンニバルからのスペースへのパスに走り込んでオープンなカウンターチャンスを手にしたラッシュフォード。ボックス内に切り込んでいって複数枚の守備を交わしたそのドリブルのキレは凄まじかったが、折角4人の目線を釘付けにしたにも関わらず横に現れたカゼミロではなく強引に自分でシュートを撃って全てを台無しに……
アディショナルタイム寸前に投入されたアムラバトはLBでのデビューとタフな環境だったが、正直身体の動きはまだ重さを感じ、マヌエル・ベンソンを自陣深い位置で倒してファウルを与えるなどほろ苦いユナイテッドでの1試合目に。ただ、今回は特殊な状況下だったのでノーカンにしてもいいと思う。
United debut ✔️
— Manchester United (@ManUtd) September 23, 2023
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データ
Standard
シュート数12対11、オンターゲット4つずつとチャンスの数は拮抗していた9月23日のターフ・ムーア。ボールポゼッションを握ったのはバーンリーで選手の配置やプレーの連動性では彼らに分があったと考えているが、如何せん個々の質という部分で勝負できる選手が少ない所がゲームを有利に進めながらリード出来ずに終わった結果に反映されているのだろう。
マンチェスター・ユナイテッドの勝利の立役者としてスポットを当てたいのはスターティングラインナップに抜擢されたハンニバルと大ベテランになったエヴァンス。
前者は守備時のポジショニング及びプレスの圧と距離感の取り方が非常に上手で、攻撃時のサポート量の多さが証明するように運動量も多いことからブルーノのリプレイスメントという枠では一歩抜け出した。
まだまだオン・ザ・ボールの判断とパス精度にはムラがあるが、アーセナル戦の豪快なパンチショットに続き評価を高めた事は間違いなく、今の献身性を維持すれば、ボールタッチ数がそれほど伸びなかった点についても信頼を積み重ねていく事で自然と改善されていくだろう。
CBの相次ぐ離脱で先発の機会が回ってきたエヴァンスに関しては、スピード不足を考慮してポジショニングが後ろになり過ぎるきらいこそあれど、デュエルは地空どちらも勝率10割で幻となったコーナーキックからのヘディングシュートや決勝点になったブルーノのボレーシュートをお膳立てしたロブパスなど得点貢献でいい意味でのサプライズをもたらす。困った時に頼りになるというのは正にベテランの選手に求めていた事なので本当によくやってくれた。
得点期待値0.94 - 0.84と大きなチャンスの少ない締まったゲームとなり、ゴールエリア内でのシュートはバーンリー3つ、マン・ユナイテッド1つだった。
クラレッツとしては、素早くボールサイドを切り替えた後のアンダーラップから完全に抜け出したコナー・ロバーツのクロスと斜めのパスコースを封鎖できていないマクトミネイのポジショニングを突いたカレンのラインブレイクのパスから生まれた18分の決定機、ゼキ・アムドゥニに訪れた2回の得点機会を決めきれなかった事が響いた形。
Burnley 0 : 1 Man Utd
— markstats bot (@markstatsbot) September 23, 2023
▪ xG: 0.81 - 0.66
▪ xThreat: 1.25 - 1.55
▪ Possession: 60.8% - 39.2%
▪ Field Tilt: 63.4% - 36.6%
▪ Def Action Height: 45.6 - 46.6#msbot_eng #epl pic.twitter.com/e0XNOt82pL
PASSING NETWORKをみるとバーンリーのフルバックを絞らせて1アンカーのカレンがバランスを取るビルドアップを意識的に行っていたことがよく分かり、ユナイテッドはカウンター狙いだった事もあるがやや全体の重心が後ろに傾いていて上手く前進出来なかった点も現れている。
あとがき
チームのクリーンシート達成は実に開幕戦以来約1か月半ぶりとのことで、それだけ守備組織が崩壊していた事がよく分かります。レギロンの交代は負傷ではなく体調を考慮してのものという情報も出ており、フルバックがダロト1人という最悪の状況は何とか回避する事が出来そう。
ミッドウィークのクリスタル・パレスとの国内カップは消耗度合いを考えればリザーブメンバーで臨んで欲しい。